テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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いつも構ってくれるせとかちゃんの誕生日に、夏祭りな天ジュノSS。
せとかちゃんが最初に好きだって言ってくれた話の雰囲気を目指してみました。
って言っても、何処にツボってくれたのか、よく分からないので、デートしてるっぽい感じ、くらいしか共通点ないんだけど…。
せとかちゃんが最初に好きだって言ってくれた話の雰囲気を目指してみました。
って言っても、何処にツボってくれたのか、よく分からないので、デートしてるっぽい感じ、くらいしか共通点ないんだけど…。
広々としたリビングは意匠を凝らされた幾つもの灯りに照らされ、何一つ憚ることなく、その全容を見せていた。天井も壁も、飾られた絵画も、一見シンプルだが、よく見ると非常に手の込んだものであることが分かる。敷かれた絨毯は沈み込みそうにふかふか。さり気無く置いてあるソファは何種類にも及び、この広さと数ならちょっとした待合室に使えそうだなどと思ってしまうのが、貧乏研修医の思考の限界だ。
窓の外は、ちらほらと灯りの点き始めた桜宮の夜景。
この続き部屋には、これまた、同レベルの寝室まであるのだから、全く呆れてしまう。しかも、これでも、かつて天城がねぐらにしていたあの『隠れ家』には遠く及ばないのだから、つくづく世の中には想像も出来ない世界があるものだ。
「ジュノ、ピンク・シャンパンと摘みを適当に頼んでくれ」
「分かりました」
たったそれだけの指示で頼んだルームサービスは、二人ともメニューも値段も未確認だ。天城はそんなもの見ないし、世良は怖くて見られない。色とりどりのベリーがメインの山盛りのフルーツと高級そうなチョコレートは、シャンパンに合わせたホテル側のチョイスに違いない。
今頃、世良の職場である東城大付属病院では当直にあたった医師達が急患の対応に追われているはずだ。天城の下についている世良には、そういった雑務が全て免除されている。そればかりか、お供を命じられて、世良の下宿なら余裕で数か月暮らせるような部屋で悠々と寛げる権利まで手に入れている。
今夜は桜宮の花火大会だった。と言っても、所詮は田舎の一都市の、小規模なイベントだ。
「此処の花火は初めてだな。ジュノ、今夜は時間を空けておけ」
「はあ」
その顛末が、このスイートルームでの時間という訳だ。
金をかけて花火を見るといえば、観覧席の抽選が当たることくらいしか思い浮かばない世良は、最初は何で自分がこんなところに連れて来られたのか、さっぱり理解出来なかった。
部屋に通され、海岸に向けて大きく開けられている窓を見て、ぽかんとしたくらいだ。
例によって、行き先も目的も全く教えてくれなかった天城は、そんな世良を楽しげに見ていた。
それにしても、やっぱり、何となく人混みや暑さと無縁の花火大会なんて、邪道じゃないかなーと思う。
しかし、有難い状況なのは確かだ。
此処数日続いた熱帯夜で、勿論エアコンなどない世良の下宿ではまともに寝られない状況だった。
完璧な空調の効いた部屋の、広々とした寝心地の良いベッドでゆっくり休めるというのはこれ以上ないくらいに魅力的な話だった。
正直、花火なんて適当に付き合って、さっさと寝てしまいたいくらいだ。
まあ、天城とホテルで過ごしている以上、ゆっくり眠らせてもらえるかは別として。
花火までまだ時間はある。
スポンサーのご機嫌取りに、すすんでフルートグラスにピンク・シャンパンを注ぎ、天城に渡して、乾杯する。
「この桜宮の夜景に」
天城が一言添えた。愉快そうに、地上を見渡している。世良はシャンパンを口に含みながらも、この隙に一休みしようとソファに身体を沈める。
「ジュノ、あれは何だ?」
しかし、即座に天城に呼ばれ、隣まで歩かせられる羽目になった。こういうとき、やたらと広い部屋は厄介だ。
言わずと知れた、大して観光地もないこの桜宮にそんなに騒ぐ何があるのかと世良は半ば休息モードになっている頭で考える。窓の前に立つと、疎らな灯りが広がっていて、やっぱり桜宮って田舎だなぁ、などと思った。
「ほら、あそこだ」
天城に指差された部分は、確かに、小さな灯りが幾つも幾つも集まっていた。
「祭りの提灯かと思ったが、それにしては妙な形だろう」
「ああ、あれは祭りの催し物です。和紙とかで作った色んな形の灯りを並べて展示してるんです」
暗くなると、とても幻想的で、子供連れや恋人たちが見に来ていることも多い。
世良は欠伸を噛み殺しながら言う。昔の彼女と出かけたことを思い出す。金もかからず、ロマンチックな雰囲気になるので、貧乏学生にはありがたいイベントだった。さっさとソファに戻ろうとする世良に、天城はにっこり笑って言った。
「それは是非見てみたい」
「まあ、桜宮に居るうちに、1回くらいは……、え?!」
思いもかけない言葉に、世良は硬直する。
「今からそこへ行こう、ジュノ」
既に、天城は歩き出しそうな勢いだ。
「い、行くって……、だって、花火はどうするんですか?!」
「別に、此処でなくても花火は見られる。それに、人混みや暑さと無縁の花火大会は邪道なんだろう、ジュノ?」
微笑む天城に、ホテルでゆっくりする計画が潰えたことを知った世良は、佐伯外科に入局してから最早何十回目になるか分からない、口は災いの元、という格言を噛み締めた。
「ふぅん、なかなか細やかだな」
ヴェルデ・モトで出ると言い出す天城を、交通規制の事情を説明して押し止め、二人で連れ立って歩き始めて数十分ほど。
日はすっかり暮れて、辺りは闇に沈んだ。
街灯すら疎らな場所だが、明かりを見せるロケーションとしては結果的に成功していた。
神社の境内への道は、左右に提灯のような明かりが置かれ、それがずっと先まで続いている。
その一つ一つに切り絵や模様が施され、天城は歩きながらご機嫌な感想を漏らした。
「ワークショップとかで手作りしているみたいです。あと、有名なデザイナーに依頼したものもあるって話ですけど」
喜んでいるなら、結構なことだ。正直、寝不足と疲労の蓄積でだるいのだが、此処は追従しておいた方がいいことを、短い付き合いで世良は学んでいた。
「イルミネーションとしての規模は大したことはないが、見せ方は悪くない」
天城の評価は確かに尤もで、明かりは、池の中に星のように散りばめられたものや、障子の裏側から光を当てたものなど、工夫が凝らされている。
最近ではわざわざ見に来ることもなくなっていたが、黄金地球儀を作ったくらいだ、こういったイベントの予算もそれなりにあるのだろう。
「こんなところに神社があったんだな」
鳥居を潜った先は、祭りの中心地だ。
出店と、花火を待つ人達の熱気に溢れている。
「元々は、ずっと昔、この祭りに来た女の子が行方不明になるような事件が何度かあって、神隠しで闇に引きずり込まれたとか騒がれて、陰を失くそうってことから始まったらしいですけど」
今ではすっかりイベント化して、そんな謂れがあったことも忘れられているが。
「ジュノ、向こうの明かりが面白そうだ」
「あー、はい……」
そんな世良の説明も耳に入っているのかいないのか、天城は神社の敷地の奥へと足を踏み入れていく。
この辺りは森に囲まれていて、花火が見辛いのか、目に見えて人気がなくなった。
天城が見たがったのは、傘のような形の明かりを幾つも重ねたオブジェだった。
「これは結構手がかかってますね」
大掛かりなので、運ぶのも大変だっただろう。
オブジェの前で天城に話しかけた世良は、隣を見て硬直した。
天城の姿はなかった。
視界を占めるのは黒々とした森。
――元々は、ずっと昔、この祭りに来た女の子が行方不明になるような事件が何度かあって、神隠しで闇に引きずり込まれたとか騒がれて、陰を失くそうってことから始まったらしいですけど。
自分の声が蘇る。神隠し。
闇の中にすっと消えていく天城のイメージが浮かぶ。
何処が、陰を失くそうだ。陰だらけじゃないか。
「天城……先生……!」
世良は、近くの植え込みの間の小道へ向かって駆け込んだ。
早く見つけて引き戻さないと取り返しのつかないことになる気がして、じっとしていられなかった。
どん。
腹の底に響く音が聞こえた。花火が始まったようだ。
――何で、こんなことになってんだよ?!
無理矢理にでも止めれば良かった。そうすれば、赤々とした室内で、ほろ酔い状態で転寝を始めた瞬間に起こされて、花火が始まったと相槌を求める天城に、あーそうですねぇ、なんて気のない返事をしていたはずなのに……。
――花火ですよ、天城先生!
――貴方は、こんな田舎の、こーんなにささやかなのを見るために、あの馬鹿高い部屋を予約したんじゃなかったんですか?!
正面に見えた光へと向かってひた走った。不意に、視界が開ける。
そこにあったのは、光を放つ傘の塊――どうやら、一回りしてしまったらしい。
どん。
音はしたが、周囲を覆う木に遮られて、肝心の花火は見えなかった。
汗が滴って、落ちた。
花火の間隔は、間が抜けるほどに長かった。
――早く、光れ。あの人を照らせ……!
「何処へ行っていたんだ、ジュノ?」
耳に届いた声に、世良は信じられない思いで振り返る。
どん。
辺りが一瞬明るくなる中、訝しげな表情の天城の姿を捉える。
「何処行ってたんですか?!」
思わず、声を荒げてしまった。
「あの明かりの裏側を見て、戻ったらジュノの姿がなかったんだろう」
世良の剣幕に、天城は気圧されるように答える。
「勝手に動かないで下さい!か、神隠しに遭ったのかと……!」
「神隠し?私が……」
一度瞬いた天城は、僅かな間の後吹き出した。
「な、何で笑うんですか?!」
世良も毒気を抜かれ、怒りを持続しようとしたが、それは無駄な試みに終わった。
「私が神隠しだぞ。ジュノは本気でそんなことを考えたのか?」
そう言われると、徐々に自分のしたことが恥ずかしくなってくる。
「でも、隣から突然居なくなって……」
「目を離さなかった訳じゃないだろう。普通ははぐれたと思うぞ。選りにも選って、神隠し、とは……」
確かに、天城の言葉の方が遥かに正論だ。
何でそんなことを考えてしまったのか、世良は、過去の自分を恨んだ。
「も、もういいです!忘れてください!!」
世良は真っ赤になって訴える。
「悪かった、ジュノ。こんなに汗だくになってまで、私を探してくれたのにな」
天城の指が世良の髪をかき上げ、逆の腕が背に回る。
「せ、先生!こんなところで……」
「誰も私たちのことなど気にしていないさ」
意味ありげに口の端を上げた天城の視線を追うと、そこかしこの木陰に見える影は、相手をうっとりと見つめるのに夢中で、中には、既に素肌を弄り始めているペアも居た。世良は赤面する。
「な、尚更、駄目……、んっ」
拒否の言葉は、天城の唇に飲み込まれた。
歯列を割って入り込む舌の動きは、とても世良には押し止められない。たちまち腰の辺りが重くなってくる。
世良は耐えられずに、天城の背に縋る。
――もう、どうにでもなれ……。
若い身体は欲も持て余し気味で、快感に流されるのも早い。
天城の指先がシャツの中に入り込み、脇腹をなぞる。思わず、吐息に混ざった声を飲み込んだときだった――
「そこ、何をやっている?!」
野太い男の怒鳴り声だった。
思わず、世良は飛び上がる。
声のした方を見ると、そちらにも若い恋人同士が一組おり、愛を確かめ合っているところを見咎められたらしい。彼女らしい方が悲鳴を上げた。
「逃げるぞ、ジュノ」
天城の反応は早かった。先ほど世良が駆け抜けた小道の方へ、自然な動きで移動していく。世良も少しぎくしゃくしながら後に続いた。
歩いているうちに笑いが込み上げてきて、二人で声を出して笑った。
「天城先生が捕まって逃げるところ、見たかったです」
「この程度、あちらでは日常茶飯事だ。耐えられないのはジュノの方だろう」
他愛も無い言葉を交わしながら歩いていくと、先ほどは通らなかった分かれ道があった。
そちらの方へ向かうと、花火の見物客が思い思いに散らばっている広場に出た。
「そういえば、花火見に来たんでしたね。もう終わりじゃないですか」
時計を確認すると、9時近かった。次の瞬間、夜空に大輪の花が咲き、重なるように幾つも幾つも開いていった。相変わらず、間のいい人だ。
「三尺玉30連発には間に合いましたね」
祭りの大トリ、唯一と言っていい目玉だ。
返事が戻って来なかったので、慌てて隣を見たら、きらきらと目を輝かせて夜空に夢中になっている綺麗な横顔があって、どきりとした自分を叱る。
――俺がこんな目に遭ってるのは、この人の所為なんだぞ。ほだされてる場合じゃないんだからな……!
そうやって強く自分に言い聞かせてみたのに、またも、ちらりと少し高い位置に目線を上げてしまう自分はつくづく馬鹿だ。
ほう、と天城が詰めていた吐息を漏らす。同じタイミングで、場の空気が弛緩したのに気づく。夜空を見上げると、焼け落ちた火花がゆっくりと消えていくところだった。
「何だか、疲れたな」
天城が呟く。
「タクシーを呼んでくれ、ジュノ」
また、何を言い出すのだ、この人は……。
「来れる訳ないでしょう!この帰っていく人の数を見てください。交通規制だってあるし。乗れるまでに1時間はかかりますよ!」
だったら、歩いて帰った方が早い。
「来た道をまた歩くのは嫌だ」
「何言ってるんですか?!」
思わず、上司だということも忘れてツッコんでしまう。
「歩かなきゃ帰れないんですよ!」
しかし、そんな世良の反応など何処吹く風で天城はぽんと手を打った。
「そういえば、ジュノの家はこの辺じゃなかったか?」
「は?!」
咄嗟に反応できず、口をぱくぱくさせる世良に、天城はにこにこ笑って決定事項を告げた。
「そうだ、ジュノの家に行こう。折角だから、ジュノの家を見てみたい」
無理だ、この命令を覆すなんて出来る訳がない。
世良に可能だったのは、「いいですか、本当に狭いんですよ。エアコンもないから暑いし、声や音が響くからさっきみたいなことは絶対に駄目ですからね!」と釘を刺すことだけだ。まあ、それでも、文句は言われるのだろうが。
――この人、もういっそ、今だけ神隠しに遭ってくれないだろうか……。
世良は、まだ未練がましく脳内に絡みつく、あの夢のような空間に別れを告げ、人いきれの中を、無邪気に笑う貴族サマを連れ立って歩き始めた。
ホントは、ペアンネタでいこうと思って読み返してたんだけど、読み終わらなかった。ごめんね。関川先生のスナイプの直前までは来たんだが。久し振りに読んだら面白ーい(いや、そこはせめて、読んだけど、ネタ出なかったくらいにしとけよ…)
あと、この明かりのイベントはうちの地元に実在します(笑)さすがに、花火大会には被せてこないけど。
以下、私信にて失礼。
せとかちゃん、お誕生日おめでとう。そして、テストお疲れ様。いつもメールありがとう。気づけば、1年だよーvvv
地方でマイナージャンルを転々としてきた私には、オフで好きキャラ話で盛り上がるなんてなかなか出来ない体験なので、楽しかったなぁ。まさか、この歳で、こんな若いお嬢さんに構ってもらえるとはwせとかちゃんの行動力には頭が下がります。9月もよろしくね。
果たして、せとかちゃんが喜んでくれるものになってるか分からないけど、久々のドタバタ天ジュノ、楽しんでもらえたら嬉しいです。
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