テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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玲さんのリクSSの続きです。
あ、因みに、この世界は、なんちゃって明治です。明治なんて、ずっと昔にるろ剣ジャンルだった、くらいしか知らないので…。てか、時々、明治なことも忘れそう。『卿』とかつけてますけど、ウィキの流し見すらしてないっていう適当さ…。
あ、因みに、この世界は、なんちゃって明治です。明治なんて、ずっと昔にるろ剣ジャンルだった、くらいしか知らないので…。てか、時々、明治なことも忘れそう。『卿』とかつけてますけど、ウィキの流し見すらしてないっていう適当さ…。
結局、また熱が出た。
天城は朦朧とした意識の中で、世良のことを思う。
自分の約束が破られる度に、世良はその穴を埋めるべく走り回り、佐伯の怒りを買っているのだろう。
けれど、彼は文句の一つも言ったことはない。
――やはり、無理だ。
そう言えたら、どんなに楽だろう。
だが、その答えを出した時点で、世良との繋がりは切れてしまう。
世良は、佐伯の命令で此処に出入りしているだけだ。
仕事と言う名目を失ったら最後、二度と此処に来ることはないだろう。
身分も、住む場所も、取り囲む人間たちもまるで違う。世良は、学業の傍ら、佐伯の忠実な部下として、学校の地盤を支えるべく働いていくことだろう。決して、交わるはずのない人間同士が、ある男の無謀な命令で出会った偶然も、それで終わる。
そして――
『先生は、フランス語も堪能ですし、海外暮らしの経験もある。それにとっても博学です。私たちの東城塾に先生が来てくだされば……』
真剣な眼差しで、日本の教育の未来を考える純粋な瞳。
誰かに、自分が必要だと言われることがこんなに心地よいものだったのかと思う。
いや、天城の胸の中には、きっと今も思いがあるのだ。
叶わなかった夢の残骸が今も時々ちかりと輝いて、天城の胸を刺す。
学びたいと願う無数の魂に、天城は、自らが持つ限りの知識と思想を注ぎ込む。
そうやって思いをかけ、精一杯全てを与え続けた生徒が、あるときを境に、自らの力で輝き始める。
その光は、最初はとても弱々しいが、少しずつ明るさを増し、やがてこの国を照らし始める。
かつて、幾度も天城はその瞬間を目撃してきた。
眩しくて、美しい、奇蹟のような光景――もう一度、それを見たいと、心の奥が渇望している。
『教えてください、先生』
『先生』
『先生……』
無数の声に取り囲まれ、天城は辺りを見回した。
「私、は……」
「メートル(ご主人様)、大丈夫ですか?」
目を開けると、そこにはセバスチャンの顔があった。
心配そうに覗き込んでいる。
「随分うなされていました」
「ああ……、夢か……」
天城は大きく息を吐いた。
まだ、少し熱っぽく、頭痛も酷かった。
「大分、汗をかかれたのでは。着替えをされますか?」
「ああ、そうだな……」
天城はぼんやりと答えた。
――早く、ジュノが来ないだろうか……?
あの若くて張りのある肌に指を滑り込ませ、その体温に包まれて安心したい。
「そういえば、世良様ですが」
手馴れた様子で天城の寝間着を脱がせ、温かいタオルをその肌に滑らせながら、セバスチャンが世間話のように口にした。
「ジュノがどうした?」
思いを見透かされたのかと僅かに動揺しながら、それは綺麗に押し隠し、平常心を装って天城が尋ねる。
「説明会の準備中に、過労で倒れられて、今は別室で休んでいらっしゃるとか」
「何だって?!」
「佐伯教授は、天城卿のことはもう諦めると仰ったそうです。これでは彼の身体がもたないから、と」
天城が、腕を拭こうとしていたセバスチャンを押し止めて言った。
「セバスチャン、外出着と馬車を出せ」
「しかし、まだ熱が……」
「もう、下がった」
「かしこまりました」
そう答えた執事の動きは早かった。
それから僅か10分後には、三つ揃いの黒のスーツ姿で天城は馬車に揺られていた。
「ご気分が悪くなったら、直ぐに仰ってください」
隣に控えるセバスチャンに言われたが、それどころではなかった。
世良が倒れた。
それは、間違いなく天城の所為だ。
今日も、方々に頭を下げて回っていたことだろう。
――ジュノ、どうか、無事でいてくれ。
祈るような気持ちで、窓の外を見つめる。
事件以来、どうしても潜ることの出来なかった校門が吹き過ぎるように流れて行くのを見てすら、身体を悪寒が襲うことはなかった。
「天城雪彦という。ジュノに――世良雅志に面会したい」
校内は、説明会に現れた部外者で溢れていた。
セバスチャンも関係者を捕まえようとしてくれたが、急いた天城は、受付に割り込むようにして訴えた。驚いたような顔をした受付嬢は、しかし、直ぐに立ち上がり、「ご案内します」と言って、先に立って歩き出した。
「此方です」
案内された場所は講堂だった。
てっきり、控え室か何処かで休んでいると思っていた天城は、何かの間違いではないかと尋ねようとしたときだった。
「世界で通用する人物の育成、それこそが佐伯教授の目指すこの学校の教育の柱です」
学生志望、篤志家、新聞記者――彼らを前にして、茶色のスーツを着て、壇上で説明しているのは、過労で倒れ、寝込んでいるはずの世良だった。
「だからこそ、我が校は、宣教師協会の協力を得て、優れた知識を持つ教師を5人派遣してもらいました」
「しかし、宣教師だけでは知識が偏るんじゃないか?」
世良の言葉を遮るように、手前の記者らしき男から質問が投げられる。
「それを考え、佐伯教授は、ある人物を招聘したんです。ご紹介します、天城雪彦卿です」
世良が大袈裟な手振りで、天城を指し示した。
セバスチャンが寄り添うように立ち、天城を教壇へと導いた。
「天城卿は10代の頃渡仏し、現地の大学で多くの学問を修めました。帰国してからは、帝華大で教鞭を取られていたこともあります。どうぞ、此方へ」
何か言おうとした天城の脇で、執事は、彼にだけ聞こえる声で添える。
「世良様は、きょうの説明会が失敗したら、除籍されるそうです。思うことはお有りでしょうが、此処はご辛抱いただけますか」
「成程、お前もグルか。道理で、馬車の準備が信じられないほどスムーズだった訳だ」
天城は堂々と壇上に上がり、世良と真っ向から向き合った。
「生憎と打ち合わせ不足で、気の利いたご挨拶も出来ません。司会の方は、この場でご披露できるような、説得力のある案をお持ちでしょうか?」
「はい」
頷いた世良に、天城は微笑む。
「では、今は君のマリオネットとなろう。私は何をすれば良い?」
「謡ってください、アマリリスの花の歌を」
「ウイ、ジュノ」
こんな騙まし討ちでは、聴衆を納得させる教育論も面白い小話も期待出来ない。勿論、その気になれば出来なくもないが、何分、現場を離れていた時間が長過ぎて、知識が古過ぎる心配もある。
しかし、フランス語の歌ならば新旧は関わりないし、異国の文化に精通していることを示してみせることも出来る。
世良の挙げた歌は、彼の前で何度も謡って聞かせたものだった。
謡い始めると、世良は隣で目を瞑り、うっとりと耳を傾ける。
がちがちに緊張していた世良が、心地良さそうにするのが嬉しくて、天城は度々謡ってみせた。
――完敗だ、ジュノ。
くすりと笑って、天城はそのフランスの民謡を高らかに謡い始めた。
「歓迎する、天城卿」
校長室に入るなり声をかけられた天城は、勧められる前にソファに腰を下ろした。
「では、報酬の話をしましょう。まず、1年分の前払いをいただきたい」
「これは、容赦のないことだ」
佐伯の失笑に、天城は鋭い視線を投げる。
「私は騙されたんですよ。あのまま立ち去られても、文句は言えなかったはずだ」
「全て、あの小僧が筋書いたことだ。私には関係ない」
予想していた言い訳にも天城は動じない。佐伯が最初から、世良を捨て駒にしようと思っていたことなど分かり切っていた。
「そのジュノに除籍をちらつかせて追い詰めたのは何方ですか?」
佐伯は苦い表情を作ってみせる。
「私は、それを洗いざらい天城卿に話し、助けを求めると思ったんだ」
佐伯の中では、天城の気の病など単なる華族様の我が儘で、お気に入りの使いの除籍と天秤にかければ、即座に翻る程度のものだと思っていたのだろう。
「それは、あのジュノに対する過小評価であり、見誤った雇い主の責任です」
しかし、天城の病がとても根の深いものだと知っていた世良は、自らの将来を代償にしても、天城の「ジュノが望むなら」という約束を信じ切ってみせた。
「全くだ。で、報酬の内容は?」
「そのジュノを。ムッシュの依頼に応えるには、細々したことをサポートしてくれる助手が必要です」
天城の報酬の内容は予想していたのか、佐伯は即座に切り返す。
「1年というのは承諾できんな。2年分だ」
「吹っかけ過ぎでは?」
「過小評価だと言ったのはそっちだ。小僧は、天城卿に真っ向から勝負を挑んで勝った。あの度胸と運の良さには感服した。お前の小姓などにしておくには勿体無い人材だ」
天城は苦笑したが、それ以上食い下がることはせずに頷いた。
「ダコール、ムッシュ。それで手を打ちましょう。但し、そのジュノのことで、もう一つお願いがあります」
「え……?!」
世良は自室の前で茫然と佇んでいた。暫しの間の後、慌てて外を見渡し、自分が間違えた訳ではないことを確認する。
そして、空っぽのその部屋に飛び込んだ。
「何で……、どうして、荷物が……?!」
「驚かされた仕返しだ」
背後に現れた黒服の華族に、世良はぽかんとした顔を向けた。
「天城先生、お屋敷に戻られたのではなかったんですか?」
「忘れ物を取りに来たんだ」
天城はひどく機嫌が良い。
あの騙まし討ちの後、世良は懸命に謝罪したが、殆んど言葉を交わす間もないまま、天城は佐伯に呼び出されて行ってしまった。怒って言葉もかけてもらえないと思っていたのに、天城は通常なら姿を現すこともないだろう、身分の低い学生の寄宿舎に居て、にこにこと笑っている。それは、むしろ不気味ですらある。
「忘れ物ですか。それって……」
「このジュノだ」
不意に抱き締められた世良は、目を見張る。
「ムッシュ佐伯に掛け合った。ジュノ、エプーズ・モア」
結婚しよう、と囁かれ、予想外の状況に、世良は目を白黒させた。
「だ、だって、俺達は身分だって違うし……」
「私は元々一族の変り種だし、ごく近い親族はみな他界して殆んど天涯孤独の身だ。第一、今は四民平等の世だろう」
それは分かるが、だからといって、そんな思いもかけない申し出に簡単に頷けるはずもない。
「でも、先生みたいな人だったら、もっと素敵な相手が幾らでも……」
「ジュノ、私をハメたあの勢いはどうした?答えなどシンプルで良い。ウイ・ウ・ノン?」
天城に正面から見つめられ、世良は息を飲む。
――良いのだろうか、この手を取っても?愛してはくれた。だが、ペットをめでるような他愛のない遊びなのだとずっと思っていた。自分には絶対に手に入ることのない人だと思っていたから、自分の気持ちを深く考えることもなかった。優秀な教師、素晴らしい人間、麗しい華族――見蕩れてしまうのはただの憧れなのだと思っていたけど……。
世良は真っ直ぐに顔を上げた。
「ウイ」
「ジュ・テーム、ジュノ」
間近い位置で見つめられ、世良は思わず目を瞑る。
近づいた顔の持ち主は、世良の物になったらしいが、気持ちはとてもついていかない。至近距離で交差する視線だけで、恥ずかしくてとても直視していられなかった。
「私はジュノの目が好きだ。真っ直ぐで強い瞳をもっと見せてくれ」
目蓋に軽く触れる唇に、世良は小さく震えた。
この人のようなとんでもない人間が、自分なんかを見て、恋愛感情を抱くなんて信じられない思いだった。
「嘘……」
「嘘じゃない。声も好きだし、結構気の強いところも好きだ。それから、この肌の滑らかさも……」
「ま、待ってください!俺、そんな……」
そんな風に思われていたなど考えたことがなかった世良は悲鳴のような声を上げた。
天城が自分を見る度、好意を抱いていたなど、反射的に頭が拒否しかける。
「そうだな、こんな場所で愛を語っても仕方ない。ベッドの中で全部教えてやろう、私がジュノの何処を愛しているかを……」
世良は金魚のようにぱくぱくと口を動かした。
世良の知る天城はいつも物憂げでか弱くて、儘ならない様々な物に耐えるような表情をしていた。
しかし、今の彼は快活で堂々としていて、とてもストレートで楽しげで――
「……凄く素敵です、けど……」
恐らく、これが本来の彼の姿なのだろう。
けれど、直接的な感情表現に慣れていない世良にとっては、注ぎ込まれる愛の言葉の一つ一つは羞恥で身を切られる感覚さえする。
「何か言ったか、ジュノ?」
「な、何でもありません!」
前途多難だ、と世良は頭を抱えながらも、天城が歩きながら隣で陽気に口ずさんだ歌の一節をこれからもずっと聴ける幸福に、思わず小さく微笑んだ。
こんな感じになりました。如何でしょうか、玲さん?
パロだからこその、先生が死なない&天ジュノ結婚展開にしてみました。なんちゃって明治なので、同性婚オッケーです!(そこだけ)
あと、世良ちゃんが身分が違い過ぎてちょっと大人しめで、自分も学校で下働きしてるからセバスチャンと仲良しだったり、天城先生が病弱設定でちょっと自信なさめ(ラストはいつも通りですが)な我が儘華族様(それはいつも通りか)になっちゃうとか、微妙にいつもと雰囲気が違って楽しかったです。
玲さんには「キーワード複数くらいで」とか面倒なお願いしたんですが、とても具体的に考えてくださって、お陰で、普段なかなか書かないパロが書けて、大変楽しかったです。素敵な機会を下さった玲さん、どうもありがとうございました。
あと、拍手のお返事も!
院長は天城先生前にしたら反射的にデレジュノになっちゃいそうですが、何かの拍子にふと今中先生が居ることを思い出して(この時点でもう酷いw)、「えっと…」みたいな空気が3人の間に流れたらいいなぁ。どっちにどんな顔したらいいか分からなくなる世良ちゃん萌えvvv
はっ、お嬢さんを不審人物に…。決して青少年に胸を張って推奨できるサイトではないですが(汗)、今年も、お時間のあるときにでもふらりと立ち寄っていただけたら嬉しいです。リピートしてもらえるって、少し恥ずかしいけど、とっても有難い褒め言葉だな、と。
年明けからリクで本当に楽しませてもらいました。今年は天ジュノと今世良が沢山読めるいい年になるといいですよねwww
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