テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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そういえば、天ジュノの馴れ初めを書いたことなかったな、と気づいて、「全然つかめないきーみのことー全然しらないうちにーココロうばわれるなんてことーあーるーはずなーい♪」なメランコリックな世良ちゃんを書いてたんですが、あまりに暑くて、よし、きっかけは猛暑にしよう!とか思ったら、酷いカオスになった…。
1週間分のTシャツと下着を、下宿の共同洗濯機の中に放り込み、世良は時間を確認しながら自室に戻る。
旧型の二層式洗濯機の洗いと濯ぎはトータル20分。それが終わったら、脱水をするためにもう一度此処に来なくてはならない。
この空き時間に、散らかりっ放しの部屋の片付けやゴミ捨てを済ませる予定だったのだが、すっかり計画が狂ってしまった。
世良は、降り注ぐように間断なく響く蝉の声を聞きながら、ドアを開けた。世良のいつもの休日を一変させた原因はそこに居た。出ていったときは、座布団の上で足を組んだり崩したりしていたが、今はすっかり伸ばしている。
それどころか、座卓の表面にぺたりと頬を押し付けて突っ伏していた。
「暑い……」
確かに、真夏の最中、今朝の天気予報では、気温が30度を越えると言っていた。実際、世良の身体は、階下の廊下まで移動しただけで軽く汗ばんでいる。その感想は正しい。
「暑いなら、自分の部屋に戻ればいいじゃないですか!」
問題は、こんなエアコンもない安普請の部屋に、何故、このモンテカルロのエトワールが居るのかという話だ。
「どうせ、天城先生の部屋はいつも適温に設定されてるんでしょう」
行ったことはないが、そのくらいは想像できる。電気代なんて考える必要もない貴族サマなのだ。
「湿度だって、常に適正値だ」
「それは、素晴らしいですね!」
嫌味で言ったら、真顔で訂正された。どうやら、このじめじめ蒸し蒸し感もないらしい。それなら、ますます結構なことだ。
世良は、天城が来てからずっと押し込めていた疑問を口にする。
「だったら、こんな暑くて湿っぽい貧乏下宿に何しに来たんですか?!」
天城が顔を上げた。
少しばかりバテ気味の表情はいつもの精彩さを欠いていたが、すれ違う女性を振り返らせるほどのルックスは相変わらずだった。真っ直ぐ見つめられると息が詰まる。とても視線を合わせられずに目を逸らした。
「ジュノに会いに来ただけさ」
言って薄く笑う天城を包むのは、窓から差し込む真昼の眩しい光。
「……っ……」
「ジュノ?」
「何……でっ……!」
世良は、スニーカーを脱ぎ、大股で部屋の中に踏み込む。
不思議そうにこちらを見ている天城の肩に腕を回して、乱暴に体重を乗せた。
「ジュノが好きなんだ」
旧教授室に呼び出しを受け、あれこれ指図されながら、事務室に提出する書類の手伝いをしていたとき、天城が何気なく言った。
余りに何気なさ過ぎて、午後から佐伯教授に呼び出されてる、くらいの言い方だったから、危うく聞き逃しそうになった。
「え……?」
次に聞き違いじゃないかと疑う。いや、そうじゃないにしても、今考えていることと別の意味だったとか。何しろ、たった二言しか聞いていないのだし。
「ジュノを好きになった」
「あの……、好感を持ってもらえるのは嬉しいですが、その言い方だと誤解を招く恐れが……」
三言になっても主旨は変わらず、仕方なく、世良は無難な方へ話題を逃がした。
此処は日本だ。モナコでは、親愛の情に対してもそういう風にはっきり言うのかも知れないけど、此方ではそんな習慣はないんですよ、とやんわり補足してみる。
「本当は分かっているんだろう、ジュノ?私がそんな意味で言っているのではないということくらい」
天城は揺るがない声で言い切った。
「そんなこと、言われても……」
「別に、ジュノを困らせるつもりはない。ただ、言いたかっただけだ」
天城は衒いなく笑って、世良の入れたコーヒーを一口飲んだ。視線は既に作業に戻っている。
「そんなことを言えるほど……」
――俺の何を知ってるって言うんですか?
世良は内心で、口の中で転がした言葉の続きを問いかけた。
天城と出会ったのは、ほんの数ヶ月前。
会うのは、日中、この旧教授室に呼び出されたときだけ。
交わされる言葉は、天城が創ろうとしているスリジエ・ハートセンターの構想の件が殆んどで、後は、我が儘な天城がこれくらいは頭に入れておけとばかりに主張する、彼の好き嫌いに纏わる話題くらいのものだ。
世良はといえば、突然割り振られた業務に泡を食って、この唯我独尊の男と佐伯外科の面々の間で汲々としているばかり。
同性だということをさて置いても、一目で惹かれるような魅力などないし、心を曝け出すような話をしたこともない。これが、世良から天城に対してなら可能性はあったのかも知れないが。何せ、この天城雪彦という男は、物腰は優雅だし、容姿も申し分ない。
――要するに、勘違いか、大袈裟過ぎってだけだろ……。
世良は気を落ち着けるように溜め息を吐いて、眼前の書類を睨み付けた。
「ジュノ……」
天城の手がくしゃりと世良の髪を掬う。
慈しむように丁寧に撫でるそれに、鼓動が高まる。地肌に触れる指先が心地いい。
しかし、次の瞬間、すっとその手が遠くなった。
あっと思う間もなく、天城の心は遥か天空に飛んでいた。
「綺麗な星空だな、ジュノ」
無邪気に喜ぶ顔をちらりと見る。
相変わらず、腹が立つくらいに綺麗な人だ。
見た目も、心根も。正直で純粋で、悪気がない。
だから、余計に、無愛想で素直じゃなくて、いつも裏腹な自分を思い知らされる。
でも。
――誰もが、貴方みたいに出来る訳じゃないんですよ……!
世良は、じっと天城を見る。普段は突然好きとか言い出して世良を悩ませてばかりいる癖に、肝心なときに、世良がこうして見ていることにも気づかない。
「俺は……」
呟いた声に、天城が振り向く。
ぎくりとした途端、目が醒めた。
「……夢か……」
じっとりと汗をかいていた。暑い。
時計を見ると、午前2時。
寝たのは0時を過ぎていたから、殆んど眠れていないことになる。
此処数日、暑さの所為で、ずっとこんな調子だ。
「でも、それだけじゃないよなぁ……」
夢を見る。あの、思いのままに生きる天才の夢を。
「だから、あの人があんなこと言うから……」
『ジュノが好きなんだ』
ふざけるにも程がある。
世良は天城とは同性だし、会ったのだってほんの数ヶ月前。
天城のことなんて殆んど知らないし、それは彼だって同じはずだ。
なのに、眠れない。繰り返し、夢に見る。
『ほらほら、ジュノ。こっちに来て、見てみろ』
昨日もはしゃいだ声で呼ばれた。うっそうと繁る緑の間に垣間見えた花を指差して、宝物を見つけた子供のように笑いながら。
――ほらほら、じゃないだろ!
……そして、やっぱり、今日も眠れないのだ……。
耳を打つのは、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシ――
それぞれの主張が入り乱れ、絶叫はまるで耳に木霊するベルのようだ。
湿気の絡みつく大気は重くて、小さな動きすら鈍重にさせる。
じり、と肌を灼く光は蝕むように強い。
目を射るような視界はただ、眩しくて白かった。
意識が朦朧として、視界が歪む。
くらりとよろめき、ふと自分が何をしているのか、分からなくなった。
「ジュノ?」
そんな世良を現実に引き戻したのは、聞き覚えのある声だった。
よく知る声音――
本当は、ずっと欲しかった。
自分を呼ぶ以外の音なんて要らない。
こっちを見て欲しくて。
手を伸ばして、触れてくれと何度も――
「ジュノ、それで、これからどうするんだ?」
その声に我に返ると、くつくつと笑う天城の端正な顔が下方にあった。
「え……?あ。えええ……?!」
「下心のある相手に押し倒されたことは何度かあるが、その後に、パニックしたのはジュノが初めてだな」
圧し掛かるような姿勢で硬直する世良の髪を撫でながら、天城が愉快そうに言う。いつかの夢と同じ感触に、世良は身を竦ませる。
「な、何でもないです……!忘れてください!!」
「何でもない……?」
天城がひた、と世良を見据える。
強い視線に居た堪れず、逃げを打とうとした世良の動きが止まる。
「散々焦らした挙句、こんな挑発までして、『何でもない』で済ませる気か?」
「だ、だって……」
「初めて会ったときから、ジュノはいつもそうだ。グラン・カジノであんなにも強い思いで、私の心を掴んでおきながら、日本に帰るなり知らない振りだ」
Tシャツの中に指を滑り込ませられ、世良は、わきゃあと悲鳴を上げる。
「色気のない声だな」
言いながら、手の平で世良の頬を包む。
先ほどから身体に纏わりつく熱風よりも、更に熱い手だった。
目を逸らそうとしたが、がっちりと押さえられて動けない。
少しだけ持ち上がった顔が近づく。
唇が触れる。
――嘘、だろ……。
直前で気が変わることを期待したが、願い虚しく、お互いの繊細な部分同士は触れ合った。しかも、嫌悪感はなかった。
天城は、ちゅっちゅっとわざと音を立てて、軽い接触を繰り返した。
どんな顔をしたら良いか分からず、強く目を瞑っていた世良は、やがて動きが止まったのを確認して目を開けたが、同じ距離のまま、楽しそうに自分を見ている天城の視線に気づいて固まる。
「あ……、えと……」
「逃げないのか?」
確かに、天城の言う通りで、世良が上位になっているこの状態では、天城は、相当の力を出さなければ抜け出せない。
なのに、場の主導権は完全に天城が握っている。
「……ジュノはいつもそうだ」
天城が真っ直ぐに世良を見据えて繰り返す。
その言葉に僅かに紛れている非難に、世良はしどろもどろになりながらもどうにか口を開く。
「あのときは、佐伯教授の命令だったから……」
「命令?そんなことのために、ジュノは全財産を賭けて勝負を挑み、何が待っているか分からない私の部屋にまで付いて来たのか?」
「それは……」
「私はあの時、完全にジュノに心を奪われた。気づいたのは最近だが、間違いない」
世良は息を飲む。
あの時既に、この人はそんな気持ちを持っていたって言うのだろうか?
「ジュノ」
その胸に抱きとめられ、世良は動けない。
滲む汗が混ざり合う。
「本当に、命令だけ、だったのか?」
「どういう意味ですか……?」
「ジュノの中に、私の心を奪おうという気持ちは全くなかったのか?」
世良は目を見張った。
――この人の心を……?
あのモンテカルロの夜を思い出す。
金の亡者と怒って罵る垣谷の言葉を聞きながら、到底容認出来ないシステムに茫然とした。
それでも、世良は再びグラン・カジノに行った。
何故?
――ろくに世良を見もしなかった男の目を此方に向けたくて。
「俺は……、その……」
あの瞬間、そうして世良は、自分の持つ全てを賭けて勝負に挑んだ。
「どんな忠犬でも、心と裏腹なことを、あんなに一途にはできないものだよ、ジュノ」
からかうような口調の天城の声が、押し付けられた胸に響いた。
「それに、本題は此処からだ。そんな自分の心を知って、ジュノはこれからどうするんだ?」
――どうするって……?
彼のことを何も知らない自分が、好きになるなんてありえないって思っていたのに。
今より更に知らない頃から、彼の心を掴もうと必死になっていたのが、自分の方だった、なんて……。
悩み始めた途端、唐突に、天城の腕から流れ込む熱に気づいた。
「先生……」
「どうした、ジュノ?」
期待に満ちた声に申し訳なさを感じたが、気づいてしまったら、これはちょっと我慢出来ない。
「……暑くないですか?」
「ジュ・ノ」
一語ずつ区切られた呼び名に込められた責めをあえて無視して、世良は繰り返す。
「こんなことしてられる室温じゃない、というか……」
「暑いな……」
呟いた天城は、会話が中断した腹癒せのように、少々乱暴に世良の身体を押し退けた。
「暑いぞ、ジュノ」
気づけば、二人とも汗びっしょりになっていた。
「ちょっと待っててください。冷蔵庫にアイスがあったかも」
世良はバタバタと部屋を出た。
ドアを閉めたところで立ち止まり、大きく息を吐く。
天城と触れ合っていた部分がまだ熱い。
――で、これからどうするんだ、俺……?
こんな気持ちを抱えたまま、この後も、こんな狭い部屋で彼と過ごすなんて、考えただけで頭がくらくらする。
「ジュノ、まだか?」
ドア越しに聞こえた不機嫌な声に、世良は慌てて共同冷蔵庫に駆け寄る。
「お待たせしました」
何時買ったかも定かではないアイスキャンディを差し出すと、天城は満足そうに受け取った。
「ひんやりしていて、気持ち良いな」
「……」
さっきまで世良に返事をせがんでいたのに、もうアイスに関心の全てを移している。ワンコインのアイスだろうが、高級フランス料理だろうが、垣根なく味わって楽しんで喜ぶのが、この天城雪彦という男だと知ってはいるが……。
何だか、むっとした。
「先生」
「ん?」
世良は、天城の手を引き寄せると、彼の食べかけのアイスに齧り付く。
「俺を見てください」
驚いたように世良にまじまじと視線を向けた天城が不意に吹き出した。
「私はとっくに、ジュノしか見ていないぞ」
「嘘ですね。完全にアイスに夢中だったじゃないですか」
「ジュノがアイスより魅力的なら、直ぐにジュノに夢中になるさ」
「……アイスと天秤にかけるとか酷くないですか」
むっとして返しながら、世良は天城と唇を重ねた。
冷えた舌同士が絡んだが、それも一瞬で、直ぐに温んだ。混じり合う吐息の音は相手の耳に入るより先に蝉の声に掻き消されていく。背に感じた畳の熱に包まれ、世良は、二人の手に握られたアイスのように熱気と湿気の中に身体を溶かした。
普段はツンデレだったり、自制心の強い苦労人系受が、暑さでリミッターぶっとんで、振り回し系攻も吃驚な襲い受になるというのが割と好きで、毎年色んなキャラでやってるんですが、いい加減、似たような話になるしなーと馴れ初めネタと融合させたのが今回の敗因です…。いつか、もっと可愛い馴れ初めをやってやる…。
メランコリックは「こころ奪おうとしてたのはわたしのほう」がもう、可愛過ぎです…!
アイスはどろどろ、洗濯物放置で隣室から苦情がくれば良いと思います(いや、それ以前に、お隣からは喘ぎ声が堪らないと苦情(?)が…)
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