テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
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しょーんさんが教えてくださった、現在の夕張の話に感動して考えたSS。書いて良いですよって仰ってくれたしょーんさんのお誕生日に間に合わせてみました。
設定は、院長が就任5年後に極北を後にするっていう、極ラプ2周年ネタの今世良ルートになります。このサイト唯一の世良花を今世良で上書きしてしまう…。いや、美和ちゃん嫌いじゃないんだよ!私が腐ってるだけなんだよ…!
極北旅行から1週間。まだまだ脳内は時々ぼんやりと、旅した景色を巡ってたりします。ホント、夢みたいな体験だった。このフルカラー再生される景色を創作に反映させたい!そして、帰宅した翌日にニュースに映った、どっかの峠の雪景色に戦慄。お天気良くて有難かったんだなぁ…。春の桜満開京都もそうでしたが、今年の旅はタイミングばっちりで素晴らしかった。
あと、近況で特筆すべきは、会社でメールソフト開いたら、再建請負人からメールが来てたことでしょうか。それ、職業認定されたの?クレイマー読んだときには「ちょwww何、それwww」って感じだったけど、今や院長にはこの肩書き以外考えられないなんて。しかし、出会い系ならともかく、会社の経営改革をバラ撒きメールに頼むとは考えられないが…。
設定は、院長が就任5年後に極北を後にするっていう、極ラプ2周年ネタの今世良ルートになります。このサイト唯一の世良花を今世良で上書きしてしまう…。いや、美和ちゃん嫌いじゃないんだよ!私が腐ってるだけなんだよ…!
極北旅行から1週間。まだまだ脳内は時々ぼんやりと、旅した景色を巡ってたりします。ホント、夢みたいな体験だった。このフルカラー再生される景色を創作に反映させたい!そして、帰宅した翌日にニュースに映った、どっかの峠の雪景色に戦慄。お天気良くて有難かったんだなぁ…。春の桜満開京都もそうでしたが、今年の旅はタイミングばっちりで素晴らしかった。
あと、近況で特筆すべきは、会社でメールソフト開いたら、再建請負人からメールが来てたことでしょうか。それ、職業認定されたの?クレイマー読んだときには「ちょwww何、それwww」って感じだったけど、今や院長にはこの肩書き以外考えられないなんて。しかし、出会い系ならともかく、会社の経営改革をバラ撒きメールに頼むとは考えられないが…。
「今中所長、お電話です」
受話器を差し出す蟹江の意味有りげな笑みに、今中は思わず背筋を正した。
「今中先生、久し振り」
「あ、はい。お久し振りで……」
懐かしい声は、あっさりと今中の挨拶を遮った。
「ところでさ、来月浪速で市民講座の話が来たから、そこで20分のスピーチ頼むよ」
「は……?突然、何なんですか?!」
しかも、数ヶ月振りの会話という情緒など微塵もない、強引な依頼である。
「それくらい良いじゃない。どうせ暇でしょ、そっちは」
電話の向こうでは、今中の戸惑いなど考えもしない勝手な声が聞こえてくる。
「そんなの、世良先生がやればいいじゃないですか!」
このままではペースに嵌められてしまう、と少し強気に出たが、それを迎えたのは僅かな沈黙だった。そして、小さな溜め息――
「だって、僕はもう、極北の人間じゃないからね……」
そこに漂う寂しそうな色に、今中は言葉を失う。
「……そんなこと……」
「とにかく、今のそっちを知ってる人じゃないと意味がないんだよ。そういう訳だから、よろしくねー」
打って変わった明るい声が終わるか終わらないかのタイミングで、プツッという一方的な会話終了音が響き渡る。
「ちょ、ちょっと……!」
後は、ツーツーという人工音が耳の中に流れ込んでくるのみ……。
「スピーチなんて、出来ません……!」
届かないのを承知で、それでも胸に溜まったフラストレーションをぶつけるように受話器に向かって叫ぶ。何時しか、ずっと聞いていたような看護師達と事務員のくすくすという笑い声が耳元を擽った。
「――出来ないんじゃなかったのか……?」
「あら、今中所長。スピーチの下書きは順調ですの?」
角田に笑われ、今中は机に突っ伏した。順調どころか、白紙に汚れ一つ付けられていない。
「勘弁してくださいよ。ホント、あの人、無茶振り過ぎる……」
こつん、と机の上に湯飲みが置かれて、今中は感謝しつつ、湯気を上げるそれを手にした。
「スピーチなんて言われても、何言えばいいんだか……」
「世良院長先生が何も仰らないなら、今中所長のお好きにやればいいんじゃないですか」
「好きにやるって言っても……」
「こんなでも、院長先生に任せられたんでしょう?」
角田の中では、世良は今でも『院長先生』なのだと、こんなもの呼ばわりされた今中は思う。
「任せられた、んでしょうかねぇ……」
呟きながら、世良がこの地を去ると言ったときのことを思い出した。
「中国地方の病院へ移ろうと思ってるんだけどさ」
今日は道東の介護施設へ見学に行くと、先に起きた世良が身支度をしているのを、寝床の中で見るともなしに見ていたときだった。
「え……?!」
布団の温もりにぼんやりしていた頭が冷水を浴びせられ、咄嗟に訳が分からないというように戸惑って、口も身体も硬直させてしまう。とにかく、何か口にしなければ、と必死に言葉を探した。
「な、何でですか?!世良先生が此処を出て行く理由なんて……!」
「理由?」
一時は、市議会や地域住民と深刻な確執があったが、何時しかそれも消えた。
強硬に改革を断行する顔ばかりが取り質されたが、素の世良は案外と穏やかで親切だったのだ。特に、素直な患者達にはなかなかの人気者で、「世良先生と話すのが楽しみでねぇ」などと言って足繁く通ってくる高齢の女性陣は多かった。世良も、慕われるのは満更でもないのか、ぽつりぽつりと来る患者達にゆっくりと診療時間を割いて、たった一人の観客へと滑らかな弁舌を振るってみせていた。
「極北の医療は、世良先生のお陰で立て直されたんです。もう、先生に出て行けなんて言う人は誰も居ません」
「立て直された、からだよ」
「それ、どういう……?」
「もう、僕の役目は終わったってことさ」
世良はしゅるりと音を立て、ネクタイを結んで形を整える。後は白衣を羽織るだけの、すっかり完成された再建請負人の姿で今中を振り返った。思わず、今中は腕を付いて身体を起こした。
「後は頼むね、今中先生」
いつもと同じ、柔らかな笑みで。
それが別れの言葉だと気付くのに、数秒。
頭の中が真っ白に塗りつぶされていく――
「待って、下さい……っ!」
書類の入ったバッグを持って何時からかキーホルダーをつけなくなったハーレーの鍵をかちゃりと握ってドアノブを掴む世良を止めようと必死で飛び起きた。
市民講座の日は、残念ながら、土砂降りの雨だった。
けれど、既に底冷えのする北の大地から降り立った今中には、むしろ暖かく感じられた。
スタッフが段取りを説明してくれている間も、依頼した本人は姿を現しもしない。
あの人、このスピーチを押し付けたことも忘れてんじゃないか、と久し振りに会えるのを楽しみにしていただけにむっとして、そんなことを考える。
内容についても事前に話したかったのだが、忙しいとか何とか理由をつけられて、結局、ろくに話も出来なかった。
――お望み通り、好きにやらせてもらおうじゃないか。
今中にしては大胆なことに、数日前に原稿を大幅に書き換えた。
しかし、この調子だと、世良が内容を聞くこともないという間抜けな結末になることも有り得る気がしてきた。
だとしたら、余計なことをするより、素直に前々から仕上げていた原稿を練習しておけば良かったと後悔する。
「今中先生、準備してもらってもよろしいでしょうか」
スタッフが合図に来たときには、緊張の余り、足が震えるほどになっていた。
――あの人は、毎回、こんなことやってるんだよな……。
大勢の人間の注目を浴び、ざわめきの中心に立っても、世良は意見をぶらすこともなく、自らの考えを真っ直ぐに述べる。
――貴方の10分の1でもいいですから、その強さを貸してください。
拳を握り締め、スクリーンの隣へと向かって歩き出す。
意地の悪い教授連中が発言を逐一チェックしている極北大の症例報告会に比べれば、この程度何でもない、はずだ。あの頃は、スライドを自分で交換しながら映写機を通して見せるような時代だったが、今回は、今中の話に合わせてアシスタントがノートパソコンでデータを操作してくれるらしい。
聴衆の前に出たとき、膝ががくがくしてきたのを武者震いだと言い聞かせる。
部屋は50人程度収容出来そうな広さで、聴衆は3分の2ほど――世良なら、プログラムを見ただけで言い当てただろうか?
「みなさん、こんにちは。白衣を着ている私は誰でしょう?」
挨拶代わりのジョークは一応成功したようで、くすっとした笑い声が疎らに漏れ、会場の空気は多少緩んだ。
「正解は医者です。医者っていうと、新しい治療法とか健康法の良い話が聞けるのかなと思われるかも知れませんが、残念ながらそういう話ではありません」
不思議そうな顔になる聴衆達を、視線で一巡する。
気持ちはかなり落ち着いていた。
もしかしたら、先程の願いが叶ったのかも知れない。まあ、だとしたら、これからやることに少しばかり罪悪感が湧くのだが――
「本日話すのは、此処に出ている通り、『医療崩壊のすすめ』です。医者がこんなことすすめるなんて可笑しな話ですが、それを今から説明します」
今中は一瞬だけ、6年前のあの日を振り返った。
派手な爆音を響かせて、1台のハーレーが病院前に止まり、そこから降りた一人の男がヘルメットを取ってこちらを見たとき、今中の人生は変わったと言って良い。
「私は極北大医学部を出て、外科医になりました。そして、そのまま10年ほど大学病院に居ました。少しずつ難しい手術なんかも任されるようになってきて、自分が担当した患者さんにお礼を言われたりして、得意になっていた時期もありました」
厚労省のメタボ対策批判で大学病院を追われた部分は暈して続けた。
「そんなとき、大学の医局からの指示で、現在私が所長をしている診療所になる極北市民病院に勤務することになりました。最先端の医療を扱う大学病院に比べて、地方の病院は赤字を抱えて、管理上の多くの問題を持ちながら、私の来た1年後に極北市の財政破綻と共に潰れました」
今中が赴任したときに居た面々の顔が思い出される。
別に、彼らだって、楽をすることだけ考えて、あの職業を選んだ訳ではなかっただろう。
それでも、あの状況では、そのまま続けていくしかなかった。今中だって、そうだった。
「実は、大学病院に居る頃から、段々と悩むようになっていました。患者さんが来れば助けるのが医者です。けれど、病院にはそれが出来ない患者さんも沢山居ます。例えば、高齢施設にいる寝たきりの患者さん達です。酷い人は、自力で話すことも食べることも出来ず、10年もそのままというケースすらあります――極北に来て一層強く、自分の技術は本当に人を幸せに出来ているのかと考えるようになって来ました」
けれど、そんな悩みを表に出す暇などなかった。
財政破綻により、市民病院を取り巻く状況は目まぐるしく変わり、極北の医療の質は一気に低下した。それを変えたのが新院長だった。
「本日お話を聞いてくださってる方の中には、6年前の極北市の財政破綻を覚えていらっしゃる方もいるかも知れません。当時、新院長として極北に来た一人の医者が、その時入院していた患者さん達を全て近隣の病院に移しました。看護師も9割退職させ、救急を廃止し、今後も一切受けないと宣言しました。今思えば、全て当然の方針です。けれど、そこに在籍していた私は何だか居た堪れませんでした」
『患者さんが来れば助けるのが医者』――裏返せば、それすら出来ない者は、もう医者ではない。
「私と同じように考えた人で、当時新院長を批判した人は大勢居ました。けれど、今の極北の市民たちはとても元気です。実際の数字を見てください」
今中は、アシスタントに合図する。
スライドにはグラフが映し出された。
「救急車の出動回数、高齢者一人当たりの医療費、心疾患・肺炎・ガンそれぞれの死亡率、全て下がっています。極北市民病院の新院長は、医療の縮小と同時に、薬の過剰投与をしないと宣言しました。納得できずに喧嘩になった患者さんも居ました。けれど、生活習慣病は薬を使わなくても、生活を改善すれば治るんです。そうすれば、医療費も抑えられるし、健康で居られる。考えてみれば当り前のことだけど、これまで誰もやらなかったことです。そんな極北の変化を見ているうちに、私の悩みはなくなっていきました。こうして変わった今の極北の『医療崩壊』を、これからも私は支えていきたいと思います」
今中は大きく息を吐く。
これを伝えたい、誰よりもあの人に――
「この方針を打ち出し実行した人は、もう極北には居ません。1年前、中国地方の赤字の病院に移っていきました。極北に来たときほどは華々しく取り上げられませんでしたが、そこでもやっぱり、今でもこういった改革を行っています――聞いてますか、世良先生。貴方の植えた花はこうしてちゃんと咲いています。本当は、分かっているんですよね?」
席の間をスタッフがこそこそと動くのが見えた。
大分、後ろの方だ。
そんなところに居たのか。
どうせ、後で「ちゃんと見てたよ。今中先生にしては上出来じゃないの」とか、知ったような顔で言ってくるつもりだったのだろう。
――何時までも、ヤラレっ放しでは居ませんからね。
そう思った瞬間、丸眼鏡の男が席から引っ張り出されて来る。
「こんなの、聞いてないんだけどなぁ……」
「これまでお話してきたように、極北の医療改革を進めてきた『極北の救世主』であり、『日本の医療をたなごころで転がす医師』にして、『不良債権病院再建請負人』・世良雅志先生です」
「それ、凄い恥ずかしいんだけど!」
今中はこれでもかとマスコミの美辞麗句を並べ立てる。流石に、不満が出たのでマイクを譲った。
「只今ご紹介に預かりました、今中先生の人生を変えた恩人・世良雅志です。こんな風に思ってくれてるなんて一度も言ってもらってなかったので、公開告白が聞けて感無量ですね」
しかし、聴衆を前にした途端、にまりと笑って語り始めたのに感服する。
増して、あっさりと一言めで報復してくるのだから、今中としては赤くなって小さくなるしかない。こちらは、一月もかけて準備したのに、一瞬の動揺を誘うのが関の山だなんて情けない限りだ。聴衆の面々も、穏やかな笑みで開口一番、場を和ませた存在にあっさりと心を持っていかれたようだ。
「先程、今中先生の方からお話させていただいた極北の高齢化対策を、私は『極北モデル』と呼んでいます。極北の高齢化率は現在45パーセント、数十年後には日本全体がそうなるでしょう。私はそのとき、極北で出来たことが日本全体にも適応できるのではないかと思います」
挙句、気がついたときには、国レベルの話にまで持っていってしまった。
それでも、酷い駄目出しをされなかったところを見ると、それなりに及第点だったのだろう。あっという間に、聴衆を酔わせる弁舌は変わっていない。初めて会ったときから、ずっと――
「待って、下さい……っ!」
開きかけたドアが再び、がちゃんと閉まった。世良が、今中の剣幕に驚いて目を丸くしているのが分かる。
ドアに付いた両手の間に世良を閉じ込め、間近い位置でその顔を見下ろす。勢いで動いてしまったものの、状況を冷静に把握した途端、急に恥ずかしくなった。近過ぎる。そして、余りにも強引過ぎた。
「……こういうとき、詰めが甘いんだよ、今中先生は」
「そんなこと言われても……」
「言っただろう、僕は抗癌剤だ。健康体にとっては猛毒。癌を克服した身体に、抗癌剤はもう必要ない。後は、自己治癒能力を高めて療養するだけだ」
――ワクチン?そんな生やさしいものではないですよ。
マスコミの前で、穏やかに笑いながら、どこかしら鋭い瞳で遠い一点を見据えていた彼を思い出す。
「抗癌剤は分かりますけど、自己治癒能力って……?」
「居るでしょ、此処に。この地で生まれて、この地で育って、この地で医者になって、瀕死のときでも引き際も見極められなかった人間が」
俺か、と今中は溜め息を吐く。
「だから、もう大丈夫だ。僕は、別な癌に抗いに行く」
「逃げる……訳じゃないんですね」
「当然」
ぎゅっと抱き付かれて、今中は動揺する。
――そうだ、あのときも……。
初めて会ったときも、突然抱き締められた。
あのときは、この人とこんな関係になるなんて、思いもしなかったけど。必要とされなくなったらこの地を去るという言葉の裏には、そんな意味があったのかと思う。
もっと早く言ってくださいよ、と今中は万感の思いを込めて、その華奢な身体に強く強く腕を回した。
「ご清聴感謝します」
世良がお辞儀をしたのに気付き、今中も慌ててそれに倣った。
割れんばかりの拍手、とはいかないが、少なくともここから見る限り、居眠りをしているような聴講者は居ないようで、ほっとする。
「まさか、こんな仕掛けをされるとはね……」
退場しながら、今中だけに聞こえるように声が投げられた。見れば、腕組みをした世良が軽く睨んでいるのに気付く。またも、後先考えずに地雷を踏んでしまったようだ。
「そんなこと言っても、私が、極北の診療所の所長として一番伝えたいことがこれだったんですから、仕方ないじゃないですか!」
怒涛の反論を覚悟して言ったが、世良は呆れたように一度だけ頭を振っただけだった。
「まあ……、良いよ。あいつへの餞くらいにはなっただろうからね」
僅かに言葉に詰まって、小さく息を吐き、ちらりと自分が居た席の辺りへと目を走らせる。
その視線を追った今中は、あっと息を飲んだ。
――世良……先生……?
銀縁眼鏡の男が丁度立ち上がり、出口へと向かって歩いて行くところだった。
「あ……、あれ?」
「どうかした、今中先生?」
部屋を出ていく背格好は、全く知らない人のそれなのに。
歩く後姿と、纏う雰囲気、そして、その背に負う、今中には届かない何かが。
世良と見紛う程に瓜二つで――
「あの人って……?!」
「ああ、話したことなかったっけ。僕の後輩だよ。先輩を先輩とも思わない、いけすかない大法螺吹き」
酷い表現だったが、先程の言い方からして、それなりに気心の知れた間柄なのだろう。
「何だか……、世良先生と似てますね」
本質か、或いは――その身を染める色のようなものが。
「僕と、あいつが……?」
一瞬、驚いた表情になった世良は柔らかく微笑した。
「そう、か……」
何故か泣き出しそうにも見えるその人を、思わず抱き締めそうになったとき、スタッフの「お疲れ様でした」の声がして、今中は硬直した。
「お疲れ様」
行き場のないまま固まった手を、世良がぱちんと叩く。
「これで、僕も一つ、肩の荷が下りたかな」
まるで憑き物が落ちたようにすっきりした笑みを向ける男を、やっぱりもう一度驚かせてやろうと、今中は素気無くあしらわれた腕をそろそろと動かした。
スピーチ部分、腐萌え要素皆無ですみません。私もう、院長がこういうことしてるってだけで萌えるから、最早腐萌えにピントすら合わせられない…。
普段、凄いことはしてるんだけど、メンタルボロボロな院長を今中先生が支える展開ばっかり書いてたのですが(基本、院長救いたい精神)、この記事読んで、今中先生も院長に救われた部分なんかもあったりしたのかなって。
そして、来週本編がどうなってるのか分からないのに、2014年10月の浪速に彦根を出す私の勇気(笑)第三者目線から見たら、院長も彦根と同じものを持っているんだよって言ってあげたかっただけです。院長は神威島の天城先生の言葉でちゃんとそれに気付いてるって信じてる!
蛇足ですが、この話の元記事、これを書くに当たってコメントとかまで目を通したら、そこまで簡単な話ではないみたいですね。正直、私も、意識教育は少なくとも代替わりが必要だと思ってたので吃驚したんですが、夕張の劇的な改善の裏には、夕張破綻後の人口減少と、医療の縮小で重症患者が市外へ出た、というのがあるようです。やっぱり、そう簡単にはいかないんだな…。でも、人間って生き物がだらしないから出来ないだけで、意識教育そのものは正しいんだから、時間をかけても浸透していって欲しいなぁ。
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