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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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前回の話の続きで、世良ちゃん視点。病み度MAX。上から目線のツンデレ誘い受も大好物だけど、こういう世良ちゃんも相当好きです。すみません…。

拍手[5回]


世良は、浴室で冷水を浴びて、座り込んでいた。
 ――まさか、今中先生にあんな度胸があったなんて……。
 ノーマルだと思ってたのに、世良を抱いたばかりか、最後は先導して、自分のことまでイカせてしまった。
「尻尾を巻いて、逃げ出すと思ったのになぁ……」
 ぽつりと呟く。
『尻尾を巻いて、逃げ出すと思ったよ』
 今でも世良の胸の中、深く巣食う愛しい人がかつて言った。
『逃げて欲しかったんですか?』
『まさか』
 初めて、情交をかわした後のことだった。動けなくなった世良をバスルームに運んだ天城は、ご丁寧に、自分の吐き出したものを掻き出すところまでやってくれた。
 しかし、そのついでに、世良の深部を弄り回すのだから、堪らない。結局、その場で、再び彼を受け入れて、翌朝は、ヴェルデ・モトで同伴出勤した挙句、旧教授室でぐったりしたまま一日過ごしたというオチが付く。
『ジュノ……』
 その間中、甘い響きが幾度も耳を打った。
 あの声が好きだった。
 いや、声だけじゃない。顔も、手も、唇も――彼を形作る何もかも。
 今だって、彼を思うだけで、切望する余り、震えて、泣きそうになる。
 代わりなんて居ない。
 彼の遺した穴は、誰にも埋められない。
 それが当然だ。
 そんな存在に、自分は出会ってしまったのだから。
 彼は、正真正銘のエトワール、空に輝く一つ星だった。
 その光は余りにも強烈で、眩過ぎるが故に、孤独で、そして、哀しい路を辿った。
 寄り添った、つもりで。指先を掠めるように消えるのを見送った。好きだった。今も、好きで堪らない――
「天城……先生……」
 もう何処にも居ない人の名を呼んで、彼への思いに凍える。
 男を知らない世良の身体を一から変え、相手を満足させるにはどうするかを丁寧に仕込まれた。上手く出来たら、ご褒美にもっと気持ち良くしてくれる。でも、それより何より、自分のしたことで、あの人が感じてくれるのが嬉しくて。次第に、熱心に奉仕するようになった世良を、彼は満足そうに見ていた。
 それを他の男に施す日が来るとは――無論、18年間、色事に無縁だったとは言わないが、そちらはそれなりに割り切った付き合い方ばかりしてきた。誰かと交わりながら、心の中ではいつも、あの人を思っていた。けれど、心は満たされない。何時だって、寂しくて、苦しくて。
『世良先生も感じてください』
 あんなことを言われたのは初めてだった。勿論、男だから、最終的な目的は一つだ。乗っかって腰を振りながら、気持ち良くなることを試みる。しかし、いつも自分が主導で、それが当り前だと思っていた。
『良く出来たね、ジュノ。今度は、ジュノが感じる番だ』
 そういえば、あの人は必ず、最後はそう言って頭を撫でた後、ひたすら喘ぐことしか出来ないくらい、世良を追い詰めた。そして、終わると必ずキスをくれる――ああ、そうだった。そうだった……。
 ぼろぼろと涙が溢れた。
「何なんだよ、今中先生は……」
 全く違うのに。
 キス一つ取ったって、あの人とは比べ物にもならない。あの人のキスは、一度経験したら忘れられないくらい、身体の芯まで蕩けさせるような口付けで、物の数秒で世良を酔わせる程だった。
 なのに――良かった。
 あっさり果てるくらい気持ち良くて、心の底から満足した。
 この身体は、必ずまた、彼を求める――
 それは予感だった。
 浅ましくて、不実な自分の身体が情けない。
 心は今もこうして、あの人の下にあるのに……。
「何で、こんなこと、しちゃったんだ……」
 世良は、膝に頭を押し付け、泣いた。
 今中良夫――取り立てて述べることもない平凡な外科医。なのに、彼がするのは信じられないことばかりだ。普通の人間なら見捨てるもの、打ち捨てるものを躊躇いもなく拾い、その状況を受け入れる。
 興味はあった。面白いと思った。だが、自分が拾い上げられたとき、その心地よさに慄いた。此処が、本当に自分が居ていい場所なのか、分からなくなった。
 冷え切った身体を、冷たい水滴が滑っていく。
 まるで、罰を受けるかのように、世良はそれを受け止め続けた。
『世良先生、勝手なことをして申し訳ありません。でも、私はどうしても、先生の近くで、先生を支えたいんです。だから、此処に居させてください!お願いします!』
「駄目なんだよ、駄目なんだよ……。だって、僕には……」
 ジュノ、と誰かが何処かで囁いた気がして、世良は激しく首を振って、幻想を追い払った。


極ラプの世良ちゃんって、全編通してこんなだと思ってます(汗)

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