テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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世良は、かじかむ指先に息を吹きかけた。
佐伯病院長からの呼び出しで、二人で教授室に向かうところだったのだが、天城が忘れ物をしたと赤煉瓦棟に戻ったため、世良は寒風の中で待ちぼうけを食わされていた。だからといって、一人教授室に向かって、前座宜しく病院長のご機嫌伺いをする訳にもいかない。こんなに時間がかかるなら、昨夜の冷え込みで数センチばかり積もった雪道を歩くのが面倒だなどと思わず、大人しく天城について引き返しておけば良かった。
「ああ、もう、遅い!」
世良は、革靴の先で雪を軽く跳ね上げた。塊になっていた雪が砕けてぱっと弾け飛ぶ。
「えいっ」
鮮やかな壊れ方に気を良くして、世良は次の塊に足を振り上げた。
かつての俊足サイドバックの血が騒ぐ。道の脇の塊に駆け寄り、片足を高く上げ、次はサイドからの蹴り――
「ジュノ」
呼びかけられて、はっとした。
「あ、天城先生……」
「余りに楽しそうだったから、声をかけようか迷ったんだが、そろそろ行くぞ」
「み、見てたんですか……」
かあっと羞恥で顔が熱くなる。気づけば、軽く息が上がるくらいまで暖まっていた。
「今朝、此処へ来る途中、散歩中の柴犬がちょうどそんな感じで、雪に突進していたな」
「寒かったから、あったまろうと思っただけです!」
これ以上、犬扱いされる要素を増やして堪るか、と世良は必死に言い訳する。
「あったまったのか?」
「勿論です!」
天城が世良の手を取った。
いつもなら外でそんなことは許さないのだが、自分の発言の正当性を主張することにムキになる世良は、天城の手を握り返す。
「ほら、あったかいでしょう?」
「確かに」
天城はふふっと笑うと、指を絡めてきた。あれ、これって恋人繋ぎ、と思ったところで、世良は我に返った。
「あ、天城先生!手……!!」
「さっきから指先が冷たくて仕方ないんだ。新病院に着くまでこれで行こう」
「行こう、じゃないです!こんなところ、誰かに見られたら……」
世良が腕を引いたが、天城に握られた手はぴくりとも動かない。ただでさえ、院内情報網のネタには事欠かないというのに、こちらからホットな証拠をバラ撒いてどうするのだ。
「……見られてますよ」
氷点下の声が背後から聞こえ、世良は飛び上がった。
「た、高階先……」
「佐伯病院長に催促されて、呼びに来てみれば……。貴方たちの熱で、雪も溶けるんじゃないですか」
高階の言葉に潜む棘に世良は背を竦めたが、天城は堂々としたものだ。
「仕方ないでしょう、外科医の指は繊細なんです。こんな極寒の地に居たら、私の手技が鈍ってしまう」
言って、世良の手を頬に押し当てた。
「スリジエ創設に欠かせない、ジュノの大切な役割、という訳だ」
世良は完全に硬直してしまう。
高階は、世良にとって尊敬に値する上司だが、天城との仲は最悪と言っていい。主義主張が相容れないのは仕方ないとしても、やたらと挑発するのだけは本気で止めて欲しい。
案の定、高階はむっとした顔になった。
「成程。外科医の指は繊細、ですか……」
「ビアン・シュール。私の言葉に二言はない」
気を取り直すように、一瞬笑んだ高階は突然、天城とは逆側の世良の手を取った。
「どういうつもりだ、クイーン?!」
天城が普段の余裕は何処へやら、声を荒げた。高階はにまりと笑う。
「私の手技が鈍ってもいけませんから。世良君に温めてもらおうかと」
「ジュノに触るな!」
「外科医の指は繊細だと、貴方が言ったんですよ」
確かに、二人が引っ付いているところを咎められて、世良の手をカイロ代わりにしているだけだと言ったのは天城の方だ。
言質を取られた天城が咄嗟に詰まった。
「指先くらい鈍っても、その小賢しいビッグマウスがあればどうにでもなるんじゃないですか、クイーン高階?」
「その言葉、そっくりお返ししますよ」
口元に歪んだ笑みを浮かべながら挑発し合う二人の間で、世良は、当事者の俺の気持ちはどうなってるんだろうと考える。
いや、どうもなる訳もない。
所詮、カイロだ。
意志など尊重されるはずがない、と思ったところで――
「とにかく、下らない建前は良い。折角の、ジュノとの二人きりの時間を邪魔しないでもらえるか。そう思うだろう、ジュノ?」
「業務時間中に公私混同するような、自覚の薄い上司にはほとほと迷惑してるんでしょう。そうですよね、世良君?」
「どうなんだ?」「どうなんですか?」と、相性が悪い癖に、こういうときだけは息がぴったりな二人に同時に水を向けられ、世良は先ほどの考えを撤回する。
これでは、カイロ扱いの方がマシだ――
どうしたものかと首を巡らせたとき、思いもかけない救世主が最悪な姿を伴って現れた。
「何をしている、お前達?!」
雷のような怒号に、世良は首を竦めたが、さすがの二人も世良からぱっと手を離した。
「佐伯病院長を30分も待たせた挙句、呼びに行った高階までミイラ取りがミイラか。お前ら、病院長を何だと思っている!」
佐伯外科の双璧の一人、黒崎だった。モンテカルロのエトワールと帝華大の阿修羅に両脇を固められ、大岡裁きならぬ黒崎裁きを受けた世良は最早自らの運命を呪うしかない。佐伯外科の首脳陣そろい踏みのこの状況下に何で自分が居合わせて居るのかがさっぱり分からない。
「別に、黒崎助教授自ら呼びに来なくても」
さらりと言った天城の言葉は、黒崎の怒りに更に油を注いだようだ。
「誰が、お前らなど呼びに来るか!ワシは今から出張だ!!」
「そうでしたね、お疲れ様です。お気をつけて」
「ふん」
卒なく頭を下げる高階に、黒崎は憤懣遣る方ない表情で立ち去っていく。
「では、黒崎教授も出発したところで……」
高階が黒い笑みを浮かべて世良を見、天城がそこに声を被せる。
「ジュノはどちらを選ぶのか、白状してもらおうか」
勘弁してくれ、と内心で叫んだところで目が覚めた。
「悪夢だ……」
世良は突っ伏していた机から顔を上げた。幸い、医局には誰もおらず、居眠りを見咎められる心配はないようだ。しかし、目覚めは最悪だった。夢の中まで二人の上司に振り回されるなんて、どういう因果なのだろうか?
「大丈夫かな、あの二人……」
カレンダーに目を遣る。
明日の日付に赤丸が付けられ、国際心臓外科シンポジウムとある。
大会の目玉である公開手術の執刀医の天城と、大会準備委員長にして前立ちを務める高階は東京だ。こう言うと協力関係にあるようだが、恐らく、二人は自身の思惑を賭けて火花を散らしていることだろう。そこに非常に困難な症例の患者が横たわる。居たところで、二人に挟まれて右往左往するしかないが、こうして遠くで心配しているならいっそ渦中に居たい気もする。世良は立ち上がり、仕事へと戻る。
去り際、窓を振り返り、遠い街の空に手術の成功を願って、そっとドアを閉めた。
このラスト、失敗だったかなって書いてから思ったけど(寝てても心配でうなされる夢オチにしようと思ったのに、この場面はそんなほのぼのネタに使えるようなヌルいシーンではなかった…)、まあ、取り合えず、そのままにしておこう(汗)
見方によっては、総受みたいな感じですけど、受が振り回されてるのを見るのが好きなので、天然な受が自分を取り合う人達を訳も分からず見るという構図にはしません。とにかく、困らせたい!(笑)
雪に突進していくわんこはこの季節の癒しですvvv
佐伯病院長からの呼び出しで、二人で教授室に向かうところだったのだが、天城が忘れ物をしたと赤煉瓦棟に戻ったため、世良は寒風の中で待ちぼうけを食わされていた。だからといって、一人教授室に向かって、前座宜しく病院長のご機嫌伺いをする訳にもいかない。こんなに時間がかかるなら、昨夜の冷え込みで数センチばかり積もった雪道を歩くのが面倒だなどと思わず、大人しく天城について引き返しておけば良かった。
「ああ、もう、遅い!」
世良は、革靴の先で雪を軽く跳ね上げた。塊になっていた雪が砕けてぱっと弾け飛ぶ。
「えいっ」
鮮やかな壊れ方に気を良くして、世良は次の塊に足を振り上げた。
かつての俊足サイドバックの血が騒ぐ。道の脇の塊に駆け寄り、片足を高く上げ、次はサイドからの蹴り――
「ジュノ」
呼びかけられて、はっとした。
「あ、天城先生……」
「余りに楽しそうだったから、声をかけようか迷ったんだが、そろそろ行くぞ」
「み、見てたんですか……」
かあっと羞恥で顔が熱くなる。気づけば、軽く息が上がるくらいまで暖まっていた。
「今朝、此処へ来る途中、散歩中の柴犬がちょうどそんな感じで、雪に突進していたな」
「寒かったから、あったまろうと思っただけです!」
これ以上、犬扱いされる要素を増やして堪るか、と世良は必死に言い訳する。
「あったまったのか?」
「勿論です!」
天城が世良の手を取った。
いつもなら外でそんなことは許さないのだが、自分の発言の正当性を主張することにムキになる世良は、天城の手を握り返す。
「ほら、あったかいでしょう?」
「確かに」
天城はふふっと笑うと、指を絡めてきた。あれ、これって恋人繋ぎ、と思ったところで、世良は我に返った。
「あ、天城先生!手……!!」
「さっきから指先が冷たくて仕方ないんだ。新病院に着くまでこれで行こう」
「行こう、じゃないです!こんなところ、誰かに見られたら……」
世良が腕を引いたが、天城に握られた手はぴくりとも動かない。ただでさえ、院内情報網のネタには事欠かないというのに、こちらからホットな証拠をバラ撒いてどうするのだ。
「……見られてますよ」
氷点下の声が背後から聞こえ、世良は飛び上がった。
「た、高階先……」
「佐伯病院長に催促されて、呼びに来てみれば……。貴方たちの熱で、雪も溶けるんじゃないですか」
高階の言葉に潜む棘に世良は背を竦めたが、天城は堂々としたものだ。
「仕方ないでしょう、外科医の指は繊細なんです。こんな極寒の地に居たら、私の手技が鈍ってしまう」
言って、世良の手を頬に押し当てた。
「スリジエ創設に欠かせない、ジュノの大切な役割、という訳だ」
世良は完全に硬直してしまう。
高階は、世良にとって尊敬に値する上司だが、天城との仲は最悪と言っていい。主義主張が相容れないのは仕方ないとしても、やたらと挑発するのだけは本気で止めて欲しい。
案の定、高階はむっとした顔になった。
「成程。外科医の指は繊細、ですか……」
「ビアン・シュール。私の言葉に二言はない」
気を取り直すように、一瞬笑んだ高階は突然、天城とは逆側の世良の手を取った。
「どういうつもりだ、クイーン?!」
天城が普段の余裕は何処へやら、声を荒げた。高階はにまりと笑う。
「私の手技が鈍ってもいけませんから。世良君に温めてもらおうかと」
「ジュノに触るな!」
「外科医の指は繊細だと、貴方が言ったんですよ」
確かに、二人が引っ付いているところを咎められて、世良の手をカイロ代わりにしているだけだと言ったのは天城の方だ。
言質を取られた天城が咄嗟に詰まった。
「指先くらい鈍っても、その小賢しいビッグマウスがあればどうにでもなるんじゃないですか、クイーン高階?」
「その言葉、そっくりお返ししますよ」
口元に歪んだ笑みを浮かべながら挑発し合う二人の間で、世良は、当事者の俺の気持ちはどうなってるんだろうと考える。
いや、どうもなる訳もない。
所詮、カイロだ。
意志など尊重されるはずがない、と思ったところで――
「とにかく、下らない建前は良い。折角の、ジュノとの二人きりの時間を邪魔しないでもらえるか。そう思うだろう、ジュノ?」
「業務時間中に公私混同するような、自覚の薄い上司にはほとほと迷惑してるんでしょう。そうですよね、世良君?」
「どうなんだ?」「どうなんですか?」と、相性が悪い癖に、こういうときだけは息がぴったりな二人に同時に水を向けられ、世良は先ほどの考えを撤回する。
これでは、カイロ扱いの方がマシだ――
どうしたものかと首を巡らせたとき、思いもかけない救世主が最悪な姿を伴って現れた。
「何をしている、お前達?!」
雷のような怒号に、世良は首を竦めたが、さすがの二人も世良からぱっと手を離した。
「佐伯病院長を30分も待たせた挙句、呼びに行った高階までミイラ取りがミイラか。お前ら、病院長を何だと思っている!」
佐伯外科の双璧の一人、黒崎だった。モンテカルロのエトワールと帝華大の阿修羅に両脇を固められ、大岡裁きならぬ黒崎裁きを受けた世良は最早自らの運命を呪うしかない。佐伯外科の首脳陣そろい踏みのこの状況下に何で自分が居合わせて居るのかがさっぱり分からない。
「別に、黒崎助教授自ら呼びに来なくても」
さらりと言った天城の言葉は、黒崎の怒りに更に油を注いだようだ。
「誰が、お前らなど呼びに来るか!ワシは今から出張だ!!」
「そうでしたね、お疲れ様です。お気をつけて」
「ふん」
卒なく頭を下げる高階に、黒崎は憤懣遣る方ない表情で立ち去っていく。
「では、黒崎教授も出発したところで……」
高階が黒い笑みを浮かべて世良を見、天城がそこに声を被せる。
「ジュノはどちらを選ぶのか、白状してもらおうか」
勘弁してくれ、と内心で叫んだところで目が覚めた。
「悪夢だ……」
世良は突っ伏していた机から顔を上げた。幸い、医局には誰もおらず、居眠りを見咎められる心配はないようだ。しかし、目覚めは最悪だった。夢の中まで二人の上司に振り回されるなんて、どういう因果なのだろうか?
「大丈夫かな、あの二人……」
カレンダーに目を遣る。
明日の日付に赤丸が付けられ、国際心臓外科シンポジウムとある。
大会の目玉である公開手術の執刀医の天城と、大会準備委員長にして前立ちを務める高階は東京だ。こう言うと協力関係にあるようだが、恐らく、二人は自身の思惑を賭けて火花を散らしていることだろう。そこに非常に困難な症例の患者が横たわる。居たところで、二人に挟まれて右往左往するしかないが、こうして遠くで心配しているならいっそ渦中に居たい気もする。世良は立ち上がり、仕事へと戻る。
去り際、窓を振り返り、遠い街の空に手術の成功を願って、そっとドアを閉めた。
このラスト、失敗だったかなって書いてから思ったけど(寝てても心配でうなされる夢オチにしようと思ったのに、この場面はそんなほのぼのネタに使えるようなヌルいシーンではなかった…)、まあ、取り合えず、そのままにしておこう(汗)
見方によっては、総受みたいな感じですけど、受が振り回されてるのを見るのが好きなので、天然な受が自分を取り合う人達を訳も分からず見るという構図にはしません。とにかく、困らせたい!(笑)
雪に突進していくわんこはこの季節の癒しですvvv
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