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原作・ドラマ問わず、スワンを溺愛。
桜宮サーガは単行本は基本読了済。
連載・短編はかなり怪しい。
眼鏡・白衣・変人は萌えの3種の神器。
雪国在住。大型犬と炭水化物が好き。
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「天城先生!天城先生……!!」
夢の中で俺は叫んでいた。苦しくて切なくておかしくなりそうで、ぼんやりと目を開けても、暫く自分がどこに居るのか分からなかった。
「漸くお目覚めか、ジュノ」
呆れたような天城先生の声にはっとする。ヴェルデ・モトの助手席。何時の間にか、うつらうつらと眠っていたらしい。
車は、すっかり馴染みになった桜宮岬に着いていた。気が付けば、月に一度はこうして、この岬へと足を運んでいる。来たところでそこにあるのは、巨大なでんでん虫の聳え立つ姿と心地よく響く潮騒だけなのだが、天城先生は好んで、ここに車を走らせる。そして、まだ存在しないスリジエ・ハートセンターのことを語るのだ。まあ、大半は、夢を語るというようなロマンチックさとは縁がない上に、医者が考えるとも思えない、やたらスケールの大きい経営論だったりするのだけれど。
――いや、別に、ロマンチックな愛の言葉なんて期待してないし、どうせ、この人、俺のこと、ペットくらいにしか思ってないし。
そんなことを取り留めなく考えていたら、何故か突然、涙が零れた。
夢の余韻がまだ頭の片隅に残っている。何も思い出せないのに、心が震える。――嫌だ、嫌だ……っ。
まるで子供が駄々をこねるみたいに、心が悲鳴を上げる。
「ジュノ?」
どうしてだろう。こちらを見ていた天城先生と目が合う。身体が震える。心が叫ぶ。
――行かないで……っ!
気が付いたら、運転席の天城先生に抱きついていた。
離したら失う、そんな気がして。
「ジュ、ジュノ、どうした?」
普段なら有り得ない先生の動揺した声。
もし、普通の状態でこんな声を聞いたら、きっとほくそ笑んでしまうんだろうに。今はただ、そんなことにも気づかずに、先生にしがみ付く。
「悪かった、ジュノ。意地の悪い質問ばかりしてしまったな。帰ろう。何か、食べたいものはあるか?」
宥めるように肩を撫でる手はぎこちない。いつだって、自信たっぷりのモンテカルロ・エトワール。その思いがけない様子に、次第に意識がはっきりしてくる。少しでも早く、明らかに不当なこの扱いから逃れて自由になって――そう思ってたはずじゃないか。この人を失うかも、なんて、何でそんなことを思ってしまったんだろう?冷静になってみると、自分のしたことが恥ずかしくなる。
「すみ……ません……。変な夢、見たみたいで」
離れようとしたが、肩を抱く先生の腕が強くて身体が動かない。
「ちょっと、先生……っ」
「先に抱きついてきたのはジュノの方だろう」
「だから、それは、寝ぼけてただけで……」
車の中とはいえ、こんな屋外で、誰かに見られたらどうするんだと一頻り身を捩ったが、このだらしない人のどこにこんな力があるんだという強さでぎゅうぎゅう抱きしめられてしまう。
「……驚かされた仕返しだ」
微かに聞こえた独り言に思わず笑ってしまったら、腰が立たなくなるほどのキスをされた上に、身体のあちこちにいたずらまでされてしまい、ふらふらのまま、天城先生のマンションに拉致された。
――これは、まだ桜宮に桜の樹を植えようとする前の話。
世良ちゃん、予知夢を見るの巻。
スリジエの展開、全く予想つかないけど、「極ラプ」で、天城先生の声を聞いた世良ちゃんの気持ちに、恨みも後悔もなかったから、二人とも桜の樹が引っこ抜かれるその瞬間まで真っ直ぐにそこを見てたって信じてる。絶対に、二人の夢は叶わないけど、それだけはそうであって欲しいなぁ。海堂てんてーお願いしますよぅ。