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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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村上先生の本を買いました。
密林さん冷やかしに行ったら、紹介文が世良ちゃんそのもので気がついたらポチってた…。
まだちょっとしか読んでないのですが、経歴部分で既に大分面白くて、この人凄ぇってなってます。
正に、リアル世良ちゃん。っていうか、本物の再建請負人なんだけどさ…。

まあ、それはともかく、久々に高世良です。
スリジエで、世良ちゃんが辞表出した後。
今回と次回は正にタイトル通りで。

拍手[3回]



 高階は手持ち無沙汰に立ったまま、刻一刻と深くなっていく宵闇の中に居た。
 待ち人はまだ現れない。
 いや、待っているのは高階だけで、彼が此処へ帰ってくるかは分からない。
 それどころか、二度と此処へは戻って来ない可能性もあった。
 それでも――
 待たなければならない。
 会わなければならない。
 諦めたが最後、彼との糸は全て切れる。
 再び関係を結ぶことは愚か、話すことすら困難になるだろう。
 ――まさか、こんなことになるとは……。
 上着の内ポケットを探ると、撚れた紙の感触。
 世良が高階に差し出したそれは、師弟の関係の解消と同時に、共に歩んできた道の決別を意味していた。
『俺はただ、天城先生のさくら並木を見てみたかった』
 そう言った世良が天城に心酔していたことは、佐伯外科に所属するスタッフならば、誰でも知っていることだった。
 羨望を湛えて名を呼ばれ、尊敬を込めて後を付いて回る世良を見ていれば、あの男だって絆されたかも知れない。
 考えてみれば、自分たちの関係だって、酔った勢いから始まったようなものだった。
 あれだけ始終一緒に居たのだ。
 杯を重ねる機会くらいはあっただろう。
 そして、どちらからともなく、相手を受け入れる――
 行為に蕩ける世良を思い出すのは容易だったが、その相手があの男だと思うと、嫌悪感に頭痛がしてきた。
 ――何で、選りにも選って……。
 自分の保身しか考えない、無能な人間たちは帝華大で腐るほど見てきたが、思想全てを許容できないという意味では、天城は高階にとって唯一の人間だった。
 喜んで差し出す訳もないが、世良が本気で望むなら諦めもついただろう。
 だが、天城雪彦という存在に対してだけは無理だった。
「あんな男に渡すくらいなら……」
 思わず口に出してみて、愕然とする。
 ――自分は今、何を考えた?
 本気か、と自問自答してみる。
 だが、ゆっくりと自分の心と向き合う時間はなかった。
 近づいてくる足音が聞こえ、高階の考えを断ち切る。
 僅かな躊躇いが高階の後ろ髪を引く。
 だが、迷ってる暇はなかった。
 十分に距離が縮むのを待って、高階は真っ暗な夜道へ足を踏み出す。
「え……?!」
 ぎょっとしたように歩が止まる。夜風に混ざって、微かなアルコールの匂いがした。高階は道を塞ぐように立ちはだかる。
「高階、先生……」
「少し話しましょうか、世良君?」
 世良は力なく首を振った。
「話すこと、なんて……」
 高階を避けて自宅に戻ろうとする世良に、すれ違い様声を投げる。
「随分好き勝手言ってくれたものです。でもねぇ、世良君、天城雪彦という人間が日本を去らざるを得なくなったのは、君の所為でもあるんですよ」
「そんなこと、分かって……」
 言いかけた世良の言葉を遮る。自分も含めた、この国の医療が駄目だ、だの、あの職場の人間関係が悪い、などという、有耶無耶な責任問題で済ませる気はなかった。例え、その言葉の毒が悉く自らに返ってくるのだとしても――
「佐伯病院長は、東城大の救急センターと初期研修システムを彼に統治させてもいいと伝言した。もし、そうなっていれば、今の東城大を牛耳っていたのは天城先生だったでしょう」
 その言葉に、世良は目を見開く。その反応で、世良自身も伝言を届けなかったことを後悔しているのだと知れた。
「でも、それは、高階先生が……」
「私が命令したから何です?君が本当に彼のためを思うなら、伝えるべきだった。けれど、君はそうしなかった。君だって同罪です」
 世良の表情が歪む。
「君にはもう、あの男を追いかける権利などないんですよ」
 ぼろぼろと世良が涙を零した。
 その唇が何かを言おうと震える。
「それでも、俺は……、あの人をっ……」
 搾り出すような言葉は高階の神経を逆撫でする。どうして、彼なのだと……。
「あの男にも抱かれたんですか?」
「……?!」
 息を飲む音。しかし、世良は強く首を振った。
「そんなこと、してません……!俺は、俺は……、今も、高階先生が……」
 その言葉は嘘ではないと思えた。
 けれど、和解して心を通わせ合うには、全てはもう、拗れ過ぎていた。
「そんな話、信じられると思いますか?」
 世良はまた、首を振る。
 今の自分が、高階より天城を選んでいるも同然なのは、世良にも分かっているのだろう。
「中に入りましょうか」
 飲み会帰りらしい、通りがかりの学生の好奇の視線を受けて、高階が言った。
「……」
 世良が頷く。黙ったまま、自分の部屋へと足を進めた。


そして、この後へと続く。
しんどいけど、エトワール失墜の最大要因はやっぱりここの世良ちゃんの裏切りだと思うんだよなぁ。
結局、世良ちゃんは高階さんの命令に背かなかったんだよね。
あの3人は、三人三様に選ばないことで全てを失ってる気がする…。

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