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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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実は、夏くらいからあっためてました。思いが先行し過ぎてるタイムスリップネタ。
前に書いたのは、今中先生が天ジュノに会う話だったから、今回はジュノが今世良に会う話。
有り得ない設定オッケーな方のみどうぞ。

拍手[2回]



 転寝していたソファで目を覚ましたら、知らない男の顔が眼前にあって、俺は飛び上がりそうになった。
「また、病院に泊まったんですか?たまには家に帰って、ゆっくり休んだ方が……」
 泊まったのなんて宿直のときくらいだ。大体、見ず知らずの人にそんなこと言われる筋合いはない。
「あんた、誰ですか?」
 男は人の良さそうな顔を、驚きの表情に一変させた。
「何、冗談言ってるんですか、世良先生?」
 確かに、世良と呼んだ。
 人違いではないらしい。
 けど、やっぱり俺は、こんな奴知らない。
 不審の目で見る俺の肩に、彼はぽんぽんと、指の太くて大きな手を置いた。白衣を着てるから医者だとは思うが、その動きは、のそりといった感じで何だか大人しい熊みたいだ。
「あんたなんか、知りません!」
「私が、何か気に障るようなことしましたか?」
 知らないと言っているのに、あくまで俺が惚けている体で答えが戻ってくるのに、段々イライラしてきた。
「だから、俺はさっきまで東城大の天城先生の部屋に居たんですよ!此処は何処ですか?!もしかして、天城先生が何か企んでるんですか?」
 半ばキレ気味に言った俺に、彼は茫然としながら、「東城大……」と呟いた。
 次の瞬間、鼻先の辺りに顔を近づけられ、ぎょっとする。何だ、こいつ、他人との距離感覚がおかしいんじゃないだろうか?
「本当だ。若い……」
 まじまじと他人の顔を覗き込んだ後、彼は独り言のように言った。
「世良先生、変なことを聞きますが、お願いですから答えてください。先生は今、幾つですか?」
「28ですけど」
 その声が余りにも必死だったので、俺は思わず素直に答えてしまった。
「ってことは20年くらい前の……。そんな馬鹿な。でも、確かに、面影はあるし、声も似てる……」
「あの、一人で納得しないでくれます?」
 むっとして言うと、彼は困り果てた顔で答えた。
「今は、2010年です。此処は極北市民病院。私は副院長の今中と言います」
 その言葉に、俺は直ぐに答えることが出来なかった。
 ――つまり、此処は19年後の極北の病院だってのか?!確かに、東城大の中にこんな場所、ないだろうけど……。
「それを信じろ、って言うんですか?」
 睨むように言うと、彼は申し訳なさそうな顔になり、直ぐに、そうだ、と手を打つと、本棚を指した。
「最近の医学誌です。こういうの、見せていいのか分かりませんけど……」
 俺は適当に、真ん中辺りの1冊を引っ張り出して、ぱらぱら捲る。
 アスベストによる健康障害、メタボリックシンドローム、エピジェネティクス――見慣れない用語の間を斜め読みして、俺は、冗談にしては手が込み過ぎているなと感じる。
 正直、さっきまでは天城先生の悪戯かも知れないと思っていた。何処か知らない病院の一室を借り、もっともらしい嘘のカレンダーでも置き、誰かに頼んで、自分は未来の人間ですと言わせる。
 準備にかかる金なんて、あの人にとっては何でもないものだし、俺を驚かしたい程度の動機で、こういった悪ふざけを企むような人だと知っている。けれど、この人の良さそうな男の、おどおどした態度まで演技なら彼はアカデミー賞くらい取れそうだ。
 病院だって、古ぼけていてあちこち汚くて、妙にリアリティがある。天城先生なら、もっと綺麗な病院内に如何にもな未来空間を作ってみせただろう。
 信じるしかないようだ。
 でも、そうなると色々不安になってくる。
 俺は元の世界に戻れるんだろうか?
 もうすぐ、スリジエ創設のための大事な手術があるってのに……。
 そうだ、スリジエは――
「此処が19年後なら、スリジエはどうなってるんですか?!」
 今中先生は何故か、傷ついたような顔をした。
「それは……言えません……」
 俺は何だか急速に不安になった。
「それくらい教えてくれたって良いじゃないですか?!」
 そんな思いを強く言葉に乗せて言う。
「でも、世良先生は過去に帰る訳ですから、未来のことは知らない方が……」
 確かに、それは正論だけど、俺だって別に、無茶を言いたかった訳じゃなくて、立ち上がり時期に苦労したとか、もうすっかり古くなってとか、そんな噂程度のもので良かった。
 そこを頭ごなしに拒否されると、何だか無性に腹が立つ。
 大体、こいつは何なんだ?
 最初の口調も随分馴れ馴れしかったし、何かする度にいちいち距離も近い。
 未来の俺は、こんな田舎のボロ病院の医者なんかとどういう関係なんだろう?
 年は30半ばってところだろうから、世代的にも全然被らないし、大してデキる医者って感じでもない。でも、この年で副院長なんていうからには意外と切れ者なのか?
 いや、ちょっと待て。
 さっき、こいつ、また病院に泊まった、って言わなかったか――?
 そんな馬鹿な、という言葉が頭を塗り潰す。
 心臓がばくばくと音を立てた。脳の奥で酷い耳鳴りがする。俺は震える声で唇を動かした。
「俺は今、此処に居るんですか?」
「……!」
 今中先生の表情に動揺が走り、俺はそれを見て予想した通りであることを確信した。
 頭がぐらぐらする。
 ――何で、俺はこんなところに……、スリジエは……?
 今中先生の手が伸びて、身体を支える。
 俺はそれを振り払った。
「気持ち悪いんだよ、あんた!べたべたと気安く人に触るな……!」
「すみ……ません……」
 彼は黙ってしまい、俺も心配してくれたのに申し訳ないとは思ったが、ささくれ立った神経はとても冷静にはなれそうもなかった。
「さっきから思ってたけど、あんた、ホモなんじゃないか?」
 よく、言う。
 そういう意味で言うなら、俺だってそうだ。あの人に恋をして、身体の関係まである。
 同じ事を言われたら、絶対に傷つく。
 そう分かっていながら、今、俺が知りたくて堪らないことを決して話そうとしない人間に苛立って、責め立てる口は止まらなかった。
「世良先生は、私の大切な人です」
「なっ……?!」
 挑発のような俺の言葉を少し哀しそうに聞いた彼は、小さく頷くときっぱりと言った。
 それには俺の方が吃驚した。こいつ、思ったより芯が強い人間なのかも知れない。俺なんかより、ずっと……。
「無駄だよ!俺には、ずっと想ってる人がいるんだ。あんたの思いが報われることは絶対にない!!」
「知ってます」
「知って、って……」
 その言葉に見え隠れする深い思いに、俺は完全に絶句した。
 同性の、全く知らない奴に告白されたも同然の状況じゃ、冗談の一つも出て来ない。
 未来の俺は、一体、どういうことになってるんだ?
「変なこと言って、すみません。それより、どうしてこんなことになったか、ですが……」
「此処暫く、国際学会の準備とかで忙しくて寝不足で、天城……上司の部屋で休ませてもらってたんです。で、目が醒めたら、突然此処に……」
 それ以上、何も言えなくなった俺は、彼の問題提起に乗ることにした。
 まあ、結局分からないとしか言えないんだけど。
「こういうの、タイムスリップっていうんですかね」
「というより、20代の世良先生と40代の世良先生が入れ替わったって感じですよね。あるいは、世良先生が突然若返った、とか」
「でも、俺はさっきまで1991年に居たんですよ」
「それだって、記憶も当時に戻ったって考えれば説明がつきます」
 ――うーん。まあ、そうとも言えるか……。
 俺は、彼の判断に少し感心した。
「まあ、どっちにしても、このまま様子を見るしかなさそうですね」
 実際、その通りで、俺にはそれに同意するしかなかった。


 テレビを見たり、外に出たりして、この時代のことを知るのは良くないのではないか、という今中先生の意見に従って、俺は彼の持って来た漫画を、目を覚ましたソファにごろごろしながら読んでいた。ふと気づいて、奥付を見たら、1993年初版と書いてあって、駄目じゃないかと笑ってしまった。
 手持ちの中で古めの漫画を探してきたのだろう。微妙に引き算を間違っている辺り、何だか間が抜けていて頼りない。でも、きっとお人好しで献身的な良い医者なんだろうな、と思った。
 ――何か、さっきは酷いこと言ったかもなぁ……。
 感情的になっていたから、強く責め立てながら攻撃してしまった。
 俺はいつもそうだ。
 ――謝りに行こう。
 何か用があったら、3階の医局に居るから来てくれと言っていた。
 決意して、廊下に出た。
 午前中だというのに、外来に来たらしい患者の姿も見えないし、すれ違うスタッフの姿もない。
 此処は一体、どういう病院なんだろう?
 俺は、首を傾げながら階段を上った。
 医局は直ぐに分かった。
 入り口のドアは開いたままで、奥の机に今中先生だけがぽつんと座っていた。
「世良先生……、戻って来てくださいよ……」
 声をかけようとした矢先、彼が溜め息と共に呟いた。
 その言葉に含まれた痛みに俺は息を飲む。やっぱり戻ろうかと踵を返したとき、視界の端に人影が引っかかった。
 え、と思い、室内に視線を戻す。
 さっき、医局には今中先生しか居なかったはずだ。
 なのに、今、そこにもう一つの白衣の背中があった。
「世良、先生!」
 今中先生も気配に気づいたのか振り返り、その名を呼ぶ。俺の胸が早鐘を打った。
「……今中先生……、あの人が居たんだ……」
 よろけるようにふらりと揺れて、搾り出すような声が言葉を紡ぐ。今中先生が立ち上がり、その背を支えた。
 背中に添えられた手を跳ね除けることもなく、今にも肩に額を押し付けそうな距離で、いきなり現れた男は呟き続けた。
「直ぐそこで笑ってた……。覚えてた通りの綺麗な顔で。あの人を呼びたかった。もう一度、ジュノって呼んで欲しかった。でも、僕はもう……」
 声が詰まる。
 ――これが……、未来の俺……?
 何なんだ?!――収まったはずの怒りがまた噴き出して来る。
 この男は、こんな距離をこんな相手に何で許してるんだ?!
「何してるんだ?!」
 俺は、隠れていたのも忘れて飛び出していた。
 二人が振り返る。
 俺の目が、この世界の世良雅志と呼ばれる男のそれと合う。
 蛍光灯の明かりを跳ね返す丸眼鏡、目元に浮かぶ微かな小皺、少しだけこけた頬。
 思ったより、酷い老い方ではない。
 むしろ、47歳でこのくらいなら若い方かも知れない。
 そんな俺の訳の分からない安心を覆すように、彼の少し潤んだ眼差しは鋭くなった。
 自分が怒って飛び出したのも忘れて、俺は戸惑う。
 そこには、とんでもなく強い感情が見えたからだ。
「今、僕は、彼や様々な人に支えられて此処に居る。でも、それがどうかした?」
 挑発する彼に、今中先生が困ったように距離を開ける。
「91年10月――お前は何もしなかった。崩れかけた足元にも気づかずに、そうやって他人にばかり噛み付いて」
 その向けられる感情が憎しみだというのに、俺は少し遅れて気づいた。
「どういう意味だよ……?」
 俺だって、こいつに余り良い気持ちは持ってないけど、だからって、こんな、毛嫌いするような目で見られるのは気分が悪い。
「――」
「え?!」
 彼が何かを言った――のに、声は聞こえなかった。それに気づいたのか、未来の俺は今中先生と顔を見合わせる。何度か試みたが、結果は同じだった。
「……未来を変えるような情報は渡せないのか……。本当に、何の役にも立たないな」
「何だって?!」
「落ち着いてください、世良先生」
 今中先生が割って入る。
「世良先生は――ええと、こちらの世良先生ですけど、過去に居たんですか?」
「うん、少しの間だったけどね。僕は夢かと思っていたし」
 今中先生は目を丸くする。
「じゃあ、どうやって戻って来たんですか?」
「今中先生が呼んだんじゃない」
「え……?」
 ――世良先生……、戻って来てくださいよ……。
 あの言葉、あれが……。
 そう思った瞬間。
『ジュノ、そこに居るのか?ジュノ!』
 聞き慣れた声が内耳を満たした。
 はっと顔を上げた俺は、きっと同じ表情をしているのだろう自分自身と目を合わせた。
 暫し、時が止まった。
 今中先生が不安そうに俺達の顔を交互に見ているところを見ると、彼には聞こえていないのかも知れない。
 そうしている間にも、周囲はうっすらとぼやけ始め、俺は自分の身体がこの世界から離れ始めていることに気づいた。
「足掻いてみせろ、青二才!!」
 そんな中、聞いたことがあるような、全く知らないような声が俺の頭を貫いた。
「既に救命部は出来てる。国際学会のメンバーも発表された。もう今更、名ばかりの医局長に出来ることなんて何もない。でも……」
 何のことかと聞こうとする。
 けれど、それより早く次の言葉が放たれる。そして、俺はそれを受け止める。
「お前はまだ、あの掛け替えのない声を失くした訳じゃないだろう!!」
 視界は砂嵐に変わり姿は見えず、嗚咽を堪えるような声だけが響き渡る。
 ――どういう意味だよ。それじゃ、まるで……。
「ジュノ」
 突然、目の前に光が満ち、聴覚が動き出す。
 俺は、そこに居る人を茫然と見つめた。
 ソファで寝こける俺を覗き込む、整った端正な顔立ち。
「ゆゆゆ夢……?!」
「何を寝惚けてるんだ、ジュノ?」
 そこはいつもの旧教授室だった。ここの主も特に変わりはないようだ。
 ただ、少しご機嫌斜めなようだが。
 俺が転寝からなかなか起きなかったりすると、よくこういう顔になる。
「午後からは付き合え」
 単刀直入の命令。俺は、でも、学会の準備が、と言いかけて口を噤む。
 こういうときは何を言っても無駄だと知っている。
「高階先生には天城先生から言ってくれますか?」
 それが精一杯の譲歩だ。
「何をするんですか?」
「来れば分かる」
 いつも通りのやりとりに、俺は小さく安堵の息を吐く。
 けれど――
『お前はまだ、あの掛け替えのない声を失くした訳じゃないだろう!!』
 まだ、あの声は脳内で木霊している。
 本当にあれは夢だったんだろうか?つい、さっき経験したことのようにはっきり覚えているのに。
「あの……、天城先生」
 俺は今だ戸惑いの中、天城先生を呼んだ。正直、まだ頭の中はまとまってないが。
『足掻いてみせろ、青二才!!』
 挑発する声が背中をどんどんと叩く。
 それに呼応するように、俺の中で思いが膨らむ。
「俺は、もし、スリジエが出来たら……」
 こんなこと、絶対言うつもりなんか、なかった。
 そのとき、行動で示せば十分だとずっと思っていた。
 でも――
 今このときだけは、何だか言葉にしなくてはならないような気がした。消える直前に映った、泣き腫らした眼差しがそれでも強く俺を射る。
「その木の下で一生花守をしますから」
 天城先生が目を丸くしたのが分かった。う、やっぱり、恥ずかしいかも……。
「ジュノ!」
 居た堪れずに身体を起こそうとした途端、ソファの上に天城先生が圧し掛かってきた。
「ジュ・ヴ・スィ・アタシェ」
「え?何て言ったんですか?ちょっと、せんせ……!」
 幾度も、幾度も口付けられる。訳も分からず為すがままになりながら、その辺りで漸く俺は、先生が物凄く喜んでいるらしいことが分かった。
 何を、今更……。俺はずっとそのつもりだし、天城先生だってそのくらい分かってると思ってたのに。
 ――ま、まあ、良いか。たまには、こういうのも……。
 時々は口に出してみるのも悪くはないのかも。それに先生が喜んでくれるのを見るのも――
 僅かに、頬が上気するのを感じながら、そんなことを考えていたら、いきなり下肢に触られて硬直する。
「せ、せんせ……!今、仕事中!!!」
「こんなところでサボっていた癖によく言う」
 それを言われると弱い。
 こういう展開になるから、あんまり正直な気持ちが言えない、ってのは俺の所為ばっかりじゃないと思うんだけど……。
 ちょっと目を逸らしたら、耳元で呼ばれた。
「ジュノ」
 優しく口の中で転がすような、甘い甘い声。
 ――俺の、『掛け替えのない声』……。
 失くすなんて、絶対に嫌だ。
 俺は、魔法にかかったように腕を伸ばして、首に絡めて引き寄せる。
 少し驚いたような先生の顔が愉快だった。
 それで、午後までのサボりは決定してしまった訳だけど。


しかし、大半書いてから気づいたのだけど、極ラプ2周年SSが、極ラプの未来が変わるかも知れない話なのはどうか。
極ラプ読んでからずっと、世良ちゃんに天城先生の前で「スリジエの下で一生花守をします」って言わせたくて、でも、ただいちゃいちゃさせながら言うんじゃ違うし、って散々考えた結果の落としどこ。意外と、先生、世良ちゃんが此処までスリジエに対して覚悟を決めてたこと、全然気づいてなかったんじゃないかな、と思ってたりする。切ないけど…。
今中先生が不憫でならない(笑)まあ、ほら、20代にばっさりヤラれた分、40代がフォローしてくれてるから。40代のフォローなんて貴重だぞーvvv個人的に、20代には憎しみに近い感情抱いてる40代と、端から見た今世良が物凄く距離が近いのが萌えポイントです。てか、がうがう噛み付いてくる20代と、ちょいデレの40代なんて、私が挟まれたい…!
一応、続きとして、その後の今世良も後ほど上げます。間に合うかな?!
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