テレビ先生の隠れ家
カレンダー
08 | 2025/09 | 10 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 |
プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
カテゴリー
カウンター
ブログ内検索
P R
忍者アナライズ
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
予告してました、モエ・シャンドン飲みながら考えてた世良ちゃん総受・黒本メンバーでお花見です。
無理繰り設定で、ありえない人同士が同時に存在してますが、まあ、桜の魔法ってことで。
つーか、桜便利に使い過ぎだろ、私…。異世界の入り口じゃないんだぞ(汗)
無理繰り設定で、ありえない人同士が同時に存在してますが、まあ、桜の魔法ってことで。
つーか、桜便利に使い過ぎだろ、私…。異世界の入り口じゃないんだぞ(汗)
「この状況は、一体……?」
世良は自分を囲むメンバーを見ながら、茫然と呟く。
「固いこと言いっこなしだよ、世良ちゃん」
ぐいっと肩を引き寄せ、渡海が口元を歪める。その呼気は既にかなりの酒気を帯びている。
「そうだ、ジュノ。こんなに桜が美しいんだ。野暮なことは言うもんじゃない」
天城が世良の片手を取り、手の甲に唇を寄せて言う。
「固いことは言わないが……」
渡海が少しばかり焦点の定まらない目を天城へと向けた。
「こいつは誰だ?」
「その言葉、そっくり返したいところだな」
もったいぶるように返答した天城に、渡海が微かに眉根を寄せた。
「この人は、佐伯病院長がモンテカルロから招聘された天城先生です」
剣呑な空気を感じた世良が慌てて言う。
「何だ、世良ちゃん。また、男誑しこんでんのか。いい加減にしとけよ」
世良の顎を掴んで、渡海が笑う。
「その通り、今のジュノは私のものだ。他の人間が入る余地などない」
がばりと後ろから抱きつかれ、世良は硬直した。
「……お戯れはその辺にしてもらえますか」
前後を天才外科医に挟まれ、沫や、臓腑まで捕り合われかねない状況の世良は、冷ややかな助け舟に、助かったと振り返った。
「相変わらず固いな、権の字」
「その呼び方は止めてくださいと何度も言ったはずですが」
渡海が世良から手を離すと、天城も同様にグラスに口を付けた。
野外の花見でも、この人はブレずにピンク・シャンパンだ。
「ジュノも欲しいのか?」
天城のグラスを差し出され、世良はドキドキしながら受け取る。彼のことだから全く他意はないのだろうが、うっかり間接キスだなどと考えてしまったら、変に意識してしまった。思い切って、ごくりと半分くらい飲み込む。
「おーおー、世良ちゃん、良い飲みっぷりだなぁ。俺の酒も飲めよ」
すかさず、渡海が缶ビールを押し付けてきた。
「酔った世良ちゃんは可愛いからなぁ。アンタ、見たことあるか?」
どうやら渡海は徹底的に絡むことにしたらしい。天城は不快そうに表情を顰めた。
「心配されなくても、我々は出会った翌日には私の部屋でグラスを重ねた仲だ。酔ったジュノなど見慣れている」
「ちょっと……、誤解を招くような言い方は止めてください!」
しかし、強ち嘘でもない。酔って、朝まで寝てしまったことまでは言わないで下さいと内心で懇願する。
「へえ。夜遊びに誘っても、俺の後ろばっかりついてきてた世良ちゃんがねぇ。大人になったもんだ」
そこまででもなかったでしょう、と言おうとしたが、渡海の目に不機嫌の色がちらついているのを見て止める。
何で、花見に来たはずなのに、こんなに一触即発の雰囲気になっているのだ。
渡海と天城の相性は余り良くはないらしい。勿論、高階は言わずもがなだ。
世良は、缶ビールのプルタブを引っ張り、飲めるだけ一息に飲み込んだ。恐らく、この状況は酔った者勝ちだ。
「ジュノ。この間、ピンク・シャンパンをまた飲みたいと言っていただろう。今日は幾らでも飲ませてやろう」
「ありがとうございます」
「他でもないジュノの願いなら、何でも叶えてやるさ」
グラスごと手を握られ、並々とシャンパンが注がれる。
「美味しいです」
そう言うと、天城が嬉しそうに笑って、世良の髪を撫でた。
「世良ちゃん、ちまちま飲んでんなよ!」
投げられた缶を、世良は慌ててキャッチする。
開けると同時に吹き出す泡を夢中で飲み込む。外気の所為もあるのか、きんきんに冷えていて、確かに美味い。
山積みになった鶏唐にはこれまた絶妙に合う。
「取り合えず、若者は腹膨らませよ。遠慮はすんな」
そう言われると、随分と空腹だ。
「ご馳走様です!」
「相変わらず、世良ちゃんは色気より食い気だなぁ」
何だかあったかいと思ったら、渡海の腕が世良の腰に回っていた。
妙に心地よくて、思わず身体を預けた。意味ありげに指先が蠢く。その感触に背筋がぞくりとした。
「そこ、何してるんですか!」
びしりと響いた声に、世良は背筋を正した。
高階が世良の真正面に胡坐をかいて座る。大事そうに抱かれた一升瓶からコップに注がれた酒が鼻先に突きつけられた。拒む術もなく、世良はそれを煽る。
「世良君!」
「は、はい……!」
「君は自覚がなさ過ぎです!ふらふらふらふら、あっちに顔を出し、こっちを引き込んで……」
それはいつも同期たちに言われていることで、とても耳が痛い話だった。高階にまでそんな風に思われていたのかと思うととてもショックだ。勿論、世良自身はそんなに八方美人に目立とうとしている訳ではない。しかし、心のままに動く度に、気づけば目だってしまい、またも更なる厄介ごとを抱えては更なる反感を買ってしまう。
考えてみれば、此処に居るこの人達も、大人しく目立たないようにしていれば、関わることなど殆んどなかったレベルの人間達のはずなのだが……。
「クイーンとは余り良い酒が飲めないようだな」
天城の独白に、渡海がにやりと笑った。
「意見が合ったな」
言うなり、世良の背を思い切り押す。
「世良ちゃん、口塞いじまえ」
突然の不意打ちに、世良は力学法則に逆らえず、高階の方につんのめる。
一升瓶とグラスを両手に持っていても、そこはさすがに武道家で、高階は腕の力だけで世良を受け止めた。
飲み過ぎたのか、くらくらして体勢が定まらない。少し目を上げると、高階の驚いたような顔があって、世良はその瞳にぼんやりと視線を注ぐ――
「ジュノ!」
唐突に耳に割り込んだ声にはっとした。
「惜しい。そのままキスしちまえば良かったのに」
「冗談じゃない。ジュノをそんなことに巻き込むな!」
「天城先生こそ、くっつき過ぎです!少しは節度を持って……!」
「うう……」
「真面目そうな顔をして、下心の塊みたいなクイーンに言われたくはない」
天城は、世良の肩を掴んで抱き寄せる。
「オープンにすれば良いってものではありません!世良くんを離しなさい」
徐々にエスカレートする二人の口喧嘩に、渡海は吹き出し、腹を抱えて笑い始めた。
「渡海先生、何笑ってるんですか?!」
高階が憮然として言う。
「いや……、また面白いヤツが来たな、と。居合わせられなくて残念だった」
「私は居なくて良かったと思ってますよ。とても身が持ちません」
「うーん……」
ふと渡海が顔を上げた。
天城の腕の中の世良に目を遣る。
「世良ちゃん?」
「……」
世良の返事はない。
「ジュノ?」
天城の顔色が変わった。頬をつねって反応がないことを確かめ、残りの二人と顔を見合わせる。
「世良ちゃん、随分飲んでたよな……」
「急性アルコール中毒ですか?!」
高階が着ていた素早く着ていたコートを脱ぎ、世良にかけた。呼吸を確認する。
「おい、ちょっと、そこの坊主。救急車呼んでくれ!」
渡海が立ち上がって、通りすがりの人影に向かって呼びかけた。
結果、佐伯外科巨頭メンバーでのお花見は思いもかけない形で締めくくられることになった。そして――
「……絞られました……」
救急から戻って来た高階は疲労を色濃く滲ませていた。
いっぱしの外科医が3人固まって、研修医に酒を飲ませ過ぎて救急車まで呼んだなど始末書ものの事態だ。
「選りにも選って、東城大に運び込むことはないじゃないですか」
「どっちにしたって直ぐにバレるさ。そっちの先生も随分と有名人みたいだしな」
「ジュノが無事なら、細かいことはどうでも良い。私は疲れたので失礼する」
天城が辞したのを見て、渡海は、ロビーの傍らに居心地悪そうに立っている学生を振り返った。
「という訳で、お開きだ。悪かったなぁ。手違いで、お前まで連れて来ちまって」
「いえ……」
言葉少なに答える彼は、余り話し上手ではないらしい。
学生服を着ているので高校生だと思うが、身長は渡海よりも高い。横幅もがっしりしていて、隣に立たれると壁のようだ。しかし、雰囲気は朴訥として純朴。突然、声をかけた渡海に驚きながらも、近くの公衆電話に走ってくれた。
「この辺りに住んでるのか?」
尋ねると、学生は首を振った。
「家は極北です。うちは進学校なので、この時期に修学旅行をするんです。グループの数人と花見に行こうって宿を抜け出したところで、声をかけられて……」
「へえ、極北か。こんなところで、同郷者と会えるとはね。夜遊びは程ほどにしろよ」
きっと無理矢理付き合わされたのだろう彼の罰は朝まで正座だろうかと少々気の毒に思いながら、渡海は、ガイドマップ片手に首を捻りながら帰路に付く青年を見送った。
「うわっと!」
辺りを見渡しながら、通路を横切ろうとした世良は、逆方向から歩いてきた影にぶつかりかけて、持ち前の運動神経で何とか踏みとどまる。
しかし、そんな些細な動きだけでふらふらしてきて、本調子でないことを思い知る。
「あ……、倒れてた、人……」
「ちょ……!」
人差し指を立てて口元につけ、黙れと言うと、彼は慌てたように口を押さえた。
「もしかして、救急車を呼んでくれた子か?」
先ほど高階からちらりと聞いた特長とも一致する。尋ねると、学生は頷いた。
「入院するんじゃなかったんですか?」
「あー。えーと……」
世良は僅かに目を逸らしたが、彼の良心に期待することにしたらしい。
「此処、俺の職場なんだよ。こんなところじゃ、おちおち入院なんかしてられないって」
彼は目を丸くして、数回瞬きをした。
「ってことは、皆、お医者さん、ですか?」
「何だよ、そんなに意外か?」
頭一つ高い背に向かって、挑むように言う。
「いえ。でも、だったら、救急車呼ばなくても良かったんじゃ……」
「外で急性アルコール中毒に出来ることなんて、殆んどないんだよ。それに、あの人達は外科医だから」
寧ろ、落ち着いた素早い処置だったに違いない。まあ、そんな状況になってること自体が感心できないことなので言わないが。
「外科医って……?」
学生クンは不思議そうな顔で首を傾げた。さすがに言葉の意味が分からないことはないだろうが、ぴんと来ないようだ。確かに、彼の年代では医者なんて、風邪をひいてかかる内科医がせいぜいだろう。世良は胸を張った。
「外科医ってのは、自己治癒が不可能な患者の悪いところを切り取って完治させる、一発逆転の反則技を使う医者なんだぜ。あの3人で、命を救った患者は4桁くらいにはなるかな」
少々大袈裟だが、まあ、間違ってはいない。改めて言葉にすると、自分の仕事は凄いんだなぁ、なんてちょっと誇らしくなる。
しかし、そんな世良の思惑を他所に、彼はいまいち興を削がれることを聞いてきた。
「貴方は入ってないんですか?」
ちょっと良い気分だったのに、随分と空気の読めないヤツだ。
世良は、人の良さそうな顔を睨み付けた。
「俺は――これからそうなるんだよ!」
彼は面食らったように数回瞬いた後、そうですか、と小さく呟いた。
「あ、こんなことしてる場合じゃない。見つかったら大変なことになる。じゃあな、気をつけて帰れよ」
世良は、彼の脇を足早に通り過ぎた。
「あ……」
病院の出口近くで、ふと足を止める。
「名前聞かなかったな。まあ、良いか。どうせ、もう会うこともないだろうし」
このまま待てば来るのかも知れないが、そんな時間もない。
世良は、足早に病院から足を踏み出した。
ちょうどその頃。
物珍しそうに夜の大学病院内を見ていた学生は、目の前を通り過ぎていく救急のストレッチャーを前にしていた。
数歩下がって、足早に移動する一団を見守る。
――外科医ってのは、自己治癒が不可能な患者の悪いところを切り取って完治させる、一発逆転の反則技を使う医者なんだぜ。
ふと、気の強そうな表情が思い出された。
この患者も、そんな医者のところに運ばれるのだろうか?
「外科医、か……」
青年は口の中で言葉を転がし、世良が歩き去った方向へと歩を進めた。
渡海先生のキャラが迷子です…。どうも、天ジュノ←高階がデフォらしく、間でおかしな人になってしまう。
節操なく総受なんて書いてることより、謎の高校生(全然謎じゃない…)の下りに必要以上に気合が入ってて、自分の趣味が駄々漏れなのが一番恥ずかしいっていう…。
幾ら進学校でもこんな時期に修学旅行とかないよ、何で桜宮に修学旅行なんだよ、とツッコみどこ満載ですね。
急性アルコール中毒とか、笑い事じゃないからね。
あと、桜ネタ書き過ぎて、来年瀕死になってる予感…。
世良は自分を囲むメンバーを見ながら、茫然と呟く。
「固いこと言いっこなしだよ、世良ちゃん」
ぐいっと肩を引き寄せ、渡海が口元を歪める。その呼気は既にかなりの酒気を帯びている。
「そうだ、ジュノ。こんなに桜が美しいんだ。野暮なことは言うもんじゃない」
天城が世良の片手を取り、手の甲に唇を寄せて言う。
「固いことは言わないが……」
渡海が少しばかり焦点の定まらない目を天城へと向けた。
「こいつは誰だ?」
「その言葉、そっくり返したいところだな」
もったいぶるように返答した天城に、渡海が微かに眉根を寄せた。
「この人は、佐伯病院長がモンテカルロから招聘された天城先生です」
剣呑な空気を感じた世良が慌てて言う。
「何だ、世良ちゃん。また、男誑しこんでんのか。いい加減にしとけよ」
世良の顎を掴んで、渡海が笑う。
「その通り、今のジュノは私のものだ。他の人間が入る余地などない」
がばりと後ろから抱きつかれ、世良は硬直した。
「……お戯れはその辺にしてもらえますか」
前後を天才外科医に挟まれ、沫や、臓腑まで捕り合われかねない状況の世良は、冷ややかな助け舟に、助かったと振り返った。
「相変わらず固いな、権の字」
「その呼び方は止めてくださいと何度も言ったはずですが」
渡海が世良から手を離すと、天城も同様にグラスに口を付けた。
野外の花見でも、この人はブレずにピンク・シャンパンだ。
「ジュノも欲しいのか?」
天城のグラスを差し出され、世良はドキドキしながら受け取る。彼のことだから全く他意はないのだろうが、うっかり間接キスだなどと考えてしまったら、変に意識してしまった。思い切って、ごくりと半分くらい飲み込む。
「おーおー、世良ちゃん、良い飲みっぷりだなぁ。俺の酒も飲めよ」
すかさず、渡海が缶ビールを押し付けてきた。
「酔った世良ちゃんは可愛いからなぁ。アンタ、見たことあるか?」
どうやら渡海は徹底的に絡むことにしたらしい。天城は不快そうに表情を顰めた。
「心配されなくても、我々は出会った翌日には私の部屋でグラスを重ねた仲だ。酔ったジュノなど見慣れている」
「ちょっと……、誤解を招くような言い方は止めてください!」
しかし、強ち嘘でもない。酔って、朝まで寝てしまったことまでは言わないで下さいと内心で懇願する。
「へえ。夜遊びに誘っても、俺の後ろばっかりついてきてた世良ちゃんがねぇ。大人になったもんだ」
そこまででもなかったでしょう、と言おうとしたが、渡海の目に不機嫌の色がちらついているのを見て止める。
何で、花見に来たはずなのに、こんなに一触即発の雰囲気になっているのだ。
渡海と天城の相性は余り良くはないらしい。勿論、高階は言わずもがなだ。
世良は、缶ビールのプルタブを引っ張り、飲めるだけ一息に飲み込んだ。恐らく、この状況は酔った者勝ちだ。
「ジュノ。この間、ピンク・シャンパンをまた飲みたいと言っていただろう。今日は幾らでも飲ませてやろう」
「ありがとうございます」
「他でもないジュノの願いなら、何でも叶えてやるさ」
グラスごと手を握られ、並々とシャンパンが注がれる。
「美味しいです」
そう言うと、天城が嬉しそうに笑って、世良の髪を撫でた。
「世良ちゃん、ちまちま飲んでんなよ!」
投げられた缶を、世良は慌ててキャッチする。
開けると同時に吹き出す泡を夢中で飲み込む。外気の所為もあるのか、きんきんに冷えていて、確かに美味い。
山積みになった鶏唐にはこれまた絶妙に合う。
「取り合えず、若者は腹膨らませよ。遠慮はすんな」
そう言われると、随分と空腹だ。
「ご馳走様です!」
「相変わらず、世良ちゃんは色気より食い気だなぁ」
何だかあったかいと思ったら、渡海の腕が世良の腰に回っていた。
妙に心地よくて、思わず身体を預けた。意味ありげに指先が蠢く。その感触に背筋がぞくりとした。
「そこ、何してるんですか!」
びしりと響いた声に、世良は背筋を正した。
高階が世良の真正面に胡坐をかいて座る。大事そうに抱かれた一升瓶からコップに注がれた酒が鼻先に突きつけられた。拒む術もなく、世良はそれを煽る。
「世良君!」
「は、はい……!」
「君は自覚がなさ過ぎです!ふらふらふらふら、あっちに顔を出し、こっちを引き込んで……」
それはいつも同期たちに言われていることで、とても耳が痛い話だった。高階にまでそんな風に思われていたのかと思うととてもショックだ。勿論、世良自身はそんなに八方美人に目立とうとしている訳ではない。しかし、心のままに動く度に、気づけば目だってしまい、またも更なる厄介ごとを抱えては更なる反感を買ってしまう。
考えてみれば、此処に居るこの人達も、大人しく目立たないようにしていれば、関わることなど殆んどなかったレベルの人間達のはずなのだが……。
「クイーンとは余り良い酒が飲めないようだな」
天城の独白に、渡海がにやりと笑った。
「意見が合ったな」
言うなり、世良の背を思い切り押す。
「世良ちゃん、口塞いじまえ」
突然の不意打ちに、世良は力学法則に逆らえず、高階の方につんのめる。
一升瓶とグラスを両手に持っていても、そこはさすがに武道家で、高階は腕の力だけで世良を受け止めた。
飲み過ぎたのか、くらくらして体勢が定まらない。少し目を上げると、高階の驚いたような顔があって、世良はその瞳にぼんやりと視線を注ぐ――
「ジュノ!」
唐突に耳に割り込んだ声にはっとした。
「惜しい。そのままキスしちまえば良かったのに」
「冗談じゃない。ジュノをそんなことに巻き込むな!」
「天城先生こそ、くっつき過ぎです!少しは節度を持って……!」
「うう……」
「真面目そうな顔をして、下心の塊みたいなクイーンに言われたくはない」
天城は、世良の肩を掴んで抱き寄せる。
「オープンにすれば良いってものではありません!世良くんを離しなさい」
徐々にエスカレートする二人の口喧嘩に、渡海は吹き出し、腹を抱えて笑い始めた。
「渡海先生、何笑ってるんですか?!」
高階が憮然として言う。
「いや……、また面白いヤツが来たな、と。居合わせられなくて残念だった」
「私は居なくて良かったと思ってますよ。とても身が持ちません」
「うーん……」
ふと渡海が顔を上げた。
天城の腕の中の世良に目を遣る。
「世良ちゃん?」
「……」
世良の返事はない。
「ジュノ?」
天城の顔色が変わった。頬をつねって反応がないことを確かめ、残りの二人と顔を見合わせる。
「世良ちゃん、随分飲んでたよな……」
「急性アルコール中毒ですか?!」
高階が着ていた素早く着ていたコートを脱ぎ、世良にかけた。呼吸を確認する。
「おい、ちょっと、そこの坊主。救急車呼んでくれ!」
渡海が立ち上がって、通りすがりの人影に向かって呼びかけた。
結果、佐伯外科巨頭メンバーでのお花見は思いもかけない形で締めくくられることになった。そして――
「……絞られました……」
救急から戻って来た高階は疲労を色濃く滲ませていた。
いっぱしの外科医が3人固まって、研修医に酒を飲ませ過ぎて救急車まで呼んだなど始末書ものの事態だ。
「選りにも選って、東城大に運び込むことはないじゃないですか」
「どっちにしたって直ぐにバレるさ。そっちの先生も随分と有名人みたいだしな」
「ジュノが無事なら、細かいことはどうでも良い。私は疲れたので失礼する」
天城が辞したのを見て、渡海は、ロビーの傍らに居心地悪そうに立っている学生を振り返った。
「という訳で、お開きだ。悪かったなぁ。手違いで、お前まで連れて来ちまって」
「いえ……」
言葉少なに答える彼は、余り話し上手ではないらしい。
学生服を着ているので高校生だと思うが、身長は渡海よりも高い。横幅もがっしりしていて、隣に立たれると壁のようだ。しかし、雰囲気は朴訥として純朴。突然、声をかけた渡海に驚きながらも、近くの公衆電話に走ってくれた。
「この辺りに住んでるのか?」
尋ねると、学生は首を振った。
「家は極北です。うちは進学校なので、この時期に修学旅行をするんです。グループの数人と花見に行こうって宿を抜け出したところで、声をかけられて……」
「へえ、極北か。こんなところで、同郷者と会えるとはね。夜遊びは程ほどにしろよ」
きっと無理矢理付き合わされたのだろう彼の罰は朝まで正座だろうかと少々気の毒に思いながら、渡海は、ガイドマップ片手に首を捻りながら帰路に付く青年を見送った。
「うわっと!」
辺りを見渡しながら、通路を横切ろうとした世良は、逆方向から歩いてきた影にぶつかりかけて、持ち前の運動神経で何とか踏みとどまる。
しかし、そんな些細な動きだけでふらふらしてきて、本調子でないことを思い知る。
「あ……、倒れてた、人……」
「ちょ……!」
人差し指を立てて口元につけ、黙れと言うと、彼は慌てたように口を押さえた。
「もしかして、救急車を呼んでくれた子か?」
先ほど高階からちらりと聞いた特長とも一致する。尋ねると、学生は頷いた。
「入院するんじゃなかったんですか?」
「あー。えーと……」
世良は僅かに目を逸らしたが、彼の良心に期待することにしたらしい。
「此処、俺の職場なんだよ。こんなところじゃ、おちおち入院なんかしてられないって」
彼は目を丸くして、数回瞬きをした。
「ってことは、皆、お医者さん、ですか?」
「何だよ、そんなに意外か?」
頭一つ高い背に向かって、挑むように言う。
「いえ。でも、だったら、救急車呼ばなくても良かったんじゃ……」
「外で急性アルコール中毒に出来ることなんて、殆んどないんだよ。それに、あの人達は外科医だから」
寧ろ、落ち着いた素早い処置だったに違いない。まあ、そんな状況になってること自体が感心できないことなので言わないが。
「外科医って……?」
学生クンは不思議そうな顔で首を傾げた。さすがに言葉の意味が分からないことはないだろうが、ぴんと来ないようだ。確かに、彼の年代では医者なんて、風邪をひいてかかる内科医がせいぜいだろう。世良は胸を張った。
「外科医ってのは、自己治癒が不可能な患者の悪いところを切り取って完治させる、一発逆転の反則技を使う医者なんだぜ。あの3人で、命を救った患者は4桁くらいにはなるかな」
少々大袈裟だが、まあ、間違ってはいない。改めて言葉にすると、自分の仕事は凄いんだなぁ、なんてちょっと誇らしくなる。
しかし、そんな世良の思惑を他所に、彼はいまいち興を削がれることを聞いてきた。
「貴方は入ってないんですか?」
ちょっと良い気分だったのに、随分と空気の読めないヤツだ。
世良は、人の良さそうな顔を睨み付けた。
「俺は――これからそうなるんだよ!」
彼は面食らったように数回瞬いた後、そうですか、と小さく呟いた。
「あ、こんなことしてる場合じゃない。見つかったら大変なことになる。じゃあな、気をつけて帰れよ」
世良は、彼の脇を足早に通り過ぎた。
「あ……」
病院の出口近くで、ふと足を止める。
「名前聞かなかったな。まあ、良いか。どうせ、もう会うこともないだろうし」
このまま待てば来るのかも知れないが、そんな時間もない。
世良は、足早に病院から足を踏み出した。
ちょうどその頃。
物珍しそうに夜の大学病院内を見ていた学生は、目の前を通り過ぎていく救急のストレッチャーを前にしていた。
数歩下がって、足早に移動する一団を見守る。
――外科医ってのは、自己治癒が不可能な患者の悪いところを切り取って完治させる、一発逆転の反則技を使う医者なんだぜ。
ふと、気の強そうな表情が思い出された。
この患者も、そんな医者のところに運ばれるのだろうか?
「外科医、か……」
青年は口の中で言葉を転がし、世良が歩き去った方向へと歩を進めた。
渡海先生のキャラが迷子です…。どうも、天ジュノ←高階がデフォらしく、間でおかしな人になってしまう。
節操なく総受なんて書いてることより、謎の高校生(全然謎じゃない…)の下りに必要以上に気合が入ってて、自分の趣味が駄々漏れなのが一番恥ずかしいっていう…。
幾ら進学校でもこんな時期に修学旅行とかないよ、何で桜宮に修学旅行なんだよ、とツッコみどこ満載ですね。
急性アルコール中毒とか、笑い事じゃないからね。
あと、桜ネタ書き過ぎて、来年瀕死になってる予感…。
PR