テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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――頭が痛い……。
紛れもない二日酔いだ。
身体を起こそうとしたが、右腕が重かった。まさか、酔って大事な商売道具を潰したのかと一気に目が覚めた。慌てて視線を動かすと、固まった腕の先には、すうすうと寝息を立てる柔らかい猫っ毛の頭が一つ――
途端に、昨夜のことが蘇ってきた。酔った勢い、一夜の過ち――所謂、そういうことだ。
枕にされている片腕はそのままで、自由になる首を巡らせる。薄い朝日の差し込む部屋は、かつて一度だけ訪れたことのある世良の下宿だった。
昨夜は、大学病院での研修を終え、来月から外部へと赴く世良達研修医1年生の壮行会だった。宴会の途中で酔い潰れて寝てしまった世良を介抱して、家まで送ってきたところまでは、特に邪心などなかった。
すっかり寝静まっている下宿の廊下を、ともすると崩れそうになる世良を支えるようにして歩き、部屋へと連れ込む。
「ほら、世良君、着きましたよ」
肩を叩いて告げると、世良は薄く目を開けた。
その場を認識した世良が何かをしようとしたらしく、突然、足を踏み出した。
しかし、覚束ない足取りでは上手く身体を支えることが出来ず、小柄な高階諸共、万年床の上に倒れこんだ。
「痛……」
「大丈夫ですか、世良君?」
布団が受け止めてくれたので、思ったほどの衝撃はなかった。
鈍いながらも身体を起こす世良の方も、大丈夫なようだ。
上になっていた世良が退かないことには起き上がれない高階は、のろのろと腕を立てた彼を見守る。ふと、目が合った。酔いで潤んだ世良の瞳が、間近い位置で、ぼんやりと高階を見つめている。
アルコールで痺れた脳の奥で何かが弾けた。
上気した頬の下、真っ赤に色付く唇に急速に惹き付けられ、異常な渇きを覚える。
「高階……先生……」
硬直した静寂を破ったのは、か細く啼くような世良の掠れた声だった。
「世良、君……」
微かに開いた唇に誘われた。
「んっ……」
急速に引き寄せられ、柔らかい感触を味わったら、もう止まらなかった。
欲する気持ちのままに、合わせ目に舌を滑り込ませる。
小さく跳ねる世良の背ごと引き寄せた。舌の縁をなぞる。世良も酔いで判断が鈍っていたのだろう。求められるままに不器用に動かして、高階の舌を舐め返してきた。
「……ふっ……」
上手く息を継げないのか、角度を変える度に世良が苦しげな吐息を漏らす。
熱の篭もるそれを逃すのすら惜しく、更に強く抱き締めて身体を密着させた。後ろ頭を押さえ付け、零れる息さえ呑み込んだ。
「はぁっ……、はぁ……」
「世良君……」
口内の隅々まで味わい尽くして、漸く解放すると、世良は幾度も浅い呼吸を繰り返した。その湿っぽい甘さが高階の首筋、耳元に強くかかる。
堪らず、高階はその肩を押し遣った。そのまま自らの身体も勢いをつけて、半回転させる。世良は簡単に天井を仰ぐように転がり、高階はその上位から世良を見下ろした。呑み込みきれなかった唾液に塗れた口元がだらしなく開いている。しかし、その充血した目は高階を拒んではいなかった。
微かに身動ぎすると、世良の身体の変化に気づく。
どうやら、口付けだけで随分と感じてしまったらしい。
「若いですねぇ」
思わず苦笑が漏れたが、高階にとっても他人事ではなかった。彼が自分とキスして熱を昂ぶらせたと思うだけで堪らなくなる――
「世良君、もう少しだけ、私に付き合ってくれませんか?」
もう少し、で終わるのかという疑問が頭を掠めたが、目を逸らしながらも、世良が小さく首を縦に動かしたのを見た途端に、理性は完全に吹き飛んだ。
「ん……」
「お目覚めですか、世良君?」
腕の重石がこてんと落ちた。
寝返りを打った拍子に外れてしまったようだ。寝息が不意に途切れる。ぼんやりと自分を見る世良に、高階は囁きかけた。世良が息を飲む。
「た、高階先……っ?!これって……」
「何と言うか、弁解もしようのない事態ですねぇ」
起き上がりかけた世良は、腰を押さえて硬直する。仮に記憶が微塵もなくても、起こったことの大体の事態は呑み込めたことだろう。
「あれって……、夢じゃ、なかっ……」
切れ切れの掠れた声に、高階は陽気に言った。
「夢ですよ」
「え……?」
「世良君は夢を見ただけです。忘れてしまいなさい」
高階は有無を言わせぬ口調で言い切った。
――酔いが見せた夢など、断ち切ってしまうのが一番良い……。
「嫌です」
言葉通りに処理しようとした高階は、きっぱりとした言葉に思考を止める。挑むように否定した張本人は、辛そうに身体を庇いながら起き上がった。
「高階先生に迷惑がかかるって言うなら、他言もしないし、二度と話題にも出しません。でも、忘れるかどうかは俺が決めることです」
かつて高階の迷いを振り払った真っ直ぐな瞳がそこにあった。
「俺は絶対に昨夜のことを忘れません。俺の心は、上司であっても変えることは出来ません」
「世良君……」
「すみません……。別に、高階先生を困らせたい訳じゃなくて……」
「いえ……」
世良は真っ赤になって黙り込む。
高階は目を見張る。困る訳がない――
「好きですよ」
「だから、高階先生を好きなのは、俺の勝手で……。え?」
ぼそぼそ言いかけた世良の動きが止まった。
恐る恐るといった表情で、高階を振り返る。高階の内側に、世良への愛しさが広がる。この若者はいつもこうして、後先考えずに真っ直ぐな正論を吐いては我に返って後悔するのだ。
だが、その無鉄砲さはいつも高階の迷いを払ってくれる。
「昨晩、世良君に見えた感情は、お酒の所為ではなかったんですね」
「どういうことですか……?」
半ば自棄になったような口調が年齢不相応で、やたらと可愛らしく感じられる。
「世良君の目が私を好きだとはっきり言っていました」
絶句した世良は瞬きを繰り返した後、咄嗟に腕で目を覆った。
「隠すことはないでしょう」
「見ないで下さい……!」
「今更、言われなくてもずっと知っていましたよ」
自分の言葉に、ふと全てが腑に落ちる。
そう、互いが同じ思いを抱えていることなど疾うに知っていた。
「全く、惜しいことをしました。もっと早くに伝えていれば、暫くは近くに居られたものを……」
「え?別に、今からでも……」
「世良君は来週から外部研修でしょう」
「あ……」
「確か、がんセンターでしたよね。忙しくなりますよ」
「でも、桜宮市内には居る訳ですし、何処かに引っ越したりする訳でも……」
「いいえ」
「え……?」
高階はそっと世良の頭を撫でた。置かれた状況を掴もうと、忙しく目を動かす姿は飼い主のご機嫌を伺う犬を連想させた。
「余計なことは考えずに、沢山の経験を積みなさい。それが外科医として世良君を大きくします」
「高階先生……」
それが一番だと高階は確信していた。寂しさはあるが、1年後に世良は得がたい宝を抱えて戻ってくるだろう。
「但し、ちゃんと私のところへ戻ってくること」
「勿論です!」
大きく頷いた世良の頬に、高階は優しく口付けた。世良が笑顔を浮かべて、高階に抱きつく。縺れるように倒れこんだ二人は、束の間の逢瀬を楽しむように再び触れ合った。
高世良はこういうところで、微妙にタイミング逃してそう。
次回、天城先生登場です。
紛れもない二日酔いだ。
身体を起こそうとしたが、右腕が重かった。まさか、酔って大事な商売道具を潰したのかと一気に目が覚めた。慌てて視線を動かすと、固まった腕の先には、すうすうと寝息を立てる柔らかい猫っ毛の頭が一つ――
途端に、昨夜のことが蘇ってきた。酔った勢い、一夜の過ち――所謂、そういうことだ。
枕にされている片腕はそのままで、自由になる首を巡らせる。薄い朝日の差し込む部屋は、かつて一度だけ訪れたことのある世良の下宿だった。
昨夜は、大学病院での研修を終え、来月から外部へと赴く世良達研修医1年生の壮行会だった。宴会の途中で酔い潰れて寝てしまった世良を介抱して、家まで送ってきたところまでは、特に邪心などなかった。
すっかり寝静まっている下宿の廊下を、ともすると崩れそうになる世良を支えるようにして歩き、部屋へと連れ込む。
「ほら、世良君、着きましたよ」
肩を叩いて告げると、世良は薄く目を開けた。
その場を認識した世良が何かをしようとしたらしく、突然、足を踏み出した。
しかし、覚束ない足取りでは上手く身体を支えることが出来ず、小柄な高階諸共、万年床の上に倒れこんだ。
「痛……」
「大丈夫ですか、世良君?」
布団が受け止めてくれたので、思ったほどの衝撃はなかった。
鈍いながらも身体を起こす世良の方も、大丈夫なようだ。
上になっていた世良が退かないことには起き上がれない高階は、のろのろと腕を立てた彼を見守る。ふと、目が合った。酔いで潤んだ世良の瞳が、間近い位置で、ぼんやりと高階を見つめている。
アルコールで痺れた脳の奥で何かが弾けた。
上気した頬の下、真っ赤に色付く唇に急速に惹き付けられ、異常な渇きを覚える。
「高階……先生……」
硬直した静寂を破ったのは、か細く啼くような世良の掠れた声だった。
「世良、君……」
微かに開いた唇に誘われた。
「んっ……」
急速に引き寄せられ、柔らかい感触を味わったら、もう止まらなかった。
欲する気持ちのままに、合わせ目に舌を滑り込ませる。
小さく跳ねる世良の背ごと引き寄せた。舌の縁をなぞる。世良も酔いで判断が鈍っていたのだろう。求められるままに不器用に動かして、高階の舌を舐め返してきた。
「……ふっ……」
上手く息を継げないのか、角度を変える度に世良が苦しげな吐息を漏らす。
熱の篭もるそれを逃すのすら惜しく、更に強く抱き締めて身体を密着させた。後ろ頭を押さえ付け、零れる息さえ呑み込んだ。
「はぁっ……、はぁ……」
「世良君……」
口内の隅々まで味わい尽くして、漸く解放すると、世良は幾度も浅い呼吸を繰り返した。その湿っぽい甘さが高階の首筋、耳元に強くかかる。
堪らず、高階はその肩を押し遣った。そのまま自らの身体も勢いをつけて、半回転させる。世良は簡単に天井を仰ぐように転がり、高階はその上位から世良を見下ろした。呑み込みきれなかった唾液に塗れた口元がだらしなく開いている。しかし、その充血した目は高階を拒んではいなかった。
微かに身動ぎすると、世良の身体の変化に気づく。
どうやら、口付けだけで随分と感じてしまったらしい。
「若いですねぇ」
思わず苦笑が漏れたが、高階にとっても他人事ではなかった。彼が自分とキスして熱を昂ぶらせたと思うだけで堪らなくなる――
「世良君、もう少しだけ、私に付き合ってくれませんか?」
もう少し、で終わるのかという疑問が頭を掠めたが、目を逸らしながらも、世良が小さく首を縦に動かしたのを見た途端に、理性は完全に吹き飛んだ。
「ん……」
「お目覚めですか、世良君?」
腕の重石がこてんと落ちた。
寝返りを打った拍子に外れてしまったようだ。寝息が不意に途切れる。ぼんやりと自分を見る世良に、高階は囁きかけた。世良が息を飲む。
「た、高階先……っ?!これって……」
「何と言うか、弁解もしようのない事態ですねぇ」
起き上がりかけた世良は、腰を押さえて硬直する。仮に記憶が微塵もなくても、起こったことの大体の事態は呑み込めたことだろう。
「あれって……、夢じゃ、なかっ……」
切れ切れの掠れた声に、高階は陽気に言った。
「夢ですよ」
「え……?」
「世良君は夢を見ただけです。忘れてしまいなさい」
高階は有無を言わせぬ口調で言い切った。
――酔いが見せた夢など、断ち切ってしまうのが一番良い……。
「嫌です」
言葉通りに処理しようとした高階は、きっぱりとした言葉に思考を止める。挑むように否定した張本人は、辛そうに身体を庇いながら起き上がった。
「高階先生に迷惑がかかるって言うなら、他言もしないし、二度と話題にも出しません。でも、忘れるかどうかは俺が決めることです」
かつて高階の迷いを振り払った真っ直ぐな瞳がそこにあった。
「俺は絶対に昨夜のことを忘れません。俺の心は、上司であっても変えることは出来ません」
「世良君……」
「すみません……。別に、高階先生を困らせたい訳じゃなくて……」
「いえ……」
世良は真っ赤になって黙り込む。
高階は目を見張る。困る訳がない――
「好きですよ」
「だから、高階先生を好きなのは、俺の勝手で……。え?」
ぼそぼそ言いかけた世良の動きが止まった。
恐る恐るといった表情で、高階を振り返る。高階の内側に、世良への愛しさが広がる。この若者はいつもこうして、後先考えずに真っ直ぐな正論を吐いては我に返って後悔するのだ。
だが、その無鉄砲さはいつも高階の迷いを払ってくれる。
「昨晩、世良君に見えた感情は、お酒の所為ではなかったんですね」
「どういうことですか……?」
半ば自棄になったような口調が年齢不相応で、やたらと可愛らしく感じられる。
「世良君の目が私を好きだとはっきり言っていました」
絶句した世良は瞬きを繰り返した後、咄嗟に腕で目を覆った。
「隠すことはないでしょう」
「見ないで下さい……!」
「今更、言われなくてもずっと知っていましたよ」
自分の言葉に、ふと全てが腑に落ちる。
そう、互いが同じ思いを抱えていることなど疾うに知っていた。
「全く、惜しいことをしました。もっと早くに伝えていれば、暫くは近くに居られたものを……」
「え?別に、今からでも……」
「世良君は来週から外部研修でしょう」
「あ……」
「確か、がんセンターでしたよね。忙しくなりますよ」
「でも、桜宮市内には居る訳ですし、何処かに引っ越したりする訳でも……」
「いいえ」
「え……?」
高階はそっと世良の頭を撫でた。置かれた状況を掴もうと、忙しく目を動かす姿は飼い主のご機嫌を伺う犬を連想させた。
「余計なことは考えずに、沢山の経験を積みなさい。それが外科医として世良君を大きくします」
「高階先生……」
それが一番だと高階は確信していた。寂しさはあるが、1年後に世良は得がたい宝を抱えて戻ってくるだろう。
「但し、ちゃんと私のところへ戻ってくること」
「勿論です!」
大きく頷いた世良の頬に、高階は優しく口付けた。世良が笑顔を浮かべて、高階に抱きつく。縺れるように倒れこんだ二人は、束の間の逢瀬を楽しむように再び触れ合った。
高世良はこういうところで、微妙にタイミング逃してそう。
次回、天城先生登場です。
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