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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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「交渉人・真●正義」的に(笑)請負人初仕事の世良ちゃんの話。30代前半くらいのつもり。オリキャラの禿げたおっさんが出張ってます。あと、微エロ、というか、ちゅっちゅしてる天ジュノとか、一人で何やらする世良ちゃんの描写があったり、とか…。(汗)

拍手[6回]


 世良は、旧教授室で天城とキスをしていた。
 天城の唇は、薄くて、体温も低いが、触れ合わせると物凄く情熱的になることを世良は知っている。そこから微かに漏れる吐息が絡み合うのが好きだ。世良の感じる場所に、そっと押し付けられるその感触にはいつも痺れる。それが微かに開いて、「ジュノ」という音が響く度に酔わされる。要するに、世良は天城の唇が大好きだった。先に重ねてきたのは天城だったが、既に、追いかけているのは世良の方になっている。啄ばむように幾度か触れた後、少し遠ざかった唇が寂しくて、自分から肩に腕を回して、距離を消す。
「日本人の割に情熱的だな、ジュノは」
 蕩けてしまうくらい求め合って、漸く離れたところで、小さく笑いながら天城が言う。何だか悔しくて、更に音を立てて、唇を押し付ける。
 ――もっと、触れたいし、感じたい。でも、それだけじゃなくて……。
 夢中になって、更に深く触れ合おうと、身体を押し付けた途端――
 ぴくりと全身が動いて、目が覚めた。
「……最悪……」
 遥か昔に愛した人の夢を見ている30過ぎの男なんて、見苦しいにも程がある。しかも、その夢の中身と同様に身体が反応してしまっているときた日には……。
 ――欲求不満の10代じゃないんだから……。
 自己嫌悪にかられながらも、男の生理には逆らえず、そっと、下着の中へ指を滑り込ませる。頭の中では呆れていても、触れれば気持ち良いのが正直なところだ。
「はぁっ……。あ……まぎ、せんっ、せぇ……」
 先程の夢を思い出す。激しく唇を重ねながら、かつて幾度も、美しい軌跡を描いてメスを煌かせるあの指が、こうして世良を追い詰めた。その瞬間を思い出して、手の中で熱い塊が強く脈打つ。
「うっ……、あああっ!」
 あっという間に昇り詰め、果ててしまった世良は、汚れた先端と手の平を拭って、荒い息を吐きながら、闇の中に身体を投げ出した。欲を発した身体はそれなりにすっきりしたが、意識の方はそうはいかない。どうしてあそこで目覚めたのだろうと、自分を呪いたい気持ちにすらなる。
 いっそのこと、夢の中で、最後までイッてしまいたかった。
 自分の頭が作り出した幻影とはいえ、明らかに欲望の捌け口に使うよりは余程マシだ。
 そして、それより何より――
「もう一度、出て来てくださいよ……」
 世良は、闇の中に向かって呟く。
 夢でも、幻でも良い。
「会いたい……です……、天城先生……」
 小さく呟き、微かに熱くなった鼻を啜って、その意識を再び暗闇の中に手放した。


 世良が辺りを見渡すと、遠くに仄かな光があって、天城が居た。
 嬉しくて、夢中で駆け寄る。天城は、世良には気づかずに、ぼんやりと頭上を振り仰いでいた。そこには、微かに風が吹く度、はらはらと花弁を落とす満開の桜が広がっていた。
 その様をうっとりと見つめる天城の綺麗な立ち姿は、さながら一枚の絵画のようで、世良は声をかけるのを躊躇う。不用意に触れたら、全部壊れて消えてしまいそうだ。
 憧憬と不安を抱えて突っ立っていた世良に、ふと天城が気づいた。
「やあ、ジュノ」
 天城がこちらを見て、微笑んだ。世良は嬉しくて、満面の笑みになる。その傍らに近づこうとしたとき。天城の顔が険しくなった。
「何をしているんだ、ジュノ?」
 聞いたこともない程の冷たい声に、世良は全身を強張らせる。
「自分なりの桜の木を植えるんだろう、違うのか?」
「そう、です。その為に、僕は『不良債権病院再建請負人』になって……」
 しどろもどろに答えた世良の動揺は、あっさり無視して、天城は冷たく言い放つ。
「それで?」
「今、ある病院の再建を行っています。経営の改善のために、赤字部門の廃止と経費節減を打ち出して……」
「成果は?」
 世良は俯く。
「……あまり上手くいっていません。各科からの反発が強くて、なかなか思う通りに進まないのが現状です。足を引っ張る連中が多くて……」
 世良は、拳を握り締める。
「ジュノには先が見えているんだろう。どうなんだ?」
「……このままでは、不味いです。今のままの経営を続けたら、間違いなく、1年と持ちません」
「再建請負人、第1号の病院を潰す、か……」
 天城は冷酷に笑った。端正な顔がぞっとするほど美しかった。
「ジュノ。ジュノが私から得たのは、その浅ましい身体の欲望の吐き出し方だけじゃないだろう?」
 その言葉に、世良は羞恥の余り消えたいとすら思った。
 天城の顔に浮かぶ軽蔑の色が、自分の行った醜い行為を責め立てる。
「ジュノには分かっているはずだ。どうするのがより良い答えなのかを」
「でも、それは……」
「おいで、ジュノ。ジュノが一番欲しいものをあげよう」
 天城が世良の顎を掴み、唇を重ねる。懐かしいその感触に、僅かに抵抗しながらも、世良の意識は闇に落ちた――


「リストラ……?!」
 世良の言葉を繰り返した院長の顔は蒼白だった。既に60近い、頭頂部の禿げ上がった小男だ。こんな時代が来るなどとは予想もせず、嬉々として譲り渡された院長の席に座った前時代の化石頭の持ち主。
「一先ず、50人で考えています。まずは希望退職者を募り、それで満たない場合は、このリストの順に退職勧告します」
「だが、それは……」
 彼は、世良の差し出したリストを受け取らず、双方に視線を彷徨わせた。そんなことをしても、此処まで進んだ事態は何も変わらないというのに――
「そこまでしなくても、何とか出来るのではないかね。その為に君を雇ったんだ」
 やがて、何処にも逃げ場がないと知ると、彼は中途半端な愛想笑いを浮かべて、頑固な若造の懐柔にかかる。馬鹿馬鹿しい、今此処で世良にうんと言わせたら、経営状況が瞬く間に改善するとでも思っているんだろうか?
「こちらは、現状の収支が見込めるという条件でシミュレートした1年後のバランスシートです。この時点で、利息の返済すら不可能になっています」
「だが、所詮は予測だろう」
「実際の経営の悪化状態を見る限り、これでも楽観的過ぎるくらいです」
 それでも渋る院長に、世良は止めの一撃を放った。
「あくまで反対されるなら、僕は手を引かせていただきます。こちらとしても、大事な初仕事ですから、泥を付けられるのは心外ですので」
 きっぱり言い放ち、机の上に広げられた資料をばさばさと仕舞い込む。
「ま、待ってくれ!やる!やれば良いんだろう!」
「良いんだろう、ではありません。院長の責任において、断行していただかなくては困ります」
「するする!するから……!」
 こんなので大丈夫かと溜め息を吐きたくなったが、それを態度に出すのは愚の骨頂だ。
 世良は、再度真面目な表情を作り、今後のタイムスケジュールについて説明する。その間も、出来るだけその瞬間を引き伸ばそうとする院長に辟易した。
「なあ、世良君」
 漸く、段取りの打ち合わせが終わり、世良が院長室を辞そうとしたとき、院長が呼びかけた。
 やっと終わったのに、また難癖でも付ける気かと振り返った世良が見たのは、これまで見たこともない程、真面目な顔をした院長の姿だった。
「こんなことをして、もし、病院が立ち直っても、君はもう此処には居られないよ」
 それは確かに、時代は違えど、これまで世良の数倍もの期間、世の中を生き抜いてきた男の顔で、その断定は鋭い刃となって、世良の胸を刺し貫いた。
 思わず、返答に窮する。
「君が、いつまでも決断出来ず、今の事態を招いた私を軽蔑しているのも分かっている。けれど、本当にこれが一番良い答えなんだろうか……?」
 その通りだ。だから、世良だって迷った。赤字部門を廃止したり、経費を節減することによって、回避できないかと試みた。けれど、病院そのものが潰れたら、そこに雇われている全ての職員が路頭に迷い、そこに通っていた患者は行き場を失う――
 ――ジュノには分かっているはずだ。どうするのがより良い答えなのかを。
「院長」
 世良は真っ直ぐに、院長を見て言った。
「この世の中に、一番良い答え、なんてないんですよ。あるのは、より良い答えだけです」
「より良い答え……?」
「誰かに恨まれ、誰かに損をさせる。それでも、他の選択肢よりは多少マシな――そんな答えです。そして、それを決断した人間は、必ず憎まれることになる。けれども、誰かがやらなくてはならないんです」
 院長は小さく溜め息を吐いた。
「……本当は、私がやらなくてはならないこと、だったんだな……」
「僕はしがない請負人ですから、仕事とあれば、幾らでもやりますよ」
 世良が肩をすくめて笑った。
「若いのに、大したものだ。いや、若いからこそ、かな。君にはきっと、理想の世界があるのだろうな」
 その言葉に、世良の目の前に、夢の中の満開の桜が広がる。
 そして、そこには必ずあの人が居る。
 世良の植えた桜を愛おしそうに見る、美しいあの人が――
「あります。いつか、必ず、そこへ行ってみせます」
「世良君」
 小さく会釈した世良を院長が呼んだ。
「さっきの言葉を撤回するよ。もし、この病院に、君の思いを、理想を分かる者が居たら、もしかしたら、君はこの病院に残れるかも知れないな……」
 余りにも他人事めいた言い方だったが、世良にはそれで十分だった。
「そのときには、より良い労働条件でお願いしますね」
「率先して、薄給で良いと言ってくれたまえ」
 軽口を叩き合い、扉の向こうとこちらに別れ、双方とも険しい顔に戻る。
 
 
 そんなことが限りなく確率の低い奇跡であることなど、お互い、分かり過ぎるほどに分かっていた――


本当はもっと、欲望と理想の狭間でぐちゃぐちゃになって、その辺の鬱憤が全部、血も涙もない改革の方に向かって、その恨みを一身に受けて、「こんな世の中なんてっ!!」みたいになる病んだ世良ちゃん書くつもりだったのに、意外と爽やかな話になって、あれー?
まあ、何処にも一人くらいは理解者は居るんだけど、守ってもらえるほど強力でもなくて、止むを得ず流されて行くくらいが極ラプ前半の世良ちゃんにはハマるのかも知れない。
夢の中の怖―い天城先生は、世良ちゃんの罪悪感の投影です。そんな酷いこと言う訳ないじゃない、天城先生が。「ジュノはそんなに私のことが好きなんだな」ってぎゅうっしてくれますよ、本物ならvvv
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