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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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そういえば、コンテンツ開設して1周年です。つまり、スリジエ連載終わって1年。SS書きまくってきたけど、まだまだ全然、世良ちゃんの魅力を伝え切れてる気がしません。まあ、相変わらず、無節操に思いつくままに、無駄に世良ちゃん愛にだけは溢れるサイトで、だらだらSS書いていきたいと思います。いつも来てくださる方、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
因みに、ちょっと数えてみたら、記事数だけだと83、SS数(前後編・連載は1とする)だとちょうど50…!(あ、でも、此処独立させる前に10本くらいは書いてたのか)
天ジュノはともかく、去年の今頃、まだ今世良書くか迷ってたなんて、信じられないですね。吹っ切れてからの増え方といったら…!(笑)
で、本日は、1周年全く関係ないですが、天城先生がある能力を持ってたら、ってオハナシ――

連載時点で、天城先生はもう一度スリジエ創設をやり直す気はないと思っていたので、単行本の加筆部分読んで吃驚しました。
天城先生にとって天の啓示ってのはそんなに簡単に逆らえるものなの?という疑問から、いや、本当は絶対に逆らっちゃいけないものなのに、どうしても従えなくて、だからこそのあの結末なんじゃないの、と思って、桜天ジュノにその要素を入れてみたりしてました。
で、最近、イカサマライフゲイムを聞いたら、この能力を天城先生が持っていたら妄想が一気に爆発しまして、こんなものが…。
中二っぽい設定も大好きなので、歌詞の色んなキーワードを天城ナイズして突っ込んでます。ストーリーはあくまでブレイズ・スリジエ準拠なので、歌の筋とは違いますが。ただ、天城先生の過去を若干捏造してますので、苦手な方はご注意ください。

拍手[11回]



 ――親愛なるジュノへ
 私はこれからスリジエセンターのスポンサーになってくれそうなある人物と会う予定がある。だが、そのまま戻ることはないだろう。何故なら、私は今日死ぬからだ。
 どうして、そう断言できるのか――それは、そのことを私に通達する者が居るからに他ならない。
 私は、その存在をジョーカーと呼んでいる。『それ』は人ではない。私が感じるのは気配だけだ。だが、確かにそれは存在し、私を導いてきた。
 その物語を、今から書き記そうと思う――


 私が初めて啓示を受けたのは、術死という恐ろしい体験をした直後だった。
 その悪夢のような時間を思い出すだけで震え、二度と手術など出来ないとすら思えた。
 そんな私に再びメスを握らせようとしたのは、意外にもカジノでの顔見知りだった。心臓病を患っていた彼は、見知らぬ人間に腹を切られるのは嫌だ、貴方に頼みたい、と幾度も懇願してきた。私が術死の話をしても、その気持ちは変わらないようだった。
『シャンス・サンプル、ルージュ・ウ・ノワール?』
 そのとき、耳鳴りのような声が響いた。
 私は戯れのように、運試しの賭けを提案した。
 それが初めてのシャンス・サンプルだった。
 そして、彼は賭けに勝ち、手術は成功した。
 それからも、私は患者に対して常に賭けを持ちかけた。
 絶対にやろうとしない者も、ふざけるなと病院にクレームをつける者も居た。
 けれど、私は強硬にルールを守り続けた。
 ジョーカーの啓示は他にもあった。それは、『明日の午後は雨が降る』などという些細なものから、『この道を通ると、約束に間に合わない』などというものまであった。
 その頃、私は破格の待遇で、ある病院から引き抜きを受けた。
 意外にも、ジョーカーの答えは『その誘いには応じるな』だった。
 私は迷わず従った。
 すると、半年後にモンテカルロ・ハートセンターから更なる好条件での誘いがあった。
 もう、間違いはなかった。
 ジョーカーの啓示は、信頼に値する未来の予知だった。
 それに従うだけで、私は成功を約束されたも同然だった。
 だが、私の心は少しずつ死んでいった。
 未来へと広がる可能性は消え、私はそれを埋め合わせるようにギャンブルにのめりこんだ。ジョーカーは賭け事の結果に口を出すことはなかったのだ。
 だが、そんな私の持つ影の部分に寄り添うように、私の関わる賭けでは黒が圧倒的に強くなった。ネージュ・ノワールのジンクスについてはジュノにも話したことがあっただろう。私は、自分がそう呼ばれるのを皮肉な思いで聞いていた。
 同時に、私はシャンス・サンプルから零れる命に無関心を装い続けた。もし、私の持てる力全てを使って挑めば、予知を覆せるかも知れない。
 そう思いながらも、私は術死の恐ろしさに怯え、彼らの命を顧みることをしなかった。そして、何時しか、私はそういったことを考えることも止めてしまった。
 そう、私は感情すらも殺してしまったのだ。
 ジュノが私の前に現れたのは、そんなときだった。
 アン・プリゾン――その結果は、私を少なからず動揺させた。
 シャンス・サンプルが振り分けることが出来なかった、初めての人間。私はジュノをそう評した。
 正直、恐ろしかった。
 同時に、愛しかった。
 先の見えない未来。
 私にとってそれは、長らく足を踏み入れることのなかった世界だった。
 あのとき、眠ってしまったジュノは知らないだろう。
 だが、私は、確かに嗤ったのだ。
 日本に行って桜を植える――何て、魅力的な誘いだろう。しかも、その結末は、見えない。
 私はずっと、ジュノを待っていたのかも知れなかった。


 その気持ちは、あの結末を迎えた今でも変わらない。
 あらゆる者に憎まれ、足を引っ張られ、失意の果てに帰国を決意したはずなのに、私は今でもあの時間を愛しく思っている。いや、再び導きのままに歩き始めた今となっては尚更だ。
 この無為な生活に比べたら、あの桜宮での日々は何処までも輝いていた。
 時々、私の耳に桜宮の潮騒が蘇る。
 それは、ジュノとの約束を守らなかった私を責める。
 けれど、同時に、心地よく私を包んでくれる。
 潮騒の音に耳を傾け、大海原の幻影に目を奪われる――モンテカルロに居ながら、心だけは桜宮に置き忘れたような私の生活を終わらせたのは、またしてもジュノだった。
 日本からの手紙が届いた。
 夢中で封を切ろうとした私に、ジョーカーは言った。
『その手紙を開けたら破滅する』
 処分しろ、と言うジョーカーの声に手を止めながら、けれど、私はどうしても、それを捨てることは出来なかった。
 いつかそうすると自分に言い聞かせ、私は手紙をそっと机の上に置いた。
 しかし、ジュノは諦めなかった。
 手紙はあっという間に山になり、あるとき、些細な振動でそれは崩れた。
 床一面に広がる「ドクター・ユキヒコ・アマギ」の文字。
 懐かしいジュノの字体。
 そこには切実で、無心で、一途な想いが籠もっていた。
 もう、耐えられなかった。
 私は片っ端から封を切り、床に座り込み、夢中で手紙を読んだ。
 手紙には幾度も同じエピソードが綴られていた。
 分裂・崩壊した佐伯外科のこと、そして、ジュノがそこを辞めたこと。
 日本に戻って、海の見える手術室を見せてくれという願い、迎えに来るという言葉――
 繰り返し、繰り返し、それは、私に訴えかける。
 そして、読むうちに、私の心は決まっていた。
『返事を書いたら、君はもう二度と桜を見ることはない』
 立ち上がった私に、再びジョーカーが言う。
 だが、私はただ嗤った。
 ――こんな日々が一生続くのであれば、その方が遥かにマシだ。
 初めて啓示に逆らった自分に、私はとても満足していた。


 そして、昨日、ジョーカーは告げた。
『明日、君はどう頑張っても死にます』
 だから、私は死ぬ。
 ジョーカーの予知がどれほどに絶対的なものか、私は知っている。
 返事を書いたときから、私はこの瞬間を覚悟していた。
 ジュノは、手紙を書いたことを悔いるかも知れない。けれど、その必要はない。私は感謝しているくらいだ。ただ、此処へ辿り着き、事実を聞かされ、放心するジュノを思うと苦しい。
 本当は、もっと早くにジュノを此処へ呼び、会いたかった。
 だが、私の破滅が何処で始まるか分からない以上、ジュノを巻き込む可能性がある。
 それだけは避けなければならなかった。
 この手紙もジュノに渡したいが、それをすれば、ジュノは自分を責めるだろう。
 それもまた、私の望むところではない。
 だから、私は桜を植えた。
 桜宮岬のときのように、投げやりに無念をぶつけただけの植え方ではない。
 場所を選び、地面を整え、人手をかけて、次々と植えられる環境を整えた、未来永劫続く桜並木だ。
 この桜並木が意味すること、そこに込めた私の思いをジュノは必ず汲み取ってくれる――そう信じている。
 そして、松明の炎を受け取り、ジュノの桜を植える、その姿だけは見てみたかったが……。


 そろそろ、出かける時間だ。
 じたばたするつもりはない。
 予定通りに動き、今日一日を過ごすだけだ。
 では、ボン・ボヤージュ、ジュノ。
 そして、少し先の自分自身にもこの言葉を送ろうと思う。
天城雪彦

 天城は万年筆を置き、立ち上がった。
 手紙を封筒に入れ、引き出しにしまうと、鍵をかける。
 そして、少し考えてから、本棚から色褪せたモナコのガイドブックを引き抜き、ぱらぱらと捲った。
 やがて、グラン・カジノのページに辿り着くと、栞のようにそこに鍵を挟み、元の位置に戻した。
 そして、悪戯めいた表情で嗤い、足早に部屋を出て行った。


ジュノジュノって天城先生になりきって書くのは楽しかったです(笑)天城先生の一人称って、結構強烈なネタじゃないと出来ないので、たまにやると凄く面白い。
さすがにこれが自分の解釈だ、とまで言うつもりはないんですが、こう考えると、微妙に宙に浮いてる部分が幾つかしっくり来るんですよね。冒頭に書いた天の啓示の位置付けとか、天城先生がただの研修医の世良ちゃんにあんなに惹かれた訳とか(腐視点で見るならともかく、一般小説としてはちょっと弱いんじゃないかと思う)、無神論者なはずの天城先生の祈りの相手、とか。
この手紙は、いつか世良ちゃんに転送されてもいいし(極ラプ以降希望)、100年くらい後にホテルの従業員(日本語を勉強している若い女性辺り)が見つけて、その物語に胸をときめかせてもいいと思ってます(笑)
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