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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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せとかちゃんに「今年のクリスマスは?」って言われたので、クリスマス→星っていう単純な連想で、ゆちゃPの星天ドロップス!天ジュノ前提で、微弱な今世良(でも、カテゴリは今世良)

拍手[3回]



「うわ。今日は一段と寒い!」
 病院を先に出た世良は背を丸めて、身体を震わせた。後に続く今中が通用口の鍵をかけるのを待つ。
「天気が良いから、放射冷却現象だってニュースで言ってましたね」
 今中は答えながら、病院の明かりも消えて疎らな街灯の合間から広がる闇に首を巡らせている。
「世良先生。今日は星が綺麗ですよ」
 つられて見上げてみたが、世良の視力ではそこまで言うほどの数は見えなかった。
「そう?」
「眼鏡の度が合ってないんじゃないですか?」
 医者の不養生を地で行っていることは自覚しているが、ずばり指摘されると面白くない。
「世の中には、見え過ぎて良いことなんて、そうはないんだから問題無いよ」
「そんなものですかねぇ……」
 納得したような、しないような調子で、少し考え込んでいた今中が、何かに気づいたようにはっと顔を上げた。
「それなら、綺麗なものは私が教えれば良いんですよね!ほら、あそこ!オリオン座くらいなら見えるんじゃないですか?」
「その顔で星座とか語られてもさぁ」
 冷たく切り返したものの、確かに、焦点を絞ると見え易くなるようで、一際明るい星を頼りに記憶を辿る。
「確か、台形みたいなのだっけ?」
「台形が2つくっついたのが胴体の部分だったと思います」
 ――星を見ていたら、大分時間が経っていたようだな。
 今中の答えは、世良の耳には届かなかった。もっと深い、世良の根源に近い場所から、そんな声が浮かび上がってきたからだ。
 何時だって綺麗なものをこよなく愛して、そのためなら時間もお金も惜しまずに費やす道楽家。気障で我が儘で気紛れで、なのに、純粋で潔癖で真摯な人、だった。
『綺麗だろう、ジュノ』
 喜色満面、得意げに言い放つその表情を唐突に思い出して、世良は息を飲んだ。
「世良先生?」
 その声にはっと我に返る。頬が火照ったように熱かった。とてもではないが、今中の方を見ることさえ出来ない。
 ――こんな気持ち、とうの昔に溶けてなくなったと思ってた、のに……。
 あの人と見る世界は、花も海も空もとても美しかった。そして、何よりも、あの人自身が一番綺麗だったのだ。
「付いて来い」と当り前のように進む背中。自信たっぷりに大股で歩を進める立ち姿。低くて耳障りの良い声。時々振り返った瞳が子供みたいにはしゃいでいるのを見るのも、もたもたと迷う世良の手をもどかしそうに握るのも、溢れる喜びを込めてその頭を撫でるのも、少しは年を考えて欲しいとぼやきながら、胸の奥は少しだけ熱くなった。いや、世良自身、そっと近付いてその手に触れられないかと腕を伸ばして指先を掠めるだけに終わったり、名前も知らぬ思いを胸にしまいながら、この時が続くことを願った。
 そんな気持ちが突然溢れ出し、世良は戸惑う。しまった胸の奥でそのまま消えてしまったものだとばかり思っていた……。
「綺麗……だ……」
 あのときの彼も、彼と共に見た景色も、そして、今なお、世良を包む世界も――
 なのに、それを素直に感じて言葉にするのは何て勇気がいるのだろう。隣に立って、同じ言葉を重ねていたら、と思いながら、決してそれが出来なかっただろう自分も、世良は知っていた。
「……そうですよね!そうだ、札幌のイルミネーションも綺麗らしいですよ。一緒に行きましょう!」
 何を勘違いしたのか、今中が突然そんなことを言い出した。勢い付いたのか、世良の手を掴んで力説している。
 世良はその手を握り返し、今中の肩に額を押し付けた。
「せ、世良先生?!」
「少し、このままで居させて……」
 ――明日からはまた、あの場所を目指して行くから。
 今はただ、あの星の光を、色を、思いを感じさせて。
 何も言わずに黙って、右手の熱だけで答えてくれる今中の存在を感じながら、反響する思い出の中で、世良はそっと願いを込めて目を閉じた。


「Casino!」は「チェックメイト」がOPで「星天ドロップス」がEDみたいだなって思って聞いてました。チェックメイトも書きたい。
流れ星キーワードから流星群とかも考えたんですが、一番使いたかった「視力が悪くなった僕に指を差して気づかせて」って、流星群すら見えない眼鏡って度が合わな過ぎだろ?!と思ってお蔵入りしかかってました(そんな理由…)
思い出の中のキラキラの恋と、その思いが明日を形作るような歌詞が、初めて聴いたときからずっと世良ちゃんっぽくって大好きな曲!先生への気持ちが、苦しくて辛いものだけじゃなくて、院長を支えるものであれば良いといつも思ってるっていうか、クリスマス関係なさ過ぎて泣ける…。
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