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テレビ先生の隠れ家
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プロフィール
HN:
藍河 縹
性別:
女性
自己紹介:
極北市民病院の院長がとにかく好き。
原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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久し振りに天ジュノな二人。どうしてもスリジエ描写を入れてしまう。すみません、ネタバレ要素がありますので、駄目な方はご注意を。

拍手[5回]



 酔いで潤んだ眼差しが誘うように視線を交錯させてきたとき、思わず、唇を重ねてしまった。微かに開いた上下から漏れた吐息を飲み込む。
 どうして、こんなことになったのだろう、という思いが頭を掠める。ほんの数時間前まで、天城は世良が持ってきた依頼など受ける気はなかったし、もう二度と会うこともないと思っていた。
 なのに、気がつけば、こうして、常宿に彼を招きいれ、グラスを重ねている。一体、彼の何が自分を変えたのだろう?
 普通の人間であれば、天城がシンポジウムを蹴った時点で諦めていただろうと思う。
 それが、彼は、モンテカルロ・ハートセンターに足を運び、カジノで会えるまで待ち続け、依頼をあっさり断られても、こうして噛り付くように粘り続けた。
『俺は天城先生に勝負を挑みに来たんです』
 厄介な依頼人という位置づけは、気がつけば、何故そこまで、という興味に変わっていた。
 上司である教授の命令を遂行するのは当然のことだ。しかし、彼の行動は、一研修医が取るべき対応としてはかなり度が過ぎている気がする。もっとも、そこまでする人間だと思ったから、佐伯教授も彼に使いを依頼したのだろうが――
 ふと物思いから戻ると、キスした拍子に、ソファの背凭れに押し付けられた世良は、そのままの姿勢で眠りに落ちていた。
 遠い異国の地、場違いなカジノの舞台で、無一文になることも厭わず、勝負を挑んできた『青二才』。
 無謀ではあるが、鈍感という訳ではないようだ。
 張り詰めた糸は、たった数杯のアルコールで切れてしまった。
 ――私はジュノに固執していない。
「確かに、そうは言ったが……、少しだけ、気が変わった」
 彼の言葉が、思いが届く度に揺さぶられ、変えられてしまう自分を自覚する。きっと、もう自分の答えは決まっている――
 天城は、世良のシャツのボタンを2つ外した。
 規則正しい寝息に合わせて上下する胸元。若い青年らしい、張りのある滑らかな素肌。軽く指先で触れると、世良は擽ったがって身動ぎした。暫くその感触を楽しんだ後、天城は鎖骨の下辺りに唇を当てた。そのまま強く吸い上げる。
 やがて、そこに赤い鬱血の痕が残ったのを確認して、天城は満足そうに目を細めた。世良が目覚める気配はない。
「この程度で済ませてもらって感謝するんだな、ジュノ」
 慣習すら異なる国、殆んど面識のない男の部屋に上がり、酔って眠りこけるなど、迂闊としか言い様がない。
「だが、逃がすつもりはないからな」
 言って、もう一度、胸元の花弁に口付けを落とした。
 
 
「ジュノ、コーヒーを淹れてくれないか」
 東城大学医学部付属病院赤煉瓦棟・旧教授室にて。天城は、いつもの調子で、スリジエ・ハートセンター唯一の部下に言う。彼は、ソファに寝そべる天城の向かい側に座り、事務長から言付かってきた書類一式に頭を抱えている。形式上、天城が処理すべきものではあるのだが、黙殺されるのが目に見えていたので、世良が四苦八苦しながら片付けるのは、水が低い方に流れるほどにも自然なことだった。
「たまには、自分で淹れてください。見ての通り、俺は忙しいんです」
 不機嫌な声で返され、天城はやれやれと息を吐いた。
「何を拗ねているんだ、ジュノ?」
 天城先生が事務処理をすっ飛ばすから、俺にその皺寄せが来るんです、といった意味のことを言いかけたようだが、ふと、その目線がテーブルの上のチェス盤に止まったのに、天城は目ざとく気づく。
「別に、拗ねてません!」
 子供っぽいにも程がある表情で、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
 そこには、論理的な業務上の苦情などというものは微塵もなく、どこからどう見ても、正直過ぎる感情しかなかった。
「拗ねてるじゃないか」
「拗ねてないです!」
 頑固に言い張る世良に、このままでは埒が明かないことを悟り、天城は身体を起こして、彼の唇をつついた。
「じゃあ、この尖った唇はキスでもねだってるのか?」
 真正面から見つめられ、世良は目を逸らして俯く。その顔は、羞恥で真っ赤になってしまっていた。
 それに気を良くして、天城は更に畳み掛けた。
「男の焼き餅は醜いぞ、ジュノ」
「やっ、焼き餅なんて……っ!」
 しかし、世良の表情は、口より遥かに正直だった。
 天城は、そんな世良を可愛くて仕方がないと思いながらも、殊更に余裕ぶって追い討ちをかける。
「気に入らないんだろう、私が彼らと親しくするのが」
 ちらり、と視線を向けた先には、チェス盤の上に凛と立つ深紅の騎士の駒。その深紅の騎士である研修医から、後輩の医学生の手術の見学を依頼され、彼らと共に許可を貰いに行ってきたのは、つい先程のことだ。
 自分達が連れ立って出て行くところを、世良がじっと見ていたのは気づいていた。どんな気持ちを抱いているのかも――
「そっ、そんなこと……!」
 天城の目線を追った世良はぶるぶると首を振ったが、動揺した表情が完全にそれを裏切っていた。
 天城は、最早、笑みを隠そうともせずに言う。
「全く……。ジュノは嘘が下手だな」
「嘘……じゃ、ないです……」
 頑なに言い張る世良を見ていると、少しからかいたくなる。天城は、少し目線を逸らして、考えるような仕草をした。
「まあ、確かに、あのじゃじゃ馬君は天才的な外科医のセンスがあるようだし、厚生省志願の医学生も見所はある」
 歌うように言ってから、ちらりと世良を見たら完全に絶句していた。
「是非、傍に置いて、スリジエ・ハートセンターの構想に組み込みたい、と言ったらどうする、ジュノ?」
 俯いた顔を無理矢理上げさせたところで、その打ちのめされたような表情に、思わず吹き出してしまった。
「そんな泣きそうな顔をするな、ジュノ。冗談だ」
 しかし、世良の表情は晴れない。
「でも……、確かに、速水の技術は……。あの医学生の考えだって……」
 その言い方は、それに対して自分は、という思いが見え隠れし、殆んど自虐的ですらある。
 いつも天城の要望にはツンケンしながら対応していた世良が、こんなになっているということは、随分悩んでいるということだ。
「仮に、私が彼らを手元に欲しいと言ったところで、クイーン高階やビショップ黒崎がそんなことを許す訳がないだろう。彼らは、私の力を極力殺いでおきたいのだからな」
 優しく髪を撫で、噛んで含めるように言い聞かせる天城を世良はじっと見つめる。
「でも……」
「でも、ジュノは違う。ジュノの居場所は此処だ。そして、そこは誰にも代わることが出来ない――少なくとも、私はそう思っている」
 その言葉に、世良の目が輝いた。
「はい!」
「急に元気になって。全く、現金だな」
「……すみません」
 苦笑した天城に、世良も、今になって恥ずかしくなったのか、少し赤くなって謝罪した。


速水や彦根には「天城先生に近づくな」オーラ全開な世良ちゃんが可愛くてv二人とも強烈な個性があるから、忠犬タイプの世良ちゃんにはなかなかシンドイ存在なのではないかと。
冒頭は、ブレイズの初夜(笑)書きたいけど、万人が「絶対何かあっただろ?!」と思うあの一夜を書くのには勇気が要り過ぎて、中途半端なとこで妥協(汗)天ジュノエロは定期的に書きたいです(笑)
そして、立場逆転で続く。
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