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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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キリが良いので、ブログタイトルを変更しました。今世良が幅利かせてきたので…。オテル・エルミタージュなんて図々しいことは言いません。市民病院の一室で十分です(笑)っていうか、極北が良い。
気づけば、再建請負人にハマって、1年です。記念に大分デキ上がってる今世良SSを1本。二人がいちゃいちゃべたべたしてるだけの話ですが……。

拍手[5回]


 隣で起き上がる気配があった。
 世良は、まだ半ばまどろみの中に居たが、体温が遠ざかる気配だけははっきりと分かった。嫌だなぁ、と思った。まだ、起きたくない。でも、離れたくもない。手を伸ばすと、まだ上半身を起こしただけだったらしく、袖の部分が指に触れた。つん、と引く。まだ、此処に居て――
「……キス、して……くだ……」
 もう少し一緒に、甘い甘い夢の中に……。
 すっと隣の気配が動く。
 顎に指が触れる。体温が気持ち良い。
「世良先生……」
 耳元で聞こえた声に、世良の周りにあった柔らかいまどろみは跡形もなく消えた。
 世良はぱちりと目を開けた。
 間近に迫る顔を見て、現実を認識する。
「い、今中先生?!」
「はい?」
 生真面目に返事をする声に、世良は真っ赤になった。
 ――ま、間違えた……!
 咄嗟に、隣にあった枕を今中の顔に押し付ける。
「うわっ!世良先生、何す……」
 ――有り得ない、有り得ない、有り得ない……!
 世良は頭を抱えて、毛布に潜り込んだ。
 
 
「あの、世良先生……」
「……」
 今中の声がすっかり呆れていることくらいは気づいている。
 こうやって、布団の中で丸くなっていても、状況が全く変わらないことだって分かってはいるのだ。
「あの……」
 別に、困らせたい訳じゃない。
 でも、どんな顔をしたら良いか、分からない――
「別に良いじゃないですか」
「……何が?」
 それでも、懸命に声を投げかけてくれる彼には感謝するべきなのだろう。
「ちょっと寝惚けたんでしょう。それくらい、誰にでもありますし……」
「うるさいよ!」
 ――でも、だからって、これはないと思う……。
 何だって、わざわざ傷を抉る方向で来るんだ。ああ、また、出そびれた……。
 カタカタと作業している気配があったので、このまま放置されるだろうかと思っていたが、また近づいて来た。ホント、人が良い男だ。
 何だか、良い匂いがする。そういえば、昨日は少量の摘みを口にしただけだし、朝食は抜きで、そろそろ昼だろうから、大分空腹だ。
「折角作ったんですから、食べてくださいよ」
 ――仕方ないよね。今中先生の作ったものを無駄にしちゃいけないもんね。
 誰に伝えるともない言い訳に、自分で可笑しくなる。何で自分はこうかなぁという気持ちがない訳ではないのだ。
 世良は布団から顔を出すなり、それを顰めた。
「……焦げてる」
 お盆の上に、トースト、牛乳、スクランブルエッグ。一応、卵焼きを目指して作っているのだが、3回に2回はスクランブルエッグになってしまうことを世良は知っている。
「少しじゃないですか。味の方は大丈夫ですから」
 箸が出てきた。
 世良は黙って、口に運ぶ。
「トーストに何か付けますか?」
「じゃあ、ジャム」
「はい」
 バター、ジャム、ピーナッツバターと、この部屋のパンのお供のライナップは世良が言う通りにどんどん増えている。世良は渡されたジャムを塗った。
「後は、何が欲しいですか?」
 そんな至れり尽くせりの状況で、今中が言った。
 世良が目を逸らすと、自分から言う。
「キスは、要りますか?」
「要らない」
「ハグは?」
「別に」
「手を繋ぎましょうか?」
「何で」
「それとも、頭を撫でましょう?」
「馬鹿にしてるの」
 世良は軽く睨んだが、今中は首を振る。
 今中の言いたいことは分かっている。料理をするのも、愛情表現するのも大差ない――世良の言うなりに、世良を甘やかす、それだけだからだ。
 最初は、距離を置く方法のつもりだった。高飛車で身勝手な態度で居れば、向こうから避けるだろうと。けれど、突き放しても突き放しても、彼はついてくる。どんな我が儘も受け入れる。
 我が儘が自分のためのものに変わったのは何時からだっただろう?
 優しくして欲しい、大事にして欲しい、甘やかして欲しい、慰めて欲しい――そんな一方的な要望も、彼はあっさり受け入れる。
 内側からにじみ出る愛されたいという欲求は、最早、抑えが効かない。
 少し体温が遠ざかっただけで離れたくないなどと思ってしまう自分が信じられなかった。
 だが、それを認められずに、拗ねていること自体もまた甘えなのだ。
 そして、それもまた、彼は受け入れて許容する。
 どう巡っても、完敗だった。
 世良は自嘲の笑みを漏らす。
 甘やかしてくれると言うなら、せいぜい、甘やかしてもらおう。
「さっきの、全部やってよ」
 世良の雰囲気が変わったことに、今中も気づいたようだった。
「……全部、ですか?」
 微かに怯んだ気配がある。
 あんなに挑発的な言い方をしてきた癖に――
「その先でも良いよ」
「こんな……、昼間から……。昨日だって……」
 お盆を押し退け、世良は、今中を押し倒す。
「まずは……、キスだっけ?」
「ちょっ、世良先っ……?!」
 何度も押し付けて、入り込んだら、今中も応える。
 最初は軽く舌先を絡めていたが、お互い、段々本気になって、気づけば、口内を貪り合っていた。吐息も唾液も痺れも思いも一緒くたにして、ぐちゃぐちゃに混ぜ合う。腰が重くなって、欲を自覚する。感覚だけが鋭敏になり、思考が蕩けた。ただ、夢中になった。
「次は、ハグ」
 唇を耳元まで移動して囁く。ついでに、舌先で耳朶に触れた。今中の腕が、世良を包む。
「で、手を繋いで、頭を撫でて……」
 指が絡み、逆の手が髪に触れる。
 世良は目を閉じ、じっと今中の体温を感じた。今も、こうして言う通りにしてくれる。しかも、決して頭の回転が速い方ではないのに、彼はいつも世良の望みを分かっていて、裏腹の言葉には絶対に従わないのだ。
「ずっと、此処に居てよ……」
 世良が根を張ると決めたこの地、その傍らに。必ず、失われたものを再生させて花を咲かせるから。それまで、僕の望みを、本当の思いを聞き遂げて。此処に居て――
「いや、でも、本当にそろそろ起きないと……」
 困り果てた声に、世良は脱力しながら身体を起こした。
「……今中先生の空気の読めなさに心底がっかりしたよ……」
「え?何ですか?でも、昼間からこんなことは……」
 自分も起きながら、世良の顔色を伺う今中を見ていたら可笑しくなってきた。
「本当に、がっかりだよ」
 生涯の誓いのつもりで言ったのに。
「でも、まあ、これでこそ、今中先生だよね」
 くすくすと声を立てて笑う様子を、不思議そうに見ていた今中が、洗い物をしますね、と言って立ち上がるのに、世良も続いた。
 

1年の節目にプロポーズしてみたりしながらも、相変わらずな二人でvvv世良ちゃんは、我が儘言ってるだけのつもりで、めためたに甘えてる自分にある日気づいて、吃驚すれば良いと思うよ。
極ラプ読んだ直後は世良ちゃんの天城先生への思いにもやもやして、ブレイズ再読して、天ジュノ探しに行ったら全然なくて「なら、書くしか!」ってなって、「直ぐ止めると思います」って言いながらしらぐちブログに間借りして、「でも、今世良も有りなんだよなぁ」ってこそこそ書いて、スリジエ中古品かき集めて、とうとうコンテンツ立ち上げて今に至ります…。楽しかったよ、くそぅ(敗北感満載)
あと、記事見難いなぁって思ってたので、手始めに、続きSSはリンク張りました。近いうちに、目次も作ろうと思います。
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