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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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って、まだ1月も先ですけど…。タイトルの通り、後編も、第2弾もあるので、もたもたしていられないのです!
で、何が良いかなーと考えた結果、この間、今中先生が嫉妬する話を書いたときに、春ぐらいにこんなん考えたなぁ、と思って、脳内から引っ張り出してきた、極ラプ5年後話。
あと、スラムンの院長の描写見てると、どうも、「極北」という場所がポイントになっているっぽい感じもあるので、むしろ、こんななんちゃってエンド、今しか書けないかもなぁ、と思って。
世良花で、結婚済み。世良ちゃんがリア充度MAX(笑)腐要素はなし。世良ちゃんが極北を離れたという設定で、オリキャラがそこそこ出張ってます。大丈夫な方のみどうぞ。

拍手[2回]



 外から聞こえた車の停車する音に、今中はカルテを書く手を止めた。
「おはようございます、今中所長」
 人の良さそうな30歳前後の青年が明るい声で挨拶しながら顔を出す。笠原孝之――3年前に民間から再雇用された、極北市が破綻した後初めて、そして唯一採用された職員だ。雪見市の企業で営業をしていたらしいが、支店の統廃合による転勤の勧告を受けたのをきっかけに転職を決意し今に至る、らしい。
「おはよう、笠原君。こんなに早くからじゃなくても良かったんだけど」
「心配で、他の仕事が手に付かないんですよ。結局、保健師の増員の件、通ってないですし……」
「笠原君は一生懸命やってくれてるよ。俺からもあの人に言っておくから……」
 今中は、ふと記憶を掠めた人物と訪れた北の島で会った、作務衣姿で丁寧に頭を下げてくれた若い男を思い出す。あれから片手の指の数ほどの年が過ぎ、自分達が羨んだ幸運はやがてこの地にも転がり込んできた。青ざめた顔で資料を漁っている当人は、そんな風に思われていることにも気づいていないのだろうが。
「今中所長のフォローが役に立ったことなんて、一度もないじゃないですか!」
「う……」
 それはまあ、仕方ないだろう、だって、あの人相手だし――
「でも、良くやってくれてるのは本当だよ。笠原君が来てから、この病院――今では規模縮小して診療所になったけど、此処のサービスは格段に良くなったし、市民の医療に対する意識も変わってきてる。これも、笠原君がしっかり勉強して、俺達現場の人間の話を聞いてくれてるからだと思うし」
 市民安全課に配属された彼が、市民病院担当になったのを聞いたときは、今中すら新手の新人いじめかと思ったものだった。
 何しろ、その頃のこの病院には、自らを『抗がん剤』と名乗る破壊者が居た。一時は『救世主』などと祭り上げた人々は、過剰な依存を徹底的に切り捨て、甘えも妥協も許さず、瀕死の医療を守ろうとする彼を煙たがった。永い現状維持に慣れた人間たちは、変化を嫌い、それをもたらそうとする存在に酷い拒否反応を示したのだ。その延長で、右も左も分からない新人でもつけて困らせれば良い、くらいの人事だったのではないかと今中は推測している。しかし、その新人は意外と骨があったし、問題の院長も言葉の通じない怪物ではなかった。新人君は熱心に院長の話を聞いたし、あの人はきちんと自分の話に耳を傾ける相手に対しては、とても真摯で熱心に接した。やがて、生来の素直さと粘り強さで、彼が役所でも少しずつ自分の考えを通していくに当たり、極北の医療の質は僅かずつではあるが、はっきりと向上していた。
「僕なんてまだまだですけど、そんな風に言ってもらえるなら嬉しいです」
 ――行政のバックアップする医療こそ理想のシステムなんだからね。
 口癖のように言っていた彼は、今中以上にこの新人のような存在を待ち侘びていたに違いない。自分と会うその前も、彼は幾度も幾度も、そのシステムを作ろうとしながら挫折してきていたのだろうから。
「そういえば、これ見ました?」
 笠原が新聞を差し出して尋ねた。
「『時風新報』?余り聞かない新聞社だな」
 受け取って、視線を走らせた今中は思わず吹き出した。特集ページに見慣れた男の顔を認めたからだった。
「『日本の医療をたなごころで転がす再建請負人』――また、とんでもない表現を……」
 実年齢よりも一回り程度若く見える表情は穏やかで、その過激な内面は綺麗に隠されている。
「考えてみれば、極北市全体がこの人に転がされたんですよね」
「まあ、あの人も、色んなものに転がされて転がされて、それでもめげずにやり返せるくらいの存在になったんだけどなぁ」
 彼の手腕は認めるが、そんな大仰な枕詞はどうもしっくり来ない。
「何か、想像もつかないです」
 笠原が素直な声音で言った。今中の耳に、あの日、この病院の前で止まったハーレーの急ブレーキの音が蘇る。
「あの人が就任して直ぐのこととか覚えてないか?マスコミに叩かれたりとかも結構あったんだけど」
「うーん……。その頃は、僕は雪見市に居たし、仕事が忙しくてニュース見ない日も多かったですからね」
 意外とそんなものなんだなぁ、と今中は何だかあっけにとられたような気分になる。あの頃、自分達はとにかく必死で。世界の全てが敵のように思っていた。あの人の傍で、あの人を守らないと、などと本気で思ったことは、今考えてみると少し気恥ずかしい。
「まあ、そう思えば、少しは怖くないかな、と」
 おどけて言ったが、笠原は再び顔を顰めただけだった。
「怖いですよぅ。こーんな子供のお使いレベルのことも出来ないのー、とか言われると、すっごいぐさぐさ来るんですから……」
 ははは、と今中は乾いた笑いを漏らす。
 確かに、あの人の悪口は饒舌に心を抉るものがある。


 タクシーが病院前に着いたのは、少し日も傾きかけた頃だった。
 まだびくびくしている笠原、看護師達、そして、二人の保健師と一緒に、今中は、そこから降りた男を迎える。
 かつてこの病院の院長であり、今では、相談役として籍を置いている、病院再建専門の医師・世良雅志だ。
「悪いね、皆で出迎えてもらっちゃって」
 先ほど新聞の特集ページで見たのと寸分変わらない、柔らかい表情で今中たちに笑いかける。
「世良院長先生、お元気そうで良かったですわー」
「角田さんも良くやってくれてるみたいで、僕も安心して任せられてるよ」
 『院長』呼びは何度言っても直らないので、最早世良も何も言わない。
 世良は、1年ほど前から山陰地方のある病院の院長になっていた。神威島で再会して程なく結婚した美和も共に連れて行くのかと思ったが、こちらに家を建てた直後だったこともあり、彼女は今も此処に残って働いている。市民病院は診療所に規模縮小し、予防・在宅医療を中心に据え、美和・佐竹の常勤看護師と非常勤になった角田、新たに加わった2人の保健師が支える。全て、此処を去ることを決めたとき世良が提案した体制だった。
「診療スペースだと手狭なので、今日は会議室を開けました」
「悪いね、わざわざ」
 建物はそのまま使用しているが、実際に使っているのは殆んど1階だけだ。
 今日は特別に、美和に会議室を掃除してもらっていた。
 笠原は、少し前からそこに山のような資料を運び込み、今も、世良が以前に訪れたときから今日までの行政の取り組みを一つ一つ確認している。
「半年振りですかね?」
「そうだねぇ、もうそんなか。ところで……」
 世良は、美和の出したお茶を飲んで大きく息を吐いた。視線を向けられた笠原の表情に緊張が走った。
「笠原君はまだ仕事終わってないの?僕達だけ懇親会のお店に先に行くよ」
 しかし、世良の言葉は予想に反して、あっさりしたものだった。
「え……?!」
 驚くと、世良の方も不思議そうな顔になる。
「あれ、お店の予約してって今中先生に頼んでおいたよね。もしかして、忘れてたの?」
「いえ、そうじゃなくて、世良先生が最近のこの診療所の……むぐっ」
「ま、まさか、忘れてませんよ!予約が6時半からなので、ちょっと早いかなと思っただけで……」
 今中は慌てて笠原の口を塞ぎ、適当な言い訳を口にした。
 それを聞いた世良は、特に他意もなさそうに腕時計を確認する。
「確かに、ちょっと早いか。でも、この時間なら迷惑になるって程でもないと思うけどなぁ」
「そうかも知れませんね。じゃあ、行こうか。ほら、仕事なんか明日で良いよ、笠原君」
 今中はやや強引に、突然のプレッシャーから解放され茫然としている笠原の肩を掴んで立たせた。
「え?!でも、今中所長……」
「良いから、行こう!」
「だって、いつも、これまで何をやって何が出来なくてって話を、根掘り葉掘り聞かれて叱られて……」
「良いから!」
 世良がこの地を離れて1年。
 彼ほどの意思の強さも知識もないが、今中なりに極北の人々を思いながら試行錯誤を続けてきた。
 そして、それは隣の笠原も、他のスタッフたちも一緒だ。
「そんなにしたいなら、仕事してて良いんだよ、笠原君」
 世良がくくっと笑いを噛み殺しながら話しかけ、笠原が返事に詰まっているのを横目で見る。
「少しは……」
「ん?何か、言った、今中先生?」
「何でもありません!」
 ふと思いに沈んでいたら、世良に指摘され、急いで首を振る。
 ――信じてくれてるんですか?
 世良が、懸命に土壌を整え、北の大地に咲かせた大樹。
 それを預けるに足る存在だと――
「大体、笠原君が数時間残業した程度でどうにかなるような現状じゃないしさー」
 耳に入る毒舌に、今中は小さく苦笑した。
「まだまだ、かも知れないけどな……」


 隣の笠原のグラスを見たが、全然進んでいない。
 酒豪とまではいかないが、そこそこいけるクチだったはずだと思い、ビール瓶を手にする。
「ほら、笠原君」
「あ、すみません」
「どうした?」
 世良にどんな攻撃を受けるのかと張り詰めていた気が抜けたのが大きいのだろうが、そういつまでもショックを受けることでもない。
 半額程度しか補助は出来ていないが、折角の飲み会だ。
 気を取り直して楽しもうと促したが、やはり戸惑ったような表情は消えない。
 今中は少し心配になってきた。
「というか、あの……、何で、皆さん、あの状況スルーなんですか?!」
 わいわいうるさい場内に掻き消されながら少し高めのトーンで訴えられた笠原の声を契機に、途切れ途切れの言葉が今中の耳に流れ込んでくる。
「正直に言うけどさ、僕、美和ちゃんと一緒になれてすごーく幸せだよ」
「もう、雅志さんたら、こんなところで……、そんなことばかり言ってたら、駄目です……」
 因みに、この会話は先ほどから同じ流れを取り留めなくループし続けている。
「……極北の救世主のイメージが……」
 大好きなビールも飲まず、笠原は頭を抱えている。
 その様を見ていた今中は思わず吹き出した。
 いつもやりこめられて泣き言ばかり言っているが、笠原は世良をとても慕っていた。その目指すものに賛同し、同調したからこそ、これまでやってくることが出来たのだ。
 彼の中の世良は、崩壊した極北の医療を再生したヒーローなのだろう。
「さっきも言っただろ、あの人だって、これまで嫌になるほど転がされてきたんだよ」
「はあ……」
「で、きっと、今もそうして戦ってる」
 新たな地で、自分本位な中央の官僚、利権に塗れる役所の人々、エゴと権利ばかり押し付ける住人達――その一つ一つと向き合って、彼らの間違いを真っ向から指摘して。
「だから、あれで良いんだよ。此処はあの人の帰る場所なんだから。甘えたって癒されたって良いんだ」
 この世界でただ一つ、世良が休める場所は此処にしかない。その為の時間なら幾らでも作る。口実も人間も何だって用意してやろう。
 今中の言葉を聞いていた笠原の目が輝いた。
「そっか……。そうですね!」
 愛する妻が居て、帰る家がある。
 頼りないけど、彼の軌跡を見て、残されたものを守ろうとする部下が居る。力強くはないけど、何とかそれを支えようとする行政側の人間も居る。
 あの人が必死に作ったもの。死に物狂いで守ろうとしたもの。それらは全て今も息衝いて。この極北の地に確かにあるのだ。
「まあ、多分、明日には元通りだろうけど」
「そう……ですよね」
 苦笑気味に今中が言うと、笠原はがっくりと肩を落とした。
 ――でも、今だけは無礼講だ。
 そう決めて、今中は笠原のグラスにビールを流し込み、序でに、手酌で注いだ自分のそれを一気に飲み干した。


海堂ラボ2の村上先生の回を今更読んだのですが、最後の海堂先生の総括で、「患者が地域医療という制度」「偽悪家」「過度に自分を英雄視する周囲と一線を画そうとしていた」「夕張行政と確執もあった」って、本当に院長そのものっていうか、まんま使い過ぎだろ、とか。「海堂さんとは立場もアプローチも違うけど目的は同じ」って何か、世良ちゃんと彦根っぽくね、とか。「海堂作品特集を組んだ某女子高文芸部が夕張に取材に行って魅了されて帰ってきた」って、私もそうなる自信があるわ、とか。近影の写真が、丸眼鏡で温和そうで、見た目もこのまんまイメージなんじゃないの、とか(ジョン・レノンじゃないけど)――まあ、色々考えてしまいました。
村上先生の考えで凄く印象的なのは、「ここに骨を埋めるつもりはない」って部分なんですよね。まあ、世良ちゃんは「逃げない」発言があるから、どっちに転ぶかは微妙なんですが。
後編は今中先生と戯れさせる予定。そういうのないと私がつまらないので(何処までも腐…)
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