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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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ついったーで世良世良いいよねって話してたら、八木さんがすっごく素敵なツイートしてくれたので、ついSSにしてしまいました。1時間クオリティですけどね!気持ち的には院長ジュノ。

拍手[3回]



「何ですか?」

 こちらを見据えるように睨む視線に震えた。
 鏡のように自らを写し取ったその姿は、疾うに失われた若さを宿していた。


「君は……」
「スリジエ・ハートセンター創設準備委員会委員、世良雅志です」

 ――しかも、そのとき、なのか……。
 その肩書きを名乗っていたのは、人生のほんの僅かな期間。
 そして、世良の航路の道行きを大きく変えてしまった角度。


「スリジエ、ね。儚く散る運命の花か」

 聞きたくないという気持ちが勝り、世良の口を動かす。

 『彼』の顔に朱が走った。
 分かり易い怒りが浮かぶ。

「どういう意味ですか?!」

 敵と見做されたのだと理解した。
 馬鹿馬鹿しい。
 全てはもう、決定しているというのに。

「君だって、薄々感じているんだろう?」

 哀れな青年に、世良は噛んで含めるように語る。

 夢のように美しい人だった。
 その容貌も生き様も。
 だからこそ、失われたのではないかとすら思う。
 現実の世界なんて、元々、あの人の居るべき場所ではなかったのだ。


「スリジエセンターなんてものは出来ないんだよ」

 今はまだ分からないかも知れない。
 けれど、20年近くも年月を経た頃には君も悟るだろう。

 そう言いかけた、とき――

「そんなこと、ありません」
「あのね……」
「スリジエは必ず出来ます!俺は、あの人を信じます!」

 一瞬も目を逸らさず、彼は言い切った。

「理想の医療なんて、そんなものが簡単に出来る訳ないだろう!」

 ――止めろ……。
 世良は口を噤もうとした。
 しかし、何かに操られるように言葉は流れ続ける。


「東城大の人達の反応を知っているだろう。彼らは間違いなく、全力で阻止にかかってくる!」

 ――嫌だ、こんなの……。

「お前だって、全てを捨てて守ろうとした訳じゃないだろう!」

 ――違う、こんなことが言いたいんじゃ……。


「スリジエなんて、絶対に出来ない!!」


 ぽたりと、『彼』の頬を滴が伝った。

 ――駄目だ、諦めるな……。

 裏腹の声は届かず。
 『彼』は力ない笑みを浮かべて、消えた。


「うっ、ううっ……」

『スリジエは必ず出来ます!』
 ――本当は……、僕がそう、言いたかった……。

 世良は崩れ落ち、声を殺して涙を落とした。




「ジュノ」

 人の気も知らない陽気な声。
 本当にこの人は相変わらずだ。

「聞こえないのか、ジュノ?」


 返事は出来ない。
 だって、もう僕は貴方のジュノじゃない。
 貴方と同じ夢も見られない。
 貴方を信じるとも言えない。
 取って付けたような理屈を付けて、出来ない言い訳をして。
 こんな僕が貴方の隣に居て良いはずがない。

「ジュノ!」

 声が一段階大きくなった。


 ――もう、放っておいて欲しい……。
 世良は俯いた顔をより一層背けた。

「私のことが嫌いになったのか?」

 なのに、余りにも思いがけない質問を投げるから思わず振り向いてしまった。

「何で、そうなるんですか」

 思いの外近い位置に、今でも記憶に遺る綺麗な顔を見てしまい、何とか平常心を保とうと表情を引き締める。


「ジュノは変わらないな」

 そんな世良に、唐突な言葉が投げられる。

「そんな訳ないです……」
「変わってない。こういうときも昔のままだ」

 綺麗な笑顔を浮かべて、さっぱり意味の分からないことを言う。


 ――でも、天城先生……。
 世良は、その何だか嬉しそうな姿から小さく目を逸らして唇を噛み締める。


 結局、僕は今も、花も咲かせられない『青二才』のままなんでしょう……?


天城先生は出したいなぁって思ったんですが、あえて救わない方がテイスト的には合うかな、という気がしたので、そんなラスト。
院長とジュノが同じ空間に居るとか、想像するだけで幸せで仕方ないね!二人で天城先生挟んで、ツンデレ忠犬アピールすれば良いわー。可愛い可愛い。
八木さん、許可ありがとうございました!私だけかも知れませんが、凄い楽しかったですー。
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