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原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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でも、スリジエ、10月には単行本化するらしいですね!天ジュノブーム来い!贅沢は言わない、せらまぎでも良い!(笑)
未だに、現代は2回ほど読めてない回がある訳ですが、10月だったら、まあ、良いかな。楽しみに待つよ、エトワールの初登場回を(笑)
12/10/28 この話は連載の最終回後に書いたものです。連載時は、天城先生の手紙の内容が違っていたり、最後の桜並木の場面がなかったりしたため、単行本ではこの話はありえないのですが、まあ、当時、こんなことを考えたということで残しておきます。単行本派の方にはご了承いただければ、と。
「お世話になりました」
深々と頭を下げ、幾らもない手荷物を持って、帰国を宣言した青年をオテル・エルミタージュのコンシェルジュ、セバスチャンは僅かに瞠目して見つめた。
たった数日で、頬の肉は落ち、目は泣き腫らして充血し、一気に何歳も年を取ってしまったようにすら見えた。
『ムッシュ・セラ、少々お待ちいただけますか。只今、通訳を……』
慌てて、通訳の女性の姿を探す。待て、と言われたことは分かったのか、世良が腕時計に目を落とした。
まさか、こんなに早く彼が立ち直ると思わなかったので、もう少し、悲しみが薄れた頃に耳に入れたいと思っていたというのに――
全く、彼女は何処だ?
快活に笑うモンテカルロのエトワールが彼について語ったあの言葉。
あれは、必ず伝えなくてはならないのに……!
「セバスチャン、通訳を雇ってくれないか」
ドクトル・アマギが出掛けに、唐突に言い出したことには、少なからず驚いた。
「日本語の出来る人間だ。ついでに、家庭教師も頼みたい」
アマギの顔には、悪戯を企む少年のような笑みが浮かんでいる。
「日本からまた、ジュノが来るんだ。困ったことに、私を追って大学病院を辞めてしまったらしい。暫くここへ置いて、フランス語を叩き込んで何処か信用できる病院に預けようと思うんだ。ああ見えて、彼もサージョンなんだよ」
「真面目で誠実な良い先生という雰囲気でした」
彼は微かに破顔した。
自分が『わがままサージョン』と呼ばれていることを思い出して、皮肉めいて笑ったのかと思ったが、違ったようだ。彼の心は、過日の異国のことに舞い戻っていた。
「真面目過ぎて、誠実過ぎて、随分と困らせられたものだ。だが、もう、あの厄介なクイーンも居なくなった。これからは誰にも遠慮することなく、ジュノを傍に置ける」
「日本ではご苦労なされたのですね」
「いや、その気になれば、こちら側に付けるのは簡単だったんだが、それをするとジュノが辛い思いをするのが分かっていたからな」
「……」
思わず、返答に窮したのは、あの青年は、このエトワールがそんな風に気配りをするほどの相手だったのかと驚いたのと、その顔が本当に優しく笑ったからだった。
「そろそろ、お時間では」
沈黙の失態を隠すべく促すと、ドクトル・アマギは歩きながら続けた。
「ジュノが来たら、またヘリをチャーターしてフロランスにでも行くとしよう。以前乗ったときには急いでいて、ろくに説明も出来なかったからな。もっとも、ジュノは酷い機械オンチだから、スペックの話を聞いてもぽかんとして、キャビンで居眠りするような人間なんだが」
「楽しみですね」
「まあ、そう考えれば、退屈な仕事も少しはマシというものかな」
詳細は聞いていないが、余り気乗りしない呼び出しらしい。
「そうだ。ジュノが到着した後は、私と同等に扱ってもらいたいんだ」
「かしこまりました」
仕事のことより、楽しい予定のことを考えていたいのだろうアマギに、恭しく頷く。
「ところで、その方のお名前は?」
ふと興味が湧いて、尋ねる。
どうして聞いたのかは分からない。ただ、この人にそれほどまでに思われている人物のことを『青二才』と認識するのは不敬だと感じられた気はする。
「sera」
『そうなるだろう』という意味の単語と同じ発音で、彼は言った。
「セラ、だ。その名の通り、ジュノは、その思いの強さで私すら変える人間なんだ」
そう言うと、彼は、メルシと一声かけて、リムジンに乗り込んだ。
――それが、彼の姿を見た最後になった。
『ムッシュ・セラが帰国されます!通訳をお願いします!』
通訳の女性を連れ、足早にフロントへ戻ると、青年がソファから立ち上がった。
「申し訳ないんですが、もう時間が余りなくて……」
飛行機の時間を気にしているらしい。
チケットなど、このホテルがかの外科医から預かった莫大な金額を考えれば、幾らでも買い直せると思ったが、こうして一人で歩き出そうとしている青年にそれを提案するのは、良くないことに思えた。
「ムッシュ・セラ、部屋はあのままにしておきます。必要があれば、何時でもお戻りください」
青年は困ったように苦笑した。
「では、そうしてください」
その表情にはっとする。彼の目は確かに光を取り戻していた。
そして、悟る。彼はもう、自分の言おうとしたことなど分かっているのだと。
言葉は飲み込み、その名に未来を変えることを運命付けられた彼の行く末が輝かしいものであることを祈り、ただただ、強く彼と握手を交わした。
私は直ぐ、天城先生ってば世良ちゃんと決別するために呼び出したんでしょ、とか思っちゃった訳ですが、天城先生に全く裏がなかったことが判明し、「あれ?じゃ、本当に会うために呼び出したの?!」ってなって、呆然とした。
ホテルのコンシェルジュに、「自分と同等に扱うように」って頼んでたって、事故のことを予想してる訳ないから、少なくとも、暫くは滞在することが前提だったんじゃないかと。チェス盤の青い歩兵のこともあるし。
むしろ、プロポーズする気だったんじゃないかな、とか。もう、ヘリチャーターして、新婚旅行に行けば良い。因みに、フィレンツェ(フロレンス)は単に海があるからってだけで、深い意味はないです。まあ、モナコでいちゃいちゃしてるだけで、十分蜜月満喫できると思うけど。
そして、書いた後、凄まじく切なくなる…。馬鹿馬鹿、こんなん書いたら、そうなるに決まってるんじゃん、私の馬鹿!!