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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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極ラプ4周年、おめでとうございます。
プライベートで大きな変化があったり、某ででにー映画にハマったりで、執筆ペース落ちまくりでしたが、今年もやっぱりここにおりました。院長、可愛い!(挨拶)
正直、ネタも尽きてきている感は否めないのですが(「あ、これいいかも!」って思ってよく考えると、既に書いていた、の繰り返し…)、とりあえず、スラムン前提連載だけは完結させたいなって思ってます。最初、年内って言ってたけど、何とか春くらいまでには…(ゆるゆる)
そして、4周年SSはR-18な今世良です。色々下品で、愛があるのか微妙で、偽者感満載の二人です(通常営業)あと、大変長いです。結構早めに書き始めたのに、全然終わらなくて、どんだけエロ書きたかったんだってセルフツッコミしました。書きたかったんです…(告)
そして、脳内の偽者を一掃しようと極ラプ読み返して、「やっぱり、院長可愛い。妄想じゃない!可愛い!!」ってなる一連の流れ。来年もこんな1年かな…。

拍手[2回]



「今中先生、遅い。早くしてよ」
 バスルームから出るなり、開口一番これだ。見れば、世良がワイシャツの前を開けた状態のまま、今中の万年床でごろごろしている。
 色気がないかといえばむしろ逆で、ちらちら見える肌にはめまいがしそうになるし、不満を漏らす唇が、年甲斐もなく少しとがっているのは正直堪らない。
 ――なのに、何なんだろう、この素直に受け入れられない気持ちは……。
 しかし、考えてみれば、当たり前かも知れない。
 相手は、同性である男で、しかも、直属の上司。
 その上、マスコミに顔も売れていて、この関係がスキャンダルになる要素が十分にありうる立場の人間だ。
 「こんな関係、不味いでしょう」なんて、口がすっぱくなるほど言った。
 それでも、この相手は聞かないし、強引に押し切られれば、拒みきれるほど今中の意思も強くはない。
 ――別に義理立てしなきゃいけない相手が居る訳でもないんでしょ?僕も今中先生も気持ちいい思いして、上司と部下が仲良くやってることに、何の問題がある訳?
 問題だらけだ。むしろ、問題しかない――と思うのに、逆らえないのは、多分この人の後ろにちらちらと見え隠れする孤独の気配のようなものの所為だ。
 初めて、彼がこの病院に現れたときの印象は、とにかく派手な人、だった。
 大勢のマスコミを引きつれ、カメラの前で今中を抱擁し、救世主だと祭り上げる彼らに舌鋒鋭く批判の言葉を叩きつける。
 しかし、世良が非情かつ論理的に改革を断行していくにつれ、世間の風向きは変わってきた。
 いくらも経たないうちに、患者は激減し、市役所との間に確執が生まれ、マスコミは世良の批判を取り上げるようになったのだ。
 今中は、世良が来て直ぐの頃であっても、角田のように心酔していた訳ではない。
 スタッフが減り、入院患者も居なくなった病棟は火が消えたようで、かろうじてにぎわっている世良の外来を横目に、無人の3階で在りし日を思っていたりしたものだ。
 面と向かって異を唱えられるほどの知識もないし、弁も立たないから従っていたという程度である。
 そんな今中の目にも、毅然と振舞ってきた世良の足元が、世論を敵に回した辺りから覚束なくなってきたのはうっすらとわかった。
 一応の整合性は保っているものの、本心は見えにくく、酷く回りくどいやり方で、何だか不安をあおるような動きをすることが増えた。
 そんな彼の腕をつかんでしまったのは、今中の性分を考えれば当然と言えた。自らも苦しみながら、今中だけを逃がそうとしてくれるのを放っておいて、どこかに行けるはずもない。
 おそらく、そこがターニングポイントだったのだろうと思う。
 そのときを境に、ほんの僅かだが、世良が今中に対して信頼のようなものを見せるようになった気がした。
 そして、救命センターから戻って、1月ほどした頃、札幌出張に出かけた世良がやたらと疲れ果てた顔で戻ってきた日があった。
 その日のことは、今でもよく覚えている。
 そんなに遅い時間でもなかったと思うのだが、ふらりと医局に現れた世良は、酷く憔悴した面持ちだった。
 前日に、「僕の患者もよろしくね」などと軽口を叩いていたのが嘘のようだと感じた。
 気遣う今中に、「一杯飲んで帰らない?」と誘ったときから、彼はそのつもりだったのだろうか?
 そのあとは、といえば、もう一杯僕の部屋でどう、遅いから泊まっていったら、今晩だけでいいからちょっと気持ちいいことしてみない、と続いて、気づけば取り返しのつかないことになっていた。
 いや、酔っていたとはいえ、とんでもない申し出には戸惑ったし、何より有り得ないと思った。
 なのに、彼が泣きそうな目で震えながらこちらを覗き込んでいるのを見たら、全ての反論は封じられてしまった。
 そして、結果は――非常に納得いかないし、認めたくないのだが、よかった、のだ。
 男の身体だというのに微かに汗ばんだ人肌に触れ合うのはとても気持ちよく、酔って判断力が低下していたとはいえ、彼の内部に包み込まれていくらもしないうちにあっさり果ててしまった。
 弁解のしようもない。
 職場でどんな顔をすればいいのかと悩んだのは今中の方ばかりだったようで、世良はけろりとしたものだった。そのくせ、「次は何時にする?」と聞いてきたのには耳を疑ったが。
 そして、冒頭の悩みに戻る。
 世良が好きかと言われれば、よくわからない。かつて女性に恋をしたときのような想いとはまるで違う。
 世良自身も、そこまで今中に執着しているようには見えない。
 なのに、離れようとすると、世良の痛みを押し隠したようなまなざしが眼前をちらつく。
 この人は、今度は自分以外の誰かとこういうことをするのかと思うと胸がざわついて、どうにもいたたまれなくなる。
 結局、今中は今日も世良の誘いに乗るしかないのだ。
「ちょっと、何考えてるの?」
 気づけば、そんな日々に思いを馳せていた今中を、間近い位置から世良が覗き込んでいた。
「あ……、いえ……」
 普段と何が違うのか良くわからないのだが、こういうときはいつも、こちらを見る視線がとてもつやっぽく感じられて、彼を直視できない。
「こっち、見て」
 こめかみの辺りに、やわらかい感触。
 これは、わかる。明らかに普段より甘い声。
 誘発されたように、湧き出してきたつばを飲み込む。
 しばしの沈黙。
 次の瞬間、股間に手を置かれ、ジャージの上から扱かれた。
「ちょっと、いきなり……」
「そんな風にまじめぶってるけどさぁ、ここはそうでもないんじゃない?」
 世良の指先が少々強めに布の上をなでていく。
 同時に、よからぬ場所に血がたまっていくのを自覚する。
 ――いや、これは、触られたからであって、さっきまではどちらかというと、自分はこの人を心配して……。
「なめたげようか?」
 耳を疑う台詞に、呆然とそちらを見ると、そんな今中に見せ付けるように世良がぺろりと下唇に舌を這わせた。
 蛍光灯にてらりと光るその濡れた色を見るなり、それで愛撫される感触を想像してしまう。
「今中先生のここは正直だねぇ」
「そんな風に触られたら、仕方な……ぁっ……!」
 反論は続けられなかった。
 さまざまな刺激を受けて形になりかけていた欲望が、生温かくてやわらかい、世良の口内に収まってしまったのだ。
 間髪いれずに、ぞろりと動く舌を裏筋に当てるように撫で付けていく。
「あっ、ああ……、世良せん……」
 男の弱点とも言えるべき場所に、多少複雑な思いはあれど憎からず思ってる相手から此処までの刺激を与えられて、流されずにいられる人間がいたらお目にかかりたい――などと思いながら、すっかり観念し、今中は小さく歯を食いしばる。悔しいとかそんなのではなく、こうでもしないとあっさり果ててしまいそうだからである。
 軽い嫌味こそ言うものの、今中が達するタイミングに関して世良がうるさく口を出すことはない。
 それでも意地になってしまうのは、快楽ばかりを目的に世良とこういうことをしているのではないということをわかってほしいからだ。
 この状況でそんなことを言っても説得力はゼロだろうが、そこは、今中の気持ちの問題である。
「私も、しま……す……」
 体勢を変えようとすると、片手をつかんで導かれた。
 器用に、片手で開けられたスラックスの中、双丘の割れ目の、入り口までぬるぬるになっているそこ――
「こっちですか?!っていうか、また、こんなことして……」
「まどろっこしいのは嫌なんだよ」
 今中が愛撫をしてやりたいと思ったのは、世良の雄の方だ。
 それに、最終的に此処に自分の欲を入れるにしたって、準備をしてほぐすのは自分の手でしてあげたいと思っている。
 思えば、初めての体験はやけにスムーズだった。
 知識の全くない今中でも違和感を持つほどに、世良の身体は、あっさりと今中を受け入れ、その快感に興じていたのを思い出す。
 不本意ではあるが、それがお望みのようなので、後ろの窄まりに手を伸ばしてやる。
 それだけで、物欲しそうに腰を揺らしてくる様子に、危うく理性が飛びそうになった。
 できるだけ丁寧に入り口の襞を広げてた。
 しかし、内部はそんな気遣いなど無用なほどに、すっかり潤滑油が塗りこまれていた。
 ぬめっていてやわらかくて熱い粘膜が、早く欲しいというように、今中の指を締め付けてくる。
 今すぐここに欲望を押し込んで、存分に腰を振ったらどんなに気持ちいいだろうと頭を掠めた考えを慌てて押しやる。
 悲しいかな、それは経験済みだったりする。
 初めてのとき、ためらう今中を言葉巧みに言いくるめながら、世良はその猛りを攻め立て、いとも簡単に使用可能状態にしてしまった。
 そして、楽しそうに今中にまたがり、ゆっくりではあったが、ほとんど一気に肉塊と化したそれを突き刺した。
 そして、その内側といったら、驚くほど熱くてぬるぬるとまとわりついて、動物みたいにうごめきながら再奥へ誘ってくる。
 また院長の気まぐれに付き合わされて本当に困ってる、何でこんなこと、さすがに男の中なんてないだろ、なんて思考は一瞬でどこかに吹っ飛んだ。もう、気持ちよくて、気持ちよくて、その先しか考えられなかった結果――
 その細い腰をつかんで、めちゃくちゃに揺さぶって、ものの数分で彼の体内に欲を爆発させて注ぎ込んだ。
 びくびくとした震えとともに激しい快感がきて、ようやく荒い息をついたとき、なすがままになっていた上司が、やがてにまにまと笑い始めたのに気づく。
「なんだ。色々言ってたけど、今中先生も普通にイケる口なんじゃない」
 ――それが、余りに情けない、世良との、そして男性との初めての経験だった。
 別に、男に目覚めた、とかではないと思う。
 違う男性と関係を持ちたいと思ったことなどないし。
 あのときだって、もう少し予備情報があれば、そして、独り身男性の悲しい性で、色々溜まってたりしなければ、もう少しマシな対応ができたはずだと内心では言い訳している。
 それに何より、気持ちよければ後はどうでもいいなんて思ってる訳ではないのだ。
 医者である今中は、患者の直腸に触れたことは幾度もある。
 その経験から、世良の体内が通常の状態でないことくらいは直ぐにわかった。
 どう考えたってきれい過ぎるし、男のそこが濡れるはずもない。
 それに、かなりの経験があるだろうことを差し引いても、本来そういう用途の場所ではないそこが、あんなにやわらかく、簡単に同性の性器を受け入れられるはずがない。
 そう結論付けた今中は、翌日、酷い嫌悪感に悩まされながらも、男同士の行為について調べ上げた。
 そして、本来であれば、行為の直前に時間をかけて準備する過程を、飲みに行く前に世良が自宅で行っていたのだろうという推測にたどり着いた。
 その後、回数を重ねても、世良は事前の準備を欠かしたことがないようだった。
 勇気を出して、自分がしたいと伝えてみたが、先ほどのように、その方が面倒くさいと言ってかわされてしまう。
「今中先生だって、早く挿れたいでしょ。準備なんて、言うほど簡単なものじゃないし。別に、僕は慣れてるしね」
 けれど、独り、風呂場かどこかでそんなところを処理している世良を思うのは何だか辛い気持ちになる。
 ――世良先生、私はできることなら……。
「?!」
 思考は容赦なく打ち切られた。
 世良が、今中自身を喉の奥まで飲み込み、激しく動かしたからだ。
「ちょっと、待っ……!だ、駄目ですって……」
 慌てて、世良の中から指を引き抜く。
 そのままだと、内部を傷つけそうで怖かったのだ。
「普通、ここで止める?大体、さっきから上の空だし」
 その対応は、非常に不満だったらしい。一気に、世良の機嫌が悪くなった。
 問答無用でスウェットを脱ぎ捨てると、今中の肩に手を置き、しっかりと猛ったそれの上に腰を下ろそうとしてくる。
「そ、その前に、ゴムしましょう!ゴム!」
 必死に叫びながら、今中は、どうにか世良の腰をつかんで、位置をずらした。
「要らないよ、そんなの」
「曲がりなりにも、医者でしょうが。たまには、言うこと聞いてください!」
 必死の余りにきつくなった語気に、世良は一瞬黙った。まずったかな、と思ったが、意外にも彼はおとなしくどいてくれた。
「じゃあ、言うこと聞くから、今中先生のやり方で僕を満足させてよ」
 どう考えても、ハードルが上がっている。
 でも、なすがままでこの人から一方的に快楽を与えられているよりはずっと、このもやもやとした形にならない思いを伝えることができるかも知れない。
 今中は直ぐに決断した。
「わかりました」
 この場にふさわしくないまじめな表情に少々面食らったような顔で、けれども、それを茶化すことはなく、世良は黙って手を出した。
「え、と……」
「ゴム、付けてあげる」
 常々用意しておきながら、なかなか日の目を見ることのなかったそれを、引き出しから出して渡すと、世良は器用に口で付けてくれた。
 こんなところにまで彼の慣れを感じて複雑な気分になったが、そんな場合ではないと気を取り直して、ためらいながらも押し倒した。
「あれ、こっち?」
「……私のやり方でいいんでしょう?」
 強引に押し切ると、世良は苦笑するような表情を浮かべて力を抜いた。
 少し迷ったが、思い切って、足を開かせてみる。
 しっかり勃ち上がったものと小さく痙攣するそこがあらわになって、なかなかにいい眺めだ、なんて思ってしまったら、やっぱり触りたくなった。
 先端ににじむ透明なしずくをすくって伸ばしながら、後方にも浅く指を入れて、慎重に中をさぐる。
 はあ、と、今中の耳にまで届くような、もどかしげなため息が響いた。もしかしたら、わざと聞こえるように発したのかも知れない。
「もういいから。早く挿れて」
 その声の、余りの余裕のなさに、よせばいいのに叛逆心が芽生えてしまった。
「その代わり、次のときは、私に此処をほぐさせてもらえませんか?」
「……何?僕と我慢比べして取引するつもり?」
 さっきまでの、上気した蕩け顔は何処へやら、一転、挑戦的な声になる。
 ――と同時に、こちらも限界が近い怒張部に強い刺激が走った。
 見れば、世良の片足の指が器用に絡みついている。
「こ・こ。随分反応してるみたいだけど、僕が、何でも言うこと聞きますって泣きつくまで、お預けされる覚悟はある訳だ?」
「いや、覚悟なんて、そんな……。ただ、たまには私も世良先生を手伝いたいだけで……」
 ――間違えた……。
 こんな言い方をしたら、負けず嫌いのこの人は意地でも折れてはくれないだろう。
 困り果ててる間にも、世良は、よく足だけでこんな刺激を与えることができるものだと思うくらい、細やかな動きで今中を翻弄してくる。
 そういえば、この上司はやたらと足癖が悪い。
 何度か寝るうちにわかったが、手や身体が自由にならないときに口より先に足が出ることが多い。しかも、ひざ、すね、かかと、つま先、とどの部位でも相当に自在に動かしてくる。
 かなり無理のある体勢から蹴り飛ばされたのだって、一度や二度じゃない。
 しかし、今回のこれはこれできつい。
 重力を利用して強く押し付けながら、いいところをいじり回してくる。
 しかし、足ではどうしたってじわじわと追い詰めるような動きにしかならない。こんなもどかしい快感では、臨戦態勢のそこが満足できるはずもない。
「すみません。私が悪かったです。だから、もう……!」
「もう?」
「お願いですから、させてください」
 にまっとその口元が笑みを形作って、赤い舌がしてやったりとでもいうようにちろりと覗いた。
 それを見た途端もう、勝ちだの負けだの、準備を誰がするかだの、快感だけかそうじゃないかだの、全てがどうでもよくなった。
 ただ、猛烈にこの人が欲しくて、その内側を自分で満たしたくなった。
 局部に乗せられていた足をつかんで、両足ともども開かせて、その間に身体をねじ込む。
「あああああああっ」
 腰を高く上げ、身体を窮屈そうにまげて、足を大きく開くこの体勢は、世良には苦しいのだろう、声がかすれていた。
 余裕があれば、もう少し配慮もしたかったのだが、さっきまで振り絞っていた理性はもはや跡形もなくなっていた。世良の内部は、先ほど指で味わったよりも、以前同じ場所に沈めたときよりも、もっともっと熱く締め付けてきた。
 流されてはいけない、なんて声が頭の片すみに浮かんだのを振り払う。
 ――この人だって、こんなに激しく感じながら自分を求めてきてる、何が悪いんだ、こうして一つになって、互いの体温を混ぜ合わせて、気持ちよくなれればそれで……。
「今中、せんせ……」
 けれど、その苦しそうな声を聞いた瞬間、今中の脳裏に、逆風にあおられて独り立つ世良の姿が浮かんだ。
「世良先生……、私は……」
 かろうじて、自制心が勝った。
 気持ちを落ち着けるように、今中は、つながったままで身体を伸ばして、世良に口付けた。
 本当は口にしたかったが、体勢的に額が限界だった。
「世良先生。腰の下、何か敷きますか?」
「……本当に、今中先生は……」
 ぎゅっと抱きつかれ、かつて、彼のあの姿を見たときに発された言葉が耳をついた。
「え……?」
「次のときは、好きにしたら」
 それが意味することに驚いているうちに、世良が思いっきりそこを締め付けてきた。
 余りの痛みに悲鳴を上げたら、今度はその口の中に舌を突っ込まれた。
 口内全部を嘗め回されるような激しさに、どうにか舌を動かして精一杯応えるばかりになっていると、多少緩んだ、と言っても、相変わらず搾り取ろうとしてくる腰がいやらしく動いて誘ってくる。
「いい加減、続き」
 少しむくれたような世良の言葉に、慌てて身体を起こして抽挿を再開した。
 さすがにもう、加減も気遣いもできなかったが、それは世良も同じだったようで、甲高い声を上げて善がり、夢中になって互いを貪り合った。


「痛っ!」
「す、すみません……」
「もう止めない?」
 バスルームで四つんばいになって、突き出した尻を他の男にいじられてるって、本当に間抜けな光景だなとしみじみ思う。こんな状況になってしまったのには、それなりに話せば長い訳があったりする。
「ちょっと待ってください。次は気をつけますから」
 神妙な顔をして、ローションを付けなおして濡れた指先で後口をまさぐっているのは、こういうことまでする間柄の、たった一人の貴重な部下だ。
「ん……。あぁ……」
 今まさに彼がしている動きからもわかるとおり、実直で面白みのない男。
 一目見ただけで、明らかにノーマルなのも、駆け引きを持ちかけてもまじめに困るタイプだってのも直ぐに見抜けたので、職場で邪魔にならない程度にあしらっておくのが一番だろうと判断した、はずだったのに――
 魔がさした、としか言いようがない。
 酷く弱っていたときに、彼は信用できるかも、なんて思える出来事があって、そしてそれからいくらも経たないうちに、とても独りではやり過ごせないほどに辛い出来事が起こった。
 ずっと前から、覚悟はしていた。
 けれど、真にその瞬間を目の当たりにしたときの痛みは想像をはるかに超えていた。
 そんなときに慰めてくれる相手の一人や二人もいたはずだけど、なぜか足は職場に戻ってきていた。
 そして、彼を誘った。
 悪くはなかった、というのが正直なところだった。
 軽蔑されて追い出されるなら、それでもいいと思って声をかけたのだが、彼はちゃんと乗ってきて、最後まで付き合ってくれた。下世話な話をすれば、大きさもなかなかのものだったし、若さゆえだろう性欲も上々で、相性も思っていたより悪くなかった。
 こうなってしまうと、わざわざその目的のために札幌くんだりまで相手を探しに出向くのも億劫で、目と鼻の先に住む部下の家に入り浸るようになるのに、そう時間はかからなかった。
 生真面目な彼には随分と葛藤があったようだったが、「お互い気持ちいいんだからいいじゃない」の一点張りでひたすらかわし続けている。
 彼も、そこを突かれると痛いようで、「でも……、こんなの……」とか歯切れ悪く言いながらも、最終的に寝床に引きずり込めば大体形がつくのがお決まりのパターンだった。
 なのに、先日は随分と粘られた。
 やたらと「どうせ、気持ちいいからシテるんでしょ」と強調してきた所為か、彼は次第に快楽に流されることに頑なになってきた。
 欲盛んな若い身体など、自分の手にかかれば、あっという間に陥落できると高をくくっていたのだが、その日は随分とがんばってとうとう根を上げさせてしまった。
 根を上げたのは内緒だ。
 多分、彼はこっちがあきれて妥協してくれたとでも思っているだろう。
 まあ、負けたって言っても、そんなことで気が済むなら譲ってあげてもいいよ、くらいのものだけど。
 恋とか愛とか甘やかな感情ではないけど、独りで部屋にいるくらいなら、彼の姿を視界に収めておくと落ち着く、体温を感じていると安らげると思うくらいには大事に思ってはいたりはする、のだ。一応。
 ちゃんと、伝わってるかは定かではないけど。
 それに、欲望のままに激しく求められるのも、中に注がれるのも嫌じゃない。
 こっちはしっかり伝えてるつもりなんだけど、それを言うと、凄く苦い顔をされて、聞き分けない子供を前にしたときのように困り果てながらセーフセックスを要求される、そんな関係だった。
「大丈夫ですか?」
「ん……、何か……」
 息が苦しい。
 もどかしくて、おかしくなりそうだ。
 何十年という間、行為の度に毎回こういうことはしてきたはずなのに、こんなの――まるで、初めてみたいな……。
「痛いですか?」
「痛くは、ない……けど……」
 体内で指が動いて、足が震える。
 わかった。自分だったら、次に触れる場所がわかるからだ。他人に触られるのがこんなに予想外で、それゆえに感じてしまうなんて思わなかった。
「あ、あぁ……。そこ、やめ……」
 不味い、変な声が出てきた。
 今、どんな顔になってるかも、知覚できない。
「へんなとこ、さわらない、で……」
「あ、はい。ええと……」
「んあっ!」
 待って、ちょっと待って。そこは、いつも感じる場所じゃないはずなのに――
 視界はぼやけるし、バスタブをつかむ指は痛いし、腰が上がらなくなるし、何だ、これ?
「世良先生。あの……、一回、ヌキますか?」
 そうして、部下に気遣われる始末だ。
 ちらりと見たら、自分のものはもうしっかり反応していた。
「やだ、挿れて」
 彼のはどうかと手を伸ばしたが、愛撫に集中しているのかやわらかいままで、押し倒しても簡単には使い物になりそうにない。
「いくら何でも無理ですよ。やっと指が1本入ったところなんですから」
 これで、1本――まともに挿入できるようになるのには後どれぐらいかかるのだろうと思って、気が遠くなる。
「は、はや……」
 もうこの際、ちょっとくらい傷がついてもいいから、と必死で訴えようとしたら、中で指が動いた。
「ひゃぁぁっ、ぅんっ」
 タイルに飛び散った白濁に目を疑う。
 う、嘘……。指だけでイカされた。よりにもよって、今中先生に……。
「ふ……ぁ……」
 言い訳しようと開いた口から漏れたのは甘ったるい吐息で、それ以上、言うに言えなくなる。
「あ、世良先生、今のでもう1本入りましたよ。だいぶ、慣れてきたみたいです」
 耳元で聞こえるのは、無邪気そのものの声。
 ああ、もう!何でこんなに張り切ってるんだよ、今中先生は――
「……まなか、せん、せ……」
 息が上がってて、まともに聞き取れないかも知れないけど、どうにか力を振り絞る。
 こんな生殺しみたいなの、もう限界だ。
 早いところ、彼のモノを挿入れてもらわないとどうなってしまうか、自分でもわからない。
「ねえ、今中先生のおっきいの、早く此処に挿れてよ。あっついの、欲しい……」
 振り返って、熱い吐息混じりに耳元で、最高に色っぽい声を出してささやいてやる。
 駄目押しに、彼の股間を扱いた。
 よかった。ちゃんと勃起してる。
 これで、反応してなかったら、自信をなくすところだ。
「あ……、はい……」
 少し上ずった声は興奮してる証拠で、つばを飲んだり深呼吸したりして、落ち着こうとしてるみたいだけど、突っ込むばかりの据え膳が目の前にあるのだ、そんなには持たないだろう。
 っていうか、ホント、早く解放して欲しい。
 辛いなんてもんじゃなくて、情けないことに涙は出るし、身体中熱くて苦しいし、腰は小刻みに揺れるし、勃ってるところには鈍痛がくるし、どうなってしまうか想像もつかない。
 早く早くと念じていると、ようやく彼が動いた。
 しかし、彼がまずしたのは、バスルームのドアを開くことだった。
 続いて、身体にバスタオルがかけられて、丁寧に身体を拭われる。
「んぁっ……」
 どこもかしこも性感帯のようになってる肌に触れられて、身体がはねる。
「今まで知りませんでした。男も、身体で色々感じるんだそうですね。これからは、ちゃんとします」
 言いながら、ひょいっと抱え上げられ慌てた。
「な、何するつもり?!」
「何って、布団に行きます。その……、早く、欲しいって言うから……」
 大の男が頬を赤らめて恥らうな!
 っていうか、布団?!此処でじゃなくて?
「前戯もなるべくがんばりますから、して欲しいことがあれば言ってくださいね」
 抱きしめて、頬にキスされる。
 いや、だから、僕は、今すぐ此処で、さっさと突っ込んで腰を振ってくれればいいんだけど。
 それが一番気持ちいいし、ものすごくそれを望んでるし、むしろ、それ以外なんて要らないんだけど!
「だから……」
「ここはどうですか?」
「……っ……」
 布団に下ろされるなり、胸の突起を舌で転がされて、声にならない声を上げて、毛布をつかんでもだえた。
「世良先生のいいところ、教えてください」
 もう決めた。
 サッカー部で鍛えたこの脚力で、思いっきり蹴り飛ばして、再教育してやる。
 僕の身体も、僕の好みも、全部教え込んだ、最高の相手になればいいんだ――それが、望みなんでしょ?
 体勢を整えてタイミングを見計らう。
「ここは?」
「ふぁっ……!」

 狙いを定めた足がいくらもしないうちに、快感に力を失ってふにゃりと落ちて、執拗な愛撫にすっかりトンでしまったなんて話は余談だ。


たまには、劣勢な院長で。自分のペースだったらノリノリでリードできるのに、相手に任せたらぐずぐずになって半泣きの院長とか可愛過ぎると思うのです。
最近、今世良の初めては、道庁会議の夜、を推してます。
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