テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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極北市がこの冬最初の寒波に見舞われた朝。
今中は医局で、見るともなしに窓の外を見ていた。
人間界で何があっても、季節は普通に巡って冬が来るんだななんて、詮無いことを考えていられるのは、何を隠そう暇だからである。この市民病院に彗星のように現れた新院長は大忙しのようだが、今中は次第に暇になっている、ような気がする。
ふと下方に視線を遣ると、たった今、想像した人物が歩いているのが見えた。
極北の救世主などと呼ばれ、今や、マスコミに引っ張りだこ、外来は常に予約で溢れている。
丸眼鏡の下には人懐っこそうな笑顔が浮かんでいるが、正直、その下に隠された考えは全く読めない。
頭の回転は早く、思考は常に論理的かつ合理的。
その口が滔々と持論を喋り始めれば、気がつくと丸め込まれている。
彼が来た以上、この地には理想の医療が生まれるのだと、マスコミも市民も信じている。
7つの病院の経営を立て直したという華々しい経歴を持つ不良債権病院再建請負人――
彼を表現する言葉を脳内で一巡させながら、今中は改めて地面へ目を落とした。
それなりに時間は経ったはずだ。少なくとも、駐車場から職員入り口までの数十メートルを歩くには十分な時間は。
――何してんだ、あの人?
世良の位置は先ほどから殆んど変わっていない。
時計を見る。診療開始20分前――ギリギリでもないが、道草を食っていられるほど余裕がある訳でもない。
――あ、そういえば。
今中は先日発売された週刊誌を手に取った。
数ページではあるが、極北市民病院、正確には、新院長の記事が載っている。
そこに書かれた世良の略歴を確認し、今中はコートを羽織った。
「世良先生」
今中が駐車場に出ると、世良はまだそこに居た。
不安定に立つ姿勢、恐る恐る踏み出す足。
今中は、自分の予想が当たっていたことを知る。
「世良先生って北の方は初めてなんですね」
「……」
恨めしげに自分を見る世良に、今中は手を差し出した。
「凍った道は慣れないと大変ですしね。極北大にも良く、明らかに南の方の出身なんだなって学生が居ましたよ」
「大きなお世話だよ。この位、どうってことない」
世良は今中の手を避けて、更に一歩を踏み出す。
――何処がですか?
何時になく、むっとした。人の好意を何だと思ってるんだ?さっきから、これだけの距離を歩くのに、10分以上もかかってるみたいだから、こんな寒いところまで出て来てやったのに。どうってことないって感じじゃないだろ。雪道の歩き方も知らない癖に――
何だかむしゃくしゃしてきた今中は、自分でも信じられない行動に出た。
ふらふらしながら、2、3歩前を動く背中を思いっきり押したのだ。
「うわぁっ!」
さすがに、運動神経は良いようだ。
バランスを崩して、普通なら転ぶところだが、反射的に逆の足が出る。しかし、そこの地面もてかてかと光った見事なアイスバーンだから、結果は一緒だ。支えにした足がつるりと滑る。
「わわっ……、わふっ!」
景気良く、除雪車が雪を固めた山に突っ込む。
まあ、この展開を予想していたから、今中もとんでもない横暴が出来た訳だが。
「い、今中先生!何するんだよっ!!」
がばりと起きて言ったものの、その両手は雪山にくっ付いたままだ。完全に、スケートリンクで柵から離れられない人状態になっている。
しかも、その下の雪には、世良の人型がくっきりと付いている。
髪にも、眼鏡にも、コートにも雪が張り付いて、真っ白だ。
「……ぷっ……」
思わず、今中は吹き出した。
カメラとフラッシュに囲まれて、自信たっぷりに語る北の救世主。改革を断行していく冷徹な経営者。
それが、雪道もろくに歩けない、こんな意地っ張りだなんて。急に、この人間が近しく思えて、今中は込み上げる笑いが抑えられない。
「すみません。どうってことないなんて言うから、つい……」
「絶対!」
世良がそろそろと片手を上げた。
その人差し指が1本立っている。真っ赤な顔は寒いからだけではないだろう。髪からは滴が落ちていた。
「来年までには、どうってことなく、雪道くらい歩けるようになってるよ!」
今中はどうにか笑いを噛み殺す。
「じゃあ、今は手を貸しますね」
「今だけ、だよ。来年は必ず……」
そのきっとした表情に、今中は内心の彼を表現する言葉に「負けず嫌い」を付け加えた。
今中先生が強気ですが、私がよろよろ歩く世良ちゃんの背中を押したかっただけっていう。堂々の1時間クオリティ。お粗末!
私の母校は海の近くだったんで、雪の日の道路なんて数十メートルてっかてかで、良く「あの人、学校に着けるのかな」って速度で歩いてる人が居ました。「ああ、南の出身なんだな」って思ってた(笑)
まあ、でも、世良ちゃん、信州の山奥に居たそうだから、そこで雪道はマスターしてそうではあるけど。
今中は医局で、見るともなしに窓の外を見ていた。
人間界で何があっても、季節は普通に巡って冬が来るんだななんて、詮無いことを考えていられるのは、何を隠そう暇だからである。この市民病院に彗星のように現れた新院長は大忙しのようだが、今中は次第に暇になっている、ような気がする。
ふと下方に視線を遣ると、たった今、想像した人物が歩いているのが見えた。
極北の救世主などと呼ばれ、今や、マスコミに引っ張りだこ、外来は常に予約で溢れている。
丸眼鏡の下には人懐っこそうな笑顔が浮かんでいるが、正直、その下に隠された考えは全く読めない。
頭の回転は早く、思考は常に論理的かつ合理的。
その口が滔々と持論を喋り始めれば、気がつくと丸め込まれている。
彼が来た以上、この地には理想の医療が生まれるのだと、マスコミも市民も信じている。
7つの病院の経営を立て直したという華々しい経歴を持つ不良債権病院再建請負人――
彼を表現する言葉を脳内で一巡させながら、今中は改めて地面へ目を落とした。
それなりに時間は経ったはずだ。少なくとも、駐車場から職員入り口までの数十メートルを歩くには十分な時間は。
――何してんだ、あの人?
世良の位置は先ほどから殆んど変わっていない。
時計を見る。診療開始20分前――ギリギリでもないが、道草を食っていられるほど余裕がある訳でもない。
――あ、そういえば。
今中は先日発売された週刊誌を手に取った。
数ページではあるが、極北市民病院、正確には、新院長の記事が載っている。
そこに書かれた世良の略歴を確認し、今中はコートを羽織った。
「世良先生」
今中が駐車場に出ると、世良はまだそこに居た。
不安定に立つ姿勢、恐る恐る踏み出す足。
今中は、自分の予想が当たっていたことを知る。
「世良先生って北の方は初めてなんですね」
「……」
恨めしげに自分を見る世良に、今中は手を差し出した。
「凍った道は慣れないと大変ですしね。極北大にも良く、明らかに南の方の出身なんだなって学生が居ましたよ」
「大きなお世話だよ。この位、どうってことない」
世良は今中の手を避けて、更に一歩を踏み出す。
――何処がですか?
何時になく、むっとした。人の好意を何だと思ってるんだ?さっきから、これだけの距離を歩くのに、10分以上もかかってるみたいだから、こんな寒いところまで出て来てやったのに。どうってことないって感じじゃないだろ。雪道の歩き方も知らない癖に――
何だかむしゃくしゃしてきた今中は、自分でも信じられない行動に出た。
ふらふらしながら、2、3歩前を動く背中を思いっきり押したのだ。
「うわぁっ!」
さすがに、運動神経は良いようだ。
バランスを崩して、普通なら転ぶところだが、反射的に逆の足が出る。しかし、そこの地面もてかてかと光った見事なアイスバーンだから、結果は一緒だ。支えにした足がつるりと滑る。
「わわっ……、わふっ!」
景気良く、除雪車が雪を固めた山に突っ込む。
まあ、この展開を予想していたから、今中もとんでもない横暴が出来た訳だが。
「い、今中先生!何するんだよっ!!」
がばりと起きて言ったものの、その両手は雪山にくっ付いたままだ。完全に、スケートリンクで柵から離れられない人状態になっている。
しかも、その下の雪には、世良の人型がくっきりと付いている。
髪にも、眼鏡にも、コートにも雪が張り付いて、真っ白だ。
「……ぷっ……」
思わず、今中は吹き出した。
カメラとフラッシュに囲まれて、自信たっぷりに語る北の救世主。改革を断行していく冷徹な経営者。
それが、雪道もろくに歩けない、こんな意地っ張りだなんて。急に、この人間が近しく思えて、今中は込み上げる笑いが抑えられない。
「すみません。どうってことないなんて言うから、つい……」
「絶対!」
世良がそろそろと片手を上げた。
その人差し指が1本立っている。真っ赤な顔は寒いからだけではないだろう。髪からは滴が落ちていた。
「来年までには、どうってことなく、雪道くらい歩けるようになってるよ!」
今中はどうにか笑いを噛み殺す。
「じゃあ、今は手を貸しますね」
「今だけ、だよ。来年は必ず……」
そのきっとした表情に、今中は内心の彼を表現する言葉に「負けず嫌い」を付け加えた。
今中先生が強気ですが、私がよろよろ歩く世良ちゃんの背中を押したかっただけっていう。堂々の1時間クオリティ。お粗末!
私の母校は海の近くだったんで、雪の日の道路なんて数十メートルてっかてかで、良く「あの人、学校に着けるのかな」って速度で歩いてる人が居ました。「ああ、南の出身なんだな」って思ってた(笑)
まあ、でも、世良ちゃん、信州の山奥に居たそうだから、そこで雪道はマスターしてそうではあるけど。
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