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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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せとかちゃんが高世良で読みたいと言ってくれたので。ありがとう、書いてみたよ。

拍手[6回]



「世良君、ちょっと手伝ってもらっても良いかな?」
 その言葉で、世良の今晩の残業は確定した。ツイてないなぁ、という同期の北島の視線を感じたが、世良は大きく頷いた。
「勿論です!」
「それじゃあ、こっちに来てくれないか」
「はい!」
 ぱたぱたと指導医の高階を追う。
「悪いね、もうすぐ帰れたんだろう?」
「いいえ!どうせ、帰ってもやることなんてないですし!」
 空元気ではない。
 心底、高階と居られることが嬉しいのだ。世良は高階に憧れていた。役に立てるなら何だってしたいし、こうして一緒に居られるだけで心が弾むような気持ちになってくる。
 高階はそんな世良を見て、目を細めた。
「学会までに整理しておきたい資料があるんだが、業務時間中は難しいし、一人でやったら何時になるか分からないからね」
 高階が指差した場所には、ファイルの詰まったダンボール箱が5つ。
 資料室内なので、作業は高階と二人きりだ。
「はい、頑張ります!」
「世良ちゃん、乙女オーラ出てるぜ」
 早速1個目のダンボールに取り掛かろうと、ファイルを掴んだところで頭上から声が投げかけられた。
 見れば、欠伸を噛み殺している悪魔のにやにや笑いがそこにある。
「お、乙女オーラって何ですか……っ?!」
「渡海先生、こんな時間に珍しいですね」
 高階の言う通り、既に、勤務終了時間は長針二周りも過ぎている。渡海が邪魔という訳ではないが、この調子ではあることないことを適当に喋り出し、からかわれるのが目に見えている。どこまで気づかれているのかは分からないが、出来ることなら今は余り居て欲しくなかった。
「午後の手術が長引いて、寝過ごしちまったんだよ」
 まあ、でも、直ぐ帰るだろうという世良の目論みは外れ、渡海は、ダンボールの一つに腰掛けた。
「全く……、俺がお姉ちゃんとの夜を棒に振ったってのに、世良ちゃんは、大好きな指導医と残業デートって訳だ」
 世良は、金魚のように口をぱくぱくさせた。違うと言いたいのだが、こうなるともう、何処から訂正したものかすらよく分からない。
「世良君には私が頼んだんです。もう帰れるところだというのに申し訳ないことをしました」
 全く取り合わない高階に、世良はほっとして、何度も首を縦に振った。
 渡海は大した興味もなさそうに、資料を一部取って、ページをぱらぱら捲る。
 暫し、室内は沈黙状態になり、作業に集中できた。
 やがて、渡海が煙草を吸ってくると言って立ち上がった。
「世良ちゃん、チャンスだぜ。さっさと言うこと、言っちまいな」
 囁くように言い残して、資料室を出て行く。あわあわと高階を見た世良は、真面目に資料に目を落としている姿を見て、自分も作業に戻った。
 ――予想通りだ。こんなことじゃ、まるで仕事にならない。
 でも、だからといって……。
 世良は、高階をちらりと見た。
 ――気持ちを伝える、なんて……。
 鼓動が高まり、その瞬間が頭に浮かぶ。
 ――そんなの……、無理……。
 世良は逆上せそうになる頭を振って、上滑りする目を必死に資料に向けた。
「世良君」
「は……。な、何でしょうか?!」
 思いの外近い位置で覗き込むような高階に、顔を上げた世良は飛び退きかける。
 渡海が変なことを言うからだ。いつもはもっと自然に接しているのに……。
「私も少し休憩してくる。世良君も適当なところで休みなさい」
 資料室を出る小柄な背を、世良は切ない気持ちで見つめた。
 それでもどうにか、資料の整理を続けたが、とてもではないが能率など上がらない。
 次第に頭が煮詰まってきて、水でも被りたいような気持ちで、世良は立ち上がった。時計を見ると、既に10時を回っていた。
「あー、もう!渡海先生ってば、言うだけ言って、結局帰ったのか……?!」
 ふつふつと湧き上がる八つ当たりをそんな風に吐き出しながら、廊下に出た世良は硬直した。
 真ん前に置かれた長椅子の上に、高階の姿があったからだった。しかも、彼は壁に凭れ掛かって意識を飛ばしていた。
 隣に設置された灰皿には、まだ煙を上げる吸い差しがある。
「……疲れて、るのかな……」
 世良は正面で足を止めて、眠る高階と向き合う。
 ――俺は……、貴方をずっと尊敬して、憧れて……。
 唾を飲み込む。
 ――さっさと言うこと、言っちまいな。
 伝えたい……。けれど――
「俺は……」
 世良は目を伏せ、高階の足元にしゃがみ込んだ。
 ことりと落ちている片手を掬い上げる。
 高階の手は、幾度か服越しに触れたときと同じに、大きくて熱かった。
 まだ駆け出しの世良には到底達することの出来ない技術を持つ手を、世良はそっと壊れ物に触れるように持つ。
 そして、その手の甲に口付けた。
 ――今の俺には、まだまだ追いつけない。でも、いつか……。
 再び、その手を元の位置に戻して、世良は立ち上がる。
 頭はクリアに戻っていた。
 ――そのときには、きっと堂々と、貴方にこの思いを伝えてみせますから!
 それまでは、どんな小さな仕事も、未来への糧として頑張ってやる。
 世良は資料室に戻ると、次の学会の元になる資料を意気込んで目に焼き付けた。
 阿修羅の如き戦闘神になるイメージを、頭の片隅で閃かせながら――


「あーあ。世良ちゃんなら、此処は行くと思ったんだがなぁ……」
 詰まらなそうに、長椅子に割り込んで煙草に火をつけた渡海が呟いた。
「寝込みを襲うなんて、みっともない真似を世良君がするはずはないでしょう」
 差し出した手に、渡海は嫌そうに、切ったばかりのセブンスターの箱を押し付けた。
「ホント、こいつがにこにこ笑いながら、こういう賭けが出来る人間だって、世良ちゃんに告げ口してやりたいぜ」
「人聞きが悪いですね。世良君を信用していると言ってください」
 高階は余裕で微笑む。
「いつか、世良君は真っ直ぐに、ちゃんと正面から私に気持ちを伝えてくれますよ」
 その安穏とした笑みに、渡海は憎まれ口を叩く。
「んなこと言ってて、脇からかっさらわれても知らねーぞ」
「おや、渡海先生も世良君に御執心でしたっけ?」
「俺は負け戦はしない主義なんだよ」
 渡海は、吸殻を灰皿に押し付けて立ち上がった。
「あんまり余裕ぶってると痛い目に遭うぜ。適当なとこで有り難くいただいときな――世良ちゃんはどうも、危なっかしくていけない」
 高階が答えようとしたときには、既に渡海は姿を消していた。
「そりゃあ、私だって……」
 呟いた声は、真っ暗な廊下に飲み込まれて消えた。


世良→高階で手の甲にキス(敬愛)でした。「高階→世良の方はなくて良いの?」って言ったけど、これだけで良いそうなので。
やったね、ハイジ。藍河がペアンネタを書けたのよ!(笑)
一応、天城禁にしようと「ペアン時間軸でいく」って言ったのに、どこまでも存在を匂わせてくるエトワールの威力…!私の中で、高世良はプラトニックに両思いしてるうちに、天城先生に美味しいとこ全部持ってかれたイメージなんですよ。
あと、最近ペアン再読したら、渡海先生が普通に動いてくれるようになったので、頑張ればとかせらも書けるかなーとか。
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