テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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彦根は、滑走路を通り、飛行機へ向かっていく世良の後ろ姿をじっと見つめていた。
「何で、全部、ホラって決め付けますかねぇ。吐いてませんよ、一個も」
口の中で小さく呟く。
「貴方に僕の何が分かるんですか。貴方は、今も昔も、あの人しか見ていない癖に……」
2年ばかりの短い間だったが、東城大学医学部付属病院を颯爽と闊歩する天城雪彦と、いつもその後ろを追いかけていた世良のことは、未だに目に焼き付いている。
あのとき、二人の目には、何処までも続く桜並木が見えていたのだろう。
孤立した立場にありながら、真っ直ぐに目的に向かう二人は、本当に生き生きしていた。
大学病院の雑務と人間関係の中に埋もれる有象無象が、何者にも束縛されず、理想へと真っ直ぐ向かっていく彼らに、誹謗と中傷を投げつけながら、その一方で、羨望と嫉妬を抱いていたのを、彦根は確かに感じ取っていた。
いや、彦根自身もその一人だったに違いない。
そして、孤軍奮闘するハートセンター総帥に、臨床講義の場で自ら突っかかった。
結果は、惨敗。
あの男を打ち負かすどころか、自分の思慮の浅さを指摘され、将来の展望すら変えられてしまった。
実は、その当時の世良とは殆んど接点がない。
彦根が天城と話していると、やたらと不審な目を向けてくる若い医師が居た、くらいの記憶しかないというのが正直なところだ。
自分に向けられる感情が嫉妬なのだろうということは薄々感じてはいた。
やがて、天城がスリジエ創設を断念して、東城大を辞すと、それを追うように世良も姿を消した。
そして、10年近い歳月が過ぎた後、彦根は『不良債権病院再建請負人』などという肩書きの下、各地の病院の経営を立て直している世良の情報を掴んだ。
懐かしさから連絡を取り、情報交換するようになって、今に至る。
話題が、東城大に辞表を出した後のことになったときには、世良は曖昧に濁しただけだった。
恐らく、天城雪彦を追ったが、連れ戻すことも、共に居ることも叶わなかったのだろうと、彦根は推測している。
基本的に陽気に話し、皮肉な口調で官僚や学会上層部を批判する世良には、以前との多少のギャップは感じたものの、元々それほど良く知っていた訳ではないので、直ぐに慣れた。
しかし、そこに寄り添う影は、見る度に深くなっていく。
本当は、疾うに、生きることなど放棄しているのに、ただ生存するためだけに活動しているような無気力感。
そして、あえて何処にも存在せずに居ようとしているような、強い意図を感じる孤独。
それなのに、様々な敵に傷つけられながら、自ら絶望の只中に飛び込むような行動をする。
危なっかしくて、目が離せない。
しかし、それが、純粋な心配ではなく、どうなっていくのかを見極めたい、などと思っている辺りが自分らしいと彦根は思う。
かなり屈折しているが、世良に惹かれているのは間違いない。故に、会う度にアプローチを繰り返しても居る。
だが、その目がしっかりと彦根を捉えたことなど、一度もない。
唯一の武器である言葉を駆使しても、全て嘘だと決め付けられる――
無意識と知りながら、その残酷さを恨めしく思う、その愛しい人が機体に消えたのを確認したところで、手の中の封筒に気づいた。
「あ、渡し忘れちゃいましたねぇ」
ささくれ立った気持ちのままに、びりりと封を破り、中の書類に目を落とす。
「今中良夫、か……」
極北大学医学部第一外科出身。1年前、メタボ関連研究を批判した所為で、大学病院を追われ、極北市民病院に左遷される。出向後は、外科部長とは名ばかり、非正規雇用扱いの安月給で勤務。極北市財政破綻後は、病院長を始めとする職員達が病院を去った中、一人残って病院を支える――
「正に、医者の鑑ですねぇ。とてもとても、僕には真似出来ない……」
彦根も問題発言は多く、随所で様々な爆弾を仕掛けてきた人間だが、それはあくまで、勝算がある場合だ。
ただの正義感だけで腹の内を吐き出すような馬鹿な真似はしない。
「でも、世良先輩は、彼を見て、天城先生が自分をどう思っていたか、気づくんでしょうね……」
世良も、本質は、そんな『馬鹿な真似』をしがちな性格をしている。
しかし、18年の歳月が流れ、視野を広げ、権謀術策を駆使するようになった世良の行動は、かつての天城雪彦そのものだ。
よくよく思い返せば、天城とて、決して器用に生きていた訳ではなかった。
あの二人は、本質的にはそっくりなのだ。
だからこそ、天城は世良の存在で、理解と安らぎを得られたのだろう。
そして、世良もまた、極北で、同じ気持ちを味わうに違いない――
「結局、ナルシストなんですよ、あの人達は」
彦根は小さく毒づく。
「……羨ましい、ですけどね」
そんな呟きを漏らし、もう一度だけ空を見上げた。
秋晴れの空には、北へ飛び去った飛行機のシュプールが残っていた。
彦根はそれをちらりと一瞥し、くるりと背を向けて歩き去った。
スリジエ時代の世良ちゃんは、速水にも彦根にも、「天城先生に近づくな」オーラを出していて、無茶苦茶可愛いvだから、仲良くなれたとしたら、病院再建請負人になった後だろうな、と。
天城先生は誰かから革命の魂を貰って、それを世良ちゃんが受け継いで、今度は、今中先生が受け取ってると思ってます。美和ちゃんも、「天城先生と世良先生は兄弟みたいにそっくり」って言ってたし。だから、あの3人の心根はよく似ていて、天ジュノで今世良になり得ると思ってるんです。
彦根の気持ちは、私の気持ちだったりします。ああいう、読者視点に近い、突き放した好感を持ちそうなのって、彦根しか思いつかなかったんだよなぁ。
「何で、全部、ホラって決め付けますかねぇ。吐いてませんよ、一個も」
口の中で小さく呟く。
「貴方に僕の何が分かるんですか。貴方は、今も昔も、あの人しか見ていない癖に……」
2年ばかりの短い間だったが、東城大学医学部付属病院を颯爽と闊歩する天城雪彦と、いつもその後ろを追いかけていた世良のことは、未だに目に焼き付いている。
あのとき、二人の目には、何処までも続く桜並木が見えていたのだろう。
孤立した立場にありながら、真っ直ぐに目的に向かう二人は、本当に生き生きしていた。
大学病院の雑務と人間関係の中に埋もれる有象無象が、何者にも束縛されず、理想へと真っ直ぐ向かっていく彼らに、誹謗と中傷を投げつけながら、その一方で、羨望と嫉妬を抱いていたのを、彦根は確かに感じ取っていた。
いや、彦根自身もその一人だったに違いない。
そして、孤軍奮闘するハートセンター総帥に、臨床講義の場で自ら突っかかった。
結果は、惨敗。
あの男を打ち負かすどころか、自分の思慮の浅さを指摘され、将来の展望すら変えられてしまった。
実は、その当時の世良とは殆んど接点がない。
彦根が天城と話していると、やたらと不審な目を向けてくる若い医師が居た、くらいの記憶しかないというのが正直なところだ。
自分に向けられる感情が嫉妬なのだろうということは薄々感じてはいた。
やがて、天城がスリジエ創設を断念して、東城大を辞すと、それを追うように世良も姿を消した。
そして、10年近い歳月が過ぎた後、彦根は『不良債権病院再建請負人』などという肩書きの下、各地の病院の経営を立て直している世良の情報を掴んだ。
懐かしさから連絡を取り、情報交換するようになって、今に至る。
話題が、東城大に辞表を出した後のことになったときには、世良は曖昧に濁しただけだった。
恐らく、天城雪彦を追ったが、連れ戻すことも、共に居ることも叶わなかったのだろうと、彦根は推測している。
基本的に陽気に話し、皮肉な口調で官僚や学会上層部を批判する世良には、以前との多少のギャップは感じたものの、元々それほど良く知っていた訳ではないので、直ぐに慣れた。
しかし、そこに寄り添う影は、見る度に深くなっていく。
本当は、疾うに、生きることなど放棄しているのに、ただ生存するためだけに活動しているような無気力感。
そして、あえて何処にも存在せずに居ようとしているような、強い意図を感じる孤独。
それなのに、様々な敵に傷つけられながら、自ら絶望の只中に飛び込むような行動をする。
危なっかしくて、目が離せない。
しかし、それが、純粋な心配ではなく、どうなっていくのかを見極めたい、などと思っている辺りが自分らしいと彦根は思う。
かなり屈折しているが、世良に惹かれているのは間違いない。故に、会う度にアプローチを繰り返しても居る。
だが、その目がしっかりと彦根を捉えたことなど、一度もない。
唯一の武器である言葉を駆使しても、全て嘘だと決め付けられる――
無意識と知りながら、その残酷さを恨めしく思う、その愛しい人が機体に消えたのを確認したところで、手の中の封筒に気づいた。
「あ、渡し忘れちゃいましたねぇ」
ささくれ立った気持ちのままに、びりりと封を破り、中の書類に目を落とす。
「今中良夫、か……」
極北大学医学部第一外科出身。1年前、メタボ関連研究を批判した所為で、大学病院を追われ、極北市民病院に左遷される。出向後は、外科部長とは名ばかり、非正規雇用扱いの安月給で勤務。極北市財政破綻後は、病院長を始めとする職員達が病院を去った中、一人残って病院を支える――
「正に、医者の鑑ですねぇ。とてもとても、僕には真似出来ない……」
彦根も問題発言は多く、随所で様々な爆弾を仕掛けてきた人間だが、それはあくまで、勝算がある場合だ。
ただの正義感だけで腹の内を吐き出すような馬鹿な真似はしない。
「でも、世良先輩は、彼を見て、天城先生が自分をどう思っていたか、気づくんでしょうね……」
世良も、本質は、そんな『馬鹿な真似』をしがちな性格をしている。
しかし、18年の歳月が流れ、視野を広げ、権謀術策を駆使するようになった世良の行動は、かつての天城雪彦そのものだ。
よくよく思い返せば、天城とて、決して器用に生きていた訳ではなかった。
あの二人は、本質的にはそっくりなのだ。
だからこそ、天城は世良の存在で、理解と安らぎを得られたのだろう。
そして、世良もまた、極北で、同じ気持ちを味わうに違いない――
「結局、ナルシストなんですよ、あの人達は」
彦根は小さく毒づく。
「……羨ましい、ですけどね」
そんな呟きを漏らし、もう一度だけ空を見上げた。
秋晴れの空には、北へ飛び去った飛行機のシュプールが残っていた。
彦根はそれをちらりと一瞥し、くるりと背を向けて歩き去った。
スリジエ時代の世良ちゃんは、速水にも彦根にも、「天城先生に近づくな」オーラを出していて、無茶苦茶可愛いvだから、仲良くなれたとしたら、病院再建請負人になった後だろうな、と。
天城先生は誰かから革命の魂を貰って、それを世良ちゃんが受け継いで、今度は、今中先生が受け取ってると思ってます。美和ちゃんも、「天城先生と世良先生は兄弟みたいにそっくり」って言ってたし。だから、あの3人の心根はよく似ていて、天ジュノで今世良になり得ると思ってるんです。
彦根の気持ちは、私の気持ちだったりします。ああいう、読者視点に近い、突き放した好感を持ちそうなのって、彦根しか思いつかなかったんだよなぁ。
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