テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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「僕、今、モンテカルロなんだけど!」「エイプリルフールだからって、直ぐバレる嘘吐かないで下さいよ」「いや、本当だって」っていう今世良考えてたんだけど、いや、これは本当だろうと思って、桜ファイナルに突っ込みました。
洒落の利いた嘘でヤラれたって言わせるのは無理なので、私は、真実ではないけれど、世良ちゃんが幾度も願った可能性の物語を紡ぎます。
題して、「嘘スリジエ最終回」――タイトルセンスなさすぎて、聞いた瞬間、洒落の聞いた嘘なんて、無理だと分かるね。
洒落の利いた嘘でヤラれたって言わせるのは無理なので、私は、真実ではないけれど、世良ちゃんが幾度も願った可能性の物語を紡ぎます。
題して、「嘘スリジエ最終回」――タイトルセンスなさすぎて、聞いた瞬間、洒落の聞いた嘘なんて、無理だと分かるね。
頼りない背が、ぺたんとしたバッグパックを下げ、よろよろと遠ざかって行く。
ホテルのロビーを一望できるテラス風の席で、マリツィア・ド・セバスティアン・シロサキ・クルーピアは、傍らに座る男に目をやる。
色つきの眼鏡をかけ、頬杖をついて、のんびりとカフェオレに口をつけているように見えるが、その実、暫くカップの位置が止まっているのは気づいている。
「これで、この三文芝居は終わりな訳?」
「随分な評価だな。貴公子様のお気には召さなかったか?」
モンテカルロ・エトワールこと天城雪彦は、苦笑しながらカップをソーサーに戻す。
その動作こそ、何回目だろうと思いながら、マリツィアは全く違うことを口にする。
「突然、病院の設計をやめて、自分が入る予定の墓をデザインしろなんて言われたときにはどうしようかと思ったよ」
天城は答えずに、焼き菓子を皿に運んだ。
「突然、植林を始めたり、カジノを抱き込んで観客全てをエキストラに仕立て上げたり――一体、どんなスターが舞台に上がるのかと思えば……」
「わざわざ、日本から呼んだんだ。それなりの扱いは必要だろう」
素っ気無い口調で言いながらも、何時までも彼の消えた方角に視線を注いでいる天城を見ていると、少し意地の悪いことを言いたくなる。
「こんなことして、彼が後を追っても知らないからね」
「まさか」
天城は微かに口元を歪めた。
「ジュノは革命の魂を受け継いだ人間だ。為すべきことも果たさずに、消えることなどありえない」
『ジュノ』――青二才、と称しながら、その呼び名にはいつも深い思いが込められている。
少なくとも自分は、天城の生き方に干渉できたことは一度もない。
「だとしても、もし、彼が事実を調べたり、ユキヒコの面影を追ってモンテカルロに住み着いたりしたら、どうするつもりだった訳?」
口裏を合わせたと言っても、せいぜい、オテル・エルミタージュの従業員と、グラン・カジノの常連たちくらいのものだ。
名誉市民の国葬なんて、具体的な日付を確認して新聞でも探されたら、一瞬でアウトだ。
「ジュノがそこまでの粘りを見せるのなら、それは、私に再びあの国の土を踏み、桜の木を植えろという天啓だろう。だが、やはり、そうはならなかった……」
マリツィアは一瞬だけ天城を見て、直ぐ様目を逸らした。
ユキヒコはどうなって欲しかったの、などという質問がどのくらい野暮なものかということは、最早尋ねる必要もなかった。
「ジュノ一人ではハートセンターは創れない。これでジュノだけは呪縛から解放される。潮騒の責めを受けるのは私一人で十分だ」
これで良い、と天城は儚い笑みを見せる。
その横顔に浮かぶ憂いは、いつも快活に笑っていた天城からは一度も感じたことのないもので、ふとマリツィアは、天城の植えた、風が吹く度に降るように花弁を散らすあの木を連想した。
タクシーを降りた世良は、薄手のコートを海風にはためかせながら、桜宮岬を歩く。碧翠院・桜宮病院――通称・でんでん虫は一度燃え落ち、その跡地にそのままの姿で再び蘇ったのだという。
その工事の発注が天城雪彦名義であったということを高階が教えてくれた。
だが、その幻影もまた、炎の中に消えた。
この辺りを歩くのは23年振りだった。
数年前から、出張再建請負人などと称して東城大へ出入りしてきたが、何となく、此処へは足が向かなかった。
――打ち砕かれた夢が完全に潰えたことを思い知らされた場所。誰よりも慕っていた人に別れを告げられた場所。
今回で一先ず、直接東城大へ足を運ぶのは最後になる。
そう思って初めて、行ってみようかという気になったのだった。
岬の突端は、世良が覚えている時代と殆んど変わっていなかった。
ただ、遠目にもはっきり分かる、1本の桜が満開の花を咲かせて、そのシルエットを浮かび上がらせていた。
世良は、その成長に、流れた年月を思いながら、桜へと近づく。
ふと、そこに、桜を見上げる人の姿があるのに気づいた。
その背が、かつて、いつも追いかけた人のそれと一致する。
――まさか……。
胸が早鐘を打つ。
――そんな……、そんなことがある訳が……。
彼が振り返る。
そして、世良を見て微笑む。
これは、夢だろうか……?
その唇が開き、待ち望み、恋焦がれ、切なく願い続けたその呼び名を――
「ジュノ」
「どう……して……?」
視界は涙で霞み、何処まで声が出たかも分からない。
けれど、世良の聞きたいことは分かったのか、その人は直ぐに答えた。
「このところ、桜の咲く季節には、毎年来ていたんだ。あの桜はどうなったか、とね。そうしたら、今回は、ジュノに会えた」
それを聞いた世良は、自嘲めいた気分になった。
――こんなにも、望み続けた人との接点は結局、この桜宮にしかなかったのだ。
憎み、疎み、避け続けてきたこの地にしか――
そのとき、天城がこちらに向かって足を踏み出し、次の瞬間、世良は天城の腕の中に居た。
「天城……先生……」
「ジュノ、よく頑張った。出会えたということは、私たちの運命が再び交わったのだろう。今度は一緒に行こう、ジュノの望むところに。グラン・カジノでピンク・シャンパン三昧の日々でも、モンテカルロ・ハートセンターで共に勤務するでも構わない」
耳元で囁かれる言葉は、未だに現実とは思えない。
亡くなったのだと、聞かされた。
なのに、彼は生きている。
この背に回された強い腕が幻だというのなら、この世界の何もかもが実体などではありえない――
「俺は……」
望みを口にしようとして、世良の言葉が止まる。
天城が返事を促すように、少し顔を上げ、軽く首を傾げた。
世良の両目から涙が溢れた。
望みなど、たった一つだった。
この人の作ったものの下で、その花を一生守りたい――なのに……。
「すみませ……、天城、せんせっ……」
「何だ?どうした、ジュノ」
宥めるように頬に触れる手の平。
こんなに、全てが、欲しい、のに……。
「ありがとうございます。でも、駄目なんです。今の僕には守る場所がある。僕は、そこに根を張ると決めたんです」
全てを捨てて縋りたいと思いながら、他に大切なものを持ってしまった自分の心を、世良は悲しく口にする。
23年前であれば、きっと躊躇うことなどなかったはずなのに……。
だが、天城は事も無く言った。
「ならば、私がそこに行けば良い」
「無理ですよ!だって、あそこは寒いし、施設だって古くて、まともな手術も出来るかどうか分からないし、あの市に至っては財政破綻していて……」
天城は世良の目の前で、人差し指を立てる。
強烈な既視感。今から天城が口にする言葉を世良は知っている。そして、自分の答えも。
「何度同じことを言わせるんだ、ジュノ。私が聞きたいのは、シンプルな答えだと言ったはずだ。ウイ・ウ・ノン?」
「ウイ」
「ビアン」
かつてと同じ遣り取りを繰り返し、天城は陽気な笑顔を見せる。世良も、何だかむず痒いような気持ちで曖昧な笑顔になる。
「ジュノ、その地にも桜は咲くのかな?」
『桜』の意味するものを正確に捉えられないながらも、世良は頷く。どちらだとしても、答えは同じだと気づいたからだ。
「はい。ここより少し遅れますが、必ず」
「もう一度、この儚くて美しい花を見ることが出来るのか。ジュノと一緒に」
「天城先生……」
ふわりと風が吹く。桜が舞う。
それを目で追う天城に、世良は目を奪われる。
世良は、そっとその手に触れた。桜に気を取られている天城は気づかない。けれど、世良は、それには構わずに、奇跡を行使する長い指を強く握り締める。
――桜の精のようなこの人が、二度とあの花のように消えてしまわないように。
スリジエ連載最終回残り数話の死亡フラグが立ち始めた辺りから、きっとそう思わせてひっくり返すに違いないとずっとこんな展開考えてました。この設定でSSまで書いた。
最終回読んでも、いや、どっかに何か隠されてるのかも、と目を皿のようにして読み返した。自分の思い込みが怖い…。
不親切ですが、後半は、 スリジエ完結記念2015の設定を使ってます。
極ラプ後に世良ちゃんが高階さんに東城大の再建を手伝わせて欲しいと申し出て、再建請負人として東城大を立て直して、最後の訪問のときに、天城先生の植えた桜の木を見に行く。
あの桜の木も、全然他シリーズに出てこないので、枯れた感満載ですが。
というか、単行本だとモンテカルロの桜並木に全部もってかれて、たけるん先生も忘れてそう。
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