忍者ブログ
テレビ先生の隠れ家
カレンダー
08 2025/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
カウンター
バーコード
ブログ内検索
P R
忍者アナライズ
[460]  [459]  [458]  [457]  [456]  [455]  [454]  [453]  [452]  [451]  [450
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

スリジエの希望が極ラプの絶望に変わるタイミングが、神威島にたどり着くまでの間だとするとどこかなと考えてたのですが、オリキャラ出すよりできるだけ既存キャラ使っていきたいと思って、この人。私の中では、彼はこういうキャラです。

拍手[4回]



 初めて見たときは一面薄紅色だった桜の花も、ところどころ、緑で塗りつぶしたように変わっていた。
 本当は、もっと早く来たかったが、ショックから逃れられなかった数日間を知る、オテル・エルミタージュのコンシェルジュが、しばらく外出を許可してくれなかったのだ。
 もう大丈夫だと自己申告してから丸3日、言われるままに食事を摂り、眠りに就き、ようやく此処まで出かける許可を得たのだった。
 早く日本に戻りたいとも伝えてあるのだが、チケットの手配をしているから少し待ってくれの一点張りだ。
 そんな、有能なホテルマンにあるべき失態は、自分を少しでも休ませるためだとわかっていたから、世良はおとなしく待っていた。それでも、此処への外出だけはどうしても取り付けたかったので、かなりしつこく食い下がったのだった。通りがかりの親子連れが珍しそうに花を見ているのを遠目に臨みながら、世良は道路の反対側に立って、桜並木の全体を視界に収める。
 ――天城先生、俺は必ず革命を成就してみせます。
 今でも涙は流れるし、自分の無力さに叫びだしたくなることもある。
 それでも、この手に託されたものがあると気づいてから、どうにか先のことを考えられるようになった。
 まずは日本に帰ろうと思った。
 あの人を失意の末に放逐したおろかな国でも、そここそが、彼が真摯に革命を起こそうとした場所だった。その思いを継ぐなら、やはり世良はそこに戻らなければならない。
 何をするのかはまだ決めてはいない。
 それでも、あの国の医療を変えることがあの人の遺志なら。
 それに殉じてみたい。
 そう思うと、この後悔と空虚しかない自分の行く末に、僅かでも光が見える気がしていた――
「セラ!」
 最初は、聞き間違いかと思った。
 この国に、世良の名を親しそうに呼んでくるような知り合いなどいない。
「ああ。やっぱり、セラだ。ひとりでユキヒコのことを聞かされて辛かったよね」
 振り向きざまに抱きしめられて固まってしまう。
 それでも、相手が世良とほとんど変わらない背丈だったため、不意に目の前に広がった目映いほどの金髪にようやく頭が動き出した。
「マリ、ツィア……?」
「そうだよ。覚えててくれたんだね、セラ!」
 身体は離したものの、今度はしっかりと両手でこぶしを握り締めてくるマリツィアに、世良は目を瞬かせる。
 天城の望みを熟知していた彼には、恨みの言葉を投げつけられても不思議はないのだ。
 そんな世良の考えを読み取ったのか、マリツィアは淡く微笑んでみせた。
「ユキヒコの想いが残る、こんな場所で無粋なことなんて言わないよ」
 その儚く悲痛に満ちた表情に、世良は胸の痛みを覚えた。
「思ったより元気そうでよかったよ……」
 自らも深い痛みを抱えながら、気丈に世良をいたわってみせる様は、彼の整った顔立ちもあいまって、いっそう沈痛に感じられ、勝手ではあるが、いっそ責められた方が気楽だとさえ思え、世良は目をそらす。
「実はね、セラに相談したいことがあるんだ」
 マリツィアは改まって続けた。
「ユキヒコの遺産を、僕が運用することに同意して欲しい」
「運用?」
 耳を打った、酷く現実的な単語に、背筋が冷えていくような感覚に襲われた。
「ユキヒコの遺産は莫大過ぎて、モナコの財政の中枢に絡んでる。セラに全部渡して、後はご自由に、って訳にはいかないんだ。かといって、もたもたしてると、自分が管理すると言い出した王族の誰かに食いつぶされる可能性もある。でも、ユキヒコの代理人であるセラが僕に運用を依頼したとなれば話は別だ。もちろん、セラがそれを使って、ユキヒコの遺志を遂げるときにはその意思を尊重するよ」
 その言葉に、世良は頭の中が真っ白になった。
「先生の遺産を使う……?」
 カジノで毎晩負け続けても破産するのに二十年はかかる財産の使い道など、思いつきもしなかった。
「そう。ユキヒコの遺産は、彼の望んだ革命のために充てられる――セラだって、それくらいわかっていただろう?」
 反論しようとして、それに返せる言葉が何もないことに世良は気づいた。
 ――松明の炎がこころに赤々と受け継がれていく、それこそが革命の成就なんだよ、ジュノ。
 不意に、天城の言葉がよみがえる。唐突に全てがつながった。
 世良には病院など創れない。かといって、それ以外の天城の意図する用途など思い浮かびもしない。
 世良に託された役割の意味がようやくわかった。
 何故、今まで気づかなかったのだろう?
 いや、きっと、心のどこかでそこを見ないようにしていたに違いない。
 そうして、少しでも長く、あの人と同じ夢を追う自分の幻想を保っていたかったのだ。
「それから、一つ頼みがあるんだ。僕はいつか、あの町に病院を設計することになってるんだ。そのとき、ユキヒコの遺産を使って、彼と約束した病院を創るつもりでいる。構わないよね?」
 マリツィアの更なる依頼にも、世良はすぐに同意した。彼の設計の腕は知らないが、きっと天城が望んでいたものと寸分変わらない、華やかでしゃれた、病院とは思えないような建築物を創り上げるのだろう。
 彼は、世良とは違い、天城の生前の想いを遂げることができる人間なのだ。だから、それで、いい――


 気づいたときには、世良はコンシェルジュの運転する車の中にいた。
 どうやってそこまで戻ったのかという部分の記憶は全くなかった。
「申し訳ありませんでした。ホテルの従業員が私の行く先を不用意に漏らしてしまったことで、貴方を悪意にさらしてしまいました」
 通訳を通して深く謝罪されたが、責める気など全くなかった。
「マリツィアは間違ったことなんて言ってません。だから、いいんです……」
「ムッシュ・セラ……」
 世良は無気力に呟いた。
「空港まで送ってください。日本に帰ります」
「こんな時間ではもう、チケットも入手できません。改めて明日……」
 コンシェルジュは穏やかな声で返答したが、世良は聞く耳を持たなかった。この町では、どんな願いも叶う魔法があることを知っているからだ。
「貴方は、天城雪彦の依頼でもそう返すんですか?」
 コンシェルジュは通訳と顔を見合わせた後、懇願するように言った。
「貴方の仰るとおりです。ですが、どうかご理解ください。貴方が、ドクトル・アマギの遺志に忠実でありたいと望むように、私たちもまた、それを願っているのです」
 そうまで言われては、世良も押し切ることはできなかった。その名前に弱いのは、世良も同じだ。けれど、その言葉の裏にうかがえる労わりからは目をそらし、言う。
「あの部屋にいることが、私にとって苦痛でしかないとしても、ですか?」
「ドクトル・アマギは、あの部屋で貴方とともに過ごす時間を心待ちにして居られました。帰国されるのであれば、この一夜だけでも、最後にあの方をしのんで差し上げてください」
 どうやら、二度とこの地を踏む気がないことは見透かされているようだった。世良は薄く笑った。
 ――どうとでも、好きにすればいい。ここで一晩道草を食ったところで何も変わらない。自分にはできることなんてない。どうせ、こうしてずっと……。
「……流されていくだけだ」
「え?今、何て……」
 通訳の女性が、こぼれた言葉を聞き取れずに尋ね返したのに、「明日はお願いします」とだけ答え、何か伝えたげな視線を逃れるように目を閉じた。


マリツィアを使わせてもらいました。会ったら修羅場になりそうな二人だけど、スラムンでマリが天城先生の遺産を運用してるってことは、一度くらいは、何らかの形で代理人の世良ちゃんと話をしたんじゃないかな、と。
うちのマリは、にこにこ笑ってスキンシップ多め、でも、その奥にさりげない悪意をしのびこませているイメージ。世良ちゃんのことは嫌い。代理人が世良ちゃんなのも気に食わない。本当は顔も見たくないけど、日本で手を離したセラがユキヒコの遺志を継いで生きていくなんて許せないから一言いってやりに来た、ってことで(何で世良ちゃんが来てることを知ったのかは、天城先生が生前「ジュノが来るんだ」って話してたか、遺産のことでエルミタージュに用があって行ったら、ホテルの従業員が口を滑らせたってことにしといてくださいな)
最初、「革命の炎は誰かに受け継ぐんだよね」的な言い方をさせようかなと思ったんだけど、彦根が現れたとき、生きてるうちに渡すとは思ってなかったって感じだったので、「遺産を使う」ことの方を問題にしてみました。
院長が一番こだわってるのはそこのような気がするんだ。というか、「代理人」になったってことがネックな気がする。遺産なんてものがあるから用途に悩む。その意に沿わないことには使えない。使えないなら、誰かに譲るしかない。でも、スリジエ直後の世良ちゃんがそれを飲み込めたとは思えない。天城先生がちょっと他の子を気に入ってる様子見ただけで、先生に近づくなオーラ全開な子ですよ。遺産(というより、モンテカルロの全てだから、天城雪彦が物理的に遺したあらゆる物)を誰かに譲渡する、しかも、先生の遺志を自分以上に遂げられる相手になんて、本当に耐えられないんじゃないかと。
そう考えると、遺産なんてものがなくて、精神的なつながりだけなら、ここまで追い詰められることはなかったんじゃないかな。でも、それを世良ちゃんに渡すことになるきっかけって、スリジエをもう一回創ることを決めた先生がエルミタージュで、「春になったらジュノが来るんだ。桜並木を見せるのが楽しみだ。ジュノのことは私と同等に扱ってもらうぞ」とか大喜びで話したことなんだよね。切ねぇ…。
マリは、相当に電波的な予言とはいえ、桜宮岬に自分が建設した病院をたてることを約束してるからドヤ顔なんだろうな、とか。いや、あんなんで遺志継いでることになるなら、院長だって十分やってんじゃん(相変わらず、院長に甘い)
PR
忍者ブログ [PR]