テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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「本当に細いな。痩せ過ぎだぞ」
天城が、シャツの前を肌蹴、露わになった胸に所有印をつけながら言う。
「あんまり見ないで下さい……。年、取ったでしょう……」
世良が恥ずかしそうに、シャツの合わせ目を抑えようとする。
壁に背を固定されたデスクチェアに座った世良の足を開かせ、天城はその間に立つ。恥らうような仕草が余計にそそる。
「それがジュノが生きてきた証しだ。それに、此処は随分と元気そうだが」
「そんなこと……」
「さっき、イッたばかりなのに、……ほら」
最も熱いところに触れられ、身体が跳ねる。
「天城先生……、俺の中に、全部下さい……」
世良が潤んだ目でねだる。抱きついてキスすると、天城の手を掴み後口へと誘う。自分から足を持ち上げて広げ、秘所を曝した。それでいて、顔を真っ赤にして恥らってみせるのだから性質が悪い。
「随分慣れてるな。この年になるまで、どのくらいの男を誘ってきたんだ?」
入り口を撫でた指が太腿へと上がる。
世良の目が潤む。
「両手の指、くらいかな?」
口の端を歪めて言う天城に、世良が詰まる。
図星なのかとぎょっとする。
まあ、その誘いに見事に引っかかった一人が自分な訳だが。微妙にショックな数字だ。
「もう、一人は嫌なんですっ……」
世良が泣きそうな声で言う。今中は目を見張った。それが、世良の本心。皮肉な笑みの下に、この人はいつもこんな思いを抱えていたのだ。これまでだって、その思いの片鱗を垣間見せることだってあったのに――
どうして、ちゃんと受け止めてあげなかったのだろう。
「すみません、世良先生……」
世良の動きが止まった。
「今中……先生……?」
その言葉に、数回瞬いて、今中は身体が自分の意思で動くことを認識する。
「え……、どうして……?」
どこからも天城の声はしない。
いよいよ本番という状況で投げ出され、今中は茫然とした。
「結局、約束なんて、こんなもんだよね――あのときも、そうだった……」
世良が口の中で呟いた。咄嗟に反論しようとした今中の唇が世良に塞がれる。
飛びつく付くようなキスは、遠慮のない舌の侵入に続く。両手の指の男を誘ってきたらしいテクニックはそれなりで、最初こそ、天城に習って攻めようと試みた今中の頭は幾らもしないうちに快感でぼんやりしてきた。
やがて唇を離した世良は、見せ付けるように秘所に指を入れ、出入りさせる。思わず、今中の目が釘付けになったのをせせら笑うように言葉を重ねる。
「で、どうするの?――挿入れる?」
最早、先ほどまでのしおらしさなど微塵も見当たらない。
しかし、今中はどこかほっとしていた。
切なそうに涙を落とす世良を見ているのは苦しい。この人は、少しばかり斜に構えた笑みを浮かべて、今中を振り回すくらいの方が良い。その方がずっと世良らしい。
中途半端なところで投げ出された男の生理が主張しているのは認める。けれど、それ以上に、今中は、これまで世良の思いを受け止めなかったことを激しく後悔していた。
「お願い、します」
間の抜けた回答を素直に返すと、世良が今中の首筋を優しく撫でた。ぞわりとした震えが背中を走りぬけた。思わず世良に視線を向けると、伏せ気味の瞳が色っぽく迎える。
「良いよ。来て」
甘やかな声に誘われる。
促されるままに、今中はそこに自らの欲を押し当てた。
「……ん……っ……」
微かに開いた唇から、吐息混じりの小さな声が漏れた。
「大丈夫だから、そのまま……」
「は、はいっ」
天城の準備が良かったのか、世良の体勢が的確なのか、奥に進むのは想像よりは容易だった。
「う……、キツ……」
「少し、止まって」
言われるままにするしかない。
「もうちょっとしたら、多少は慣れるから」
「はい……」
今中は大きく息をつく。
世良の体内は、思った以上に強く締め付けてきた。正直、痛みすら感じるほどだ。
ふと気づくと、世良も苦しげな呼吸を繰り返している。
「世良……先生も、大丈夫ですか……?」
「僕を気遣う余裕なんてあるんだ?」
口の端を歪めて返す世良に、今中は必死に訴える。
「だって、身体は……」
今中が此処までの圧迫感を感じているということは、それを受け入れている世良には更に負担がかかっているということだ。
初めての相手を導くのだって決して楽なことではないだろう。まあ、それだって幾度も経験済みなのかも知れないが。
今中は世良を気遣うように様子を伺う。世良は呆れたようにそんな今中を見上げた。
「全く……。初めての相手にそんな気を遣わせるほど、下手じゃないつもりなんだけどね」
言うなり、腰を動かし始めた。突然の快感に、今中は戸惑う。
「ちょっ……、待っ……。うあっ……」
「ほら、動いたらもっと気持ちよくなるよ」
囁かれ、思わず誘いにのってしまった。気づけば、内側は少し緩んできている。
「でも、あんまり無茶したら……」
「そんなこと言いながら、動いてるよ、腰」
世良がにまりと笑って言う通りで、気づけば欲を追っていた。
「あ、あの、世良先生もちゃんと……」
局部に感じられる刺激は異性とのものとは全く違う強さで今中に伝わってくる。余りに気持ちよくて止まらない。世良の身体のことを考えたが、どうすることもできなかった。
「仕方ないなぁ。じゃあ、僕は自分でするよ」
「え……?!」
驚く今中を尻目に、世良が自分のものに指を絡ませた。
「僕はこれで良い。だから、今中先生も気持ちよくなれば良いさ」
「でも……」
口ではそう言いながらも、我慢出来ない自分が情けない。
世良のことだって、好くしてやりたいのに――
「今、こうしてくれてるだけで、嬉しい……」
耳元で聞こえた声に更に興奮した。まさか、そんなことを世良が言うとは思わなかった。
「世良……せん、せ……」
「あ……、イイっ……」
「此処ですか……?!」
デスクチェアの背凭れが壁に当たり、抽挿に合わせてガタガタと音を響かせる。身体を丸める世良はとても苦しそうに見えた。
感じるところを攻めているつもりではあるが、正直なところは、良く分からない。
「ん……。当たって、る……」
「ホント、ですか……?」
「……ぁ……、やっ……」
世良の呼吸が激しくなり、微かな嬌声が混ざり始めて、今中はあっけなく快感に流された。頭の隅で、この人のことだから、しれっとそんな演技をしたのかも知れないとは思ったが。猜疑心など、欲求の前では儚い砦にしかならなかった。
「もう……、イキそ……」
「わた、しも……」
「うぁ……、駄目……」
「すみま、せ……。でも……、んっ……」
いつしか、夢中で世良の体内を突き上げていた。
そして、腕の中の身体が大きく跳ねた瞬間、二人はほぼ同時に吐精した。
「今中せんせ……、動けるようになったらで良いからさ」
デスクチェアの上から世良の声がして、床にへたばっていた今中は顔を上げた。
背凭れに寄りかかって、白衣は腕に絡まり、ワイシャツもスラックスも中途半端に剥ぎ取られ、胸の辺りまで自分のもので汚している姿は蠱惑的以外の何物でもなく、思わずまじまじと凝視してしまう。
「そこの引き出しにタオルが入ってるから、何枚か取って。もし、余力があるなら、1枚濡らしてきてくれると嬉しいんだけど」
「あ、はい……っ!」
「ありがとう」
タオルを受け取った世良が足の間を拭き始めたのに、自分のしたことが思い出されて、今中は慌てて身支度を整え、廊下へ飛び出した。
給湯室の蛇口を捻り、顔を洗う。のぼせ上がった頭に半ば水をかけるようにして、滴を滴らせながら大きく息をついた。逃げても仕方ない。起こってしまったことは取り返せないのだ。
「頭は冷えた?」
先ほどよりは少しはマシな格好になった世良がからかうように声を投げる。お見通しか、と思いながら、お湯に浸したタオルを渡す。
「あんなに渋ってた癖に、随分と気持ち良さそうだったねぇ」
「言わないで下さい……!」
「今更、なかったことにしようなんて認めないからね」
世良がぼそりと言った。幾ら今中だって、そこまで往生際は悪くない。
「勿論、責任は取ります」
「今中先生ってば、相変わらず真面目だなぁ。責任取るって言うなら――僕は、ベッド以外の場所でとか、乱暴にされるのとか、結構好きなんだよねぇ。次からは、自分でもちゃんと、満足させること考えてよね」
「何てこと言うんですか……!」
「だって、そういう仲になったんでしょー?」
天城先生はこの人にどういう教育をしたんだ、と今中は頭を抱えた。しかし、考えてみれば、彼の前の世良は随分と従順だったように見えた。
「……ホント、この言葉を天城先生に聞かせたいですよ」
「そのことはもう良いよ……」
「いや、待ってください!天城先生は、冥界の賭場で大勝ちして手に入れた、現世に干渉できる権利を真っ先に世良先生に使おうとしたって……!」
「何それ?そんな話を信じたの?」
「信じた訳じゃないですけど……」
本人がそう言うなら、確認のしようのない今中としては鵜呑みにするしかない。
「でも、その権利を一番に世良先生のために使おうと願った、ってのは本当だと思います」
世良が瞬時、まじまじと今中の顔を見た。
その動揺を隠すように、慌てて机の上へ視線を落とす。しかし、その僅か後には、息を飲んで、震える手で広げられたノートを掴んだ。
「これ……、どうして……」
「あ、そういえば、世良先生が呆けてるとき、天城先生が何か書いていました」
果てた世良を椅子に座らせた後、天城がペンを握ったのは覚えている。
「でも、日本語じゃなかったので」
「フランス語だね……」
「読めるんですか?」
「……このくらいの単純な構文なら」
「何て書いてあるんです?」
「……」
世良は黙ったまま、じっとノートに目を落としている。
「いや、別に言わなくても良いんですが……」
天城から世良へのメッセージならば、今中が割り込むことではないだろう。その言葉が少しでも彼を救うものであれば良いと願う。きっと、それを天城も望んでいるはずだ。
「……『私は必ず、もう一つの権利を手にするだろう』」
不意に世良が口を開いた。
「世良先生……」
「『ジュノを迎えに来るのは私だ。だから、そのときまで、彼と一緒にジュノの花を咲かせていれば良い』」
呟いた世良の語尾が掠れた。
ノートを持ったまま、額に腕を押し付ける。長めの髪が小さく震えて、泣いているのが分かる。
「天城先生なら、そんな願いでも叶えてしまうんでしょうね」
今中が言うと、世良が微かに頷いた。
「今回の権利も、本当は、最初から違っていたのかも知れません」
「どういう、こと……?」
「前回もそうだったんですけど、天城先生は願いが叶うと消えてしまうんです。でも、最初に言ったことはまだ叶えられていませんよね。その……、世良先生と、っていう……」
もし、天城の言葉が真実であれば、事が全て終わるまで彼が居なくなるはずはない。だが、天城が消えたのは余りにも不自然なタイミングだった。
つまり、彼の要求した権利は、彼の言葉とは無関係だったということだ。
あのとき、起こったこと――今中にはおぼろげに確信があった。それを、彼の手紙が裏付ける。
『もう、一人は嫌なんですっ……』
引き出されたその言葉に、今中は心を揺さぶられた。
「私は、何だか、分かった気がします」
「え?」
顔を上げた世良の目はまだ涙で潤んでいて、今中は思わず手を伸ばした。
世良が受け入れるように目を閉じると、その縁に滴が溜まり、今中はそれを掬い上げる。
「こういうことです」
「まあね。そうなんだろうけど……」
世良は拗ねたような表情を浮かべて、そっぽを向いた。
「でも、何だって、今中先生なんだか。10人束になったって、天城先生には届かないってのに……」
「曲がりなりにも、自分で誘った相手にもう少し言い方ないんですか……」
意気地のない自分を見かねて、余計なお節介をしてくれたのだろうゴーストの次なる勝利を願いながら、この意地っ張りで愛しい恋人の全てを受け入れる覚悟を決めて、今中はそっとその背を引き寄せた。
天城先生の思いを納得していただけたなら幸い。
とても楽しく書けました。極北にも天城先生が現れてくれたら良いのに。
変なパラレル設定は他にもあるので、懲りずに見ていただけたら嬉しいです。
天城が、シャツの前を肌蹴、露わになった胸に所有印をつけながら言う。
「あんまり見ないで下さい……。年、取ったでしょう……」
世良が恥ずかしそうに、シャツの合わせ目を抑えようとする。
壁に背を固定されたデスクチェアに座った世良の足を開かせ、天城はその間に立つ。恥らうような仕草が余計にそそる。
「それがジュノが生きてきた証しだ。それに、此処は随分と元気そうだが」
「そんなこと……」
「さっき、イッたばかりなのに、……ほら」
最も熱いところに触れられ、身体が跳ねる。
「天城先生……、俺の中に、全部下さい……」
世良が潤んだ目でねだる。抱きついてキスすると、天城の手を掴み後口へと誘う。自分から足を持ち上げて広げ、秘所を曝した。それでいて、顔を真っ赤にして恥らってみせるのだから性質が悪い。
「随分慣れてるな。この年になるまで、どのくらいの男を誘ってきたんだ?」
入り口を撫でた指が太腿へと上がる。
世良の目が潤む。
「両手の指、くらいかな?」
口の端を歪めて言う天城に、世良が詰まる。
図星なのかとぎょっとする。
まあ、その誘いに見事に引っかかった一人が自分な訳だが。微妙にショックな数字だ。
「もう、一人は嫌なんですっ……」
世良が泣きそうな声で言う。今中は目を見張った。それが、世良の本心。皮肉な笑みの下に、この人はいつもこんな思いを抱えていたのだ。これまでだって、その思いの片鱗を垣間見せることだってあったのに――
どうして、ちゃんと受け止めてあげなかったのだろう。
「すみません、世良先生……」
世良の動きが止まった。
「今中……先生……?」
その言葉に、数回瞬いて、今中は身体が自分の意思で動くことを認識する。
「え……、どうして……?」
どこからも天城の声はしない。
いよいよ本番という状況で投げ出され、今中は茫然とした。
「結局、約束なんて、こんなもんだよね――あのときも、そうだった……」
世良が口の中で呟いた。咄嗟に反論しようとした今中の唇が世良に塞がれる。
飛びつく付くようなキスは、遠慮のない舌の侵入に続く。両手の指の男を誘ってきたらしいテクニックはそれなりで、最初こそ、天城に習って攻めようと試みた今中の頭は幾らもしないうちに快感でぼんやりしてきた。
やがて唇を離した世良は、見せ付けるように秘所に指を入れ、出入りさせる。思わず、今中の目が釘付けになったのをせせら笑うように言葉を重ねる。
「で、どうするの?――挿入れる?」
最早、先ほどまでのしおらしさなど微塵も見当たらない。
しかし、今中はどこかほっとしていた。
切なそうに涙を落とす世良を見ているのは苦しい。この人は、少しばかり斜に構えた笑みを浮かべて、今中を振り回すくらいの方が良い。その方がずっと世良らしい。
中途半端なところで投げ出された男の生理が主張しているのは認める。けれど、それ以上に、今中は、これまで世良の思いを受け止めなかったことを激しく後悔していた。
「お願い、します」
間の抜けた回答を素直に返すと、世良が今中の首筋を優しく撫でた。ぞわりとした震えが背中を走りぬけた。思わず世良に視線を向けると、伏せ気味の瞳が色っぽく迎える。
「良いよ。来て」
甘やかな声に誘われる。
促されるままに、今中はそこに自らの欲を押し当てた。
「……ん……っ……」
微かに開いた唇から、吐息混じりの小さな声が漏れた。
「大丈夫だから、そのまま……」
「は、はいっ」
天城の準備が良かったのか、世良の体勢が的確なのか、奥に進むのは想像よりは容易だった。
「う……、キツ……」
「少し、止まって」
言われるままにするしかない。
「もうちょっとしたら、多少は慣れるから」
「はい……」
今中は大きく息をつく。
世良の体内は、思った以上に強く締め付けてきた。正直、痛みすら感じるほどだ。
ふと気づくと、世良も苦しげな呼吸を繰り返している。
「世良……先生も、大丈夫ですか……?」
「僕を気遣う余裕なんてあるんだ?」
口の端を歪めて返す世良に、今中は必死に訴える。
「だって、身体は……」
今中が此処までの圧迫感を感じているということは、それを受け入れている世良には更に負担がかかっているということだ。
初めての相手を導くのだって決して楽なことではないだろう。まあ、それだって幾度も経験済みなのかも知れないが。
今中は世良を気遣うように様子を伺う。世良は呆れたようにそんな今中を見上げた。
「全く……。初めての相手にそんな気を遣わせるほど、下手じゃないつもりなんだけどね」
言うなり、腰を動かし始めた。突然の快感に、今中は戸惑う。
「ちょっ……、待っ……。うあっ……」
「ほら、動いたらもっと気持ちよくなるよ」
囁かれ、思わず誘いにのってしまった。気づけば、内側は少し緩んできている。
「でも、あんまり無茶したら……」
「そんなこと言いながら、動いてるよ、腰」
世良がにまりと笑って言う通りで、気づけば欲を追っていた。
「あ、あの、世良先生もちゃんと……」
局部に感じられる刺激は異性とのものとは全く違う強さで今中に伝わってくる。余りに気持ちよくて止まらない。世良の身体のことを考えたが、どうすることもできなかった。
「仕方ないなぁ。じゃあ、僕は自分でするよ」
「え……?!」
驚く今中を尻目に、世良が自分のものに指を絡ませた。
「僕はこれで良い。だから、今中先生も気持ちよくなれば良いさ」
「でも……」
口ではそう言いながらも、我慢出来ない自分が情けない。
世良のことだって、好くしてやりたいのに――
「今、こうしてくれてるだけで、嬉しい……」
耳元で聞こえた声に更に興奮した。まさか、そんなことを世良が言うとは思わなかった。
「世良……せん、せ……」
「あ……、イイっ……」
「此処ですか……?!」
デスクチェアの背凭れが壁に当たり、抽挿に合わせてガタガタと音を響かせる。身体を丸める世良はとても苦しそうに見えた。
感じるところを攻めているつもりではあるが、正直なところは、良く分からない。
「ん……。当たって、る……」
「ホント、ですか……?」
「……ぁ……、やっ……」
世良の呼吸が激しくなり、微かな嬌声が混ざり始めて、今中はあっけなく快感に流された。頭の隅で、この人のことだから、しれっとそんな演技をしたのかも知れないとは思ったが。猜疑心など、欲求の前では儚い砦にしかならなかった。
「もう……、イキそ……」
「わた、しも……」
「うぁ……、駄目……」
「すみま、せ……。でも……、んっ……」
いつしか、夢中で世良の体内を突き上げていた。
そして、腕の中の身体が大きく跳ねた瞬間、二人はほぼ同時に吐精した。
「今中せんせ……、動けるようになったらで良いからさ」
デスクチェアの上から世良の声がして、床にへたばっていた今中は顔を上げた。
背凭れに寄りかかって、白衣は腕に絡まり、ワイシャツもスラックスも中途半端に剥ぎ取られ、胸の辺りまで自分のもので汚している姿は蠱惑的以外の何物でもなく、思わずまじまじと凝視してしまう。
「そこの引き出しにタオルが入ってるから、何枚か取って。もし、余力があるなら、1枚濡らしてきてくれると嬉しいんだけど」
「あ、はい……っ!」
「ありがとう」
タオルを受け取った世良が足の間を拭き始めたのに、自分のしたことが思い出されて、今中は慌てて身支度を整え、廊下へ飛び出した。
給湯室の蛇口を捻り、顔を洗う。のぼせ上がった頭に半ば水をかけるようにして、滴を滴らせながら大きく息をついた。逃げても仕方ない。起こってしまったことは取り返せないのだ。
「頭は冷えた?」
先ほどよりは少しはマシな格好になった世良がからかうように声を投げる。お見通しか、と思いながら、お湯に浸したタオルを渡す。
「あんなに渋ってた癖に、随分と気持ち良さそうだったねぇ」
「言わないで下さい……!」
「今更、なかったことにしようなんて認めないからね」
世良がぼそりと言った。幾ら今中だって、そこまで往生際は悪くない。
「勿論、責任は取ります」
「今中先生ってば、相変わらず真面目だなぁ。責任取るって言うなら――僕は、ベッド以外の場所でとか、乱暴にされるのとか、結構好きなんだよねぇ。次からは、自分でもちゃんと、満足させること考えてよね」
「何てこと言うんですか……!」
「だって、そういう仲になったんでしょー?」
天城先生はこの人にどういう教育をしたんだ、と今中は頭を抱えた。しかし、考えてみれば、彼の前の世良は随分と従順だったように見えた。
「……ホント、この言葉を天城先生に聞かせたいですよ」
「そのことはもう良いよ……」
「いや、待ってください!天城先生は、冥界の賭場で大勝ちして手に入れた、現世に干渉できる権利を真っ先に世良先生に使おうとしたって……!」
「何それ?そんな話を信じたの?」
「信じた訳じゃないですけど……」
本人がそう言うなら、確認のしようのない今中としては鵜呑みにするしかない。
「でも、その権利を一番に世良先生のために使おうと願った、ってのは本当だと思います」
世良が瞬時、まじまじと今中の顔を見た。
その動揺を隠すように、慌てて机の上へ視線を落とす。しかし、その僅か後には、息を飲んで、震える手で広げられたノートを掴んだ。
「これ……、どうして……」
「あ、そういえば、世良先生が呆けてるとき、天城先生が何か書いていました」
果てた世良を椅子に座らせた後、天城がペンを握ったのは覚えている。
「でも、日本語じゃなかったので」
「フランス語だね……」
「読めるんですか?」
「……このくらいの単純な構文なら」
「何て書いてあるんです?」
「……」
世良は黙ったまま、じっとノートに目を落としている。
「いや、別に言わなくても良いんですが……」
天城から世良へのメッセージならば、今中が割り込むことではないだろう。その言葉が少しでも彼を救うものであれば良いと願う。きっと、それを天城も望んでいるはずだ。
「……『私は必ず、もう一つの権利を手にするだろう』」
不意に世良が口を開いた。
「世良先生……」
「『ジュノを迎えに来るのは私だ。だから、そのときまで、彼と一緒にジュノの花を咲かせていれば良い』」
呟いた世良の語尾が掠れた。
ノートを持ったまま、額に腕を押し付ける。長めの髪が小さく震えて、泣いているのが分かる。
「天城先生なら、そんな願いでも叶えてしまうんでしょうね」
今中が言うと、世良が微かに頷いた。
「今回の権利も、本当は、最初から違っていたのかも知れません」
「どういう、こと……?」
「前回もそうだったんですけど、天城先生は願いが叶うと消えてしまうんです。でも、最初に言ったことはまだ叶えられていませんよね。その……、世良先生と、っていう……」
もし、天城の言葉が真実であれば、事が全て終わるまで彼が居なくなるはずはない。だが、天城が消えたのは余りにも不自然なタイミングだった。
つまり、彼の要求した権利は、彼の言葉とは無関係だったということだ。
あのとき、起こったこと――今中にはおぼろげに確信があった。それを、彼の手紙が裏付ける。
『もう、一人は嫌なんですっ……』
引き出されたその言葉に、今中は心を揺さぶられた。
「私は、何だか、分かった気がします」
「え?」
顔を上げた世良の目はまだ涙で潤んでいて、今中は思わず手を伸ばした。
世良が受け入れるように目を閉じると、その縁に滴が溜まり、今中はそれを掬い上げる。
「こういうことです」
「まあね。そうなんだろうけど……」
世良は拗ねたような表情を浮かべて、そっぽを向いた。
「でも、何だって、今中先生なんだか。10人束になったって、天城先生には届かないってのに……」
「曲がりなりにも、自分で誘った相手にもう少し言い方ないんですか……」
意気地のない自分を見かねて、余計なお節介をしてくれたのだろうゴーストの次なる勝利を願いながら、この意地っ張りで愛しい恋人の全てを受け入れる覚悟を決めて、今中はそっとその背を引き寄せた。
天城先生の思いを納得していただけたなら幸い。
とても楽しく書けました。極北にも天城先生が現れてくれたら良いのに。
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