テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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去年は哀しくて切なくて、とてもじゃないが、そんな浮かれたイベントやってる場合じゃなかったですが、1年経ったので、まあ、一応やっときましょうよっていう。
犬耳尻尾・擬犬化?そして…、その辺許せる心の広い方のみどうぞ。
犬耳尻尾・擬犬化?そして…、その辺許せる心の広い方のみどうぞ。
「遅いぞ、ジュノ!紅茶が冷めてしまうじゃないか」
不機嫌そうな声に出迎えられ、世良は切らせた息を、更に一段階大きく溜めて吐き出した。定時間際に突然呼び出されて、医局から走ってきたというのに、労うどころか怒られるなんて、あんまりだ。しかし、この暴君にそんな無言の抗議は通じない。
「私が淹れた紅茶だ。味見してみろ」
「はあ?!」
続いて、その用件の内容に脱力する。
――俺は、こんなところで、一体何をしてるんだろう……?
思わず、自分の仕事というものを深く考察してしまう。
「どうした?私が淹れたものでは気が進まないか?」
「いただきます……」
しかし、こういうときの天城に逆らうことは出来ないと分かっているので、ソファに座り、素直にカップを口に運ぶ。
かなり香りの強いお茶だ。
世良が学会帰りの時間潰しに入るような喫茶店で使っているであろうティーパックでは絶対に出ない風味である。
「どうだ?」
天城はにこにこと笑って尋ねてくる。まあ、器用な人だから、紅茶くらいは淹れられるのだろうけど、余りイメージにないから吃驚しました、とは答えられないないな、などと考える。
「凄く良い匂いがしますね」
「以前、マリツィアに貰ったんだ。分かったら、ちゃんと残さず飲むように」
世良の脳内を、金髪の貴公子の姿が過ぎる。
「……美味しかったです」
「よし。そのまま、そこでじっとしていろ」
妙な指示に、世良は首を傾げた。どうせ、医局に戻ったところで、此方にレンタル移籍扱いになっている世良に仕事がある訳でもない。しかし、理由も分からず付き合わされるというのは少々苦痛だ。
「じっとって、何時までですか?」
天城がくすりと笑った。
「ほんの数分だ。そろそろかな……」
その言葉が終わらないうちに、頭の天辺と尻がむずむずして、思わず、世良は腰を浮かせた。
ぽんっ!
手品の効果音のような音が響いたかと思うと、先ほどむず痒くなった部分に軽い衝撃が走った。
反射的に、それぞれに手を遣った世良は茫然とした。
「な、何ですか、これ……?!」
両手にふわふわした縫いぐるみのような感触。
いや、違う。この温度は生きた動物のそれだ。
そこに耳と尻尾が付いていた――
「犬。それも、とびきり庶民的な種類だな」
天城が笑いを噛み殺しながら言う。大きめのスタンドミラーを押し遣られ、世良は恐る恐る覗き込んだ。
頭の上の薄茶の三角形のぴんと立った耳と、くるんと上向きに丸まる太めの尻尾は、そこまで犬種に詳しくない世良にも見覚えのあるものだった。チワワじゃないだけマシかも知れない。
「ど、どういうことですか、これは……?!」
引っ張ってみたが、取れる様子はない。それどころか、明らかに掴んだ感触があることが分かってしまった。
尻尾の付け根を確認したら、どうもスラックスの尻の部分に穴が開いているらしい。
「嘘だ。生えてるなんて……」
「さっきのお茶はマリツィアから貰ったものなんだが、モナコの王族に代々伝わる製法で調合されていて、人間の隠された本質を引き出すことが出来るらしい」
「隠された本質……?」
この耳と尻尾が、だろうか?
「というか、まあ、今日はハロウィンだし、明日は犬の日らしいから、ジュノに犬になって欲しいと思ったんだ」
そう言われると、ツッコミどころは満載なのに何だか脱力してしまう。
「この状況の説明がそれで良いんですか?!」
「マリツィアは金色のネコ科の獣だった――そういう効果なんだろう」
成程、王族だけにその辺りか。確かに、あの金髪から大きめの丸い耳が覗くのは似合っているかも――
「じゃなくて……!大体、ハロウィンって……。天城先生、別にクリスチャンじゃないでしょう?」
「ハロウィンは元々キリスト教とは無関係だ。あれは古代ケルトの祭りが起源だからな」
ぐっと世良は言葉に詰まる。そこは別に良いのだが、どう言っても勝てるとは思えない。
――つまり、纏めると、天城先生の趣味でこんな姿にされた訳か……。
犬耳尻尾など、如何わしいプレイのイメージしかしない。
「どうするんですか、この姿?!」
「似合っているじゃないか」
焦燥感にかられる世良に対し、天城はご機嫌だった。
新たに追加された耳の間、つまり、世良の頭の天辺にぽんと手を置くと、わしゃわしゃと撫でた。
「犬扱いしないで下さい!」
この姿では説得力がないのを百も承知で、世良は抵抗する。
しかし、天城はくっくと笑い声を漏らし、一言だけいった。
「尻尾」
「しっ……、えええ?!」
振り返ると、尻尾がリズミカルに左右に振れている。
止めようとしたが、生えている癖に、思ったように動かすことは出来ないようだ。
「身体は正直だな」
天城はにまりと笑って、突然、世良の尻尾を握り込んだ。
「うわぁ!止めて、くださ……」
途端に、ぞわりとした震えが全身を駆け抜ける。
性器に触れられたときのような快感とは違い、感覚としては、前触れもなく脇の下に手を突っ込まれたような嫌悪感に近い。咄嗟にぶるぶる震えて引き離そうとしたが、天城は手を離さない。我慢出来なくなった世良は思わずそれを跳ね除けた。
「止めてって言ってるじゃないですか!触らないで下さい!!」
こんな姿になってしまったショックも覚めやらぬうちに、未開の感覚に苛まれた世良は反射的にそこから逃げようとした。
「何処へ行くんだ、ジュノ?そんな姿で」
ノブを握った世良の動きが止まる。
確かに、そうだ。
犬の耳と尻尾を生やした状態で、病院内を歩いたりしたら良い笑い者だ。
「良い子だ、ジュノ。こっちへおいで」
――でも、問答無用でこんな姿にするなんて、酷いじゃないか……!
世良は咄嗟に、続き部屋に逃げ込んだ。
こんな不本意な姿を楽しまれるのも嫌だったし、この『正直』過ぎるモニターを解放しながら、天城に見られるのも耐え難い。殆んど本能的な逃亡だった。
そうは言っても、こんなのが根本的な解決にならないことなど分かっている。
「ジュノ!」
後ろ手にドアを閉めた世良の鼻腔を、強い香りが衝いた。
同時に、赤い液体を入れたサーバーと、フランス語で書かれた豪奢な缶が目に入った。此処で、彼は紅茶を淹れたのだろう。
深く考える暇もなかった。
世良は躊躇いなく、サーバーを手に取った。
思い切り傾けて、口に流し込む。
そして、今正にドアを開けた天城の方に向かった。
がさりと本の落ちる音がして、世良は目を開けた。全部が夢だった可能性を疑ってみたが、わしゃりと髪に触れた指先は、無情にもふわふわの耳の感触を確認した。身体を起こすと、そこはさっきまで居た、旧教授室の続き部屋の床の上だった。
「何で、俺……?」
この部屋に入ったところで、紅茶の残りを見つけたことまでは覚えている。
閉じこもる訳にもいかず、世良は破れかぶれで妙案を思いついた。
――先生だって、こんな姿になってみれば良いんだ。
その瞬間は、相当に良い考えに思えて。
世良はサーバーに直接口を付け、紅茶を含むと、入室してきた天城に突進して唇を合わせた。
「そうだ、それで……」
その途端、目から星が散るかのような衝撃が襲って、気を失っていたようだ。
「先生は何処に……?」
天城の姿は見えない。
耳と尻尾が余りにみっともなくて、世良の前から姿を消した、とか――
あるはずがないと思いながらも、世良は頭の中でささやかな逆襲を企ててみる。尤も、あの人のことだ。世良のように、町内を軽くランニングしただけで直ぐにお目にかかれるような動物になっていないことだけは確かだろう。しなやかで俊敏で美しい動物――うーん、黒豹とか?
とりとめなく考えながら、室内をぐるりと見渡した世良の視界の端に黒い塊が映った。
ぎょっとして二度見すると、世良が倒れていた場所から僅かにずれたところに黒い兎が一羽、ぽつんと居た。基礎系の実験のときに見た記憶の中の兎に比べて一回りくらい大きいだろうか。つやつやの光沢のある、少々長めの体毛は冬仕様、ぴんと伸びた耳と円らな瞳の、文句なしに美しい兎だった。
実験室から逃げ出してきたのかな、と思いかけたところで、世良の動きが止まった。
「まさか……、天城、先生……なんですか……?」
その声に応えるように、兎が世良を見上げた。
「う、嘘だ……。だって、まさか、こんな……」
あの、王族の道楽紅茶は耳とか尻尾が生えるだけなんじゃないのか、と世良はパニックする。
「それに、先生が……」
あの、何時だって、堂々と自由闊達に、自らの望みを叶え、道を切り開いていくあの人が――
『さっきのお茶はマリツィアから貰ったものなんだが、モナコの王族に代々伝わる製法で調合されていて、人間の隠された本質を引き出すことが出来るらしい』
小さくて、か弱くて、臆病で、寂しがりの……。こんな小動物になる訳が、ない……。
世良はへたりと床の上に脱力した。
「嘘だ……」
――自分と同じ目に遭えば良いと、無理矢理口移しで紅茶を飲ませたのは――こんな結末を望んだ訳じゃない。
兎は物言いたそうに、そんな世良を見上げて鼻をひくひく動かした。
「先生……」
堪らず、世良は兎を両手で抱き上げた。腕から伝わる体温は熱く、ふわふわの毛はとても柔らかい。
「ごめんなさい」
呟いて、柔らかい毛並みに顔を埋めると、心地よい感触が頬を撫でた。
兎がもぞりと腕の中で動いた。苦しかったかなと思い腕を緩めると、至近距離に、女子達がきゃあきゃあ言いそうな、きょろんとした小動物の顔があった。兎自体が愛玩用の可愛い動物だが、やはりこれはとびきりの美兎だ。
そんなことを思っていたら、急に兎が腕の中で跳ねた。
「うわっ」
反射的に腕を離してしまう。飛び上がった兎の鼻先が世良の唇を掠める。えっ、と思う間もなく、再び目の前に火花が散った。世良は思いがけない逆襲に出た、小動物が落ちていくのを視界の端に捉えながら、再び意識を失った。
がさりと本の落ちる音がして、世良は目を開けた。
何か、さっきもこんなことがあったな、と思っていたら、隣で人の動く気配があった。はっとしてそちらを見ると、そこにはいつも通りの黒衣の長身が上半身を起こそうとしていた。やはり、全部夢だったのだろうか?そうだ、あの耳と尻尾は?!あ、スラックスの穴もなくなってると、遅ればせながら、頭と尻に手を伸ばしたとき。
「ジュノ!」
思いっきり、天城に抱き締められた。
「良かった。元に戻ったんだな」
「え……」
それは、此方の台詞なのだが。
「あのまま、ジュノが犬から戻らなかったら、どうしようかと思った。全く、何で紅茶の残りを飲んだんだ。あれは規定量が決まっているのに……」
それで残さず飲めと念を押した訳か。
そこは納得できたが、どうも、世良の記憶と天城の話には徹底的なズレがあるようだ。兎になった間、天城が夢を見ていたとか。いや、それは世良にも言えることか。或いは、二人とも気を失っていた可能性もある。その場合は、一体何時が夢の起点になるのだろう?世良は、ぼんやりとそんなことを考える。
「悪かった、ジュノ。お茶の効果は30分だった。ほんの少し、ジュノの困る顔が見たかっただけなんだ」
何時になく、しゅんとした天城の声を聞きながら、世良も先ほどの気持ちを思い出す。
「俺も……、先生が兎にならなくて良かったです……」
小さく呟くと、耳元で疑問符が漏れた。説明するつもりも無かったので、世良はその胸に頭を押し付ける。
「良いですよ、もう……」
兎の天城を思い出しながら、世良は反論を飲み込む。そんな馬鹿なこと、と笑い飛ばすことは出来なかった。
今の頼りない表情の天城と、あのか弱い兎を世良は確かに重ねていた。
「ジュノ!」
天城がぱっと笑った。
「ジュノ、トリック・オア・トリート!」
聞きなれない言葉に、世良は目を丸くした。
――え、英語か?!トリックは『罠』で、えーと……?
「ハロウィンの決まり文句だ。和訳すると、『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』」
「お、お菓子?!そんなの……」
その言葉に慌てたが、基本的に世良に菓子を持ち歩く習慣はない。
「では、悪戯にしよう」
天城は満足そうに笑って、世良から離れる。
そして、引き出しから、綺麗な包装紙の小さな袋を取りだした。
「貞淑な相手を瞬時に淫乱に変える薬だとマリツィアが言っていた」
――今度は媚薬かよ?!いい加減にしろ、モナコの王族!!!てか、まさか、先生、それもあいつに使ってないだろうな……?
「飲みませんからね!先生、全然反省してないじゃないですか!!」
腹の底からツッコむと、天城は拗ねたような口調で返す。
「ハロウィンなのに、まだ何もそれらしいことをしてないじゃないか」
「良く知りませんけど、そんな変な薬を飲む日じゃないでしょう、ハロウィンって!」
世良は眉間を押さえた。前言撤回。この人、兎じゃない。狐みたいにずるくて、猫みたいに我が儘で、カメレオンみたいに気まぐれで、羊みたいに無垢で、モルモットみたいに繊細で――
「どうした、ジュノ?」
世良は、ちらりと天城を見て目を逸らす。
――紛れもない、天城雪彦、だ……。
最後、無理矢理ハロウィンっぽくしてみる(笑)書けないなら書くなよ…。
世良ちゃんのハロウィン知識が乏しいのは、90年前後の一般的日本人はこの程度だったように記憶してるので。
SS内で明言してませんが、犬種は柴犬ですvvv
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