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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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スラムン読んだら堪らなくなったので、書き始めてしまいました。1992年から極ラプまでの、スラムン踏まえた院長史。少々長い連載になりそうだけど、あせらずゆっくり、でも何とか形にしたい。
今回はプロローグなので、2009年の10月くらいのつもりです。

拍手[2回]



 道路はただ真っ直ぐ、地平線へと伸びていた。
 暑さを逃れたいが故の観光のピークこそ過ぎたとはいえ、行楽シーズン真っ只中の今の時期にはこの道路に魅了されたライダー達が数多く見受けられる。
 しかし、今日のような、しばしば小雨がちらつく曇天では、ときたますれ違うのはダンプカーばかりだった。
 海側の路肩にパーキングの標識を見つけ、ウィンカーをあげる。
 ハーレーの爆音が消えると、一帯は静まり返った。
 駐車場には、年代物の走り屋仕様の車が一台。この地方には良くある、無人ではあるが広々とした清潔な空間がマナー良く使われている休憩所を横目に、バイクに寄りかかった。
 硬質の車体に身体を預けながら、見るともなしに海を見る。
 天気の割に、今日は比較的凪いでいた。
 こちらの海は荒れていることが多く、そんなところで、故郷の海と違うことに気付かされる。
 ――そもそも、こんな真っ直ぐな道路も、あの町にはなかったしな…。
 海に沿って湾曲した、狭く、時には住宅街に入り込みながら続いて行く道では、大抵、あの長身の背中にしがみついていた。
「ぜっ、たい!さんじゅっ、きろは、オーバー、して、ますよね!」
 風圧の中でどうにかそこまで言ったら、いきなりハンドルを切られ、舌を噛みそうになった。
 間違いなく、わざとだ。
「せんせっ、むし、しないで、くだっ、さっ」
 抗議を続けていると、今度は後輪が浮きそうなほどの急ブレーキが来た。
「うるさいぞ、ジュノ」
 振り向き様にかなぐり取られたメットの下から現れたのは、不機嫌さに彩られた端正な顔立ちだった。
「訳のわからないことを言ってしがみつくのはベッドの中だけで十分だろう」
「ベッ…、って…?!」
 絶句する世良に、多少不満が霧散したのか、ハーレーの持ち主でもある世良の上司は極上の笑顔を向ける。
「これくらい、大したことじゃない。モナコなら、町はサーキットのコースだ」
「ここはモナコじゃな…、っていうか、聞こえてるんじゃないですか!」
 あんまりうるさいと置いていくぞ、と自分が強引に連れて来た癖に理不尽なことを言い放つあの人は、スピードもノイズも何一つ気兼ねせずに、マシンを暴れさせることのできるこの道路を見たら、どんなに喜んだだろう。
「ジュノ、早く後ろに乗れ」
 そんな風にはしゃぐあの人を想像しただけで、世良の口許は少しだけ綻んだ。
 ――ツーリング日和とはいかないけど、まあ、降らなかっただけでも良しとしなくちゃな。
 札幌での会議の後、午後も休診にしたのはこのささやかな息抜きのためだ。
 「明日は全休にするから任せたよ」と言ったときの、部下の不満げな表情の下に浮かんだ、気遣うような目を思い出す。
 自分達の関係を考えれば、彼に酷いことをしているのは分かっている。
 それでも、全てを話すことも出来ないまま、その手を離すことも出来なくなってしまった。
 ――今となってはもう、何が正しいかも分からない…。だって、今の僕はもう空っぽなんだから……。
 かつて、その手の中に託された炎はもうどこにもない。
 無力な自分にはそれを活かすことは出来ず、全てはあの後輩に引き継がれた。
 ――あんなに傍に居たのに…。
 彼が自分を一番必要としたときにその期待に応えることもせず、そればかりか、彼の遺志を継ぐことも出来ない、年経た青二才。
 そんな存在は、哀れで惨めで空虚でしかない。
 彷徨う視線が真っ黒の車体に落ちる。
 ほんの一欠片で良い。この、あの人に慈しまれたマシンの最奥。
 自分には決して届かないほどに深いところでも構わない。
 彼の想いが遺っていたら良いのに、と――
 願って、そっとその硬質の車体に頬を押し付けた。


次からは、1992年に戻ります。
今までにSSでちょい出ししたエピソードも含まれてたりするので、前後したりするかもですが、それはリンク張ったりしてつなごうと思ってます。そして、最終的には院長救いたい(結局、それ)
実は、今年の7月にまた北海道旅行してきたし、4月には静岡にも行ってきてるので、その辺も踏まえたいな、と思ってます。脳内ロケーションは完璧ぃ(伝わらないから!)
それにしても、ホント、スラムンのポジティブ解釈あったら、誰か教えていただきたいものです…。
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