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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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院長がスラムンに登場する前の週、こんなだったら可愛いよねってツイッターで呟いたネタなんですが、39読んだら、これもアリじゃね、って思えて、たらたら書いてました。
書いてるうちに2号も出ちゃったけど。40読んで、ちょっと修正したけど、やっぱりアリな気がします。
此処んとこ、仕事で少々バタバタしてたので、お礼とかリクは少々お待ちを。無駄に正月休み長いから、がんがんSS書きますから!
2013年、院長院長世良ちゃん世良ちゃんジュノジュノで終わったのはともかく、タイトルセンスは悪化の一途を辿ってますね…。美しいタイトルつけられる方に本気で憧れるんですが(お題サイトの方とかも然り…。あんなに綺麗な言葉に全てを込めるにはどんな修行すれば良いの?)、こういうのも生まれ持った感覚なのかなぁ、と思う昨今…。
まあ、そんなぼやきはともかく、スラムンネタバレSSです。

拍手[2回]



 桜宮の駅に降り立った途端、携帯が鳴り出し、彦根はホームの端の方に寄りながら着信ボタンを押した。
「あ、彦根先生。世良だけど、今、時間ある?」
 電話の主は、最近、極北で会ったばかりの世良だった。
「はい。外なので、余り込み入った話は出来ませんが」
 東城大に寄ろうとは思っていたが、特に約束がある訳でもない。彦根は改札へと向かう人の流れを避け、逆方向へ足を進めた。世良は苦笑気味に言った。
「時間は取らせないよ。よく考えたら、幾つか言い忘れたことがあってね」
 確かに、別れ際、唐突に世良から資金を預けることを決意したと聞かされたので、具体的な話は何一つしていない。
「まず、忠告だ。恐らく、あの資金を使うためには相当な駆け引きが必要になるだろうと思う」
「確かに、あれだけの金額が動くことになると、色々と不都合が起こる場所もあるでしょうね」
 そして、その不都合を感じたところは徹底して邪魔をしてくる――自明の理だ。
「そういうことだ。眠らせていると言っても、別にタンス預金してる訳じゃない。それなりの管理者が居て、正規の方法で運用が行われている」
 当然、それは世良ではないのだろう。
「世良先生は、その人物のことはご存知なんですか?」
「ああ。マリツィア・ド・セバスティアン・シロサキ・クルーピア。モナコ公国の王族で、第七公位継承者……だったかな?」
 その情報は少なからず、彦根を驚かせた。
「モナコの王族まで関わってるんですか?!」
 だが、考えてみれば、功績を認められて貴族の称号まで授かった人物ともなれば、むしろ、そういった立場の人間たちとも交流がある方が自然だ。
 しかし、だとすれば、天城の資金は随分とモナコ公国の深部に食い込んでいることになる。
「いや、マリツィアは天城先生とは個人的な友人同士だった。彼に対しては、俺と同じような説得で構わないだろう」
 そんな彦根の不安を、世良はそんな言い方で一蹴した。
「情に訴える、ということですか」
「……そう、はっきり言われると、何か腹が立つな……。でも、まあ、そういうことだ。それに、彼なら、俺も知らない資金の事情を知っているはずだし」
 彦根の言葉に微妙な反応を返した世良は、気を取り直したように続けた。
「それから、モナコに行くなら……」
 その言葉を遮るように、「桜宮。桜宮―」というアナウンスが鳴り響き、電車が滑り込んできた。
「桜宮に居るのか……」
 音が届いたのか、世良がぽつりと呟いた。
「ええ。東城大に出来るAiセンター絡みでしばしば足を運んでるんです。世良先生は最近は全く?」
 電話の向こうは沈黙した。
 この間もそうだった。
 佐伯外科を辞めた後どうしたのか、という彦根の質問に、世良は一瞬表情を翳らせ、僅かに言葉を失っていた。
 ――1年という時は、容易には埋まらないものだな……。
 微笑みながら呟かれた独白。
 組織のしがらみにも、人間関係にも、何一つ拘束されることのない男が。
 儘ならない何かに痛みを感じるような顔で。
「じゃあ、クイーン高階にも会ってない訳ですね?」
 そんな思いに引きずられるように、気づけば、彦根は口にしていた。
「何で、お前がその呼び名を……?!」
 予想通り、世良は震える声で聞き返してきた。
「公開手術の後、天城先生の部屋で何度か勉強会をさせてもらったんです。そのときに、佐伯外科はチェスの盤面に似ているんだと天城先生が話していて……」
 突然、耳元でがしゃがしゃっと衝撃音が響き渡った。
「あ、ごめん。手が滑って……」
「あの、世良先生。受話器、逆に持ってませんか?」
 拾って持ち直したようだが、今度は妙に声が遠い。とても聞き取りづらい。彦根は思いついて指摘した。
「あ、ああ。そうか。……うん、大丈夫。直したよ。それより、何の話だっけか?」
 慌てたような世良の声がわたわたと耳元で響く。
「『モナコに行くなら』と言いかけてましたが」
 彦根が助け舟を出すと、気を取り直したようにそれを繰り返した。
「モナコね、モナコ……。何だっけ……?」
 先ほどまでの毅然とした話っぷりが見る影もない有様だ。
「あの、世良先生……。天城先生との話、気になってるんじゃないですか?」
「な、何言ってるんだよ?!天城先生と彦根先生が何を話していたとしても、俺には関係ないし……っ」
 声は完全に上ずっていた。しかし、明らかに他のことに意識を奪われているのは明らかだ。
 彦根は、自分に向けられた、敵意にも似た強い視線を思い出す。
 確か、あれが世良という男を認識した最初だった――


「そこの医学生!佐伯外科の医局に行って、ジュノに『早く来い』と伝えろ!」
 赤煉瓦棟の天城の部屋の前に立った途端、目の前で扉が開き、彦根の存在を認めるなり、不機嫌そのものの声が飛び出す。呆気にとられ、ぱくぱくと口を動かした彦根を漸く認識したらしい彼は、苦笑するような表情を見せた。
「何だ、敵前逃亡した医学生クンか。私に用か?」
 どうやら、彦根のことを忘れてはいなかったらしい。
「直接吻合法について教えていただきたいことがありまして」
 実際の手術は見物したが、天城から直接の講義としても聞きたいと思い、赤煉瓦棟まで足を運んだのだった。多忙を理由に断られても当然、駄目元という気持ちでのチャレンジだった。
「分かった。入って良い。だが、その前にジュノを呼びつけに行かせてくれ。随分前に検査結果を持ってくるようにと言ったのだが、一向に来ない。そうだ、アレがあれば君の知りたいことも分かるな。とにかく、私の仕事が最優先だ、クイーンの用事など二の次にしろ、と伝えろ」
 『ジュノ』という呼び名は公開手術の際にも何度も聞いたが、『クイーン』というのは初耳だった。
 伝言を承った以上は、適当に流す訳にもいかないので、彦根は尋ねる。
「高階講師だ。佐伯外科はチェスの盤面に酷似しているんだ。その中で、彼はクイーンの駒に匹敵する存在だ」
 組織の人間関係をチェスの駒に例えるなど、彦根には思いもつかない発想だった。
 やはり、この男は、とても洒脱で、一風変わった人間のようだ。
「最強の戦士、ですか」
 彦根が答えると、天城は微かな笑みを浮かべた。
「全くだ。愚図な歩兵が影響を受けるには十分な存在だ。1年という時は、容易には埋まらないものだな……」
 独白のように、口の中で小さく呟く。
 笑ってはいたが、そこに自嘲めいたものを感じて、彦根はそれを口にするべきかどうか迷う。天城雪彦という男が佐伯外科に華々しく招聘され、病院内の反対を物ともせず、胸部外科学会で日本初の公開手術を行い、大成功を収めた、という話は医学生の彦根でも知っている。そんな男の、繊細で弱気な一面を見た気がした。しかし、『ジュノ』と呼ばれる研修医と高階講師のことなのだとしたら、何だか違和感がある気がする――
「そういう訳だから、早く誰かに言付けてきてくれ。ジュノが来るまでなら相手をしてやろう」
 言うなり、思案していた彦根の返事も聞かずにドアを閉める。
 そう言われては、従うしかない。
 彦根はメッセンジャーを引き受けてくれそうな人間を探し始めた。幸い、赤煉瓦棟を出たところで、公開手術のときに何度か顔を見た医師を見つけ、伝言することができ、天城の示唆を受けた後、世良が連れてきたけったいな厚生省の役人と顔を合わせることになったのだが、それはまた別の話だ。
 ただ、彦根を認識した世良の目は今でも忘れられない。
「此処で何をしているんだ?!」と言わんばかりの、敵意すら孕む視線。
 唐突にそれを思い出した彦根は、今の世良と重ね、思わず笑ってしまいそうになった。
 この人は、本質はまるで変わっていない。天城に近づく、或いは、近づいていた人間全てが気になって仕方ないのに、それを素直に言い出すことも出来ないのだ。
 馬鹿馬鹿しい。
 本当に、馬鹿な話だ。
 そして、それは天城にも言えた。
 1年という時は、容易には埋まらない――ならば、何故、世良は高階と決別して天城を追った?
 あれから20年近くの歳月が過ぎたのに、未だに、世良が東城大に顔を出すこともないのは?
 互いを取り巻く人間達にやきもきしながら、彼らは果たして、本当に互いを見ていたのだろうか?
 天城は、これ程の世良の強い思いを知っていたのか?
 世良は、天城の高階に対する焦りを知っていたのか?
「ああ、そうだ……。モナコに行くなら、ニース空港からヘリを使うと良い。相当な時間短縮になるはずだ……。ええと、それから……」
 どうにか気を取り直しながらも、やはり先ほどの理路整然とした様がすっかり成りを潜めた世良に、彦根はくすりと笑った。
「天城先生とどんな話をしたか、教えますよ。但し、これは貸しです。いつか、僕の頼みを一つ聞いてもらいますよ」
 彦根の日本再構成の計略には、極北は必須の土地だ。
 そこに存在する、東城大の血脈を継ぐ人間の一人。
 そして、天城雪彦の遺志を宿した者――
「なっ……?!」
「世良先生のことも話してましたよ」
 絶句した世良に、彦根は止めの発言を一つぶつける。
 今、こうして、彼に恩を売っておくのも後々有効な布石になるだろう。
 彦根は、さあ、何から話そうかと思案しながら、楽しげな笑みを浮かべた。


しかし、彦根にヘリを勧める世良ちゃんは本気で理解に苦しむよ…。何か最近、院長って凄い無神経な天然野郎じゃないかと思えて来ましたわ。今中先生もキレてたもんね、あれも天然じゃないかと…。美和ちゃん、速水とは違う意味で苦労してそう。とりあえず、ドラマのO型設定は良いとこついてるな、と思います(いや、O型の人に喧嘩売ってる訳じゃないですよ…)
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