テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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お待たせしました!っていうか、もう誰も待ってなかったらどうしよう…。続き物1ヶ月放置してしまった…。前編で「大寒波」とか言ってる。あわわ…。いや、今週末もまだ雪降るし(言い訳)
親の確定申告でバタバタしてたのも事実なんですが、カレ箱も読んでるし(あの黄本テイスト感最高!)、ドラマSS週2本更新とかしたし(でも、ドネんときは4本更新した週があったから全然マシ←何が)、旬ジャンルのツンデレ(微弱)忠犬様に萌え萌えしてたり(そこが旬じゃないことは分かってる…)――そりゃ、これだけやってりゃ忙しいよ(笑)4月入ったら、のんびり創作モードに入りたい。ドラマも月1話くらいでゆっくり楽しみたかったよ、正直…。
後編は、元歌と変えた部分のフォロー編なのですが、もう抉られる勢いのシンドさなので、結構覚悟して読んでください。原作で書いてないあそこのシーンまで書いてしまった…。どんなネタでもさらっと読める方以外は世良ちゃんパートで止めといてください。…何で、私、こんな話書こうと思ったの?
親の確定申告でバタバタしてたのも事実なんですが、カレ箱も読んでるし(あの黄本テイスト感最高!)、ドラマSS週2本更新とかしたし(でも、ドネんときは4本更新した週があったから全然マシ←何が)、旬ジャンルのツンデレ(微弱)忠犬様に萌え萌えしてたり(そこが旬じゃないことは分かってる…)――そりゃ、これだけやってりゃ忙しいよ(笑)4月入ったら、のんびり創作モードに入りたい。ドラマも月1話くらいでゆっくり楽しみたかったよ、正直…。
後編は、元歌と変えた部分のフォロー編なのですが、もう抉られる勢いのシンドさなので、結構覚悟して読んでください。原作で書いてないあそこのシーンまで書いてしまった…。どんなネタでもさらっと読める方以外は世良ちゃんパートで止めといてください。…何で、私、こんな話書こうと思ったの?
ヴェルデ・モトから降りた世良は、そこに見えた光景に目を疑った。
小さいが満開のさくら並木。
「これはドクトル・アマギがモンテカルロに戻ってきた時に植えたスリジエの花です」
通訳の言葉に、世良はかつて愛おしそうに咲き誇る花を見ていた美しい横顔を思い出す。本当に幸せそうで、記憶の淵に浮かべただけで、胸の奥に明かりが灯るような笑顔――
「え……?」
――何だ、これ……?
病院のベッドで、入院着に身を包んで上体を起こし、額に包帯を巻いた彼の姿。
――どういうことだ……。
共に居た2年の間、彼が入院したことなどないはずだ。なのに、余りにも鮮やかな記憶が世良の中に広がっていく。
『そうだ、桜にしよう。ジュノ、いつか、この国で桜を見たとき、私のことを思い出して欲しい』
――思い……出した……。
世界の広さも自分の無力さもまだ何も知らなかった外科医1年目に、サボりの途中で、突然目の前に広がった異世界は何処だったのか。此処は4年後の世界だと言った米国人医師は誰だったのか。
連れて行かれたモンテカルロ・ハートセンターのVIPルームは何を意味していた?そこで眠っていたあの人の状態は――
「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
世良は崩れ落ち、絶叫した。
「俺は、馬鹿だ……!」
何で、忘れていた?何で、深く踏み込もうとしなかった?!
ガブリエルの言ったように、あれは、正真正銘の奇跡だったのに……。
『92年の君は恐らく間に合わない。だから、君なのかも知れない』
その通りだった。世良は間に合わなかった。
けれど――
『今全て教えればきっと、私が死ぬ運命さえ変えられるだろう』
そうだ。
あのときの世良なら変えられた。
無知で愚かで何の力も持たない、今以上の青二才。
けれど、もし、自分が、数限りない後悔の何れかで異なる道を選んでいたら……。
いや、違う。本当はとても簡単なことだった。
あの人の手を離さない、あの人を決して一人にはしない――
たった、それだけ。
それを決意するだけで、きっと全ては変わっていた、のに……。
「何でですか、先生?!」
過去を変えるチャンス、なんて。
誰より天に愛されたあの男は、死の間際にすら易々と奇跡を与えられていたのに……!
地面に拳を打ちつけ、叫ぶ。
エルミタージュのコンシェルジュと通訳が言葉を失って立ち尽くしているのすら、思考の外に消えていた。
視界が判然としないほどに、涙が止め処なく溢れてくる。
――分かっていたはずだ、あの視線に含まれていた慈しみの感情。ただ通りすがっただけの人間にあんな表情を向ける訳がない。
なのに、自分は知らない振りをして、またもチャンスの女神を遣り過ごした。
起こったことには全て意味があったのに――
「先生……っ、先生……!」
幾度詫びても足りない。
あの人を、あんなに遠い国で一人ぼっちにしてしまった。
苦しませた末に、失意の帰国をさせた。
桜宮へと連れて行ったのは、自分だったのに――
「先生、ごめんなさい。俺は馬鹿です。先生、先生。天城先生、すみませ……」
『私はちゃんと幸せだ』
最早、自分でも何を言っているのか分からず、ただ謝罪の言葉を繰り返し続けていた世良の脳天を突き抜けるように言葉が響いた。
激しい後悔と悲しみが渦巻く、真っ暗な視界にぱっと光が差したようだった。瞳を見開き、茫然としたまま、世良は固まったように動けなくなった。
「しあわ……せ……?」
次の瞬間、強い風が吹き、弄られた枝から一気に花弁が散った。
視界が桜色に塗りつぶされる。
そして、その光景は、4年も前のことなのに、まるで今此処で起こっているかのように再現された。
記憶の中の天城が微笑みながら、その言葉を繰り返す。
『その一つ一つは私にとって、本当に手放しがたい時間なんだ』
「ほん……とうに……?」
行く先々で無体な歓迎を受けながら桜宮市内をタンデムで駆け抜けたのも、ただ与えようとした至上の手技ですら周囲から足を引っ張られながらの儘ならない苦戦を強いられた手術も、無情な潮騒に包まれながら本当に望んだものとは比べ物にもならない貧相な桜の苗木を植えたことも、変わる必要などないと言うのか――
『だから、何も知らずに帰り、全て忘れてしまえばいい』
「でも、それじゃ……」
思わず、世良は口を挟む。
すると、天城はゆっくりと噛んで含めるように口にした。
『私はちゃんと幸せだ』
それなのに何を泣いているんだとでも言いたげに世良を見つめる。
再び聞こえたその言葉に、世良は堪えられない涙を滲ませた。
「俺も……幸せです……。天城先生に会えて……、一緒に居られて。……幸せだって言ってもらえて……」
ぼろぼろと涙が溢れ出して、世良は手の甲で目を拭う。
『ジュノ……』
それでも、その呼び声に応えようと懸命に顔を上げた。
ぶつかった視線の先の天城は、じっと世良を見つめていた。
その表情に、胸が締め付けられるような思いを味わいながらも、彼の唇が開くのを世良は辛抱強く待った。
『だから、私のことは何も心配しなくて良い。ジュノはただ、ジュノのためのさくら並木を作れば良いんだ』
そっと伸びる指先が優しく世良の前髪に触れ、頭を撫でる。
そこに彼が居るはずはないのに、そんな記憶があるはずはないのに、世良には確かにその指先が感じられた。
「ドクトル・アマギはいつも言っていたそうです。春になってスリジエの花が咲いたら、日本から呼んで見せたい人がいるのだ、と」
不意に、通訳の女性の言葉が世良の耳に飛び込んで来た。
そこには、先ほどまでと変わらない、穏やかな春の景色が広がっている。モンテカルロ・ハートセンターの病室の光景はもう断片すらも見えなかった。
「……だから、『この国で桜を見たとき』、か……」
世良は、彼の植えたさくら並木を見渡した。
あのとき、桜宮に植えられた小さな苗とは全く違う。きっと、土地を選んで、人手をかけて、地面から作り、丁寧に苗木を植え、たっぷりと水を与えられたのだろう。そこには植えらなかった桜の恨みは何処にもなかった。
『その一つ一つは私にとって、本当に手放しがたい時間なんだ』
言葉通り、天城の心は真っ直ぐに未来へと向かっていた。
ふと、視界に入った前髪に違和感があって、指で摘む。そこには一片の花弁があった。天城が思いを込めた花。
こんな花を自分もいつか咲かせることが出来るだろうか?
「いや、必ず咲かせてみせる……」
何度も後悔し、何度も傷ついて、何度も嘆いた。
でも、その一つ一つは世良の中で熱を帯び、手放しがたい時間として存在している。
何一つ、なかったことになど出来ない。
大切な、大切なあの人との時間。
あの人が世良に伝えてくれたこと。
その全部を、ずっと抱き締めて生きていく――
世良は花弁を握り締め、いつか見たのと良く似た真っ青な空を見上げた。
ヴェルデ・モトが走り去ったのを見送り、ガブリエルはさくら並木を振り返る。
『これで良かったのか、アマギ?』
答えはわかっている。
きっと、彼は、フランス語で「ビアン・シュール。メルシ」と言って、満足そうに笑うのだろう――
『どうして、彼に伝えなかった?!4年前の彼ならば……』
世良の姿が消えた病室で、ガブリエルは天城に向かって問わずにはいられなかった。
『さっきも言った通りだ。私は、私の人生に満足している。何かを変える必要などない』
しかし、それに動じるもことなく、彼がクワガタから放たれた光と共に消えた場所に未だ視線を注ぎながらも、天城はきっぱりと言いきった。
ガブリエルは声を押し殺す。
『……それでも、私は君に……』
――生きて、欲しかった……。
その言葉はとても口に出せず、顔を歪めるガブリエルに天城は向き直る。
『すまない。だが、私はジュノとの出会いを変えるつもりはない。あの青年が2年後、グラン・カジノに現れる。そして、私に全財産を賭けて、セレモニーを挑むんだ』
その話は何度も聞いたことがあった。
あなたの運命がアマギとつながっているのなら、あなたは彼に間違いなく会える――そう言ったガブリエルの言葉を実証するかのように、彼は天城に出会ったばかりか、その心を動かし、日本に連れ帰る決意までさせてしまった。
『誰に言われた訳でもない。彼は、自分で考え、決め、行動した。眩しいぐらいに真っ直ぐに――ジュノという、私のつけたあだ名が正しいことを実感したよ。あの出会いに、例え自分自身だとしても、私は他の人間の思惑を入れるような野暮な仕打ちをするつもりはない。ムッシュ・サエキの手紙を携えたジュノが、か細い糸を辿って私の元へ辿り着き、その意思だけで私を動かす――それが私たちの出会いだ』
誇らしげに語る天城に、ガブリエルは自分の言葉では彼を説得するのは不可能だと悟る。
『ガブリエル、一つ頼みがある』
そして、次に彼が言うことも分かっていたが、頷くのには抵抗があった。
『あと、1週間だ、アマギ。それで、君がこんなにも望んでいる彼が来る』
天城が世良に送ったチケットの日付はちょうど1週間後に迫っていた。
彼が来れば――
藁にも縋るような気持ちで、ガブリエルはあの青年を待っていた。
だが、天城は幾分やつれた頬を薄く歪めて、肩を竦めてみせた。
『奇跡だと言ったのは君だろう、ガブリエル。分かっているんだろう?私がもう、こんな風に話すことも出来ない状態だということは』
図星を指され、ガブリエルは言葉に詰まる。
天城がハートセンターに戻ったという噂を耳に挟んでいたガブリエルは、オーストリアでの学会の帰りに立ち寄ると約束していたその前日、飛び込んできた事故の情報に、全ての予定を放り出し、モンテカルロへと駆けつけた。
絶望的な状態であることは一瞬で分かった。
何時間にも渡る手術で、ハートセンターの技術の粋を尽くして彼の身体は修復された。
けれど、そのときにはもう、余りにも時間が経ち過ぎていた――
『君の気持ちには感謝している。ガブリエル、君は大切な私の親友だ』
『ずるいな、君は。此処でそれを言うのか……』
ガブリエルは掠れそうになる声を必死で抑えた。
『何と言っても、今際のきわの頼みだ、引き受けてもらう――ジュノをあそこへ導いてくれ』
『ああ……』
ガブリエルが頷くと、天城はほっとしたように目を閉じた。
少しばかり疲れたように見えるその表情に反して、生き生きとした声がガブリエルの耳へと届く。
『事前に行き先を告げる必要はない。思いがけないものを見て驚くジュノの顔が私は大好きなんだ』
『……分かっている』
『ああ、楽しみだ。ジュノはきっと驚くだろうな。そして、私の思いを……』
―――――
長く伸びる心電図の音に、ガブリエルは歯を食い縛った。
奇跡は終わった――
今でも時々思うことがある。
もしも、自分にあの青年のような、彼の心を動かす力があれば、結果は変わっていただろうか?
それが出来た彼は間に合わず、最期まで傍に居た自分にその力はなかった。
その瞬間まで、天城は彼のことを語っていた。
彼がさくら並木を目にするだろう時に思いを馳せ、心を寄り添わせていた。
願いは叶っただろうか?
彼は全てを受け止めることが出来ただろうか?
今はまだ、言葉にすることは出来ない。
でも、いつか、あの青年が天城から受け継いだものを根付かせることが出来るようになった頃に再び会ってみたいと思う。
そして、その心に宿す、熱を帯びた手放しがたい時間を見せて欲しい。
その日を思いながら、ガブリエルはゆっくりとさくら並木に背を向けた。
思いの外、ガブ天になった…。ガブリエルと世良ちゃんは「本当に駄目な人だ」って思いながら、天城先生好きで仕方ない同志で仲良しが良い。
松明の火はログアウトしました(汗)世良ちゃんは「桜を植える人」でいくね…。
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