テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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――それはお前と私の両方に忠実であろうとして四苦八苦している、二股忠犬のジュノに教えてもらうがいいさ。
そのときは、嫌味でも言うつもりか、と思った。
間違いなく、世良は天城に心酔している。
高階の背広の内ポケットの中の辞表は、共に失墜する覚悟だ。
渡海と天城の居ない東城大には留まる理由はないと言ったのは、世良自身ではないか。
自分など、取るに足らない存在だと――
思惑に沈んでいるうちに、いつか見た世良の下宿がそこにあった。
君は外科の神に見込まれたのだと逃亡しようとした世良に伝えた、そして、言われなくても君の気持ちは知っていたと口にし、思いを確かめ合った場所。
「辞めるなんて、許されない……」
部屋に上がったところで思わず零した言葉に、世良はびくりと肩を震わせた。高階は乱暴にその身体を後ろから掻き抱いた。
「嫌です……っ!」
「君にそんなことを言う権利があると思っているんですか?恋人である私を裏切ろうとしている君に」
「俺は、ただ……っ」
天城先生の桜並木を見てみたかった――世良はそう言った。
けれど、それは高階が断固阻止しようとした医療の未来の形の一つだ。
「辞めさせてあげましょう。但し、君の言葉が本当だったなら、の話です」
高階は茫然としている世良の足を払った。
「うわっ」
不意を衝かれた世良は、畳の上に倒れ込む。
「知ってますか?陰部は相手の形に変わるものなんですよ」
高階の言葉に、世良は戸惑うような表情を見せた。
「今からそれを確かめます」
正直、高階自身にも、自分が何をしたいのか良く分からなくなっていた。
もう一度、世良を抱いたところで、彼が自分のところに戻ってくる訳がない。むしろ、こんなに狭量な人間かと軽蔑される可能性の方が高い。
それでも、この愛しい相手をあの男のところに笑って送り出すことなど出来なかった。傷でもいい、軽蔑でもいい、最早それしか与えることが出来ないのなら、彼の中に徹底的な負の感情を植えつけてやろうと、高階の一部が残酷に息巻いていた。
「天城先生はそんな人じゃないし、俺もそんな気持ちになったことはありません……」
世良のベルトにかけた手を掴まれたが、高階はそれを振り払った。
「だから、具合を見て確かめようとしているんです。さっさと終わらせれば解放されますよ」
ファスナーを下ろし、後孔に指を滑り込ませると、世良の身体がびくりと跳ねた。
「高階先生は、俺を信じてくれないんですか?」
痛々しい声だった。
「今の君の何処に、信じるに値するものがあると言うんです?」
言い切った高階を見た世良に、絶望の表情が浮かぶ。
嫌えばいい。
憎めばいい。
どうせ、高階を捨てて去っていくつもりなのだ。
そして、天城を追うのだろう。尊敬と羨望を一心に湛えた眼差しで見つめながら。熱っぽい声で呼びかける。もう一度、桜の木を植えましょう、と。
世良の声なら、届くかも知れない。
あらゆる希望を打ち砕かれ、失意の果てに帰国という道を選んだあの男であっても。
実際、一度、世良の思いは通じたのだ。だからこそ、彼はこの桜宮に現れた――
「うぁ……、痛っ……!」
世良の悲鳴に、我に返った。
潤いもなく、いきなり複数本の指を捻じ込まれれば、痛みを感じて当然だろう。だが、高階には、止めるという選択肢も、加減してやるという自制心も最早失われていた。
「ああっ」
「その声、あの男にも聞かせたんですか?」
「だから……」
高階は乱暴に、世良の好いところを擦り上げる。激しい快感に、世良は嬌声を上げて身体を震わせた。
嘘など、聞きたくない――
「このいやらしい身体で、誘ったんではないですか?」
高階は指を引き抜き、自身の屹立を宛がう。そのまま、一気に貫いた。
「うあぁ……、んぐっ」
「さすがに、階下に聞こえては困りますので」
口を塞がれた世良は痛みに悶える。
「でも、痛さだけじゃないですよねぇ」
「……うぅ……」
良く知るそこを何度も衝いてやると、世良の顔から次第に苦痛が消えてくる。
ぎゅうっとしがみ付かれて、思わず、愛しさが顔を出す。
「世良、君……」
「はぁっ……、ぁん……」
まるで恋人だったときに戻ったように、高階は何度も世良に口付けた。
「好きですよ……」
世良が懸命に応えているような気がする、この幻想が終わらなければ良いと願いながら、高階は彼の中に熱を注ぎ込んだ。
強烈な欲望が引けば、そこに残るのは激しい慙愧だった。
しかし、高階はその思いを見せることもなく、険しい顔を作り、立ち上がって身支度を整える。世良はぐったりと横になったまま、動く気力もないようだ。
可哀想だが、助け起こして謝罪するつもりはなかった。
嫉妬に駆られ、幸せを望んで別れてやることも出来なかった、最低な恋人――その位置付けこそが相応しいとすら思える。
「そうそう、世良君。残念ですが」
だから、こんな残酷な物言いも出来るんのだろう。
高階は、微かに嘲笑うような調子で口にした。
「先ほど話した陰部がどうって話ですが、実は女性の身体の俗説なんですよ。まあ、でも、どうやら、浮気はしなかったというのは嘘ではないようですね」
「そんな……」
世良が泣きそうな声を出す。いや、泣いているのかも知れない。高階は更に追い討ちをかけるように言った。
「嫌なら抵抗すれば良かったでしょう。君の方が上背もあるし、それなりに筋力もある。本気で逃げようとすれば出来たはずです」
勝手なことを言っているのは分かっているが、いっそ、何処までも悪人に堕ちてしまいたかった。
「嫌な訳ないでしょう……!」
だから、世良の言葉は耳を疑うものだった。
もう顔も見たくない、と拒絶されるとばかり思っていたのだ。
「俺も……、俺だってずっと、高階先生に触れたかった……。でも、駄目なんです!天城先生が居なくなってから、あの病院は色褪せてしまった。スリジエのことを考える度にきらきらして見えた世界が、味気ない、無気力なモノトーンにしか感じられないんです……。俺はもう、自分に嘘を吐けない……」
世良はよろよろと身体を起こした。
その頬はやはり、涙に濡れている。
世良の真っ直ぐな瞳が射るように高階に向けられ、思わず身を引きそうになる。その途端、露悪的な言葉など全て封じられた。
「俺は、高階先生のことが今でも好きです。でも、駄目なんです……。俺は高階先生と居ても、失われた桜の木のことばかり考えてしまう。もう、傍には居られません……!」
高階は茫然と世良を見下ろすばかりだった。
「世良君……」
震える声で呟くのがやっとだった。世良は片手で顔を覆う。
「勝手を言っているのは分かっています。でも……」
今するべきことが一つだけ分かった。
「良く分かりました。君の気の済むようにしなさい」
背を向け、靴を履く。
そのままドアを閉めた。
――ああ、終わったのか……。
腕を組み、荒い息を吐く。
唐突に、世良の笑顔を思い出した。
『勿論です!』
あれは――あんな晴れ晴れとした表情を見せてくれたのは何時だっただろう?少し照れたようにはにかむ顔がとても好きだった――
「さようなら……」
その笑顔に別れを告げて、闇夜に足を踏み出した。
せめて、綺麗に別れて欲しいな、とか。此処まで修羅場らせて、何言ってんだって話ですが。
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