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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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なおさんの天ジュノ馴れ初めイメージをお話していただいたのが余りに可愛くて、しかも、お蔵入りしてしまうなどと仰るもので、「私に書かせてください!」とお願いして許可いただきました。
元々は1行の台詞が1ページになってるところもあったりしますが、とても楽しく書けました。
序盤、天城先生の恋人設定のモブキャラが居たりしますので、苦手な方はお気をつけ下さいませ。
微エロ描写有り。あと、天城先生の性に関する趣向がちょっと特殊なので、冒頭部読んで無理そうなら、止めていただいた方が賢明かもです。

拍手[5回]



 事務長から預かった書類を抱えて、世良は旧教授室のドアをノックした。
 返事はなかった。
 少し躊躇した後、ノブに手をかける。正直、書類持参で出直すのは面倒臭いので、鍵が開いていれば、置いていこうと思ったのだった。
 予想通り、ドアはあっさり開いた。高級ホテルのスイートルーム暮らしが長い天城には、いちいち鍵をかけて出かける習慣がないようで、世良は常々そのことを注意していたが、今日もその要望は聞き遂げられては居ないようだった。
「……ふ……ぅ……」
 世良は半分入りかけた足を止める。
 しん、とした部屋の片隅に響く微かな息遣い。不審者か、と世良は身を固くした。莫大な資産を持つ男の噂を聞いて、何かを盗みに入ったのかも知れない。
 足音を顰めた世良は、入り口を背にして置かれた応接用のソファの影に照準を定めて近づく。気配はそこにあるような気がしたのだ。全く、天城先生は、と思う。だから、いつも、あんなに注意するようにって――
「そこで、何を……?!」
「あ……んっ、やっ……」
 十分に近づいた世良が出し抜けに大声を上げたのと、ソファの向こうから甲高い声が聞こえたのは同時だった。不審者の声とは程遠い甘い響きに、世良は完全に硬直した。
「ジュノ、何か用か?」
 しかも、ソファの影から姿を現したのは天城だった。
「あ……、あの、事務長から書類を預かって……」
「急用が入ったようだ。続きは、また後ほど、だな」
 天城が意味ありげに笑いながらソファに向かって呼びかけると、そこから、世良より少し若いくらいの青年が姿を現した。学生かも知れない。
 シャツの胸元を押さえた彼は、射抜くような目で世良を睨みつけてきた。
 何故、そんな感情を向けられるのか分からずに目を逸らした世良の脇を、彼は足早に通り過ぎて行った。
「あ……、あの……」
「ジュノも野暮なことをするものだ」
 ゆるりと笑みを向ける天城に、世良の中で何かが繋がった。
「今のって、その……、恋人、ですか?」
「いや」
 世良はほっとして、息を吐いた。
「関係を持ったのは、2度、だったかな?」
 その言葉に、世良は再び固まる。相手は男、恋人ではない、しかし、関係がある――それは、つまり。
「あ、あの……、先生はあの男性と、その……」
「別に、女性でも構わないし、今のところ、特定の相手も作るつもりはない――私はそういう主義でね」
 頭を殴られたような気がした。天城が、男でも女でも誰とでも、無節操に身体の関係を持つという告白に、世良はショックを隠せなかった。
「快楽主義とでも言えば納得してもらえるか?気持ちがよければ、それ以外は全て些細なことだ。性別、特定の恋人、世間体、しがらみ――そんなものの所為で、素晴らしい時間をふいにするのは愚かなことだと思っている」
「……」
 完全に言葉を失う世良に、天城は微笑んでみせた。その笑顔は、少し哀しそうではあったが、とても美しかった。
「残念ながら、私はこういう人間だ。そのことを隠すつもりはない。軽蔑したか?」
 返事も出来ないほど思考が止まっていたのに、面と向かってそう尋ねられると、世良の中では一気に否定の言葉が噴出した。天城の外科医としての真っ直ぐな思いも、その邪気のない純粋さも、世良は知っている。
「俺が先生のことを軽蔑するなんてある訳ないじゃないですか?!」
 言ってしまってから、はっとする。
 思わず言ってしまったとはいえ、何て恥ずかしいことを、と思った瞬間、天城の唇が重なっていた。
「んんんっ……?!」
 口内まで貪られるような深いキス。背筋にぞくりとした痺れが走る。
「え……?」
 僅かな間に起こったことが理解できずに茫然と自分を見る世良に、天城は淡く微笑んだ。
「ジュノを抱きたいと思ったのは、初めてではない。しかし、ジュノの自尊心を傷つけるようなことをしたい訳でもない」
 その言葉の示す意味に、世良は目を丸くした。確かに、男も対象になるのであれば、そういうことになるのだろうが――
「俺は……」
 世良は困って、目を逸らす。
「悪かった、ジュノ。困らせるつもりはなかったんだ。このことで、ジュノが後ろめたさを感じる必要はない。元々、私は寝るだけの相手に不自由している訳ではないのだから」
 その言葉は、世良にとって酷く冷たく響いた。
 しかし、まさか受け入れることも出来ず、世良は俯き爪先に目線を落とす。
「もう、この話は終わりだ」
「……っ……」
 その断定が余りにも胸に痛くて、世良は次の瞬間、部屋を飛び出していた。
 ――何なんだよ、俺……?!
 天城とそんなことをするなんて、考えられない。なのに、寂しそうなその表情が頭から離れない。
 事務室に頼まれた書類をそのまま持って来てしまったことに気づいたが、とてもではないが戻ることは出来なかった。


 翌朝、世良は書類を持ち、改めて天城の居室へと向かった。
 結局、殆んど眠ることも出来ず、暫し触れ合った唇の感触を反復するような時間が果てしなく続き、朝が来たときにはほっとすらした。
 しかし、安心している場合ではない。
 このままずっとあの上司と会わない訳にはいかないのだ。
 重い足を、意志の力で引きずるように動かす。
 ノックをすると、天城の答える声が返ってきてどきりとした。
「おはよう、ジュノ。何か用か?」
「昨日の書類です」
 目を逸らし、大股で室内に入ると、素早く机の上に資料を置く。
「内容を確認して、明後日までに回答を事務室に提出するように、ということです」
「面倒だな。ジュノが適当にやっておいてくれ」
 事も無げに言う天城は完全にいつもの調子だ。『この話は終わり』と言っていたが、どうやら、本当に終わらせたらしい。
 ほっとした。だが、直ぐに胸が痛んで苦しくなる。
 ――先生にとって、俺のことなんて、そのくらいどうでもいいことなんだ……。
 面倒臭いことを言っているのは分かっている。
 天城は、もしかしたら、嫌われるかも知れないような自分の趣向を明らかにし、その要求を口にしてくれた。
 それを断っておきながら、しこりが出来るのも嫌、なかったことにされるのも嫌――我が儘にも程がある。
 ――でも、何か、凄く胸が苦しくて……。
 天城が笑っているのを見るだけで、胸がいっぱいになって、息苦しさすら覚える。
「ジュノ?」
「すみません。後でまた来ますから……!」
 ――駄目だ。とても、向き合っていられない。
 世良は、天城の部屋を出て、新病院への道を只管に走った。


 ――だから、何で、逃げて来ちゃったんだよ……!
 凄まじく、戻り辛い。けれど、戻らない訳にもいかない。天城の『適当にやっておけ』は、軽口ではなく、列記とした上司命令だ。
 その時点で、内容を確認して、天城の意志を確かめ、書類を提出するのは世良の役目になった。
 つまり、あの場でやらなくてはいけなかったのだ。それなのに、世良は自分の気持ちを優先して、その感情から逃げる方を取ってしまった。社会人失格だ。
 ――先生、どう思ってるかな……?
 タイミングがタイミングだ。気持ち悪がって避けていると思われている可能性もある。
 そんなことを考えてしまったら、急に不安になってきた。
 そうじゃないと叫びたいが、きっと彼を前にしたら、言葉など何も出て来ないのだろう。その瞬間まで想像できる――
 それでも、どうにか足を動かし、赤煉瓦棟までは来ることが出来た。
 旧教授室までは階段を使った。
 疲れれば少しは平常心に戻れるかも知れないという、体育会系らしい考えからだ。
 ――今度こそ、まともな対応を……。
 そう決意して、廊下を歩いていた世良は、エレベーターの方から天城の部屋に向かう人影に気づいて、背筋を強張らせた。
 昨日の、見ず知らずの青年が見せた敵意の篭もった眼差しを思い出し、立ちすくむ。
 しかし、改めて見ると、意外にも、それは速水だった。
 何だ、と気安く声をかけようとした世良は、ふと胸の中に不安が広がるのを覚えた。
 ――速水が何の用だ?
 基本的に、東城大のメンバーが天城とコンタクトを取るときには世良を通すのが通例になっている。
 わざわざ此処まで来るなど、個人的な用事があるとしか思えない。
 ――まさか……?
 考え始めると、どんどん思考は悪い方へ向かっていく。世良は唖然として立ち尽くした。
 昨日聞いた天城の告白に拠れば、彼は性別関係なく、気に入った人間が相手であれば、誰でも性交渉を行ってもよいと思っている、らしい。
 速水が、天城のお気に入りであることははっきりしている。
 それは、初めて会ったとき、直ぐにスリジエにスカウトしたこと、更に、天城のチェス盤に速水を示す深紅のナイトがあることからも分かる。
 世良が要求を飲まなかったから、次は速水、ということなのかも知れない。
 いや、それとも、もしかしたら、もうとっくに、二人はそういう関係になっていて、自分が知らなかっただけなのかも――
 胸が急速に冷たくなったのを覚える。
 足が震えて、目の前が真っ暗になった。
 世良は漸く、昨日の青年の、睨みつけるような視線の理由が分かった。
 天城の居室にまで来るような人間は、誰しも彼と関係を持っている可能性がある。
 全てが嫉妬の対象なのだ。
 そして、自分も同じ気持ちを持っていることを理解する。
 ――これって、やっぱり、好きってことか……?
 自分の心に問いかけたが、やはり答えは出なかった。
 ただ、とても、旧教授室のドアを開ける気になれないことだけは間違いなかった。


 その日の午後は具合が悪いと言って早退した。下宿に戻り、布団に転がる。
 実際、寝不足で身体はとても重かった。
 横になると、昨夜と同じに、天城の唇の感触が蘇ってくる。
 触れていたのは何秒でもなかったのだろうが、口内をぐるりと舐め回し、舌を絡め、たっぷりと唾液を混ぜ合わせた、思い出しただけで赤面するようなキスだった。
 あのまま続けていたら、程なく腰が砕けていただろう。
 確かに、快楽主義を自称するだけのことはある。
 ――あんな気持ち良いキス……、初めてだ……。
 その先へ進んだら、と考えて、はっとした。
 ――何考えてるんだ、俺?!
 それはつまり、天城に抱かれるということで、言わば、身体を繋げる訳で……。
 ――あの綺麗で長い指が俺の身体に触れて、俺も昨日のあいつみたいに変な声とかあげたりして、先生を受け入れて、イッちゃったり、とか……。
「はぁ……っ」
 想像していたら、何だか身体が熱くなってきた。漏らした吐息にも熱が篭もっている。
 我慢出来ずに、下半身に手を伸ばす。
 一番気持ち良い部分を扱いてやれば、あっという間にそこは硬度を増し、欲望を主張した。
 世良は、想像の中で昨日の甘いキスを何度も反復した。
『ジュノ』
 囁く甘い声を想像した途端、どくんっと体内で血液が大きく脈打った気がして、たちまち昇り詰めていく。
「天城……せんっ……」
 その名を呼びながら、世良は手の中に白濁を吐き出していた。
 そして、軽く自己嫌悪に陥る意識は、しかし、現実をはっきりと受け止めていた。
「俺……、あの人で、こんなに早くイケるんじゃないか……。これなら、きっと……」


 下宿を出て幾らもしないうちに、雲行きが怪しくなり、ぽつりぽつりと雨が降り始めた。
 傘を取りに戻ったり、雨宿りをするという選択肢はなかったので、目的地への所要時間を縮めるべく、自然に走り始める。
 しかし、それは失敗だった。
 雨はどんどん激しさを増し、目的地へ着く頃には世良はびしょぬれになっていた。
 それでも、戻る気はなかった。戻ったら最後、なけなしの勇気は萎んでしまう。
 世良は、眼前の建物を睨み付けた。桜宮の一等地、バブルの気泡に跳ね上がり続けた土地に根を下ろした高級マンション――天城の現在の住居だった。
 エントランスホールに入ると、管理人の無遠慮な視線が、貧相な身なりの、雨に打たれた世良を突き刺した。
 しかし、世良の訪問に対し、通してくれと指示を受けた後は、至って丁寧に案内してくれた。
 最上階だそうだ。何号室か分かるだろうかと思っていたが、行ってみて謎は解けた。
 フロアがそっくり1世帯分の住居になっているらしい。
「ジュノ、その姿は……」
 天城が状況を尋ねるより早く、世良は目的を告げた。
「天城先生、もう俺は駄目ですか?!俺、昨日からずっと、先生が誰かと寝てるかもって思うだけで、胸が苦しくて……!きっと、できると思うから、だから……!!」
「ジュノ、少し落ち着け」
 天城は中へと世良を誘う。
「駄目なんですか?!昨日逃げたりしたから?でも、俺は先生が……」
「私が?」
「す……」
「す?」
「先生はずるいですっ……!」
 繰り返してきた言葉は勢いで言えても、そこだけはどうしても詰まってしまった。
 しかし、次の瞬間、世良は天城の腕の中に居て、茫然としてしまう。
「可愛い可愛いジュノ、モンテカルロで会ったときからずっとこうしたかった」
「あ……、んっ……」
 幾度も幾度も想像の中で重なった唇が、圧倒的な現実感を持って世良に思い知らせる。
 ――やっぱり……、凄くイイ……。
 懸命に応えようとしたが、直ぐに蹂躙される口内に、持ちこたえるだけでいっぱいいっぱいになってしまった。
 世良は夢中で、天城の背に腕を回す。
 ぐしょぐしょに濡れているはずの世良を、天城は嫌がることなく受け入れて、幾度も滴の落ちる髪を掻き回した。
 その熱もただただ心地よく。
 あっという間に、世良は天城の手の中に落ちていった。


 目が醒めたとき、世良はシーツの波に沈んでいた。
 キングサイズのベッドはやたらと広々して、世良はその白さをぼんやりと目に焼き付ける。天城の腕が背中から身体に絡んでいた。
 とにかく痛かったし、辛かった。
 けれど、それに勝るほどに気持ちよくて、何より、今この人は自分だけを見ているのだと実感できた。これ以上ないくらい幸せな時間で、世良は何時の間にか、彼に本気で恋をしていた自分を知った。
 ――そうだったのか……。
 だったら、仕方ないなぁ、と思う。我が儘だし、面倒くさいし、無茶苦茶な人だけど……。
「ジュノ?」
 自分を呼ぶ声に、世良はびくりと身を震わせた。
 今考えていたことが伝わったのではないかと思って慌てる。
「大丈夫か?」
 そっと腰を撫でる天城の手が心地いい。
「痛かったんですけど」
 しかし、口から出る言葉は相変わらずの憎まれ口だった。
 性分なんだから、これも仕方ない。
「加減はしたんだがな。しかし、ジュノもかなり良さそうに見えたぞ」
 つ、と脇腹を指がなぞる。
 出そうになった声を必死で堪えた。
 そんな世良の身体を、愛しそうにあちこち撫でた後、囁くように天城は告げた。
「ジュノ、私は決めたよ。ジュノと身体を重ねている間は他の奴とは寝ないことにする」
 世良は聞こえた言葉に驚きを隠せなかった。天城雪彦という人間が、自分如きのことで主義を変えるなど考えられない事態だ。
「で、でも……、あの……、俺は、先生は先生のままでいいです、けど……」
 世良にはとても、簡単にその言葉に飛びつくことは出来なかった。
「ジュノは私が他の奴と寝てもいいのか?」
 そっと天城が囁く。
 甘くてずるい声。答えなんか、とっくに知ってる癖に。
「……それは……、嫌ですけど……」
「じゃあ、決まりだな」
 くすくすと天城の笑い声が耳元で響く。
「びしょぬれの捨てられたような犬に泣きそうな顔で訴えられては、私も弱いようだ」
 犬じゃないです、と小さく呟いた声は笑い声に掻き消され、世良はむぅっと顔を顰めて、その腕に噛み付く機会を窺った。


ネタ提供・なお様です。なお様のpixivのアカウントはこちらになります。
実は、なおさんに「エロシーンも追加して欲しい」ってリクいただいたので、もそもそ書いてたんですが、これが意外と時間がかかっていて、現在せっせと書いてます。でも、時間も結構空いたので、こっちを先に上げることにしました。ボリューム的にも、年齢制限的にも結局2つに分けることになりそうだし。
しかし、なおさんの世良ちゃんは実に可愛いvvvあの、思わず逃げ出しちゃうようなキュートさを、うちのツンツン世良ちゃんは爪の垢でも煎じて飲むべきだと思いました。逃げ出せないように追い詰めたら、泣きそうな顔しそうだと思うんですよ。
こんな素敵なネタ一つ、ぽーんと下さったなおさんに感謝を込めて。自分の書く世良ちゃんに萌えるってのも、面白い体験でした…。
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