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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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「サッカー部ってハグしなれてるよね」なんて話題を皮切りに、なお様とサッカー談義で盛り上がり(一方的にご教授いただいたのですが)、「ネタはあるけど、なかなか描けないので、よかったら書きませんか?」と合作の提案をもらいました。
以下、「世良ちゃんはディフェンダーだから、脛に結構古傷があるはず」というなお様のネタを有り難く頂戴し、私が勝手に想像を膨らませて書いたSSです。

拍手[5回]


 荒い息を吐きながら、世良の身体がマットレスに沈む。
 その傍らで、今中も快感の余韻が去るのを待つ。
 ぼんやりしていたら、隣からすうすうという寝息が聞こえてきて、はっとした。慌てて起き上がり、世良を呼ぶ。しかし、嫌だというように顔を背けられ、仕方なく今中はその身体を抱え上げた。
 そのままバスルームへ直行する。上背も低く、全体に細い世良は驚くほど軽い。難なく運んで、湯を張りながらバスタブに漬ける。
 眠くて仕方ないのか、世良は湯船に寄りかかってうとうとし始めた。そんなに量は飲んでないはずなのだが、元々余り強くないのだろう。こうなると思ったから、直前で抜こうとしたのに、その瞬間、「駄目……。中に、ね」などと囁きながら腰を沈められたら、抗う術などなかった。今中はそっと世良の足を割り、奥に指を滑り込ませる。
 こんなになる前に休めば良いのに。
 そんなに強くない酒を限界まで飲んで、激しく今中を求めて来る。
 この時間に、この人はちゃんと満たされているんだろうか――
「……何、寝込み襲ってるの?」
 可愛くない口調に、そちらに目を遣ると、まだ幾分ぼんやりした世良が目を開けていた。古い官舎のバスルームのタイルはひんやりと冷気を放っているし、最大まで捻っても蛇口から迸る湯量は、この季節はどうしても少なくなってしまう。寒くて目が覚めたのだろう。
「世良先生が寝ちゃうから、洗ってただけでしょう。そんなこと言うなら、自分でやってください」
 言いながら、冷えた背にシャワーをかけてやる。
 欠伸を噛み殺しながら世良が慣れた仕草でそこに触れる様子は、直視出来ずに目を逸らした。
「ちょっと浸かってていい?」
「また寝ないで下さいよ」
 いい感じにお湯も溜まってきて、世良は気持ち良さそうに身体を伸ばした。
 少し尻をずらして、足を縁に乗せる。その脛を見るともなしに見て、ぎょっとした。そこには無数の傷跡があったからだ。
「ああ、これ?僕、大学サッカーでディフェンダーやってたからさー」
 突っ込んで聞けずに黙り込んだ今中に、世良は事も無げに言う。
 今中もスキーをやっていたので、骨折して入院したこともあるのだが、この様子では縫うレベルの怪我も数箇所はありそうだ。
 そういえば、地元チームのサポーターをやっていた大学病院の同期が『サッカーはラフプレイもありの格闘技だ』などと言っていた。
 自分の気持ちには特にさらっと嘘を吐ける人だけど、色々な情報を総合する限り、本当なんだろうと今中の勘が結論を出す。
「でも、此処までの傷だと今でも痛むでしょう?」
 さすがに大学病院で腹部外科に所属していたときには耳にすることはなかったが、極北に来てから、昔の傷や手術痕が痛むと言う患者の悩みは何度も聞いている。
 世良の傷跡は正にそんな様相を見せていた。
 しかし、そんな今中の反応は世良には意外だったようだ。
 恐らく、本人の中では、傷跡を見ることも、それが痛むのも当り前の日常になっていたのだろう。
 心配そうな今中をきょとんと見て、幾度か瞬きをした。
「まあ、梅雨時とかはどうしてもねぇ。でも、しょうがないし」
 そのとき、今中の脳内に妙案が浮かんだ。厳密には、数日前に来院した患者が楽しそうに話していた雑談を思い出しただけなのだが。やはり、10年ほど前に手術した痕が時々痛むと言う、今年75歳になる彼女は来月老人会の仲間と湯治に行くのだと言っていた。
「富良野の辺りにいい温泉があるらしいんですよ。病院も日曜日が定休日になったことだし、日帰りで行きませんか?」
 世良は、大袈裟だなぁ、と一笑に伏した。
「でも、古傷が痛んだら、楽しい思い出まで痛く感じられてしまうでしょう」
 世良の動きが止まった。その目がまじまじと今中を捉える。そして、次の瞬間――
「痛っ!」
 世良の足が、今中の太腿を唐突に蹴り付けていた。
「何するんですか?!」
 悶絶する今中を横目に、世良は足を、お湯がいっぱいになった湯船に沈めた。そして、ぼそりと呟く。
「最近、めっきり痛くないよ。誰かさんのお節介のお陰でね……」
「え……?」
「知ったようなこと言うから、ちょっとツッコんだだけじゃない。全然本気じゃないよ」
「本気か本気じゃないかの問題じゃありません!サッカー部に所属してた人の脚力で他人を蹴らないで下さい!!」
 そんな今中の抗議を聞いているのか、いないのか、世良はすっかりいつもの調子を取り戻して、けたけた笑っている。そして、出し抜けに、にっと笑みを作って言った。
「いいじゃない、温泉行くんでしょ。そこで治せば」
「打ち身に温泉が効く訳……、え……?」
「どうせなら、土曜の夜から行って、個室の露天風呂とか借りて、地酒でも飲みながら、ゆっくりしっぽり楽しもうか」
 予約は任せたよー、なんて言いながら、湯船の栓を抜く世良に、気持ちが温かくなるのを感じながら、ふと嫌な予感が胸を掠める。
「……それじゃ、また、今日みたいな流れになるの、確定じゃないですか?!」
 酔っ払った世良を半ば介抱しながらの夜を想像して青くなる今中に、世良が、何時までもそんなとこに居ると風邪ひくよ、とばしゃりと頭からお湯をかけた。


冒頭に書いた通り、ネタ提供・なお様です。なお様のpixivのアカウントはこちらになります。
うちみたいなマニアなサイトより遥かに知名度高いと思いますが、凄く繊細で緻密な絵を描かれる素敵な方ですvvv
あ、でも、SSの文責は藍河にありますので、先方にはご迷惑にならないようお願い致します。
しかし、なお様のために天ジュノを書くつもりで、一番に今世良が出来てしまう辺りが私の限界なのでしょうか…?
なお様には他にも素敵なネタを幾つか提供いただいてるので、私なりのテイストを入れつつ、お目見えさせたいなぁと思っております。見ていただけたら嬉しいですvvv
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