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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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今んとこ思いついてる話ラスト。院長の部下の今中先生視点の天世良世良です。時間軸的には、R-18編より前です。

拍手[6回]



「今中先生、お疲れ」
 医局に戻ると、今中の向かいの空席にスーツ姿の世良が座って新聞を読んでいた。今日は、市役所の意見交換会に出席していたはずなので、予定より早く終わったようだ。こんな夕方から出勤しても仕事をするには中途半端で、院長室には寄らずに此処で暇をつぶしていたというところだろう。
「世良先生もお疲れ様です。早かったですね」
「うん、まあね。でも、あの程度の内容なら、午前中で終わってもいいくらいなんだけど」
 さらりと毒を吐きながら、世良が新聞を折り畳んだ。バッグと脇に置いた紙袋を手に立ち上がる。にまっと笑った顔を見て、言いたいことは分かってしまった。まあ、元々、この人は今日は直帰すると思ってたから、別に構わない。
「特に問題はありませんので、どうぞ」
「察しのいい部下を持って幸せだよ。今日は、このまま東城大に寄って帰るね」
 それを聞いて今中は驚いた。世良は此処暫く東城大に出入りしている。てっきり真っ直ぐに帰るつもりだと思っていた自分を反省した。
「大変ですね。お使いだけなら、私が行きましょうか?」
「え?!……ああ、分かってなかったのか……」
「え……、って……?」
 親切で言ったつもりだったのだが、驚かれた上に、呆れたように溜め息を吐かれ、今中は少々落ち込む。
「折角気が利くって思ったのに、その鈍さは相変わらずだねぇ」
「どういう意味ですか?」
 反射的に聞き返すと、世良は見たこともない表情になった。
「僕は仕事で東城大に行ってる訳じゃないよ。あくまで私用」
 何か言いたげな、それでいて、一番強い感情をやんわりと隠しているような――
「あの人に会いに行ってるんだよ」
 そう付け加えられた途端に分かってしまった。
 甘く響く声と、その意味ありげな微笑の理由。え、嘘だろ……。
「まさか……」
「そのまさかだよ。とっくに気付いてると思ってたのに」
「え、でも……、お会いしに行ってるのって天城先生でしたよね?」
「そうそう」
 余り面識はないが、モデルのような長身でとにかく綺麗な人なのは間違いないが、衝撃的なことに性別は男だ。
 そして、外科医としての腕も凄いらしいが、同時に何かとお騒がせな噂も多いらしい。
「もう一押しなんだけど、邪魔が入ることが多くてね。まあ、先生も気紛れで我が儘な人だから一筋縄じゃいかないんだけど」
 ――え……?それってつまり……。
「ホント、これだけ足繁く通ってるんだから、いい加減何かあっても良いと思うんだけど」
 ――この人、そこまでガチなのか――?!
 分かってしまった自分の頭を殴りたくなった。
「今中先生、ヘテロの女性が必ずしも今中先生を好きになる訳じゃないのと一緒で、幾らゲイでも相手を選ぶ権利はあるからね」
 反射的にドン引きしてしまった今中は、軽蔑したような表情を浮かべて言われて、自分の態度を反省した。
 ただ、今中としては、世良が天城を思っているというだけならそこまで気にはならなかったし、その関係にあるお相手と面識がなければそれで終わった気がする。上司が、顔を知っている男性と肉体関係を持とうとしている、いうのが何とも生々しかったのだ。
 それに、世良は、表面上は穏やかなのだが、本質はかなり直情的かつ情熱的で底が見えないところがある。
 この人に一途に思われる、というのは何と言うか、少々怖い。
 ――が、そんなことを説明しても分かってはもらえないだろうし、むしろ、より怖い思いをする羽目になりそうだ。
「ま、諦めないけどね。男なんて基本的に性欲には抗えない生き物だし、既成事実さえ作っちゃえばこっちのものってね」
 そんな今中の思考を読み取ったのではないかと思うタイミングで、世良は黒い笑みを浮かべてとんでもなく恐ろしいことを口にした。
「じゃあねー。今日は今中先生も早く帰りなよ」
 思わず、背筋に悪寒が走り抜けた今中の心境を何処まで理解しているのか、世良はその脇をご機嫌な足取りで通り抜けた。


「何で、こんなことに……」
 東城大に足を踏み入れながら、今中は溜め息を吐いた。
『今中先生、頼むのっす』
 院長も早退したことだし今日は早めに帰ろう、夕飯はのり弁にでもしよう、と思っていた今中の心の平穏を台無しにしてくれたのは、赤鼻の加藤課長だった。
 何でも、明日の朝一で院長の決済が必要な書類に漏れがあったらしい。
 生憎、世良は明日も一日中出張で捕まえることが出来ない。
 頭を下げる小男の姿に、断りきれずに書類を受け取り、蟹江に頼んで決済セット一式を借りてきたのだが、物凄く気が重い。
 ――本当に天城先生に迫ってるところに居合わせたら、どうしたら良いんだ……?!
 邪魔者にはなりたくないし、大体そんなことになったら本気で後が恐ろしいし、しかし、加藤課長にあそこまで頼み込まれたら嫌とは言えないし――という訳で、今中は大きく溜め息を吐く。旧教授室に辿り着いたものの、扉を開けるのは躊躇せずにはいられない。
「あれ、今中先生?」
 聞き慣れた声に飛び上がりそうになったが、良く似てはいるものの、いたって素直な声音にほっと息を吐いた。
「こんばんは、世良先生」
 世良は世良でも、こちらの世良先生は随分若くて可愛げがある。あの院長とは大違いだ、などと言うと、何が起こるか分からないので口にはしないが。
「天城先生に御用ですか?」
「いや、あの、実はうちの院長がお邪魔してないかと……」
「え……?」
 東城大所属医師の世良の顔が曇る。
 そうだった、この二人はとにかく仲が悪い。
 自分同士なのだからもう少し和解しても良いのでは、と思うのだが、だからこそ許せないこともあるのかも知れない。
 しかし、外見の相似点を除けば、確かに、タイプはかなり違っているから、お互い、何かと気に障るのかもな、とも思う。
「あいつが来てるんですか?!」
 案の定、それだけで若い世良はぱっと頭に血が上ったようだった。今中がどうしても開けられずにいたドアを、コンコンとノックしたかと思うと、間髪入れずにノブを回してドアを開く。
「せ、世良先……!」
 こういう、良く言えば思い切りが良い、悪く言えば大雑把なところはどこぞの院長にそっくりだ。
「何ですか?!」
 止めようとしたが間に合わず、咄嗟に腕を掴もうとしたら睨み付けられた。
 びくりとしたが、その真っ直ぐな目は嫌いではなかった。
 ただ、今は少々不味い。
 恐る恐る中を窺う今中に、世良は不機嫌そうな口調で言った。
「今中先生も用があるんでしょう?遠慮することないじゃないですか」
 まさか、本当のことを言う訳にもいかず、今中は曖昧な笑いを浮かべた。
「……実は、市役所の職員に、此処のお店の知り合いが居たんですよ。本当なら数量限定で売り切れです。どっちが良いですか?」
「どっちもだ」
「じゃあ、半分こしましょうか」
 奥の方からくすくすと笑い声がした。
 隣の世良の顔色が変わる。
 躊躇いもなく部屋に足を踏み入れていくのを、今中も慌てて追った。
「はい、どうぞ」
「これはラムか?なかなか、センスが良いな」
「マスカルポーネとラム酒のスイーツだそうです」
「ほら、ジュノも」
 今中は目を疑った。
 応接用だろうソファに深々と座った二人の男は、ぴったりと身体を密着させていた。しかも、天城は世良の差し出したスプーンを向けられ、世良も今正に、天城の持ったスプーンに口をつけていた。テーブルの上には先程世良の持っていた紙袋があり、見た目も凝ったデザートが見えた。
「このプリンも、滑らかで凄く美味しいですね」
「こういうオーソドックスなものも良いな」
「先生、もう一口どうですか?」
「何してるんですか?!」
 突然の闖入者にすら気付かないばかりか、デザートと相手以外は目にも入らない様子の二人に業を煮やしたのか、今中の隣の世良が大声で割り込む。呆気に取られて、茫然と一部始終を見ていた今中は、その声で漸く我に返った。
「また、お前か……。え……、今中先……?!」
 世良――上司の方が慌てたように腰を上げた。
 長い前髪のかかる頬は、少し赤らんでいる気がする。
「あ、え……、えーと、そうです!――加藤課長が、書類に漏れがあって、どうしても今日中に院長の決済が必要だからって頼まれちゃいまして……」
「仕方ないなぁ。直ぐにやるから、こっち来て」
 世良がろくにこちらも見ずに、さっさと奥の机に向かって行くのに、今中は首を竦めて付いていった。
 だが、幸いなことにお怒りの言葉はなく、書類の確認、署名捺印が滞りなく済まされていく。
 どうやら、任務は無事に完了したらしい。漸く帰れると思った矢先――
「さっきの」
 ぼそりと呟かれた声に、今中は背を凍りつかせた。
「いいえ、見てません!私は何も……!!」
「言っておくけど、あれは天城先生のご機嫌取りだから。先生がしたいって言うから合わせてあげていただけで、僕の狙いはこの後の……」
「ジュノ、まだかかるのか?まだ一口しか食べてないぞ」
「はい!今、行きますから」
 どうも、内容と声の調子が一致していない。正確には、今中に対する言葉と天城に対する返事が、だが。まあ、社会人の嗜みとして、必要とあらば、語尾にハートマークが付きそうな甘い声で返事しなければならない――ということで良い、それで全てが丸く収まるならば……。
 しかし、やはり、『全て』という訳にはいかなかった。書類をファイルに、印鑑をケースに仕舞った世良は、それを今中に返しながら言ったのだ。
「そういう訳だから、さっさと帰ってよね。序でに、今中先生が連れて来たあのお子様もどうにかしてくれない?」
「い、いや、それは……」
 どうやら、院長サマも自分自身の存在がお気に召さないらしい。
 だとしても、多少毒気がないとはいえ、本質的にはこの人と同じ人間なのだ、今中如きに、どうにかなど出来るはずもない。
「あの邪魔者の所為で、この後のお楽しみが駄目になったらどうしてくれるのさ?責任感じるなら、食事にでも誘って連れ出してよ」
「そんな無茶な……」
「先生、お待たせしましたー」
 ころっと態度を変えて甘えた声を出した世良は、今中の反論など聞きもせずにさっさと戻っていく。
 仕方なく今中も、書類一式を手に後に付いて行ったが、応接セットに近づいただけで、天城の前に立つ若者にぎっと睨まれた。
 この顔は知っている。世良院長サマに付き合わされて見た、サッカー・ワールドカップで、ゴール前で守る選手の目だ。
 どうやら、上司と長話をしていた所為で、今中も敵と認識されたらしい。
「すみません、先生。急用が出来たので帰ります」
 更に、上司の口から出た言葉に、今中はえっと目を見張る。
「残念だが、仕事ならば仕方ないな」
「申し訳ありません。この埋め合わせは必ず」
 ソファの肘掛けに凭れたまま片手を上げた男の仕草は気障だったが、とても様になっていた。
 妙にどぎまぎしながら慌てて一礼して、今中は世良に付いて部屋を出た。
「良いんですか?」
「このままじゃ、あの番犬が引きそうにないからね。誰かさんが協力してもくれないし」
 天城に近付く者――主にこっちの世良なのだが――に噛み付きそうな表情で威嚇している様子を思い出して、その例えに納得する。しかし、あの手綱を掴めと言うのは、今中には余りに荷が重過ぎる。
「改めて、夜這いでもかけるとするよ」
「……」
 物騒な発言は相変わらずだったが、今度は背筋を這い上るものはなかった。
 きっと、この人は甘い声であの人の名を呼んで、手を伸ばすのだろう。
 それは何だかとても微笑ましいことのような気がした。
「……今度邪魔したら、救命センターで3ヶ月タダ働きね」
「ちょっ……、待ってください!今日だって、好きで邪魔した訳じゃ……!!」
 ほっとした今中に言い捨て、世良はずんずんと歩いていく。
 今中は必死に無実を訴えながら、その背を追った。


今中先生の前でキャラを守ろうとする院長ってずっとやりたかったんだけど、なかなか昔の知り合いと会わせる機会がなかったので(速水とだと違うキャラになるし)、パラレルだけど今回やっちゃえって話。
恋愛感情絡まない上下関係・今世良も、虎視眈々と狙ってる発言してる癖に天城先生前にするとただのばかっぷるに落ち着く院長もとっても楽しかったです。
衝撃の場面を目撃して「これはこれで怖ぇ!」で終わらせるつもりだったんですけど、なおさんが「見られたらツンに戻るの?!」って言ってくれたので、ちょっとだけ今中先生が報復できたというオチでした。
あと、加藤課長の喋り方ってこれでいいのかな?北海道弁、分からん…。
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