テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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世良は、病院中庭のベンチに座り、佐々木病院長から預かった手紙を睨みつけていた。
つい昨日、国際学会のシンポジストのお供として、モナコから帰国したばかり。
そして、使いを果たせなかったことを病院長に告げ、「小僧なら何とかできると思った私の目は節穴だったか」などと嫌味を言われてきたところだった。
――しょうがないじゃないか。職場にまで行ったのに、相手はまともに出勤すらしてないなんていうんだから……。
世良は手紙を握り締める。お返ししますと申し出たが、「そんなもん、処分しろ!目障りだ!」と言われてしまった。
言われた通りに処分するため、破ろうとしたとき――
「何をしてるんだ?」
穏やかな声が頭上から降ってきて、世良は顔を上げた。
長身の男が覗き込むように、世良の前に立っている。
「何か、用ですか?」
咎められるようなことをした覚えはない。
自然、攻撃的な調子になる。
「私への手紙を私の許可なく破ろうとしていたからさ」
「は?」
この手紙は、モナコ在住の心臓外科医に渡すはずのものだ、言い掛かりも甚だしい。
「ふざけないで下さい!この手紙が誰宛のものか、知ってるとでも言うんですか?!」
「モナコのモンテカルロ・ハートセンター部長・天城雪彦」
「何で、それを……?」
茫然とした世良を見下ろす男の目がすっと細められる。
涼しい顔に、一瞬激情が浮かんだのが分かり、ぎょっとした。
「何で?それは、私が聞きたい。ジュノは何故、私に会わなかった?」
「……本当に、天城先生、ご本人なんですか……?大体、ジュノって何……?」
質問には答えずに、彼は、強く世良の肩を握り締める。
「覚えてないなどとは言わせない。何故、未来を変えた?何故、私と関わることを拒む?」
「な……にを、言って……?」
――何故……?
『ジュノ……』
――何処か遠くで囁く声が、記憶を呼び起こす。
カジノのざわめき。赤と黒の回転盤。
ホテルの窓から見た港の夜景。銀色の海燕。
煌くメス。見惚れるほどにも素晴らしいその手技。
前を歩く、自信に満ちた黒い白衣の背。
そして――
植えられた桜の苗木。
頭が、痛い――
「ジュノ!」
呼びかけられ、はっとした。
「天城先生?」
目の前に居る男の名を呼ぶと、彼は微かに頬を緩める。
「思い出したか、ジュノ」
「俺、どうして……?」
先程までの会話が頭を巡る。何故、そんなことを言ってしまったのか、まるで思い出せない。
天城はいとおしむような目をして頭上を見上げた。
「この島には神が居るんだ。きっと、幻でも見せられたんだろう」
その視線を辿ると、そこには巨大な桜の木があった。
ここ、神威島の診療所の裏山の桜が『千年桜』と呼ばれているらしいと聞いたことを思い出す。
「……天城先生も?」
「触れてみるか?」
「……」
反射的に打ちのめされたような表情になった世良を見て、天城は肩をすくめる。
そして、軽い調子で再び問いかけた。
「何故、未来を変えたんだ、ジュノ?」
そんなことをしたつもりはない。
ただ、深く深く願っただけだ。
デアワナケレバ、ヨカッタ、ト――
「そんなの、決まってるじゃないですか。あのとき、俺と会わなければ、天城先生は今も……!」
「モナコで空虚なギャンブルを続けていただろう。ただ惰性で続くだけの日々を貪りながら」
「だとしても……!」
ふっと天城が笑った。
「私はジュノと共に日本に来たことを後悔などしていない。ジュノと出会ったことも、ジュノと過ごした日々も」
「天城先生……」
ベンチから抱き起こされたと思ったら、彼の腕の中に居た。
二度と触れることもないと思っていた体温に包まれて、世良は震える。
「幸せだろう、ジュノ?この気持ちまで全て忘れてしまうつもりか?」
「でも……」
――もう、傍には居てくれないんでしょう……?
言葉を、飲み込む。
言ったら、真実になってしまいそうで――
「忘れるな」
「なっ……?!」
「忘れることは許さない」
――何ですか、その自分勝手な話は……。
そう言い掛けて、そうだった、いつもこの人はこうだった、と思いなおした。
向かうところ敵なし、自由奔放、大胆不敵、傍若無人、エトワールを胸に輝かせる無敵の貴族様だ。青二才が挑んだところで、敵う訳もない。
「……勝手です」
小さく口の中で呟いて、反抗するのが精一杯で。
「その割には、必死でしがみ付いているんだな」
くつくつと喉を鳴らされたが、放すのは御免だった。
「自分の桜の木を植えるんじゃなかったのか、ジュノ?」
優しい声が耳元で囁く。
――植えたかった。けれど、直ぐに阻まれる。俺は天城先生みたいには出来ない。
「俺……、俺は、メスすらまともに握れませんでした……。たかが、盲腸の手術すら、出来なかった……」
手術が怖いと思った。手が震え、頭の指令が全く伝わらない。あんな体験は初めてだった。
「俺はもう、医者ですらないんです……!」
世良は、決壊したかのように泣き出す。
「こんな情けないことを言うように仕込んだつもりはないんだがな」
だが、言葉に反して、天城の手は優しく世良の髪を撫でていた。
「ジュノは医者だ。メスが握れないなら、他の病んだものを治せば良い」
「病んだもの……?」
思わず、その言葉に聞き入る。
「私の話を覚えているか?――いずれ、日本の医療は資金の流れを断たれ、干からびる。そして、それはそう遠い未来のことではない」
「まさか……」
「その、まさかだよ、ジュノ」
「天城先生は、俺にまた地獄に落ちろって言うんですか?!この社会の歪みを――病を治せなんて、そんなこと、俺に出来る訳がありません!」
頭から血の気が引くような心地がして、世良は天城に縋る。
「それが出来ないなら、他の出来ることをやれば良い。ジュノに出来ることだって、きっとある」
しかし、天城は柔らかく世良の言葉を受け流した。
「俺は……」
言い澱む世良に、天城は笑み混じりの声で応じる。
「仕方ない。ジュノの願いを叶えてやろう」
何をされるのかと思ったら、啄ばむような口付けを優しく重ねられた。
「こ、こんなとこで……」
「ジュノがしたがっていたと思ったんだが」
「……」
「ジュノ……」
合間に挟まれる呼び声も、髪を撫でる手も、全てを見透かすような瞳も、何もかもが愛おしい。
世良は夢中でそれに応える。
「ジュノが自分に出来ることをやっていれば、ジュノは決して独りにはならない。そして、私も、ずっとジュノの傍に居るさ」
そう囁かれた言葉に安心して、身体を委ねた途端、体内にじわりと眠気が湧き上がった。
「今は、ゆっくりお休み、ジュノ」
「はい……」
眠さの余り、やっとのことで返事だけして目を閉じた。
世良ちゃんが極ラプで言ってた、病院再建請負人になるまでの経緯が全くイメージできません(まあ、しなくて良いよ、という説もあるんですが。ついつい、考えてしまうのが2次書きの性というか)
ここまで隠喩表現にするってことは、何処かで書く予定があるのかな?それとも、「書くかも知れないから、適当に伏線張っておこう」とか…。頼む、そんな西尾維新みたいな書き方止めてくれ…。
そんな訳で、世良ちゃんが今中先生に語った言葉の断片を集めて、創作してしまいました。まあ、それでも、全く辻褄合ってないんですが…。
これだけでも、話としては有りですが、一応、続きます。
どっかで見たようなエピソードも混ぜ込んでますが、スリジエ完結後の集大成ってことで。
つい昨日、国際学会のシンポジストのお供として、モナコから帰国したばかり。
そして、使いを果たせなかったことを病院長に告げ、「小僧なら何とかできると思った私の目は節穴だったか」などと嫌味を言われてきたところだった。
――しょうがないじゃないか。職場にまで行ったのに、相手はまともに出勤すらしてないなんていうんだから……。
世良は手紙を握り締める。お返ししますと申し出たが、「そんなもん、処分しろ!目障りだ!」と言われてしまった。
言われた通りに処分するため、破ろうとしたとき――
「何をしてるんだ?」
穏やかな声が頭上から降ってきて、世良は顔を上げた。
長身の男が覗き込むように、世良の前に立っている。
「何か、用ですか?」
咎められるようなことをした覚えはない。
自然、攻撃的な調子になる。
「私への手紙を私の許可なく破ろうとしていたからさ」
「は?」
この手紙は、モナコ在住の心臓外科医に渡すはずのものだ、言い掛かりも甚だしい。
「ふざけないで下さい!この手紙が誰宛のものか、知ってるとでも言うんですか?!」
「モナコのモンテカルロ・ハートセンター部長・天城雪彦」
「何で、それを……?」
茫然とした世良を見下ろす男の目がすっと細められる。
涼しい顔に、一瞬激情が浮かんだのが分かり、ぎょっとした。
「何で?それは、私が聞きたい。ジュノは何故、私に会わなかった?」
「……本当に、天城先生、ご本人なんですか……?大体、ジュノって何……?」
質問には答えずに、彼は、強く世良の肩を握り締める。
「覚えてないなどとは言わせない。何故、未来を変えた?何故、私と関わることを拒む?」
「な……にを、言って……?」
――何故……?
『ジュノ……』
――何処か遠くで囁く声が、記憶を呼び起こす。
カジノのざわめき。赤と黒の回転盤。
ホテルの窓から見た港の夜景。銀色の海燕。
煌くメス。見惚れるほどにも素晴らしいその手技。
前を歩く、自信に満ちた黒い白衣の背。
そして――
植えられた桜の苗木。
頭が、痛い――
「ジュノ!」
呼びかけられ、はっとした。
「天城先生?」
目の前に居る男の名を呼ぶと、彼は微かに頬を緩める。
「思い出したか、ジュノ」
「俺、どうして……?」
先程までの会話が頭を巡る。何故、そんなことを言ってしまったのか、まるで思い出せない。
天城はいとおしむような目をして頭上を見上げた。
「この島には神が居るんだ。きっと、幻でも見せられたんだろう」
その視線を辿ると、そこには巨大な桜の木があった。
ここ、神威島の診療所の裏山の桜が『千年桜』と呼ばれているらしいと聞いたことを思い出す。
「……天城先生も?」
「触れてみるか?」
「……」
反射的に打ちのめされたような表情になった世良を見て、天城は肩をすくめる。
そして、軽い調子で再び問いかけた。
「何故、未来を変えたんだ、ジュノ?」
そんなことをしたつもりはない。
ただ、深く深く願っただけだ。
デアワナケレバ、ヨカッタ、ト――
「そんなの、決まってるじゃないですか。あのとき、俺と会わなければ、天城先生は今も……!」
「モナコで空虚なギャンブルを続けていただろう。ただ惰性で続くだけの日々を貪りながら」
「だとしても……!」
ふっと天城が笑った。
「私はジュノと共に日本に来たことを後悔などしていない。ジュノと出会ったことも、ジュノと過ごした日々も」
「天城先生……」
ベンチから抱き起こされたと思ったら、彼の腕の中に居た。
二度と触れることもないと思っていた体温に包まれて、世良は震える。
「幸せだろう、ジュノ?この気持ちまで全て忘れてしまうつもりか?」
「でも……」
――もう、傍には居てくれないんでしょう……?
言葉を、飲み込む。
言ったら、真実になってしまいそうで――
「忘れるな」
「なっ……?!」
「忘れることは許さない」
――何ですか、その自分勝手な話は……。
そう言い掛けて、そうだった、いつもこの人はこうだった、と思いなおした。
向かうところ敵なし、自由奔放、大胆不敵、傍若無人、エトワールを胸に輝かせる無敵の貴族様だ。青二才が挑んだところで、敵う訳もない。
「……勝手です」
小さく口の中で呟いて、反抗するのが精一杯で。
「その割には、必死でしがみ付いているんだな」
くつくつと喉を鳴らされたが、放すのは御免だった。
「自分の桜の木を植えるんじゃなかったのか、ジュノ?」
優しい声が耳元で囁く。
――植えたかった。けれど、直ぐに阻まれる。俺は天城先生みたいには出来ない。
「俺……、俺は、メスすらまともに握れませんでした……。たかが、盲腸の手術すら、出来なかった……」
手術が怖いと思った。手が震え、頭の指令が全く伝わらない。あんな体験は初めてだった。
「俺はもう、医者ですらないんです……!」
世良は、決壊したかのように泣き出す。
「こんな情けないことを言うように仕込んだつもりはないんだがな」
だが、言葉に反して、天城の手は優しく世良の髪を撫でていた。
「ジュノは医者だ。メスが握れないなら、他の病んだものを治せば良い」
「病んだもの……?」
思わず、その言葉に聞き入る。
「私の話を覚えているか?――いずれ、日本の医療は資金の流れを断たれ、干からびる。そして、それはそう遠い未来のことではない」
「まさか……」
「その、まさかだよ、ジュノ」
「天城先生は、俺にまた地獄に落ちろって言うんですか?!この社会の歪みを――病を治せなんて、そんなこと、俺に出来る訳がありません!」
頭から血の気が引くような心地がして、世良は天城に縋る。
「それが出来ないなら、他の出来ることをやれば良い。ジュノに出来ることだって、きっとある」
しかし、天城は柔らかく世良の言葉を受け流した。
「俺は……」
言い澱む世良に、天城は笑み混じりの声で応じる。
「仕方ない。ジュノの願いを叶えてやろう」
何をされるのかと思ったら、啄ばむような口付けを優しく重ねられた。
「こ、こんなとこで……」
「ジュノがしたがっていたと思ったんだが」
「……」
「ジュノ……」
合間に挟まれる呼び声も、髪を撫でる手も、全てを見透かすような瞳も、何もかもが愛おしい。
世良は夢中でそれに応える。
「ジュノが自分に出来ることをやっていれば、ジュノは決して独りにはならない。そして、私も、ずっとジュノの傍に居るさ」
そう囁かれた言葉に安心して、身体を委ねた途端、体内にじわりと眠気が湧き上がった。
「今は、ゆっくりお休み、ジュノ」
「はい……」
眠さの余り、やっとのことで返事だけして目を閉じた。
世良ちゃんが極ラプで言ってた、病院再建請負人になるまでの経緯が全くイメージできません(まあ、しなくて良いよ、という説もあるんですが。ついつい、考えてしまうのが2次書きの性というか)
ここまで隠喩表現にするってことは、何処かで書く予定があるのかな?それとも、「書くかも知れないから、適当に伏線張っておこう」とか…。頼む、そんな西尾維新みたいな書き方止めてくれ…。
そんな訳で、世良ちゃんが今中先生に語った言葉の断片を集めて、創作してしまいました。まあ、それでも、全く辻褄合ってないんですが…。
これだけでも、話としては有りですが、一応、続きます。
どっかで見たようなエピソードも混ぜ込んでますが、スリジエ完結後の集大成ってことで。
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