テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
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間に合った――っ!!!極ラプ2周年おめでとう。2年目も、極ラプドラマ化・文庫化、輝天・スラムン登場、あと、村上先生の本発売と色々楽しませていただきました。もう、院長愛してるっ!(定期)
SS記事数も、久し振りに数えてみたら101本目で、自分の相変わらずさに安心しました(汗)今年は、七夕も院長就任日も書けたし、色々満足でしたvvv
SSは前回の続きで、その後の今世良です。
SS記事数も、久し振りに数えてみたら101本目で、自分の相変わらずさに安心しました(汗)今年は、七夕も院長就任日も書けたし、色々満足でしたvvv
SSは前回の続きで、その後の今世良です。
「既に救命部は出来てる。国際学会のメンバーも発表された。もう今更、名ばかりの医局長に出来ることなんて何もない。でも……」
今にも、泣き出しそうな声が、今中のすぐ隣から発せられた。
「お前はまだ、あの掛け替えのない声を失くした訳じゃないだろう!!」
その言葉が破裂したと同時に、若い世良は消えてしまった。まるで、最初から何もなかったように。
「……ぅ……」
微かに漏れた声に、驚いて隣を見ると、世良が口元を抑えていた。
少し赤くなった目元から、ぽろぽろと滴が落ちる。
「世良先生!」
若い世良の前では遠慮していたが、彼一人であれば構うことはない。何処かに消えていた間の不安も手伝って、夢中で抱き締めた。
「ごめ……ん……」
されるがままにその胸に額を押し付け、声を殺しながらしゃくり上げた世良が途切れ途切れに言った。
「何で謝るんですか?」
取り乱したことなら謝る必要などない。幾らでも見せてくれれば良い。彼の過去も、抱える弱さも、今中にとっては愛しくて大切なものだ。
世良は苦しげに息を吸い込んだ。
「僕は……、未来を変えようとした……。今中先生と居る、今のこの時間を……」
「世良……先生……」
「そして、変わっていない事実に失望してる。きっと、意味も理解せずに馬鹿な過ちを繰り返したんだろうなぁ」
嘲るような言葉とは裏腹に、その声は弱々しい。
『あの人をモンテカルロへ帰すな!それが無理でも、ヘリにだけは乗せるな、絶対に!――もう、それしかないんだ!!』
必死の形相で伝えられた言葉に、けれど、あの青年は不思議そうに首を傾げただけだった。
「え?」
訝しげな表情で、耳を傾けようとする。
お互いの印象は余り良くないようだが、聞こえない振りをするほど拒絶し合っている訳ではないはずだ。
彼だって、自分の置かれた状況を知る材料が少しでも欲しいのだから。
「……未来を変えるような情報は渡せないのか……。本当に、何の役にも立たないな」
数回、同じ言葉を繰り返した後、世良は心底失望したように言った。
――足掻いてみせろ、青二才!!
もしも、あの若者が、その言葉に込められた意味をきちんと理解していたら、世良は今、この腕の中には居なくて、『あの人』と共に夢を叶え、幸せな道を歩んでいたのだろうか……?
確かに、それは今中にとって、とても切ない話だ。
「そうとも言えないかも知れません」
世良の心の底からの望みのある場所に今中は居ない――その事実は辛い。けれど、今此処で、自分の愚かさに失望し、打ちひしがれる世良を放っておくことは出来なかった。今中は明るい声で言う。
「世良先生には、過去に私と会った記憶はないんでしょう?」
「そんな覚えはないな。もしかして、戻る前に忘れてしまったのかな?」
「でも、世良先生はちゃんと、向こうの世界のことを覚えてましたよね」
そのときを思い出したのか、世良は再び微かに目を潤ませた。
「何だよ、何が言いたい訳?」
それを誤魔化すように、強気な口調で言う。温和で柔らかい雰囲気の人だから、こういう言い方をされると少し違和感があったが、若い彼を見た今ではむしろ自然な感じがした。当時に比べて丸くなった、ということなのだろうか。気が強くて、直情的で、真っ直ぐで、彼を思うと、危うさを感じながらも眩しいような気持ちにもなる。
「昔読んだSF小説にあったんですけど、時空を越えて現れた昔の自分が、過去からタイムスリップしてきたのではなくて、違う世界から来たんだって話があったんです」
勿論、真実はわからない。
それでも、こんな他愛も無い話が少しでも救いになってくれたら良い。
「パラレルワールドっていうんだそうです。この宇宙には、少しずつ違う私たちの居る沢山の世界があって、それが時々交錯してしまうときがある――だから、きっと、あの世良先生は今幸せですよ」
懸命に話す今中を、世良はじっと見つめていた。
「あ、世良先生にとってはあんまり良い話じゃないかも知れませんけど……」
失言だったかと今中は慌てた。世良にとっては、過去の後悔を変える可能性を否定する仮説になるのだった。
「ありがとう……」
世良が両腕を絡め、今中の頭を引き寄せた。数回啄ばむような重なりを繰り返し、直ぐに舌先を唇に当てて、その先をねだる。
「……んっ……」
慌てて受け入れると、微かな吐息を漏らしながら舌が侵入してくる。積極的な口付けは蕩けるようで、今中は強く世良を抱き締めた。
「ね、今中先生」
長く甘い時間を終えた世良は、微かに紅潮した頬を今中の肩に押し当て、少し上がった息を整えながら呟いた。
「僕は、僕の過ちを引き受けて生きていく。それは当然の報いだし、仕方のないことだ。でも、もしかしたら、それを正せたかも知れない可能性があるなら、やっぱり変わって欲しいと願ってしまうんだ。だから……」
ごめん。そして、ありがとう、と言葉が続く。痛みを伴いながらも、何処か吹っ切れたような声だった。
「ところでさ、今中先生は大丈夫なの?」
「え?」
「あの『青二才』のことだ、相当やられたんじゃない?」
「あ、まあ……」
――気持ち悪いんだよ、あんた!べたべたと気安く人に触るな……!
――さっきから思ってたけど、あんた、ホモなんじゃないか?
――あんたの思いが報われることは絶対にない!!
驚きでそれどころではなかったが、確かに、自分を知らないとはいえ、世良に言われたと思うと、非常にショックな言葉ばかりだ。
「でも、仕方ないと思います。いきなりこんなところに居て、しかも、それが望んだ未来じゃなかったなんて知ったら、誰でも八つ当たりしてしまいますよ」
「さすが、今中先生、心が広い」
茶化すような言い方に少しむっとする。
「そりゃあ、鍛えられましたから」
「え?」
「『再建請負人』って名乗る人が此処に来てから、どれだけ身勝手なこと言われて突き放されてきたか、世良先生は知らない訳じゃないですよね?」
「確かに、切り返しは随分鋭くなったみたいだね」
世良は何処吹く風で笑った。
「だから、ちゃんとフォローしてあげたじゃない」
――今、僕は、彼や様々な人に支えられて此処に居る。
「あ……」
「もう1回言ってあげようか?」
にっと笑う表情は、すっかりいつもの『院長』だ。
「いや、それは……」
ほっとはする。泣き顔より、強がりでも皮肉な笑みを見せる世良の方が、今中は好きだ。世良が笑っているなら、振り回されるのだって多少は我慢する。
「この距離で、ずっと僕を支えてて」
「世良先生……」
柔らかい声で言った世良の顔を覗き込む。
答えなんて、疾うに決まってる――
「勿……」
「そんなことはどうでも良いんだけどさ、今中先生」
突然、甘い雰囲気をぶち壊して世良が今中の頬を両手で押さえた。
「これ、ちゃんと自覚してる?」
「え……?」
「近過ぎ」
そう指摘されてみると、確かに、顔同士の距離は10センチ、互いの肩や胸も今にも触れそうな位置だ。
あの若い世良にはどうしてたっけ、と思い返した今中は青ざめた。
「通説に拠ると、カップルがもうヤッたかどうかって物理的な距離で分かるらしいね――あれ、今中先生、どうしたの?」
「……ちょっと自己嫌悪が……」
世良だと思ったからいつも通りにしていた気がする。
確かに、何とも思ってない同性にこんなに近づかれたら、さぞ気持ち悪かっただろう……。
――いや、そもそも、普段は……、病院のスタッフたちの前ではいつもどうしてた?
「この距離で居て、って言ってあげたのに」
「反省してるのに、傷を抉らないで下さいよ!」
頭を抱えた今中に、世良は堪らなくなったように吹き出すと、更に距離を詰め、そのまま唇を重ねた。
天ジュノの未来を変えたい自分と、今世良の世界を守りたい自分のせめぎ合い。ホント、どっちも大好きなんだ。
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