テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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ナースステーションを覗いた世良は、ツリーの飾り付けを手伝わされている今中に苦笑した。
角田師長が是非とも、クリスマスパーティをやりたいと発案し、他の職員たちも賛同したので、「少し豪華なおやつタイム程度なら」と許可したのだが、これは想像以上の豪華さだ。ケーキとその他の食品は世良のポケットマネー、ツリーは市民病院の備品だが、更に、角田師長が家のお古の飾りを持って来たらしい。市役所から電気代にまで細かくチェックが入るので、ライトも使えないのだが、明るいところで見るとなかなか様になっている。
「あら、世良院長先生。もう少し待ってくださいませ。直ぐに準備できますから」
お盆を手にした角田師長が甲高い声で忙しく言う。
「角田師長、おやつなら良いけど、アルコールはちょっと……」
世良の視線を追って、自分の手元のグラスを見た角田はおかしそうに笑った。
「まあ、嫌だわ、院長先生。これ、シャンメリーですわよ」
世良は目を丸くして、ピンク色の、気泡が立ち上る液体を見つめた。
「ああ、そうなんだ。ぱっと見、ピンク・シャンパンみたいだなぁ」
「院長先生は素敵なお酒を飲まれますのね。私なんて、お酒といえば、ビールか日本酒ですもの。逆に、ジュースにしか見えませんわ」
世良はグラスを一つ取って、蛍光灯に透かした。
「……僕も、最近は全然飲んでないけどね」
まさか、あの人が好んでいつも飲んでいたのと瓜二つのものに、こんなところで巡り会えるとは思わなかった。けれど、確かによく見ると、着色料を薄めたような不自然なピンク色だ。やはり、角田師長の言った通りの子供騙しのジュースに違いない。こういうのを月とスッポンと言うのだろう――まるで、あの人と自分のようだ……。
「そうそう、院長先生。何か、御用でしたの?」
角田師長に言われ、世良は此処へ来た用件を思い出した。グラスを机に置き、腕に下げていた紙袋を差し出す。
「いつも頑張ってくれている皆へ。ボーナスもない寂しい年末に、僕からのお礼の気持ちってことで」
「宜しいんですの?ああ、嬉しい。佐竹さん、ちょっと来て」
「はい、何ですか?」
「これ、世良院長先生から」
「あ、ありがとうございます」
「見ても宜しいですか?」
「どうぞ。大したものじゃないけど」
ラッピングを開けた角田は、超音波級の悲鳴を上げた。
「まあ、素敵。でも、派手じゃないかしら」
出てきた紫色のクッションとひざ掛けを服に当ててみせる。佐竹が「よくお似合いです」と笑った。
「ナースステーションで使ってるのが随分と痛んでいたから、良かったら使って。幾つか買ってきたから、持って帰っても良いし」
佐竹も、彼女をイメージしたベージュのクッションを手に取り、椅子において座り心地を見ている。
「本当に院長先生はセンスが良くていらっしゃるわ。こっちは花房師長で、これは蟹江さんね」
ピンクとモノトーンのひざ掛けを指した角田師長に苦笑した世良は、ケーキを取りに行くと言って、今中を手伝いに呼んだ。
「今夜、今中先生の部屋に行くから」
「そ、そうですか……」
廊下に出たところで小声で囁くと、今中は辺りを伺うような表情になった。
「今中先生、今、いやらしいこと考えたでしょ?」
世良のにやりとした笑みに、今中は赤面する。
「い、いやらしいことなんて、別に……」
「あっそう。今中先生は、この僕を一晩隣りにおいて、手も出さずに過ごす気なのかぁ」
からかうような世良の言葉に、今中は完全に撃沈した。
「……考えました」
その素直な物言いに、世良は苦笑する。
本当に正直な人間だ。
ふと、シャンメリーの気泡に、遠い聖夜の思い出が重なる。
「その今中先生の正直さに免じて、願いを一つ叶えてあげよう。とりあえず、何でも言ってごらん」
今中はぽかんと世良を見た。
「夜の方の希望でも良いよ。たまには今中先生のしたいようにさせてあげる」
世良は意識的に顔を近づけ、口の端を上げて笑う。艶めいた表情を向けると、今中が目を逸らした。
「そんなこと、急に言われても……」
「ノリ悪いなぁ。此処まで言ってあげてるんだから、もう少し喜んだら」
覗き込むように、逃げる顔を追いかけたら、今中が慌てたように世良の目の前で大袈裟に手を振った。
「嬉しいです、本当に!でも、今、物凄く混乱していて……。だから、少し時間を下さい!」
真正面からの直球に、世良の方が思わず後ずさってしまった。
「ま、まあ……、ボーナスなんだから今年中くらいには決めてよね……」
やっとのことでそれだけ言うと、今中は大きく頷いた。
――全く……。
世良は、思案しながら歩いている部下を盗み見る。軽くじゃれ付いたら、本気で転がされたような気分だ。
最近の今中は油断がならない。
――でも……。
「この真っ直ぐさが僕にもあったら、あの人も……」
何時だって自信に満ちて、悠々と誰にも出来ないことをする彼が、時々、とても寂しそうな表情をするのを知っていた。
そんなとき、先程の今中のように言えたら、笑ってくれただろうか?
何でも叶えると言ったあの人の思いを、自分はちゃんと汲み取れていただろうか?受け取って、とても嬉しいと返すことが出来ていただろうか――
そのとき、冷たい風が一陣、世良の頬を撫でて行った。
『パ・ドゥ・プロブレーム(問題ないさ)ジュノが素直じゃないことは良く知っている』
――え……?
北の風のうねりのような囁きに、世良は足を止める。
『だが、彼にはもう少し、素直になった方が良いかも知れないな』
世良は周囲を見渡した。風の方向では、閉め忘れたのか、開きっ放しになった窓からちらほらと雪が吹き込んでいる。
それだけ、だ。
誰も居ない。何もない。
けれど、聞こえた声は確かに――
「世良先生、大丈夫ですか?」
開いた窓に気づいた今中が小走りで近づいて閉める。
振り返って心配そうに尋ねる今中に向かって、世良は笑った。
「大丈夫だよ。それから、いつもありがとうは今中先生にも言ってるんだからね。感謝してるよ」
今中は驚いたように、世良のところに戻って来た。
そして、突然、その頬に自分の手の平を当てる。
「ちょっと、今中先生……!」
「いえ……。世良先生らしくないことを言うから、熱でもあるのかと思いまして」
――これだよ……。
世良は溜め息を吐いて、内心で助言の主に語りかける。
――こういうことを言うんですよ、僕の部下は……。
「さっきの発言は撤回。人の感謝を素直に受け取れないような人には何もあげないよ」
「え?!ちょっと、世良先生!」
ぱしりと手を跳ね除け歩き出した世良を、今中が慌てて追う。
「ついでに、今夜の夜這いも止めようかなぁ」
「せ、世良先生、私が悪かったですから。機嫌直してくださいよ」
背後で聞こえる情けない声に、世良は笑いを噛み殺して、さて、どんな無理難題を吹っかけようかと、まだ彼の熱の残る頬に指先で触れながら考え始めた。
市民病院は商店街のケーキとシャンメリーで乾杯だー!と思って、久し振りにシャンメリー飲んでみました(笑)生意気にロゼとかあるんですよ、アレ。SS内にもあるように、かき氷のいちごのシロップを薄めたような酷い色です。でも、味は結構好き。
ぎりぎりアップです。ジュワイユー・ノエル!良いクリスマスをお過ごしくださいませ。
角田師長が是非とも、クリスマスパーティをやりたいと発案し、他の職員たちも賛同したので、「少し豪華なおやつタイム程度なら」と許可したのだが、これは想像以上の豪華さだ。ケーキとその他の食品は世良のポケットマネー、ツリーは市民病院の備品だが、更に、角田師長が家のお古の飾りを持って来たらしい。市役所から電気代にまで細かくチェックが入るので、ライトも使えないのだが、明るいところで見るとなかなか様になっている。
「あら、世良院長先生。もう少し待ってくださいませ。直ぐに準備できますから」
お盆を手にした角田師長が甲高い声で忙しく言う。
「角田師長、おやつなら良いけど、アルコールはちょっと……」
世良の視線を追って、自分の手元のグラスを見た角田はおかしそうに笑った。
「まあ、嫌だわ、院長先生。これ、シャンメリーですわよ」
世良は目を丸くして、ピンク色の、気泡が立ち上る液体を見つめた。
「ああ、そうなんだ。ぱっと見、ピンク・シャンパンみたいだなぁ」
「院長先生は素敵なお酒を飲まれますのね。私なんて、お酒といえば、ビールか日本酒ですもの。逆に、ジュースにしか見えませんわ」
世良はグラスを一つ取って、蛍光灯に透かした。
「……僕も、最近は全然飲んでないけどね」
まさか、あの人が好んでいつも飲んでいたのと瓜二つのものに、こんなところで巡り会えるとは思わなかった。けれど、確かによく見ると、着色料を薄めたような不自然なピンク色だ。やはり、角田師長の言った通りの子供騙しのジュースに違いない。こういうのを月とスッポンと言うのだろう――まるで、あの人と自分のようだ……。
「そうそう、院長先生。何か、御用でしたの?」
角田師長に言われ、世良は此処へ来た用件を思い出した。グラスを机に置き、腕に下げていた紙袋を差し出す。
「いつも頑張ってくれている皆へ。ボーナスもない寂しい年末に、僕からのお礼の気持ちってことで」
「宜しいんですの?ああ、嬉しい。佐竹さん、ちょっと来て」
「はい、何ですか?」
「これ、世良院長先生から」
「あ、ありがとうございます」
「見ても宜しいですか?」
「どうぞ。大したものじゃないけど」
ラッピングを開けた角田は、超音波級の悲鳴を上げた。
「まあ、素敵。でも、派手じゃないかしら」
出てきた紫色のクッションとひざ掛けを服に当ててみせる。佐竹が「よくお似合いです」と笑った。
「ナースステーションで使ってるのが随分と痛んでいたから、良かったら使って。幾つか買ってきたから、持って帰っても良いし」
佐竹も、彼女をイメージしたベージュのクッションを手に取り、椅子において座り心地を見ている。
「本当に院長先生はセンスが良くていらっしゃるわ。こっちは花房師長で、これは蟹江さんね」
ピンクとモノトーンのひざ掛けを指した角田師長に苦笑した世良は、ケーキを取りに行くと言って、今中を手伝いに呼んだ。
「今夜、今中先生の部屋に行くから」
「そ、そうですか……」
廊下に出たところで小声で囁くと、今中は辺りを伺うような表情になった。
「今中先生、今、いやらしいこと考えたでしょ?」
世良のにやりとした笑みに、今中は赤面する。
「い、いやらしいことなんて、別に……」
「あっそう。今中先生は、この僕を一晩隣りにおいて、手も出さずに過ごす気なのかぁ」
からかうような世良の言葉に、今中は完全に撃沈した。
「……考えました」
その素直な物言いに、世良は苦笑する。
本当に正直な人間だ。
ふと、シャンメリーの気泡に、遠い聖夜の思い出が重なる。
「その今中先生の正直さに免じて、願いを一つ叶えてあげよう。とりあえず、何でも言ってごらん」
今中はぽかんと世良を見た。
「夜の方の希望でも良いよ。たまには今中先生のしたいようにさせてあげる」
世良は意識的に顔を近づけ、口の端を上げて笑う。艶めいた表情を向けると、今中が目を逸らした。
「そんなこと、急に言われても……」
「ノリ悪いなぁ。此処まで言ってあげてるんだから、もう少し喜んだら」
覗き込むように、逃げる顔を追いかけたら、今中が慌てたように世良の目の前で大袈裟に手を振った。
「嬉しいです、本当に!でも、今、物凄く混乱していて……。だから、少し時間を下さい!」
真正面からの直球に、世良の方が思わず後ずさってしまった。
「ま、まあ……、ボーナスなんだから今年中くらいには決めてよね……」
やっとのことでそれだけ言うと、今中は大きく頷いた。
――全く……。
世良は、思案しながら歩いている部下を盗み見る。軽くじゃれ付いたら、本気で転がされたような気分だ。
最近の今中は油断がならない。
――でも……。
「この真っ直ぐさが僕にもあったら、あの人も……」
何時だって自信に満ちて、悠々と誰にも出来ないことをする彼が、時々、とても寂しそうな表情をするのを知っていた。
そんなとき、先程の今中のように言えたら、笑ってくれただろうか?
何でも叶えると言ったあの人の思いを、自分はちゃんと汲み取れていただろうか?受け取って、とても嬉しいと返すことが出来ていただろうか――
そのとき、冷たい風が一陣、世良の頬を撫でて行った。
『パ・ドゥ・プロブレーム(問題ないさ)ジュノが素直じゃないことは良く知っている』
――え……?
北の風のうねりのような囁きに、世良は足を止める。
『だが、彼にはもう少し、素直になった方が良いかも知れないな』
世良は周囲を見渡した。風の方向では、閉め忘れたのか、開きっ放しになった窓からちらほらと雪が吹き込んでいる。
それだけ、だ。
誰も居ない。何もない。
けれど、聞こえた声は確かに――
「世良先生、大丈夫ですか?」
開いた窓に気づいた今中が小走りで近づいて閉める。
振り返って心配そうに尋ねる今中に向かって、世良は笑った。
「大丈夫だよ。それから、いつもありがとうは今中先生にも言ってるんだからね。感謝してるよ」
今中は驚いたように、世良のところに戻って来た。
そして、突然、その頬に自分の手の平を当てる。
「ちょっと、今中先生……!」
「いえ……。世良先生らしくないことを言うから、熱でもあるのかと思いまして」
――これだよ……。
世良は溜め息を吐いて、内心で助言の主に語りかける。
――こういうことを言うんですよ、僕の部下は……。
「さっきの発言は撤回。人の感謝を素直に受け取れないような人には何もあげないよ」
「え?!ちょっと、世良先生!」
ぱしりと手を跳ね除け歩き出した世良を、今中が慌てて追う。
「ついでに、今夜の夜這いも止めようかなぁ」
「せ、世良先生、私が悪かったですから。機嫌直してくださいよ」
背後で聞こえる情けない声に、世良は笑いを噛み殺して、さて、どんな無理難題を吹っかけようかと、まだ彼の熱の残る頬に指先で触れながら考え始めた。
市民病院は商店街のケーキとシャンメリーで乾杯だー!と思って、久し振りにシャンメリー飲んでみました(笑)生意気にロゼとかあるんですよ、アレ。SS内にもあるように、かき氷のいちごのシロップを薄めたような酷い色です。でも、味は結構好き。
ぎりぎりアップです。ジュワイユー・ノエル!良いクリスマスをお過ごしくださいませ。
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