テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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今世良連載でやれなかった神威島をこの設定ならやれるかなって思って。
天城先生と今中先生が会ってるの、結構好きなんで、今回は極北にて。
天城先生が幽霊とか、相変わらず、荒唐無稽設定ですが、大丈夫な方はどうぞお付き合いいただければ、と。
CP傾向的には、天ジュノで今世良。並行しているのがOKな方のみどうぞ。
天城先生と今中先生が会ってるの、結構好きなんで、今回は極北にて。
天城先生が幽霊とか、相変わらず、荒唐無稽設定ですが、大丈夫な方はどうぞお付き合いいただければ、と。
CP傾向的には、天ジュノで今世良。並行しているのがOKな方のみどうぞ。
朝十時。
憂鬱な顔で出勤した今中は、三階の医局で自分の席に座る。ブラウザを開いてニュースをチェックし、さほど興味も湧かない芸能情報をクリックしてみる。
映画の製作発表でのアイドルの当たり障りのないコメントを仰々しく綴った記事を目で追っているうちに、嫌になって読むのを止めた。
極北救命救急センターでフライトと処置を繰り返していた、半年前の日々が思い起こされる。今中の日常は、すっかり元に戻ってしまっていた。救命センターに出向し、市民病院と距離を置いたことで、世良に対する反感は随分と薄らいだ。だが、未だに世良の真意は見えず、時々出所の良く分からない不安に襲われる。
――本当にバカだな、今中先生は。
夕陽の下で、小さく呟かれた苦笑。あの瞬間、確かに思いは繋がったと思ったのに。
外部からの様々な攻撃から守るために、今中を逃がしてくれた。為政者も市民もマスコミも、寄って集って滅茶苦茶にしてしまったこの病院を建て直すために心血を注いでいる。自分の説得に応じる患者には、辛抱強く付き合って話を聞いてやる――冷たいだけの人間ではない……が、何処か、信じ切れない思いが残るのもまた事実だった。
「浮かない顔だな」
頭の上から面白がるような言葉が降ってきた。
聞き覚えのない声だった。今中はがばりと顔を上げる。
「此処は、関係者以外立ち入り禁止ですけど」
そこに居たのは、緩く腕を組み、形のよい唇を可笑しそうに緩めた長身の男だった。
女性的な風貌といい、質の良さそうな服装といい、あちこち老朽化した市民病院には、全くもってそぐわない。返事をしてから、薬や医療機器メーカーの営業という可能性を疑ったが、そんなもの、此処が財政破綻してから後はお目にかかったこともない。第一、彼からセールスという雰囲気は感じなかった。自信に満ち、他人に頭を下げる習慣のなさそうな様子は、大きな組織の経営者を思わせる。何処からどう見ても、部外者だった。
「固いことを言うな。こう見えても、私は医者だ」
その返事に、今中は改めて彼を凝視する。
言われてみれば、彼が一番上に羽織っているものは、丈の短い白衣の形をしていた。だが、その色は漆黒に染められている。
黒い白衣なんて聞いたこともない。
大体、白衣って、汚れ等が目立つように白なのであって、黒かったら、その役割を為さないのではないかなどという疑問が浮かぶ。
そして、胸には銀色に刺繍されたエンブレムが光っている。その形に覚えがあるような気がして、今中は頭を捻った。
「もしかして、世良先生のハーレーの元の持ち主ですか?!」
今中の質問に、彼はこれ以上ないくらい、嬉しそうに微笑んだ。
「セ・ブレ!ジュノは私のことを、君に話したのか」
「ジュノって……、もしかして、世良先生のことですか?」
世良にも何処かしら掴み所のない側面があるが、この男に至っては、浮世離れしていると評した方が良いかも知れない。飄々としたペースには全く悪びれる様子がない。大体、ハーレーを世良に譲ったというエピソードが既に一般人の域ではない。
「そうそう、ジュノの話だ」
今中の問いには全く答えていないが、脈絡からいって、世良のことで間違いないようだ。世良の知り合いというなら、追い出す訳にもいかない。
「何か御用ですか?世良先生なら2階の院長室に居ますが、呼びましょうか?」
だが、彼は優雅な仕草で首を振った。
「では……」
何しに来たんだ、とはさすがに言えない。
「勿論、用があるのはジュノだ。だが、呼んでも無駄だ。私の声はジュノには届かないんだ」
「……どういうことですか?」
先ほど、浮世離れしている、と評したが、もしかして、現実と乖離した感覚の持ち主なのだろうか?世良の知り合いというからには、そんなにおかしなことはないと思うのだが。今中の視線は、若干胡散臭いものを見る目に変っていた。
「そうか。まだ、自己紹介をしていなかったな」
彼は、今中の疑わしそうな様子を受けて、微かに表情を綻ばせた。その試すような笑顔に、少なくとも、頭のネジの外れた系統ではないと今中は見解を改める。
「天城雪彦だ。20年ほど前、東城大の佐伯外科に招聘され、あるプロジェクトのために働いていた」
東城大といえば、余り公にはされていない世良の母校だ。しかし、彼の年は、どう多めに見積もっても、せいぜい世良と同じくらいというところだろう。だとすれば、20年前には研修医か、それに毛が生えた程度のキャリアだったに違いない。少なくとも、『招聘』などという大仰な単語とは無縁だろう。
「冗談でしょう」
「冗談ではない。取り合えず、よろしく」
彼は、スマートに左手を差し出した。
今中はぎこちない動きでそれを受けようとした。長く細い、女性的とさえ言えるその指に触れようとした今中は硬直した。触れることが出来なかった。
「なっ……?!」
確かに、彼の手を掴んだのに。指先は空を切り、今中の手は握りこぶしを形作っていた。
「分かったようだな」
天城は面白がるように、数回今中の腕を通り抜けてみせた。息をするのも忘れて、その様子を見つめる今中に、彼は信じられないことを宣言した。
「私は、既にこの世にはない。この姿は、私が現世を去ったときのものなんだ」
「じゃあ、幽霊ってことですか……?!」
そんな非現実的なこと、とも思うのだが、目の前で証拠を見せ付けられては否定も出来ない。
「では、もう一つ、面白い事実を教えよう」
彼がそう言うと同時に、ドアをノックする音がした。
天城は、迷う今中を促すように頷いてみせる。
「はい」
応えると同時に、ドアが開いた。
角田師長だった。
「今中先生、後で下に来るとき、これを持って来てくださいません」
今中と角田師長の間には、天城が立っている。
どう言い訳をしようかとそわそわする今中を尻目に、角田師長が言った。
その視線には、部外者である天城を責める様子はない――というより、完全に、無視している。
――見えてないのか、もしかして……。
「ちょっと、今中先生。聞いてます?!」
超音波攻撃に曝された今中は慌てて、角田師長の手元を見た。
年季の入った掃除用具が載っている錆びたストレッチャーである。
「これは、何ですか?」
「院長先生に頼まれて、3階の整理をしていたら、こんなものが埃を被っていたので。以前、業者の人が使っていたものじゃないかしら」
要するに、ゴミということだろう。
かつて、この病院に出入りしていた清掃業者が、財政破綻をきっかけに契約を切られた際、汚れた道具を放置して行ったなどというところに違いない。
「下のゴミ置き場に出しておけば良いんですね」
「お願いするわ」
厄介ごとを押し付けた角田師長は、清々とした笑顔で医局を出て行った。まあ、仕方ない、どう考えても、訪問介護で連日一人暮らしの老人宅を渡り歩いている彼女より、今中の労働量の方が少ないのは事実なのだから。
だが、そんなことよりも重要なことがあった。天城の言う『面白い事実』が今中には、全く面白くなかった、ということだ。
「あの……、角田師長は貴方のことが……」
「私の姿は、他の人間には見えない」
「じゃあ、何で……」
私には見えるんですか、と言いかけて、口を噤む。返事を聞くのが怖くなったからだ。
自分しか見えないなんて、幻覚と変わらないではないか。
「君は意外と観察力に優れたタイプだろう。大袈裟に騒ぎ立てはしないが、冷静に状況を判断する能力がある。そして、論理を積み重ねるというよりは直感型、だな?」
『意外と』という部分を除けば、褒められていると取れなくもない言葉に、今中は生返事で答える。
「そして、もう一つ、これが一番重要な点だ。君は、ジュノの生き方を辛いものだと感じ、自分に出来ることがあれば助けたいと思っている――そうだろう、ヌヌルス君?」
「ヌヌルスって、もしかして私のことですか?どういう意味ですか?」
良く分からないが、余り褒められている感じはしない。
「それは、後でジュノにでも聞けば良い。まずは私の質問に答えてもらおう。どうなんだ、ウイ・ウ・ノン?」
「そうです……」
今中は躊躇いなく頷く。
それだけは間違いない。
だからこそ、今中は、それなりに生きがいを持ってやっていけるはずだった救命での居場所を蹴り、此処に戻って来たのだから。
「それはつまり、私と同じ気持ちだということだ」
天城はぱっと笑顔になった。
綺麗な顔が人懐っこい表情に変わり、思わず、今中は引き込まれる。美人は得だと思った。この顔を見られるなら、何でもする、という人間が山ほど居るに違いない。いや、最早、今中にとっても他人事ではなくなっていた。
「……貴方は、世良先生のことをとても大切に思っているんですね」
何より、それだけは伝わった。
「ジュノがあんなに追い詰められたのは、私の咎だ。私はかつて一度だけジュノに会った。そして、『自分の出来ることをして、自分のために生きていけ』と、そう伝えたつもりだった」
天城は独り言のように呟いた。その視線は、遠くを望むように虚空へと注がれている。
「それに安心した私は、冥界の賭場に入り浸って過ごした。あるとき、大勝した私は、一つだけ現世に干渉できる権利を手にしたんだ。私は直ぐにジュノのことを思い浮かべ、その権利はジュノのために使いたいと望んだ。今、ジュノが困っているなら、助けてやろうと。そうして、20年振りに私はジュノに会った。だが、ジュノは私の姿を見ることも、私の声を聞くこともしない。それどころか、あんなにも自分を追い詰めて生きている――困った私は、君に助けを求めた。そして、君が応じてくれた。まあ、第一段階はクリアということだ」
「はあ……」
滔々と語られるエピソードはツッコミ所満載で、今中は口をぱくぱくさせた。正直、何処からツッコんで良いものやら、さっぱりだ。
「……冥界には、賭場なんてあるんですか……?」
結局、一番どうでも良いことを聞いてしまった。
「ああ。あれは、グラン・カジノ並みのクオリティだな。良く、亡くなった祖父が夢枕に立って、何かを教えてくれたなどということがあるだろう。あれも、こういう経緯で、現世に干渉した例であるらしい」
いまいち信憑性に乏しい話だが、触れることも、自分以外は見ることも出来ない自称・幽霊が言うのだから、そうなのだろう、と思うしかない。
死んだ人間が現れて会話したりするんだから、こういう設定でも良いんじゃないですかって(笑)
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